超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話 作:VISP
C.E.71年7月後半 プラントにて
プラントは月方面に展開している部隊の報告から地球連合の大規模攻勢の始まりをキャッチした。
同時に、一部の艦隊が先行してプラントとは別方向、「傘のアルテミス」ことユーラシア連邦のアルテミス要塞を目指して移動している事も把握していた。
「敵艦隊の過半はボアズ方向へと移動しています。」
「月方面の部隊は既に撤退に成功、本国へと戻って補給と整備を行っています。ヤキンドゥーエ要塞での迎撃戦には間に合うかと。」
ザフト参謀本部は具体的な時間は兎も角、そう間を置かずボアズが陥落すると判断していた。
そのため、念のために準備はするが特に増援を送る事はせず、ザラ議長の指示もあってヤキンドゥーエ要塞の防衛強化に専念する事となった。
これは要塞を用いた防衛戦なら兎も角、増援の形で真っ向から戦うにはこちらの数と新兵らの練度に不安があったためだ。
正直、間に合わせの学徒兵や陸上・水中専用MSの再利用品を使用するには安全地帯である要塞との連携が不可欠だ。
練度、何より士気の点からもプラント本国を背後に置いた状況でしか、彼らは使い物にならない。
しかし、ボアズは後からプラントが確保した事もあって、再利用品の運用に当たって必要な予備パーツや設備が無かったのだ。
無論、ボアズ守備隊は練度も装備も充足した優良部隊が多く存在し、ジンⅡやシグーⅡ、ゲイツの正式量産仕様の配備も完了している。
要塞からの各種支援もあれば、相応に持ち堪える事が出来る。
過去の戦訓からすればそう言えるのだが…それでも参謀本部は敗北を確信していた。
「あちらにはミョウジョウ博士がいる。どんな奇想天外な手を打ってきてもおかしくはない。」
ナチュラルでありながら、コーディネーターを鼻で嗤う程の世紀の大天才が、敵側にいる。
その事実が彼らに相手がナチュラルだからと侮る事のない、冷静な判断力を与えていた。
もっとも、現場の学徒兵共は先日のミョウジョウフーズ所有の食料生産コロニー占領を「あのムカつくババアに一泡吹かせてやったぜ!」等と言っているのだから、教育と経験を積んだ大人達は頭を抱えていたが。
「ボアズ守備隊には時間を稼いでもらい、ある程度押し返す事が出来れば増援を送る事とする。」
「分かった。陥落が確実となった時はすぐに撤退するよう打診する。」
「あぁ。長距離偵察機は出すとしても、相手の情報は多ければ多い程良い。」
こうして、ボアズ守備隊は捨て石となる事が確定した。
ここにC.E.世界初となる「宇宙要塞VS宇宙要塞」というマジキチカーニバルが開催される事となる。
…………
C.E.71年8月初頭 ボアズ宇宙要塞にて
『嘘だろ…ナチュラルの連中、アルテミスを持ってきたのかよ!?』
ボアズ守備隊の内心は、この一言に尽きた。
何せボアズから光学観測できる程度の位置にアルテミスがやってきたのだから。
宇宙要塞アルテミス、その名はザフトからは大戦初期を除けば忘れられていた。
何せプラントからは月と地球とは別方向、L3という地球圏では辺境に位置するラグランジュポイントにあったため、殆ど捨て置かれていたのだ。
加えて全方位光波防御帯による鉄壁の守り、通称「アルテミスの傘」によりレーザーも実体弾も通じないという現代でも突破は極めて困難なリフレクターを発生させる事が出来る。
展開中は自分も攻撃できないが、正しく鉄壁の守りと戦略的に全く重要ではないとして捨て置かれていた。
しかし、地球連合は火星連邦との協力を得るために核弾頭等の戦略兵器無しに戦う必要があるため、対要塞戦を如何にして勝利するかが大きな課題となっていた。
地上の要塞なら迂回なりが出来るのだが、宇宙ではそうもいかない。
加えて、攻守三倍の法則に従うと幾ら地球連合でもそれに足る物量を用意・維持するとなると、とてもではないがジェネシス完成に間に合わない。
地球連合上層部が頭を抱える中、とある人物のアイディアにより、この作戦は無数の試算の上でGoサインが出た。
そして今、ザフト側は宇宙要塞の利点を殆ど潰され、圧倒的物量と縮まった質の差により、地球連合軍に圧倒される事となった。
何せボアズとアルテミスでは、要塞としての性能は然程ではないが「アルテミスの傘」の有無という絶対的な差があった。
それこそジンとバタラ程度には差があった。
アルテミス側は要塞砲の運用に当たり、「光波防御帯の一部をランダムで解除&そのエリアの砲台で攻撃→防御帯を再展開」というクソみたいなマンチムーブを徹底したのだ。
これには幾らザフト側の艦艇やボアズ要塞が十分な火力を持っていようとも、それを発揮する事は難しい。
MS部隊同士の戦闘にしても、徹底して連携して数の利を押し付けてくる連邦側に、スタンドプレーばかりが益々磨きのかかった学徒兵が増えたザフト側では余りに相性が悪かった。
