超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話 作:VISP
本来ならば戦争膠着状態の打破と飢饉状態の改善、そして戦争の妥協点を探る10月会談。
しかし、特大の異物を抱えたこの世界ではその影響を如実に受ける事となった。
「火星連邦の地球連合への中立の域を超えた支援は目に余る。これ以上は戦争当事国として扱わざるを得ませんぞ。」
「これは異な事を。我が国は彼らから適正な価格で商品を買ったまでの事。貴国も買えばよろしいのでは?おっと失礼。貴方方は自分達の技術にプライドがお有りなのでしたな。」
隣室で待機しているマルキオ導師、盲目で聴力の発達している彼をして会話内容は僅かしか聞こえない。
しかしそれでもえっらい険悪な雰囲気を滲ませた舌戦の気配はしっかり伝わっていた。
すげーだろ、コイツらこんなバチバチやり合っててまだジャブのつもりなんだぜ?
「いやしかしミョウジョウ博士の発明したMSは素晴らしい。我が国としても見習うべく、必死に学ばせて頂いておりますよ。まぁ追い付くのはまだまだ先になりそうですが。」
「確かに、博士の技術力は素晴らしいの一言です。我が方でも彼女の頭脳には誰もが敬意を示していますよ。だからこそ軽々と扱ってほしくはないですな。」
こんな感じの会談が三日程続く中、未だ落し所が見つからないものの、当面の決定として来年までの休戦・非戦闘員や捕虜への人道的対応・コロニー等の民間施設への攻撃の禁止等を確認する事が出来た。
これはプラント側としてもコロニー占領統治で問題視していたため、地球連合上層部と合わせて告知する事で抑止する狙いがあった。
大体の腹の探り合いが終わった頃、シーゲルは頃合いとばかりに本当の本題を繰り出した。
「オルバーニ総長、何故火星連邦…いえ、ミョウジョウ博士は我々と敵対する道を選んだのですか?人一倍思慮深い彼女がプラントを敵視する理由が私には思いつかないのです。」
シーゲルの言葉に、オルバーニは彼が何も知らない事を悟った。
そして、予め用意していた資料を見せるべき時が来た事も。
「クライン議長、貴方の考えは尤もです。私もこの情報を知った時、彼女が我々に肩入れするに足る理由だと思いましたから。」
そう言って、オルバーニはシーゲルに「極秘・持ち出し禁止」と赤く印字された紙媒体の資料を渡した。
「貴国が準備している、全てを焼き払う戦略兵器ジェネシス。それが原因です。」
「これは…?」
本当に心当たりが無いのだろう、シーゲルは訝しみながら資料を読み進めていく。
すると、徐々にその顔を蒼白にしていく。
徐々に発汗が激しくなり、手の震えも酷く、瞳孔も散大していく。
遂には、椅子を倒す勢いで立ち上がった。
「何だ、これは!私は許可していないぞ!!」
「しかし、現に存在するのです。してしまうのですよ、クライン議長。そして、貴方ならば誰が主導しているのかも分かる筈だ。」
記載された全ての情報が指し示していたのは「プラントが地球を滅ぼす戦略兵器を準備中」である事だった。
それも最高権力者である筈のシーゲル・クライン評議会議長にすら秘匿して。
シーゲルが戦前から進めていた宇宙開発研究のための成果を勝手に改造して。
「我々は進化した訳ではないのだぞ、パトリックッ!!」
激昂したシーゲルが吼える様に盟友の名を叫び、ずるずると脱力して床に座り込んでしまった。
何時の間にか入室していたマルキオ導師が項垂れ、脱力したシーゲルを元に戻した椅子に座らせた。
「今日は此処までにしましょう。マルキオ導師、申し訳ありませんが…。」
「えぇ、シーゲル氏の面倒は私の方で。オルバーニ氏は申し訳ありませんがその資料の破棄をお願いいたします。」
「分かりました。では今日はこれで。」
会談が再開されたのは丸二日後の事だった。
「先日は申し訳ありません。何分本国に連絡すべき事が山とありまして。」
「心中お察しします。流石にあんなものを秘匿されていては大問題ですからな。」
そうして二日ぶりの挨拶を交わした後、シーゲルは話を切り出した。
「火星連邦に関しては今後は露骨な肩入れはしない事、そちらにライセンスを許可したMSと同じものをこちらにも出すとの事です。それと食料品の価格を割り引きすると。」
「おや、宜しかったのですか?もう少し色々とおまけをしてくれそうですが。」
「知っての通り、我々はユニウスの件で元々彼女には余り頭が上がらないのですよ、残念な事に。」
現在のプラントの食料事情は勿論ながらミョウジョウフーズが供給元第一位である。
地上からの資源輸送や占領したコロニーで生産している分もあるが、量も質もやはりミョウジョウフーズが一番であり、プラントに人気の食物や嗜好品の多くもこちらで生産されている。
