超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話   作:VISP

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火星編 第12話 オーブとナノマシンと不穏

 C.E.71年 4月

 現在、地球連合ープラント間の大戦争は一時的な停滞に入っていた。

 カオシュンのマスドライバー破壊と第二次ビクトリア攻防戦での撤退。

 立て続けのザフトの戦略的敗北により、地上戦線の趨勢が実質的に決着した事を受け、地球連合は宇宙での活動を活発化すべく日々その膨大な生産力を発揮して物資を打ち上げ続けている。

 ザフト軌道艦隊はこうして打ち上げられ続ける物資を破壊、或いはその受け取る側を撃破すべく出撃するも、多数のMS部隊と遭遇し、戦術的目標は果たすものの勝ち切る事が出来ないでいた。

 既にプラントの、ザフトの、コーディネーターの力の象徴だった筈のMSは地球連合においても大量に運用され、一つの兵器として両陣営に組み込まれた。

 だが、人口が少ない故に多様な状況に対応できるMSを求めたザフトに対し、多種多様な既存兵器体系を持つ地球連合は軍事兵器の事情が大きく異なる。

 MSが大量生産される傍ら、大戦序盤から運用され続けるMAメビウスもまた大量生産されていた。

 MSの性能、特に防御力が劇的に向上した現在ではギリギリ二線級の戦力だが、対空防御の劣るザフト側の艦艇相手の対艦戦闘ならば十二分に活躍できる。

 他にもMS運用能力の追加や対MS戦を想定して対空火器を追加した各種艦艇類に作業用ミストラル等。

 宇宙で戦うために必要なありとあらゆるものが猛烈に生産され、マスドライバーによって打ち上げが続いている。

 しかし、如何に便利な機械と言えども限界はある訳で…どうしても予定された必要量に届くには時間がかかりそうだ。

 

 『じゃあ仕方ありません。他から購入或いはレンタルしましょう。』

 

 ムルタ・アズラエル、まさかのオーブ連合首長国を秘密裏に電撃訪問。

 下手すると地球連合VS中立国の幕開けのため、オーブ側もトップであるウズミ・ナラ・アスハ代表が直々に会談する事態となった。

 双方の護衛が睨み合う中、会議室は完全に周囲と切り離された密室状態で行う事となった。

 

 「先ずは感謝します、ウズミ代表。貴方が会ってくれる事、それ自体が最も重要でした。」

 「多忙な中、態々訪れてくださった者を拒む程、我が国は余裕が無い訳ではありませんからな。」

 

 先ずはにこやかに挨拶を交わす。

 なお、二人の言葉の裏はこうなる。

 

 「テメー態々オレが来てやったんだから顔出せやオラー!」

 「ふざけんな戦争にコッチ巻き込むつもりだろ騙されねぇぞクラァ!」

 

 普段ならここでもう一枚クッションを入れるのだが、今回は時間も無いし外の人達の心労と緊張が限界に達するかもしれないのでさっさと本題を切り出す。

 

 「単刀直入に言いましょう。貴国のマスドライバーを購入したい。」

 「無理ですな。」

 「でしょうねぇ。」

 

 きっぱりと断るウズミにそりゃな、と頷くムルタ。

 ここで頷いてくれてたら何も知らずにただ売買をするだけで終われたのだが…仕方ないね(にこやか)

 

 「まぁマスドライバーの戦略的価値を考えればそうでしょう。」

 「プラントとの戦争の主軸が宇宙に移った今、マスドライバーは欲しいでしょうが、地球連合には未だ二基のマスドライバーがある。時間は連合に有利な現状、そこまで無理をして急ぐ必要がありますかな?」

 「えぇ、その通り。我々には無理を通し、無茶をしなければならない理由があるのです。そして、その理由はオーブを始めとした中立国、いえ、この地球に住まう者全ての問題と言っても差し支えありません。」

 

 そう断言したムルタは、机上に一つのファイルを置いた。

 極秘・持ち出し禁止と赤く印の押されたそれの露骨に危険な雰囲気に、ウズミは眉を顰めた。

 

