超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話   作:VISP

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火星編 第14話 火星連邦参戦とジブリールの奇策

 C.E.71年5月半ば 火星連邦にて

 

 『やれやれ、自社の職員を犠牲にするのは分かっていましたが嫌になりますね。』

 『申し訳ありません博士。しかし現状、これ位しか無かったので…。』

 『予想より戦火が広まるのが早過ぎました。我々の失態です。』

 『末端ブルーコスモスに難民など使うから…。』

 『それだけの鬱憤が溜まっていたのでしょうな。無理のない事ですが。』

 

 火星連邦上層部は、今回の元連合所有の現プラント占領下コロニーでの謀略の反省会を行っていた。

 勿論、ミョウジョウ博士はちょっとご立腹である。

 

 『黙認した私にも責任がありますので、今回の件は被害者への補填を多めにする事で許しましょう。』

 『寛大な処置、感謝いたします。』

 『以後、この様な事態にならぬよう努力いたします。』

 『連合側には如何いたしましょうか?』

 『裏から貴方方と同様の条件に加え、プラント降伏後にミョウジョウグループ所有コロニーの返却と引き続き宇宙での食料産業の利権の維持ですかね。これ以上はいらぬ恨みを買いますので。』 

 『畏まりました。ではそのように。』

 『あぁ、勿論参戦に当たっての分け前はまた別という事で。』

 『それは勿論心得ておりますとも。』

 

 ミョウジョウ博士は既に一線を退いている。

 退いているのだが、その影響力の余りの大きさに未だにこうして首脳部の会議には映像越しだが呼ばれているのだ。

 だって大体の問題は圧倒的技術力というパワーで解決してしまえるので、完全に不参加だと困る者が大勢いるのだ。

 加えて、この手の研究者特有の潔癖さもかなり薄い事もあって、こうした事態への相談もガンガン来るのだ。

 火星連邦はまだまだ独立したての、国家としては赤子も同然な事もあり、まだまだ彼女が完全に隠遁するのは先になりそうだ。

 

 『外征艦隊の地球圏到着は、8月になってからですか。』

 『先行させた艦隊は新型MSの地球圏での運用テストの後、機を見て例のジェネシスαの破壊作戦を実施する予定です。』

 『結構。ただしアマクサは兎も角、ジンクスの秘匿には注意してください。』

 『了解。もしもの時は機体の自爆も考慮しております。』

 

 先行艦隊の最重要目標は二つ。

 一つはアマクサ及び史上初の実戦用GNドライヴ搭載MSジンクスの地球圏での動作テスト。

 もう一つは試作型ジェネシスことジェネシスαの完全破壊である。

 この二機種は高い性能ながら、テストは全て火星圏で再現可能なものしか行えていない。

 故に外征艦隊に先んじてテストを行い、そのデータを共有する必要があった。

 そして後者は言うまでもない。

 ジェネシスの元となった兵器は、地球と火星双方の人類の未来のためにも確実に破壊せねばならなかった。

 

 『アーガマのハイパービーム砲の調整は万全ですね?』

 『出港前に念入りに。現在も艦に追加した人員がジンクス共々見ています。』

 『後の懸念はザフトに早期発見と迎撃を受ける可能性ですが…。』

 『そこはなんとも。まぁあの艦はザフト採用艦より優速です。万が一があっても逃げ切れるとは思いますが。』

 

 アーガマは、元は火星連邦直下の技術開発局が設計した大型艦だ。

 艦隊旗艦となるべく400m級の大容量の大型艦として開発されていたのだが、ジェネシスの情報をキャッチした火星連邦上層部(ヒマリ含む)から注文が入り、その設計を一部変更して特務艦として竣工する事となった。