勿論、地球産のブランド品もあるのだが、そちらは専ら富裕層向けの高価格商品であり、一般人では滅多に手が出るものではない。
戦争で前線に各種物資を配する必要もあるため、一般家庭向けの商品は品薄・値上げが続いていたのだが、これで食料関係に関しては戦前レベルまで戻る事になった。
…まぁ、どう足掻いても食料インフラを握られている以上、迂闊な事はできないのだが。
強引な事をしたら、それこそコロニーが自爆とかあの女はやる(確信)
やってこっちがやらかした犯人だって擦り付けてくる(確信その2)
だからこそ、傍目には分かりやすい形で譲歩してもらい、後は有耶無耶にしてしまおうというのがこの合意なのだが。
実際、火星連邦と地球連合の取引はジャンク屋連合を介する事で合法なものとなっている。
ここら辺を突いてどうこうするには早くとも戦争が終わってからとなるだろう。
「腹が減っては何とやらですか。我々も宇宙に出る時なんかは彼女の会社の食料品に世話になりますから、気持ちは分かります。」
「悔しいと思うのと同じ位には美味いのがまた何とも言えんのですよ。」
共通の話題で苦笑いする二人。
こうして会談は新たに和やかな雰囲気で始まるのだった。
だが一週間後、今次大戦の妥協点に関しては双方譲れないものがぶつかる事となる。
「やはりそうなりますか。」
「えぇ。我々としては自分達の生存圏の確立こそが至上命題なのです。」
その成り立ちから仕方ないとは言え、コーディネーターの存在は既存社会に多くの混乱を齎した。
本人達はそう望んで生まれた訳ではないとは言え、自分達を追い遣る可能性のある新人類()の存在をナチュラルは許さない。
同じ人間で、生殖率に問題を抱えていても、高い能力と優れた容姿を持つ彼らに羨望と憎悪、恐怖の視線を向けるのは仕方ない事だった。
ヒマリ?一周回って何でもありの人外枠なので例外扱いです。
「だからこそプラントの独立を目指したのです。初期の工業用コロニーも購入するだけの資金はあります。」
「だが、プラントに依存しているユーラシアと東アジアはそれを許しません。大西洋連邦は幾分理性的ですが、かと言って貴国を当てにしている部分は多い。」
結局の所、旧世紀から続く植民地と宗主国の問題なのだ。
確かにナチュラルとコーディネーターという別軸の問題も深刻に絡んでいるが、根本はそこなのだ。
プラント内部を分断させれず、ブルーコスモス等の侵入を許して治安の維持に失敗し、プラント側の蜂起を許した時点でこうなる事は必然だった。
「我々は生存を、貴国は資産を求め、それはどちらもプラントによるものだ。」
「やはり我々人類は学びませんな。再構築戦争以前のそれを形を変えて続けている。」
たとえプラントの住人が全て火星に移住した所で、地球連合は今度は火星にまで攻めてくるだろう。
プラントを稼働させるための労働力として、今度は死ぬまで。
或いは地球圏に残ったコーディネーターを捕獲し、プラントに放り込んで労働させるか。
どちらにせよ、碌なものではないだろう。
「残念です、オルバーニ事務総長。我々はまだ戦わなくてはならないようだ。」
「私も残念です、クライン評議会議長。止めたいというのに止め方が分からないとは実に救えない。」
こうして、二人は分かれ、地球連合ープラント間ではC.E.71年までの休戦協定及び捕虜や非戦闘員への人道的扱い・民間施設への攻撃禁止等、既存の戦時条約等を改めて確認する事となった。
また、この休戦によって前線の兵士達も交代で故郷に帰る事が出来た。
彼らはクリスマスか年末を家に帰って、低価格かつ高品質のミョウジョウフーズ製食品を食べて幸せな一時を過ごすのだった。
まぁ、戦時中だから直ぐに終わってしまうのだが、それでも一息つけた事に変わりは無い。
そして年が明けてC.E.71年1月1日、プラント内にて政変が勃発、シーゲル・クライン議長は事態の鎮圧に失敗、最高評議会議長を辞任する事となった。
次いで議長に就いたのはパトリック・ザラ元国防委員長その人である。
盟友シーゲルが宇宙開発のために開発していた外宇宙探索のための宇宙船加速装置を秘密裡に改装、戦略級γ線レーザー砲たるジェネシス建造計画を進めていた張本人である。
ザラ議長は「今年は戦争の終結、そしてプラントの真なる正義と自由が示される素晴らしい年となる事だろう!」と演説をぶち上げた。
その裏ではシーゲル派の拘束・左遷という過激な手段での統制が始まっており、シーゲル・クライン前議長も病気療養の名目で監視付きで入院となった(なお、本当に過労とストレスで体調は崩してた)。
一方、火星連邦に対しては「事前の会談通りの取引を願う」としてほぼノータッチだった。
これはジェネシスさえ完成し、地球連合を排除すれば火星との決着も自然とつくという考えからだった。
事実、そうなれば火星連邦としては白旗を挙げるしかない。
