超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話 作:VISP
C.E.71年2月20日、軌道上でクルーゼ隊が猛威を振るう中、地上においても双方が激戦を繰り広げていた。
『クソ、誰かあの四脚を何とかしろ!』
『できるならやってるよ!』
『敵MS部隊の動きが良過ぎる!このままじゃ突破できない!』
『焦らず火力を集中しろ!奴らの防御だって限界がある!』
地上戦線において、嘗ては陸の王者だったバクゥだが、その在位は短かった。
バタラ(輸出陸戦仕様)が出回ると、ほぼ互角の機動性でありながら防御力では劣っているため、同数ではほぼ一方的に狩られる事態が続出したのだ。
現在では対PD用に調整されたレールガンが登場したため、その地位はある程度戻ったものの、嘗て程の絶対的なものではなくなった。
しかし、これを地上で扱え、良好な機動性を兼ね備えた機体がバクゥ系列だけだったため、何処の戦線でも引っ張りだこである事は変わらない。
が、装甲は四脚バタラが上である事も変わらない。
当たればその時点で終わりというクソゲーでありながら、それでも味方のために前線を何とか突破しなくてはならないのが今の彼らバクゥのパイロット達の辛い所だった。
『今から10秒後にポイントD2に支援砲撃を開始。そこから突破してくれ。』
『敵MS部隊、ポイントFに進出する模様。ザウート隊は予測進路への砲撃を要請する。』
『焦って連携を崩すなよ。相手の思う壺だからな。』
しかし、彼らには頼りになる味方がいた。
陸上戦艦ピートリー級とレセップス、そして改装されたザウートによる支援砲撃だ。
数こそ連合側の砲台やトーチカ、砲兵隊に劣るが、その大火力は凄まじい。
制空権こそ未だ完全に取れていないものの、宇宙での戦闘は優勢となれば、直にこの戦闘も自分達の勝利で終わる確信が指揮官達にあった。
『各機、用意は出来たな!支援砲撃後、我々は敵両翼に突入する!』
『態々宇宙から来た犬共にまだまだこのバタラが主役だと教えてやれ!』
『地獄を作るぞ!GOGOGO!』
ビクトリア湖を中心に左右に別れた敵味方両軍、陸上戦艦とレールガン搭載型へと改修されたザウートからの砲撃へと返す様に連合側から砲撃が放たれ、それによって抉じ開けられた前線の空隙にユーラシアと大西洋のバタラ部隊が前進していく。
この砲撃、砲兵隊やリニアガンタンク、固定砲台やトーチカだけでなく、ビクトリア湖上に配置された水上艦艇からの攻撃も多数あった。
陸上兵器よりも大口径の砲撃や多数の対空対地ミサイルは第一次ビクトリア攻防戦においても多数の降下中のザフトMSを叩き落した実績があった。
しかし、あると分かっていれば対策されるのも当然の事。
多数の連合の水上艦艇が配置されたビクトリア湖、その水底で動きがあった。
『よし、湖は浮き砲台ばかりだぞ!潰せ!』
『ゾノやグーンばかりと言わせるな!ジン・ワスプだってまだまだいけるんだ!』
浮き砲台として特化していた関係で、ビクトリア湖上の艦艇に対潜装備は配備されていなかったのがここに来て痛かった。
ゾノやグーン程特化していない分、陸上でも一定以上の速度で移動可能なジン・ワスプ。
攻撃の合間に近くまでトレーラーで運んで、水際で下ろせばそれで済む。
水深が平均40mとMSが暴れるには浅すぎるビクトリア湖も、彼らになら戦場として十分となる。
それは水中用MSに未だ碌な対抗戦力の無い連合海軍にとって、死神が訪れた事に等しい。
しかも、逃げようにもこの場所では碌に移動場所が無く、陸上からは支援砲撃の要請が引っ切り無しと来た。
逃げる訳にもいかず、しかし座しては撃沈不可避。
苦悩する船乗り達だが、彼らは死神だけでなく幸運の女神にも微笑まれた。
『よし、これだけやれば味方も──』
『何!?』
何隻かが撃沈された後、動きを止めたジン・ワスプの一機にバズーカの弾頭が突き刺さり、爆発する。
『これ以上好きにやらせるな!』
『味方艦艇は後退しろ!敵水中部隊は我々が引き受けた!』
なんとトラブルで出撃の遅れていたG部隊の一部が救援に駆け付けたのだ。
無論、関節部はシーリングしてあるとは言え、水中戦闘はシミュレーションでしか彼らに経験は無い。
PDが使えない以上は耐久力は互角で、他の性能は水中戦と考えればほぼ互角の状況だ。
数で言えばザフト側がやや有利だが、そもそも陸地に態々水中用MSを持ってくるとなれば数は多くないのが道理だ。
更に言えば、水中用MSの運用理論はザフト側が一強状態となれば、連合側が不利としか言えない状況だ。