 因みに艦名は艦の形状を見たヒマリからの名付けであるが、実際の形状はネェル・アーガマのそれに近い。

 火星連邦製艦艇に共通のブロック構造を採用しており、各ブロックごとに分離・結合が簡単に行える上、緊急時にはダメコンとして切り離す事も可能となっている。

 特徴的な構造として設計段階からMS運用能力を重視しており、前方カタパルトを上方に3基、下方に2基、後方に着艦用デッキを1基装備して柔軟な運用を可能としている。

 大型艦らしくMS搭載数も15機、分解したパーツも含めれば20機ものMSを搭載可能となっており、予定ではアマクサ×5、ジンクス×4(内予備が1機)、バタラ×5、長距離偵察仕様バタラ×1となっている。

 武装は連装大型レールカノン×6、12連装VLS×2、単装レールカノン×6、対空機銃×18、そして特殊任務用のハイパービーム砲×1である。

 対PD装備として本来予定されていたビーム兵器主体ではないものの、それでもローラシア級に比して倍近い火力を叩き出す事が可能となっている。

 また、本艦の最大の目玉であるハイパービーム砲は要はハイパーメガ粒子砲であり、通常は装甲内に格納しているが、使用時には装甲を展開し、事故が起きた際に問題の少ない位置までせり出してから使用する。

 宇宙要塞やコロニーサイズの物体、或いは密集した敵艦隊の撃破を目的とした特殊任務用装備である。

 その威力たるやコロニーを一撃で完全に崩壊させる程であり、発射には内蔵の大型核融合炉5基の内2基を全力運転した上で数分のチャージの必要がある。

 また、火星連邦製らしく推進系は通常の推進剤式と艦載用ヴォワチュールリュミエールの二系統であり、それらを独自に、或いは併用して使用する事で大型艦としては高い機動性を発揮できる。

 なお、本家の様な地上での航行能力は「まだ」持っていない。

 このアーガマに加えて、量産型のサラミス級巡洋艦×4とマゼラン級戦艦×2、コロンブス級輸送艦×2、コロンブス改級MS母艦ビーハイヴ×1にそれぞれ後部に長距離用移動用ユニット(通常推進とヴォワチュールリュミエールの二系統で構成)を追加した状態が先行艦隊の内訳となる。

 数こそ少ないが、それでも人員までしっかり厳選した精鋭揃いの特務艦隊だ。

 

 『それとダミーバルーンも何時でも使用可能です。』

 『光学観測に熱量分布に電磁波への欺瞞も実用範囲内。これで何時でも艦隊の数と分布を偽装できます。』

 

 Q、長距離通信や索敵の精度が大きく下がるガンダム世界で、コロニーレーザー等の戦略兵器を回避するにはどうすれば良いのか?

 A、ダミー作って部隊分けて一撃で壊滅しないようにする。

 

 『予定航路はプラント本国行き。各要塞行き。月面行きに分けます。本国行きは要塞の移動で阻まれるでしょうが、圧力を掛け、的を分散する事は出来ます。』

 『同様の対策は地球連合側にも通達していますので、彼らも可能な限り準備しているでしょう。』

 

 逆シャアでネオジオン軍がやった様に各艦艇のダミーバルーンを展開し、メビウスや航宙機に牽引させる。

 囮に食い付けば良し、食い付かずとも相手側の思考リソースを削る事は出来る。

 比較的ローリスクでハイリターンが見込める策だった。

 

 『まぁ連中が真っ先に食い付くのはどう考えてもコロニー質量弾でしょうが。』

 『分かりやすく脅威ですからな。』

 

 火星から地球圏に行くまでコロニー質量弾を引き連れた外征艦隊はずっと加速し続ける訳ではない。

 亜光速領域まで加速したらそのまま慣性航行、つまり等速で移動し続け、折を見て減速、艦隊を分けてプラント攻略へ地球連合と連携して動き出すのだが……艦隊だけならまだしも、コロニーはとても目立つ。