これを受け、地球連合上層部及びロゴスはもう猶予は無いと判断、半年後を目途にプラント攻略を最終目標とした大規模作戦群を行う事を決定した。
その真の目的がヤキン・ドゥーエ宇宙要塞近傍にあるジェネシス破壊を目的としている事は未だ地球連合上層部とロゴス、そして火星連邦上層部だけが知っていた。
……………
一方、プラント内部においては開発局の人間達が頭を抱えていた。
評議会の政変はまぁ置いといて、以前から撃破した機体の残骸を可能な限り回収していたが、輸入に成功した完品のバタラ(輸出仕様)の解析を経て、その頭脳を大いに悩ませていた。
「かなりシンプルな設計だな。ジンもかなりのものだと思っていたが、このシンプルさでこれだけの性能は流石と言うか…。」
「固定兵装はほぼ無し。各部をブロック化する事で換装を容易にし、簡単に派生機を作る事が出来るとは考えたな。」
「それにこの電磁バリアシステム。こいつのせいでジンやシグーじゃ歯が立たん。」
「もう弱点ははっきりしているが、連合もコイツを輸入してるんだ。そう間を置かず独自開発の機体を出してくるだろうな。」
「火星連邦もそれ位分かってる筈だ。確実にコイツを超える後継機を開発してるぞ。」
各開発局から集められた解析班のメンバー達。
彼らは誰もがプラントの軍事力の源たるMS開発の最前線に携わる者達であり、その知識・技術は素晴らしいものがある。
あるのだが、チート転生者+コピーバイオ脳×7の暴力の前には力不足が否めなかった。
「今後、このプラネイトディフェンサーの対策は新型機開発において必須事項となる。それだけ革新的な技術だ。」
「ビーム・実弾問わず防御可能ですからね。」
「欠点のレーザーやレールガン、近接格闘戦を突くだけじゃパイロットの負担が大きいですからね。」
実際、各戦線で現れ始めたバタラはザフトにとって頭の痛い問題だった。
「今主力になってるジンにシグー、ディン、バクゥ、ザウート、グーンじゃ明らかに不利だ。」
「レールガン配備してるけど、やっぱりバッテリー機じゃ出力が足りなくて一撃で撃破とか出来ないんだよなぁ。」
血のバレンタインからこっち、プラントでは核兵器アレルギーとも言えるものが発生しており、艦艇は兎も角MSはコスト面からも全てバッテリー駆動だった。
「…仕方ない。バタラの核融合炉を使おう。それなら大体解決できる。」
「え、マジでやるんです?」
「今回の政変でトップはザラ国防委員長になった。あの人なら許可出すだろ。」
「あー…確かにそうですね。」
「核融合炉搭載MS開発計画ですか。今引いてる次期主力機の手直しで済むかな…?」
こうして、プラントはその高度な工学知識や血で贖った運用経験、そして天才の手掛けた製品から齎された技術情報を土台とし、新たなMS開発計画をスタートさせるのだった。
下手するとこの世界はエイハブリアクター無しの鉄血世界になるやもしれんw
〇バタラ(輸出仕様)
頭部の複合センサー内蔵式バイザーの撤去、武装を実弾兵器に統一、核融合炉の出力低下による稼働時間の延長、学習型オートマトンのブラックボックス化等の輸出向けの改修を加えたバタラ。
機体色はストライクダガーと同様の青みがかった灰色。
武装は頭部に装備可能なバルカンポッドシステム以外は鹵獲ジンと共有している。
火星連邦よりジャンク屋連合を通して輸出される他、ライセンス生産により地球連合で大量に配備されている。
低出力化に伴い、核融合炉の燃料消費が少なくなったものの、パワーの低下やプラネイトディフェンサーの防御力低下も引き起こしている。
これは戦場である月面で採掘されるヘリウム3の供給に不安があるためであり、少しでも消費量を減らそうとしたためである。
〇バタラ(輸出陸戦仕様)
上記の機体をベースに、バックパックを地上専用のものへ、下半身を四脚ブロックへと交換した機体。
相変わらずビーム兵器は搭載していないが、高い積載量と地上走破性を持つ。
地上用バックパックは推進剤の量こそ減ったものの、機体冷却用ラジエーター(防塵フィルター付き)が追加された上、機体の重心やバランスもより安定するよう調整されている。
四脚ブロックはバクゥのデータを解析し、より高い積載量と安定性、地上走破性を持つよう開発された。
これはバクゥへの対抗機を求めた地球連合陸軍からの要望で開発された機体であり、火力・装甲・機動性の全てでカタログスペック上ではバクゥを上回っている。
反面、機体コストはバクゥの倍近く、整備性も脚が増えた分だけ本来のバタラよりも劣っている。
それでも陸軍では貴重なバクゥの対抗馬として配備が熱望され、活躍を続けている。
武装はバタラ(輸出仕様)と同様にジンの装備の他、ガトリング砲+大容量ドラムマガジンや4連ロケット砲、携行式レールガンが存在する。