 「これは…?」

 「我々ロゴスはこれを『ミョウジョウ・レポート』と呼んでいます。由来はお分かりでしょう?」

 「…拝見させて頂きます。」

 

 その名前が出た時点で、ウズミは毒を食らう覚悟を即座に決め、ファイルを手に取った。

 アズラエルグループと密接な関係にある希代の天才ミョウジョウ博士による極秘資料。

 それもこの状況の原因となる程のものなど、幾らウズミが優秀な政治家であっても想像もつかなかった。

 暫くの間、部屋に頁を捲る音だけが響き…やがて、ウズミは怒りを露わにして吼えた。

 

 「そこまで見境を無くしたか、パトリック・ザラッ!!」

 

 妻を奪われた絶望と怒りから友を裏切り、ナチュラルへの憎悪のままに関係のない者達所か星ごと焼き払おうとするパトリック・ザラの狂気が、そのレポートには記されていた。

 正に獅子の咆哮が如き怒声に、しかしムルタは見慣れたものらしく、あくまで落ち着いた紳士然とした態度を崩さなかった。

 

 「我々ロゴスがその趣旨を外れてまで地球連合に肩入れしているのはこれが理由です。このままでは地球そのものが滅ぼされる。そんなもの、私達の誰も望んでいない。」

 「成程…改めて言いますが、マスドライバーの売却は出来ません。しかし、可能な限りそちらに協力したいと考えています。」

 

 あんな劇物を見せられては、公人としても私人としてもウズミは協力せざるを得ない。

 何も分からず、その時が来てしまってからでは手遅れなのだ。

 政治家として国と民を守るため、ウズミは中立主義を一旦脇に置いておく事に決めた。

 

 「分かっています。貴国に参戦せよ等とも言いません。戦後の裁判も考えれば、中立国の存在は必要ですから。ただ、こちらが購入する予定の物資を通常よりも多めに打ち上げてほしいのです。」

 

 無論、輸送費も出しますとも、と今度は購入リストと現在予定されている購入額が渡される。

 その内容は戦争に直接使用される事のない民生品が主体で、工業製品も同様だ。

 ムルタの言葉に成程、とウズミも思う。

 何もマスドライバーで他国へ売る物資を打ち上げてはいけないという道理は無い。

 実際、以前は地球連合もプラント向けの穀物等は態々打ち上げ、各種工業製品と交換する形で取引をしていた(内訳が公正かは兎も角)。

 輸送費込みでの取引なら悪くない、否、十分元が取れる額が記載されていた。

 

 「これならば取引自体は十分かと。ただし問題があります。」

 「航路の安全ですね?貴国だけでは不足と。」

 

 通商破壊の有効性は今更語るまでもない。

 歴史上の戦争において、大規模かつ長期戦になればなる程に補給の重要性は増す。

 それを阻害し、国そのものすら干上がらせる事の出来る通商破壊は歴史上多くの戦争で場所や姿を変えて行われ続けてきた。

 幾らオーブが多数のコーディネーターを擁した技術立国と言えども、流石にプラント相手に船団を守り切れる戦力を常時張り付けておけるだけの数も質も無い。

 となれば、絶賛そのプラントと互角以上に殴り合っている買い手側に任せるのが自然だろう。

 

 「流石にプラントや連合の国々と比べると、我が国の軍備では不足でしょう。」

 「なら、輸送船団の道中は全てこちらで護衛しましょう。戦力は絶賛増加中ですが、練度向上のためにも訓練や実戦経験は必須ですからね。」

 

 意外に思われるかもしれないが、火星連邦のバタラ(輸出仕様)は別に買い手は地球連合とプラントだけではない。

 一度ジャンク屋に卸している関係上、彼らが納得すれば何処にでも売るし、ジャンク屋同士の諍いから地球連合とプラント双方が贔屓にしていないジャンク屋が手にする時もある。