 そして、先に攻略予定のボアズ要塞にそれをぶつけたのなら、プラントは残ったヤキン・ドゥーエ要塞を守るために真っ先にジェネシスをコロニー質量弾に放つだろう。

 何せ放置したらそのままヤキンにぶつけられるし、プラントの近場まで来てしまったらお互いの質量から来る引力で衝突する危険性もある。

 プラントとしては何が何でも破壊する必要性があった。

 対して、地球連合としては多少プラントが減った所で気にしない事を事前に確認している。

 勿論減らし過ぎたり全部壊したりは戦後復興に役立たせるためにNGだが。

 

 『また、もしも破壊に失敗した時に備えて、コロニーの配置は可能な限り地球と火星を挟んだ反対側になるように移動させております。』

 『連中ではこちらまで来れないでしょうが、ジェネシスだけは届く可能性がありますからな。』

 『後はMSの核融合炉を用いた内部での自爆位しか策はありませんが…これは最終手段でしょうな。』

 『連合のアークエンジェル級三隻のローエングリン、そしてアーガマのハイパービーム砲の一点への斉射なら、予想されるジェネシスの防御を貫いて破壊可能です。』

 『よろしい。現時点で出来る準備は全て終えている、と判断します。』

 『後は結果を待つだけ、ですか。』

 

 火星連邦は、出来る限りの手段を講じた。

 賽は振られ、後は結果を見るしかない。

 

 

 ……………

 

 

 一方、同じ頃の地球にて

 

 『まさかジェネシスが二つあるとは…!』

 『だが、試作型なのだろう?想定される出力も下がるのではないか?』

 『自壊も厭わぬ一発限りなら…という事も有り得る。警戒はすべきだ。』

 『そんな余力があるか!今でさえ我々ですらキツいのだぞ!』

 

 彼らロゴスは頭を抱えていた。

 ここに来て試作型のジェネシスαの存在が火星のミョウジョウ博士より齎され、その対処に頭を抱えていたのだ。

 

 『下手にそちらに戦力を送って、我々がジェネシスに気付いていると悟られるのが一番困る。』

 『初手で地球に撃ち込まれたらそれこそ終わりだ。』

 『火星連邦からの提言でダミーバルーンを大量生産し、艦隊の装備として配布しているが、それとて絶対ではないからな。』

 『あくまで被害軽減のためのものだからな。こればかりは運次第だ。』

 

 頭を抱える老人方。

 要塞攻略のための艦隊の準備と促成栽培の兵士達の訓練で、地球連合軍の人的リソースはカツカツだった。

 勿論生産力もフル稼働がずっと続いており、マスドライバーも事が終われば本格的に整備しないとダメなレベルで酷使が続いている。

 

 『それでは皆さん、火星連邦からの提案に乗るという事でよろしいですか?』

 

 悩む面々に、ムルタが確認する。

 彼としてはプラント攻略戦と戦後の事も考えて事前に火星側の軍備を見ておきたかったのだが、タイミングがボアズ戦の直後、ヤキンドゥーエ攻略開始前にジェネシスα破壊を実行し、そのタイミングで主力艦隊も到着するとなると少々厳しいものがある。

 

 『こちらから彼らに観戦武官を送る事は可能かね?』

 『可能でしょうが、それはあくまで後続の主力艦隊だけだと思いますよ?ジェネシスαに行く先行艦隊は時間的に間に合わないかと。』

 『それで構わん。連絡役がおらんと、もしもの時に支障を来たす可能性がある。』

 『向こうも全権大使を連れてくるそうじゃないか。こちらも外交官を派遣すべきだろう。』

 

 こうして、火星連邦側に地球連合を構成する三国家からそれぞれの観戦武官と外交官が連絡役として送られる事となり、火星側の全権大使らと艦隊総司令らと会談する事となる。

 

 『して、対要塞戦での火力はどうすべきか…。』

 『火星連邦のコロニー質量弾なら可能と聞きますが、それだけでは心配ですからな。』

 『アークエンジェル級の陽電子砲の一斉射ならば理論上はある程度岩盤を貫通するとの事ですが…。』

 『それで足りますかな?奴らならばアルテミスの傘の様な事をしてくるやもしれませんぞ。』

 

