超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話 作:VISP
C.E.71年5月 プラント占領下元プラント理事国所有コロニー群にて
暦が変わった所で人の営み、特に根底ともなる文化は早々変わる事は無い。
無論、コロニーやプラント、火星の様な新たに生み出された居住環境はその土地由来の気候現象等が地球上と全く異なる事から異質、或いは既存のそれを下地にしつつも独自の変化を辿ったものが多くなるが。
しかし、住人の多くが既存の文化圏出身であれば、大体はその出身由来の文化をベースに生活している。
L4での東アジア連合とプラントの宇宙要塞「新星」攻防戦の際、多数の民間コロニーが破損、その住民の多くは移住してしまった。
現在もニコイチサンコイチで修理したり、ジャンク屋連合を雇って修理し続けている人々はいるが、現在宇宙大戦争中の東アジア連合にそれを支援する余裕はない。
精々が元住人を安全な場所へと誘導・避難させる事が精々で、その先が他のコロニーか地上かは人々の幸運や伝手次第となる。
そして、最も伝手がない者達は既にプラントによって占領状態の元東アジア連合所有コロニーへと流れついた。
しかし、政府からもプラントからも支援の無い彼らは流れ着いたコロニーで難民となり、仕事もない故に窃盗や強盗等の非合法活動で生きるしかなく、順当に現地の住民らと対立し、治安を悪化させた。
これに頭を抱えたザフトは駐留部隊の規模を増加せざるを得ず、苦心して治安維持と住民による物資生産を両立させ続けた。
幸いな事にこのコロニーは旧極東地区出身者が多いコロニーだったためか、占領するザフト兵へのレジスタンス活動もほぼ無く、初期の混乱を除けば順調に統治されていた。
が、プライドが高く、生活の基盤全てを奪われた東アジア連合の盟主こと旧中華地区出身者達はそうではなかった。
彼らは当然の権利とでも言う様に流れ着いた先のコロニーで窃盗・強盗を繰り返し、ザフト兵相手のハラスメント行為や物資生産ラインへの破壊工作を行った。
いきなりのトラブル激増に駐留ザフト軍は頭を抱え、不穏分子の狩り出しを続けた。
が、人数は出鱈目に多い中華系難民達に対し、ノウハウの一切無いザフト側は後手後手に回り、狩り出しは順調とはいかなかった。
それでも暴徒鎮圧用のセントリーガン等を各所に設置し、ドローン等を用いて見回りを増やす事で何とか見える範囲の治安維持に成功していた。
だがしかし、第二次ビクトリア攻防戦の失敗により、ザフト側の戦力は大いに不足、今後始まる宇宙での戦闘に対して圧倒的に人手が足りない事からこうした治安維持に理解のあるベテランが多数配置転換で引き抜かれたのだ。
これに対し駐留軍指揮官は抗議し、追加の人手が出される事となったのだが…回されてきた人員は促成栽培の新兵達だった。
プラントで生まれ、生き、死ぬ事に疑いが無い、まだまだ子供と言って良い者達。
それが回されてきた事に指揮官らは学徒動員する程に人員が欠乏しているのかと愕然とした。
それでも職務は果たさねばと新入り達に色々と教えるのだが…まだまだ社会の荒波を知らない彼彼女らは指揮官らの指示にさっぱり素直に従わない。
剰え「こんな無能なナチュラルなんて駆除しちまえば良いんですよ!」「このコロニー皆地球に落としましょうよ!」等と宣う始末。
教育を担当した者達は怒りとストレスで意識が遠のきそうになった。
が、現在プラントで主流となっているザラ派は対ナチュラル最過激派とも言うべき思考をしており、新兵らがこんな思考回路をしているのも無理もない事だった。
おまけにザフトが民兵組織であるせいで明確な上下関係が無いと来た。
こんな暴走必至の糞餓鬼共をどうにもできないなんてクソだ、とは誰の言葉だったか。
それでも彼ら指揮官達は現場で難民と新兵に挟まれながらも、何とか治安維持の仕事を熟してきた。
そう、あの「血のゴールデンウィーク」までは。
切っ掛けはそう、旧極東地区由来の大型休暇の習慣だった。
難民達が辿り着いた旧東アジア連合所属コロニーの一つも、住民の多くが極東系だった事からこの習慣があり、戦時でありながらも何とかあるもので工夫してイベントを開催、それぞれに連休を楽しむ予定だった。
勿論、そんな中でも仕事の人々もいるが、彼らにしても何処か浮ついた雰囲気があった事は否定できなかった。
戦時下でありながらほっと一息つけた、そんな時だった。
何処からか湧いてきた多数の難民達が集結し、大通りでデモを開始したのは。