 つまり、大体の地球圏の勢力で最低でも一機はサンプルとしてバタラを入手しているのだ。

 なお、そんな仲介貿易をしているから普通はアフターケアまでしないのだが、最も金払いの良い地球連合だけはやっていたりする。

 そうした結果、何処の勢力も自前のMSを開発、或いは購入して運用するための研究を進めている。

 勿論オーブだって例外ではない。

 史実のアストレイとはまた異なる、この世界特有のアストレイ(モノアイ系の機体)が誕生し、オーブ本国及び所有コロニーであるアメノミハシラの防衛に就いている。

 当初はバタラの改修機で十分必要な性能とコストを実現できたのだが「国防的に他国の生産機に依存するのは危険過ぎる」として独自開発を行った様だ。

 国力が地球連合・プラント双方から数段落ちるオーブでそれをやってのけたのだから、流石は技術立国のオーブと言うべきだろう。

 しかし、十分な経験を積んだパイロットとなるとそうもいかない。

 MSパイロットの教育ノウハウも無く、金でプロの傭兵を雇っても今一つ信用がならない。

 急ピッチで育ててはいるが、ものになるまでは今暫くの時間が必要だろう。

 戦争当事国ではないが故に平和だが、それ故に最新の戦争のための「血塗れの経験」が足りないのがオーブという国だった。

 

 「分かりました。では大筋はそれで、後は実務者同士で。」

 「えぇ、実りある話が出来て大変満足でした。」

 

 こうして、オーブもまた直接的ではないが戦争に参加していく事となる。

 

 「ウズミ様!カガリ様が出奔しました!」

 「なんだと!?あの放蕩娘め!」

 

 そしてカガリはオーブを出た。

 何処に向かったのかは知らん。

 

 

 ……………

 

 

 C.E.71年 4月半ば 火星連邦にて

 

 「私が敢えて技術を渡したのは、この世界の技術の方向性を変えるためです。」

 『どの陣営も戦略兵器作ってバカスカ撃ちまくりますからね。修正不可避ですよ。』

 

 核ミサイル、ジェネシス、ジェネシスα、レクイエム。

 大都市やコロニー、地球そのものを焼き尽くす等威力に差はあるが、分かってるだけでもこれだけあるのだ。

 戦略兵器の豊富さでは宇宙世紀とタメを張れるのがこのC.E.世界だ。

 

 『核ミサイルやジェネシスは勿論、レクイエムはその使いやすさも厄介ですからね。』

 『だからこそエネルギー偏向装甲「ゲシュマイディッヒ・パンツァー」の開発を止めるべく、より汎用性と量産性の高いPDを提供した。』

 『程々に突き難い弱点もあった事でしたからね。』

 

 これにより、レクイエムに必須のビーム歪曲機能の兵器転用は大きく遅れるだろう。

 なにせもう十分実用所か量産されている便利なバリアシステムがあるのだから。

 

 「とは言え、まだ出していない戦略兵器はあります。」

 『では、それを世に出させないためにはどうすべきか?』

 『しかもその兵器、原理的には超簡単なんですよね。』

 『ではどうやってその兵器の使用を止めるのか?』

 『まぁ条約で規制するしかないですよね。前例を作って。』

 『という訳で、作りましたコロニー転用質量弾。』

 

 火星圏宙域、そこには現在多数の艦艇が遠征のための準備をしていた。

 勿論、そこには母艦に搭載された多数のアマクサとバタラ等のMSも含めてだ。

 その中心にあるのが上述したコロニー転用質量弾だ。

 宇宙世紀ではアクシズを旧ア・バオア・クーことゼダンの門にぶつけた事例があるが、それに通じる運用をする予定だ。

 