『各機、連携を密に!海流が無いとは言え、いつも通り動けない事は忘れるな!』
『『『『『了解!』』』』』
『多少アレだが低重力環境と同じと思え!上下の動きを意識しろ!』
それがどうしたと言わんばかりに、連合側は突撃する。
ジン・ワスプはMS戦を想定していない、対艦・対地仕様の武装が殆どだ。
やってやれない事はないだろうが、基本的に対MS戦を想定しているダガー系列機の方が武装面は有利だ。
この世界初の水中でのMS同士の戦闘が始まった中、空中でも熾烈な制空戦闘が行われていた。
『パープル2、エンゲージ!』
『敵の羽付きだ!旋回は早いぞ!』
『音の壁も超えられない鈍足だ、叩き落せ!』
AMF-101 ディン
AMF(エアリアル・マニューバ・ファイター=空中機動戦闘機)に分類される、現状唯一の大気圏内を単独飛行可能な制空戦闘用MS。
最高速度こそ亜音速に達しないものの、低速域での運動性がずば抜けており、Nジャマー環境下での誘導兵器の性能低下を受けた状態ならば高い空戦能力を持つ。
『くそ、振り切れない!』
『後ろに付かれ…!』
『敵の新型だ!旋回砲塔に注意しろ!』
…のだが、ドッグファイトなら兎も角として数的不利な状況で一撃離脱に徹されると手も足も出ない。
対地支援ならまだ舞えるのだが、地上と水上に多数の対空砲があるビクトリア周辺では敵に制空権を渡し切らない事が精一杯だった。
『スカイグラスパー隊は制空権の確保に専念しろ。あの鈍足を叩き落とせ。』
『了解。各機、足を止めるなよ。』
否、それも難しい状況だった。
FX-550 スカイグラスパー
大西洋連邦が開発した対MS戦及び軌道降下してくる敵部隊の殲滅を主眼に置いた最新の制空戦闘機である。
武装は固定兵装だけでも機首の20mm機関砲×4、主翼付け根の中口径キャノン砲×2、機体上部の砲塔式大型ビーム砲×1と重武装であり、更には主翼にはスピアヘッドと共通の武装パイロンが左右二つずつ配置され、状況によって豊富なオプションを装備できる。
なお、ビーム砲はすれ違い様に真横にビームを撃てる上、照射時間を延長する事で所謂ギロチンビームを発射する事も出来る(排熱等の負荷も増すが)。
本来ならばストライカーパックを装備する事が可能だったのだが、この世界ではペーパープランで終わったため、史実よりも多数が早期に配備可能となったのだ。
先のカオシュン港では間に合わなかったものの、ここビクトリアでは増強されたザフトのアフリカ方面軍と軌道降下部隊相手では南アフリカ統一機構のみでは持たないとされ、大西洋連邦とユーラシア連邦により大いに梃入れされ、MS部隊やスカイグラスパー隊はその結果だった。
そんな機体がタダでさえ数で劣る状況でディンに襲い掛かるのだ。
飛行中・降下中で装備や機動が制限される敵MSを撃破するのに最適なスカイグラスパー隊は、スピアヘッドと共同して次々とザフト側航空戦力を撃破していった。
宇宙で、陸で、水中で、空で激戦が繰り広げられる中、遂に制宙権を握ったザフト軌道艦隊による宙対地爆撃が始まった。
『迎撃しろ!対空ミサイル、準備次第撃ち方始め!』
『迎撃機上げろ!スカイグラスパー隊にも知らせ!』
『スピアヘッドもだ!ここで直撃すれば前線が瓦解するぞ!』
流石に精密誘導など出来ないが、それでも大威力の爆弾が落ちてくる中で前線がまともに動ける訳もない。
自然と動きは鈍り、歩兵は退避壕へ逃げ、陸上兵器は落下予測地点から脱出すべく我先にと逃げ出す。
『頃合いだな。予備兵力を出せ。私も出る。』
砂漠の虎、ザフトの猛将にしてアフリカ方面軍司令官アンドリュー・バルトフェルドが動いた。
『宙対地爆撃が終了と同時、敵が再展開する前に駆け抜けろ!』
逃げ損ねば即ち死。
死にもの狂いで逃げた先で、即座に前線を再構築する事は物理的に不可能だ。
運良く出来たとしても、それは事前に構築したそれよりも大きく後退している。
例えバタラと言えども、宙対地爆撃なんてものを防ぐ事は出来ない。
特徴的な塗装のラゴゥに率いられ、文字通り虎の子たる温存されていたベテランのバクゥ部隊が無人の野を直走る。
『っとぉ!』
『隊長!?』
それを止めるべくリニアガンが、ミサイルが、バズーカが撃ち込まれる。
『これ以上やらせるな!G部隊、意地を見せるぞ!』
『あのラゴゥが大将機だ!何としてもここで仕留めるぞ!』
『出待ちした甲斐がありましたね。派遣された先でエース相手とは。』
大西洋連邦から派遣されたデュエル・デュエルダガー・ダガーから成るG部隊が火消しのために展開してきた。
『各機、ここを突破すれば敵司令部は目前だ!何としても突破するぞ!』