勿論許可なんて取っていない、手に持った建築資材で通りの店を打ち壊し、シャッターの下ろされていた店に侵入しては略奪に窃盗、時には暴行や婦女暴行までする完全なる暴動だった。
『総員出動!F地区にで大規模暴動が発生!既に周辺に多数の被害が出ている模様!』
『コンディション・レッド発令!MSパイロットは直ちに戦闘配備に就いてください!』
折角の休暇気分だったのは住民達だけではない。
彼らとそれなりに付き合う事となった駐留ザフト兵士達もだった。
そんな彼らが出撃した先で見たのは、それなりに顔見知りとなった人々が襲われ、奪われる様だった。
『っ!コイツラ…!』
『待て!MS部隊は攻撃するな!民間人を巻き込むぞ!』
『で、ですが!』
『いいから待て!車両と歩兵部隊が到着するまで待つんだ!』
暴動を起こした難民達からすれば、自分達から全てを奪って惨めな暮らしをさせるプラントとそれに尻尾を振って生活するコロニーの住民達は全て敵と裏切者でしかなかった。
自分達の方が法的にグレーよりだった所を、生きるため、仕方ない、報復と言い訳を固めて犯罪に走った。
辛うじて持ち出した資産も、このコロニーに来て侵入するまでの費用としてジャンク屋に取られてしまったため、本当に着の身着のままだった。
そこで素直に現地の住民や行政府、駐留ザフト軍なりに助けを求めればまた話は違ったのかもしれない。
しかし、彼らにはプライドがあった。
東アジア連合の盟主たる民族の末席として、世界の中心に住まう者達の末裔としてのプライドが。
それを捨てられないがために、彼らは道を踏み外した。
加えて、そんな彼らに最近はジャンク屋の伝手で結構な支援があった。
それにより、彼らはこんな大きな事を起こす事も出来た。
そして、暴動の発生という成功により、彼らは今まで溜め込んで来た鬱憤を晴らす様に暴れ始めた。
壊し、殺し、奪い、犯す。
戦場で、戦時下で何時の時代もよくある景色を、戦場から遠く離れたコロニーで行った。
「MSが来たぞ!RPG用意しろ!」
「最初に目晦ましだ!爆竹と煙幕投げろ!」
そして、駐留ザフトのMSことプロトジンが数機現れると、まだ理性を保っていた者達がこれまでの雪辱を果たすと提供された火器や命中させるための手作りの小細工を準備し始める。
勿論彼らは軍人ではない。
しかし、彼らの支援者はその手の経験が豊富だったのか、しっかりと使い方や命中のさせ方をレクチャーしてくれた。
お陰で彼らは命中させるまではそれなりに動けるようになった。
勿論、その後どうなるかなんて考えてはいなかったが。
何もかも無くした彼らは、まだ持っている者達へと報復の引き金を引いた。
『くそ、予想以上に暴動が拡大してやがる。』
『先輩、やはり今からでも攻撃しましょう!』
『ダメだ!下手な事をすればこちらが…!?』
問答する3機のプロトジン。
その足元へと投げられる幾つかのパイプ状の何か。
会話と望遠カメラに集中していた彼らがそれを確認した時には遅かった。
『スモーク!各機、散開しろ!』
『う、うわぁ!?』
『うわ、馬鹿!?』
煙幕弾と多数の爆竹。
隊長機はまだしも、実戦を経験してない新入りの片方が驚きから操作をミス、傍らの僚機へと突っ込んでしまう。
結果、転倒してしまう2機のプロトジンに、建物の隙間や窓から使い捨ての対MSロケットが向けられる。
『な、いかん!』
それに気づいた隊長機は、結果的に致命的なミスを犯した。
未だ年若い新兵達が乗る2機のプロトジン、それらを射線から庇う様に機体を動かしたのだ。
すかさず発射され、噴射音を置き去りに飛翔するロケット弾頭。
プロトと付くがジンはジン、命中しても携行兵器程度では致命傷にはならない。
しかし、コクピット付近に一度に複数発となれば話は変わる。
旧型の練習用機で、転倒した味方を庇った状態ともなれば回避も不可能で、放たれた対MSロケット弾は地上戦で十分な威力を持つと実戦証明済みだった。
轟音と閃光と共に、胴体のバイタルエリアに6発ものロケット弾が着弾し、その威力を発揮した。
しかも運の悪い事に、最後の一発が命中したのは最も装甲の薄いコクピットハッチだった。
これによりMS隊をその場で指揮できるベテランが戦死してしまった。
『た、隊長…?』
『そんな…!』
撃破された隊長機が倒れて直ぐ、転倒していた二機のプロトジンは態勢を立て直した。
しかし、その時には既に隊長は死亡し、目の前には勝鬨を上げるテロリスト達。
彼らの細やかな忍耐力が尽きるのは一瞬だった。