 『なけなしの外征用に調整した一個増強艦隊。何とか間に合いましたね。』

 『主兵装をレールガンやレーザーに換装するのに時間が掛かりましたが、まぁこんなものでしょう。』

 『念のため、何隻かハイパービーム砲を搭載させた大型艦も用意しましたから、もしもの時はこれでジェネシスを破壊しましょう。』

 『この艦隊で道中の護衛をしつつ、亜光速まで加速した旧型コロニーそのものを要塞等にぶつける。勿論、地表に落としても凄まじい被害となるでしょう。』

 『コロニー落とし。単純な超質量の打撃。これは規制せざるを得ないでしょうね。』

 『コロニーの兵器転用、つまりレクイエムの中継ステーションもそうですし、コロニーレーザーも含まれます。』

 『加えて言えば、コロニーへの攻撃も緊急時以外は規制してほしい所ですけどね。』

 

 用意された全ての艦艇、そしてコロニー転用質量弾には全て最大加速時には亜光速領域へと到達可能な太陽帆システム「ヴォワチュール・リュミエール」が搭載されている。

 未だ小型化はコストもあって採用されていないが、これならば火星圏と地球圏の行き来に片道数ヵ月で済む。

 勿論、公転周期を考えねばならないので最短で二カ月、最長で三か月+αといった所だろうか。

 因みに木星圏で現在研究中のバイオ脳搭載無人工作艦も同様の推進システムを採用している。

 

 「さて、こちらの用意は大体済みました。後は向こう側がちゃんとやってくれるかですが…。」

 『大丈夫じゃないですか?ムルタ君は優秀ですし。』

 『それに、この手の謀略の経験は向こうの方が優秀じゃないですか。』

 『なにせ地球連合は紀元前から人類同士で殺し合ってきた国家群の末裔ですからね。謀略暗殺事故死毒殺お手の物でしょう。』

 『何にせよ、ここは待つしかないですね。』

 

 こうして、火星側のXデーに向けた準備は着々と進んでいた。

 

 「所で私達?何だかやたら身体が軽いのですが。」

 『おや、そうなのですか?』

 『今日は調子が良いのですね。』

 「足腰も久々に動かせますね、立って歩ける程に。」

 『おや、そうなのですか?』

 『今日は調子が良いのですね。』

 「お肌の張りも凄いんですよ。まるで十代に戻った様で。」

 『おや、そうなのですか?』

 『今日は調子が良いのですね。』

 「そして鏡を見たら十代半ば頃の顔をした自分に会ったのです。」

 『おや、そうなのですか?』

 『今日は調子が良いのですね。』

 「………」 無言でオーネスト・ブルートゥのセリフ集を再生する

 『あぁぁ!?や、止めてください私!』

 『その声は私に効くんです!やめて!』

 『うわーん!耳が無いのに耳にねっとり残るー!』

 「キリキリ吐きなさい。医療用ナノマシン所の効果じゃないでしょうがこれは!?」

 

 同時に、ヒマリによるバイオ脳×7への尋問も進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 C.E.71年5月 プラント占領下元プラント理事国所有コロニー群にて

 

 『この、ナチュラル共が!ふざけやがってェッ!!』

 

 過激化・拡大するデモ隊に対し、治安に当たっていたザフト所属のプロトジンの持つ重突撃砲が発射された。

 後に悪名高い「血のゴールデンウィーク事件」の発生だった。

 

 

 




最後の事件は本作オリジナルとなります。

〇バタラ水中用試験機
 バタラをベースとした水中用試験機。
 地球連合の注文によって設計・開発されたものの、水中でザフト製水中用MS相手に有利に戦える性能にない事からお蔵入りとなった。
 吸水口を備えた水中用ハイドロジェット推進器をバックパック、大腿部に配置し、高い水中航続能力を持つ。
 しかし、全く水中戦を想定していない機体であった事から耐水圧性能に問題があり、また水中ではPDが使用できず、浅瀬でしか運用できない問題があった。
 外見はゼー・ズールと同様にバタラをベースにベスト状の潜水装置、首回りのバラスト・タンク、爪先に水中用フィンなどの水中用装備を加えた姿。
 武装はハープーンガンか携行式魚雷ランチャーを主兵装とし、オプションで水中用重刺突銛、マグネットアンカー等がある。
 この機体の開発データと実機は地球連合に売却され、ダガー系をベースとした地球連合製水中用MSの開発に活かされる事となる。
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