 現状、宇宙要塞を攻略する事はかなり厳しい。

 実際に新星攻略戦においてもMA部隊や艦艇の消耗こそすれど、結局当時のザフトは要塞に布陣する東アジア連合を撃破する事は出来なかった。

 大戦初期のMSの優位性を持っておいた状態で、この結果は大きい。

 そして今や新星もといボアズは無数のザフト軍が展開しているのだ。

 攻略難易度たるや、凄まじいものとなるだろう。

 艦艇を並べて砲撃しようにも、相手がそれを素直に見過ごす訳もない。

 破壊できぬとなれば、取り付いて内部に制圧用の歩兵部隊を送らねばならないのだが…そもそもそこまで行くのも厳しい。

 核ミサイルを使え?

 核融合炉はあっても核分裂弾頭の既存核ミサイルはNJで使えないし、政治的に出来れば使いたくない。

 しかも融合炉をミサイルに搭載するのは火星連邦との契約で禁止されているのだ。

 

 『連合軍参謀本部でも頭を抱えているそうですな。』

 『ふむ…所で訊きたいのですが、今アルテミス要塞はどうなっておりますかな?』

 

 そこでふと、ジブリールが何事か思いついたのか質問してきた。

 

 『それならば今も航路上の安全地帯として半ば放置されておる筈ですが…?』

 『よろしい。ではアルテミスをボアズにぶつけましょう。』

 『『『『『『はぁ!?』』』』』』

 

 そこでまさかのジブリールから妙案が出て来た。

 

 『いや、いやそれは…いけるか?』

 『火星連邦が態々旧型のコロニーをぶつけるのだし、行けるのではないか…?』

 『行けずともアルテミスの傘で盾になりつつ、前線基地となるならば十分ではないか?』

 『………ちょっと、真面目に検討させましょう。ユーラシアの総司令部に連絡を。』

 

 こうして、思わぬ所から飛び出た妙案により、要塞攻略作戦は進む事となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (思わぬ功績を上げてみせましたし、ジブリール氏の排除は止めておきますか。)

 (この若造、まだ使えるな。ユニウスやブルーコスモス関連の責任を取らせるのは止めておくべきか。)

 (取り敢えず様子見すべきか。ここでこの案を出したのは大きいしな。)

 

 そして思わぬ所で首の皮一枚繋がるジブリールであった。

 




〇サラミス級巡洋艦
 ブロック構造を用いた火星連邦の数的主力艦。
 外観や武装配置その他は名前通りだが、ビーム砲ではなくレールカノンが主砲。
 MS運用能力は3機のみと少ないが、元々MS運用を想定された設計ではない+無理して加えるよりも艦艇としての完成度を優先させた結果。
 破壊されたブロックをパージしてのダメコンも可能。
 かなりの部分が自動化されており、ダメコン等も内部のオートマタが自動で行う。

〇マゼラン級戦艦
 ブロック構造を用いた火星連邦の主力戦艦であり、高い情報処理能力と収容人数から艦隊旗艦としても運用される。
 外観や武装配置その他は名前通りだが、ビーム砲ではなくレールカノンが主砲。
 MS運用能力は防衛用の6機のみ。
 ダメコンはサラミス級と同様。

〇コロンブス級輸送艦
 ブロック構造を用いた火星連邦の輸送艦であり、民間用も多数建造されている。
 単純な構造かつ安価で輸送能力も高く、ミョウジョウ・インダストリーで製造された艦も多数あり、地球圏でも販売されている。

〇コロンブス改級MS母艦ビーハイヴ
 コロンブス級を上下に連結してMS母艦としての設備を内蔵し、迎撃用の武装を多数装備した艦。
 単純な構造かつ比較的安価でMS運用能力も高いため、大規模艦隊では同級が必ず配置されている。

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