『この、ナチュラル共がぁぁぁッ!!』
『ふざけやがってぇ!!』
プロトジンの持つ唯一の火器、78mm重突撃砲がテロリストに向け放たれた。
旧式化しているとは言えMSの携行武装という過剰過ぎる火力により、テロリスト達は一撃が付近に着弾するだけで肉片と化した。
同時に、フルオートでデモ隊へと撃たれた弾丸は付近の建造物にも着弾、中に隠れていたテロリストや難民ごと市民を肉片へと変えていった。
こうして、「血のゴールデンウィーク」は本格的に始まってしまった。
実はこの惨劇、ここだけではない。
各コロニーへと流れた難民達による駐留ザフト軍へのデモ活動とそれに乗じたテロ活動。
主にプラントに恨みを持つ難民達と末端のブルーコスモス構成員で実行されたこのテロは、裏に地球連合情報部門の関与があったと言われているが、真相は不明である(公式声明)。
そして、各コロニーで撃退・殲滅された彼らの残党は、ある企業の建物を占拠し、立て籠もった。
そう、あのミョウジョウ・フーズの本社である。
初代会長ことミョウジョウ博士が日系人である事に肖ったゴールデンウィーク期間中という事で、職員の多くは休暇として空けていた。
それでも最低限の人員は仕事中であり、更に警備の人員だけでは重火器を持ち込んだテロリスト達に対応できなかった。
警備員の多くは殺害、残っていた職員の多くが捕縛された状態になってしまった。
これに慌てたのはプラント本国である。
地上で押され、宇宙で仕切り直しと思った所にコレである。
しかもミョウジョウグループ本社からは「治安維持オメーらの役目だったろ。どうなっとるんじゃ」という問い合わせがある始末。
そもそもミョウジョウ・フーズの製品の主な出荷先はコロニーであり、一番の取引先はプラントなのだ。
で、食料生産コロニーに改装したユニウス7を核攻撃で破壊された事から、プラント単独での食料供給は極めて難しい。
少なくとも戦争が終わってからでないと、リソースの確保は不可能だろう。
そんな情勢でコレである。
『何としても賊を排除せよ!』
就任したてのプラント最高評議会議長からの御言葉である。
しかし、相手のテロリスト共はジャンク屋から3機のバタラ(輸出仕様)を購入しており、内部の立て籠もり犯と共にコロニー内に布陣している状況だ。
PDに対応していない旧式ばかりの後方の部隊では荷が重かった。
重斬刀で戦えばいい?前線から戻って来た部隊を使え?早く奪還しないと食料生産に支障が出るし、速攻でやらんと人質殺すぞ言われる可能性が高い。
そして治安維持部隊では荷が重いと前線から戻って来た部隊を投入したのだが…
『所詮はテロリストだ!捕虜は取らずに皆殺しにして構わん!』
『どうせ人質もナチュラルなんだろ?構うな、施設さえ無事ならいい!』
ここに来て、パトリック・ザラ自身が掲げるコーディネーター至上主義、ナチュラル蔑視の風潮が仇となった。
従業員救出のための歩兵部隊を置いてきぼりにして即座にMS部隊が突入、テロリスト側のバタラと戦闘を開始したのだ。
だが、ジンⅡが主体と言えども基本性能はバタラの方が上であり、速攻での決着とはいかない。
コロニー内に侵入したジンⅡ部隊を認めると、バタラ部隊はマシンガンで応戦、ジンⅡ部隊も盾で防ぎつつ携行式レールガンとレーザーライフルを応射し、忽ちコロニー内は戦火に包まれた。
そして戦闘開始数分と経たずにミョウジョウ・フーズ社屋に流れ弾が命中、施設に被害が出始めた。
幸いにも、MS部隊に置いていかれた歩兵部隊は混乱するも即座に急行、人質の確保に動いてくれた。
彼らはこの作戦の失敗がプラントの食料事情に直結すると理解していたのだ。
だが、戦闘激化に伴い、コロニー内の移動は順調とは言えず、彼らが到着した頃には戦闘の余波によって職員らにも被害が出てしまっていた。
それに頭を抱えながら一人でも多くの人命を救い、テロリストを排除すべく歩兵部隊は制圧を進めていった。
結局、「血のゴールデンウィーク」が完全に終息するまで、その名の通り一週間もかかってしまった。
幸い、食料供給関連施設への被害は少なかった。
少なかったが、民間人含む多数に死傷者が発生した事から、ザフト側のコロニー管理体制が不十分であると関係各所から突かれた。
また、ゴールデンウィーク中の事を中継するために民間の報道カメラに中継を許していた事から「ザフトによる民間人ごとテロリストを射殺」するシーンも多数映ってしまった。
他にもテロリスト側のMSとの戦闘の余波でミョウジョウ・フーズの職員にも被害が出ている事が不味かった。