『各機、何としても阻止しろ!友軍の再展開まで時間を稼げ!』
こうして、第二次ビクトリア攻防戦最大の戦闘が幕を上げた。
……………
一方その頃、ビクトリア上空…ではなく、カオシュン宇宙港上空の宙域でもまた動きがあった。
「いけないなぁザフトの諸君。折角得た拠点の守りが疎かじゃないか。」
ザフトが二度目のビクトリア基地攻略で掛かり切りになっている現在、プラント本国や月面は兎も角、その人的資源の関係でどうしても他は手薄となってしまう。
況や陥落させたばかりの重要拠点ともなれば、いるのは留守番組と工兵隊が殆どで、殆どが軍属と言えど非戦闘員だった。
だが、このC.E.世界で最も人的資源に恵まれている地球連合軍には多正面戦闘が可能なのだ。
故にこそ空き家同然のカオシュン宇宙港に奇襲を仕掛ける事も出来る。
『艦長、これより予定通り宙対地爆撃を実行いたします。』
『あぁ、遠慮なくやってくれ。索敵班は何か変化があったら直ぐに報告せよ。こちらも護衛は少ないからな。』
先の戦闘でカオシュン宇宙港のマスドライバーは自爆こそ出来なかったものの、その管制施設は破壊されており、復旧には今暫くの時間が必要だった。
ならばこそ、奪われて使われる位ならここで完全に破壊してしまう事でプラント側の宇宙への出入りを減らしてしまう。
元持ち主たる東アジア連合はこの大戦で今一つ活躍できていない現状、国民の政府への不信・不満を少しでも減らすため、これ以上の失点を抑えるためにも形振り構っていられなかった。
「さぁコーディネーター諸君。たった5000万の人口でよくやってくれた。マスドライバーは冥土の土産にくれてやろう。」
こうしてビクトリア攻防戦が激しさを増す中、誰にも遮られる事なく、空き巣同然にカオシュンへと東アジア宇宙艦隊による宙対地爆撃が行われた。
〇先行試作型ゲイツ
現在のプラントのMS開発技術の粋とバタラから得られた技術情報を惜しみなく注いだ最新鋭試作機。
外観はレールガンの無いゲイツRに近いが、バックパックのウイングが小型化、左右に突き出た大型スラスターが無く、代わりに重斬刀を懸架可能なウェポンラックが左右にある。
核融合炉こそバタラのそれを高出力に設定したもので、PDに装甲材もバタラをコピーしたものだが、他は全てプラント独自の技術で開発されている。
操縦系統は既存プラント製MSのそれだが、レイアウトやOSは最新のそれに更新されている。
元々次世代ハイエンド機として開発が進んでいた機体を元にしており、極めて高い性能を誇る。
反面、扱い切るにはパイロットに高い操縦技術を要求する事となった。
現在、極一部のエースパイロットに先行して配備され、その運用データを元に制式量産型が配備される予定となっている。
武装は対PD及び対MS戦を意識している他、脚部側面にジンと共通のハードポイントを備え、三連装ミサイルポッドや追加ブースター兼増加装甲等を装備できる。
最も特徴的な装備として腰部側面に設置された有線式機動レーザー砲があり、こちらはサイドアーマーに固定時も発射可能であり、サイドアーマーを動かす事で柔軟に射線を変更できる。
これ自体をアンカーとして射出し、腰部背面にあるタンクからワイヤーが伸び、目標に命中時にレーザー砲を固定、零距離からのレーザー射撃で確実に撃破する事も可能なのだが、使い勝手はお察しである。
本家と違ってバックパックのメインスラスター近くと一体化している訳ではなく、レーザー砲が破損した際はワイヤータンクと共にパージが可能となっている。
武装は携行式115mmレールガン・重斬刀(シグーのものを肉厚に改良)・頭部内蔵式20mm機関砲×2・腰部有線式機動レーザー砲×2・対ビームシールド・固定式PD×6(両肩・肘・膝)を装備する。
〇ジンⅡ
対PD及び対MS戦を前提に改修されたジンの後継機。
ジンHMのデータが流用されており、胸部追加装甲や小型化したセンサー系、大型化した肩部スラスターや縦向きになったウイングスラスターにその面影が見える。
未だバッテリー機ながらも駆動系の改善によりEN消費量や近接時の機体の反応性や柔軟性が改善している。
武装は携行式76mmレールガン、重斬刀(先行試作ゲイツと共通)、PD固定式シールド、頭部内蔵式20mm機関砲×2となっている。
PD固定式シールドは内側に専用バッテリー、外側にバタラをコピーしたPDが備えられており、対実弾・ビーム問わず良好な防御力を発揮できる。
こうして両軍がPDを配備した結果、MSによる近接戦闘の比重が増えたため、プラントの最新鋭機はどれも近接戦闘を重視する形となっている。