『納得のいく回答と対応を求む。』
断固とした態度でミョウジョウ・グループ現取締役はプラント評議会議員の外交担当へと告げた。
彼らからすれば(表向きだが)プラント側が警備を請け負っている会社施設がテロリストに占領された上、プラント側とテロリストの戦闘で施設と職員に被害が出た状況だ。
しかし、期待していた返答は来なかった。
『全て卑劣なナチュラル共の陰謀である!』
これが一連の事態に対するプラント側の回答だった。
地球連合情報部門の難民やブルーコスモス末端構成員への訓練や武器の供与を考えれば事実なのだが、ミョウジョウグループが求めているのはそうじゃねーのである。
『48時間以内に納得のいく回答と対応を求む。』
こいつらさては自分らの警備責任棚上げするつもりだな?と悟ったミョウジョウグループは時間制限を設けた。
これで慌ててくれたらまだ可愛げがあったのだが、クライン派を始め中道派だったカナーバ議員他が左遷されてから配置された議員はパトリックのイエスマンしかいなかった。
そのため、パトリックが公的にそう言ったのだからそれが正しいのだと鵜呑みにした。
勿論、警備責任や賠償は棚上げである。
『48時間が経過した。ミョウジョウフーズはプラント側からの誠意ある対応が行われない限り、プラントに対し輸出規制を行う。』
勿論、そんな事をされては干上がるばかりである。
まだ残ってたまともな議員やザフト隊員らがパトリックを説得したのだが…
『これ以上ナチュラル寄りの企業にプラントの生命線を握らせる訳にはいかん。』
何を思ったのか、制圧部隊を編制してミョウジョウ・フーズ所有食料生産コロニーを制圧、職員を拘束してしまったのだ。
そして調査をした後、非戦闘員を拘束したまま自分達で食料生産コロニーを運営し始めたのだ。
これにはまだまともな思考回路をしていた議員やザフト隊員らは頭を抱え、或いは卒倒した。
『これは良い。付け入る隙を自分から作ってくれるとは。』
無論、仕込みをした連中がこれを見逃す訳がない。
『我が国の国民を不当に拘束するプラント評議会に対し、我々は以下の要求を行う。回答期限は24時間とする。』
そして、手薬煉引いていた火星連邦も動いた。
要求の内容は以下の通りだ。
1、協定違反及び侵略を指示・実施した人員の引き渡し
2、施設修復及び使用料、被害者への慰謝料、営業妨害によって発生した被害額の補填
3、以上の要求が叶えられない場合、プラントへと宣戦布告を行う。
勿論、パトリック政権下のプラント評議会はこれを全面的に拒否した。
今まで他のコロニーにまで回していた食料生産の全てをプラント側に手に出来た事による住民の生活状況の改善が、民意と言う形で彼を後押しした事も強気の理由だった。
結果として、「当事国に殴られたからその敵陣営と共に殴り返す」という合法的に元中立国が戦争に参加する状況を作り出す事に成功した。
『分かっていると思いますが、被害者への補償は最大限に。』
『分かっておりますとも。それが誠意というものです。』
いつもの秘匿通信にて、ムルタはヒマリと会話していた。
今回の一件、随分な出費と手間暇がかかったものの目論見は成功した。
火星連邦の地球連合側での参戦という一大イベントに、連合上層部は沸いた。
そして外交とか常識を持っている者達はプラント上層部の頭プラント星人ぶりにドン引きした。
『とは言え、こちらでも確実にジェネシスを破壊するための手段は確保しています。』
『こちらもアークエンジェル級3隻目を竣工させ、特装砲の集中運用によって破壊する予定です。』
『結構。こちらも到着するまで後2カ月少々の予定です。それまでは何とか持たせてください。』
今回の一連の事件は地球連合単独でのジェネシス破壊は困難と見た火星連邦と火星連邦の参戦を願った地球連合による合同での謀略だった。
無論、直接的な仕込みは地球連合情報部の仕事であり、そもそもこの手の事はヒマリの趣味ではない。
趣味ではないが、やれたりはするのがヒマリという女なのだが。
『仕掛けは上々。後はどう詰んでいくかですね。』
『それと追加情報ですが、ジェネシスαなる小型試作機らしき施設を確認しました。そちらで破壊できないなら、こちらで始末しておきますがよろしいですか?』
『ちょっと待ってください???』
そしてこんな爆弾情報を投げつけて混乱させるのもヒマリならよくある事だった。
なお、ムルタとの通信は混乱を避けるために合成画像+音声でお婆ちゃん姿に偽装して行っております