『意外と粘るな。プラントの連中、自分達が捨て駒だと分かっていないのか?』
『こちらへの情報収集のためではないでしょうか?本命はヤキンドゥーエかと。』
『…まぁ良い。アークエンジェル級3隻に通達。陽電子砲の一斉射の用意を。』
『よろしいのですか?』
『情報収集と言っても、特攻を悟られないのならアークエンジェル級の情報くらいくれてやる。』
あんな要塞を持ってきておいて、まさか使い捨てにはしないだろう。
そんな普通の思考回路の裏をかく形で、艦隊司令はアルテミス特攻という大きな手札を温存する事にしたのだ。
結果、「やっぱ要塞強いし、使い捨てしたくねぇな…」と思ってたユーラシア連邦関係者は安堵した。
『では、予定したポイントへの砲撃を行う。』
『了解しました。』
予定したポイントとは、東アジアから齎された「ボアズの脆弱なポイント」の事だ。
要塞の構造上、艦艇の出入りする港湾部や艦載機の出撃するカタパルトに着陸用デッキ、また物資搬入口等の開口部が存在し、必然的に補強された岩塊の部分よりも構造的に脆弱な弱点となる。
それは通常においては偽装され、見つけにくくなっているものだが、元々ボアズは東アジア連合所有だったのだ。
年単位で時間経過しているなら兎も角、戦時下となれば武装の追加や内装の変化はあれどもそう大幅な改修は行えない事から、この情報は大きな意味があった。
東アジアからすれば今回の戦争では今一つ活躍の場が少ないため、こうした事で一つでも多く功績を稼いでおきたい事もあり、既に奪取された宇宙要塞の情報程度ならばと快く公開してくれたという事情がある。
なお、支払いが国債ばかりで某企業群にじっと冷たい視線を向けられている事に耐えられなくなった訳ではない()。
何れちゃんと払うつもりだが、それはそれとして今は物入りなので国債で支払っているだけなのだ()。
大西洋連邦もユーラシア連邦も程度は違えど似た様なものなのに、東アジアだけこの対応は違うんじゃないですかミョウジョウグループ=サン!(A.日頃の行い)
『アークエンジェル級各艦はこれより対要塞砲撃に移る。各艦はそれぞれ指定された座標へと特装砲による砲撃を行う。射撃タイミングは一番艦へ合わせ。』
アークエンジェル級1番艦アークエンジェル。
同級2番艦ドミニオン。
同級3番艦パワー。
白と赤、黒と赤、灰色と赤を基調としたアークエンジェル級強襲機動特装艦は、ザフトより「足つき」と呼ばれるその特徴的な構造の左右の先端に陽電子破城砲「ローエングリン」が搭載されている。
これは反物質である陽電子を粒子ビームの中に収束させた後、電磁投射させる事で対象を破壊する兵器だ。
反物質は物質と触れる事で対消滅を引き起こし、γ線(光)に転化される。
この際に放射線が環境を汚染する恐れがあり(大気も物質なので反物質と対消滅する)、更に電子を失った大気は活性が高まって周囲の物質と反応し易くなり毒性が高く成る為に地上での使用には制約があった。
後に環境汚染の少ない新型へと換装される事となるのだが…ここは宇宙である。
そんなもん気にせず好きなだけヒャッハー!できる環境だった。
環境保護団体()ブルーコスモスもニッコリ笑顔で汚物の消毒のために喜んで使用許可を出してくれた。
『1番砲、2番砲、展開完了。』
『指定座標への照準良し。射線軸上の友軍の退避確認。』
『陽電子形成良好。エネルギー充填率、40…60…80…100%に到達。』
『ローエングリン、撃てぇい!』
放たれた6条の閃光は見事ボアズへと着弾、標的となった港湾部やカタパルト、搬入口を貫き、内部へとその火力を十二分に解き放った。
結果、ボアズ要塞は合計6か所を中心に各所へと膨大な熱と光が叩き込まれ、内部のあらゆるものを焼き尽くし、数十秒後には他の開口部から盛大に火を吹く事となった。
これにより、ボアズ要塞及び守備隊は継戦能力を喪失、総司令部も蒸発した事から指揮系統を失った残存部隊は統制を失って各個撃破、或いは本国かヤキンドゥーエ方面へと逃走する事となった。
…………
ボアズ要塞が火を吹く直前、火星連邦先行艦隊もまた目的地へと到着していた。
一見すると全く戦略的価値のない宙域だが、そこにあるものの戦略的意味を知る者ならばそうは言えない。
レーザー発振ステーション ジェネシスα
完成形のジェネシスが超巨大な戦略級γ線レーザー砲台なのに対し、こちらは元々の外宇宙探索船用のレーザー加速装置としての機能に重点が置かれている。
とは言え、加速予定なのは隕石であり、目的地は地球なのだが。
超高速にまで加速した隕石による地球への直接攻撃という壮大なプランなのだが、問題があった。
威力は十分なのだが、命中精度が低かったのだ。
これでは不十分として試験中に判明した純粋なレーザー砲台としての機能を強化する方向に切り替え、後に本命のジェネシスが開発(勝手に魔改造だが)される事となった。
勿論、存在するだけで自国の安全保障を揺るがす戦略兵器の存在を地球連合も火星連邦も、何より火星の天才が許さない。
そんな国防上当たり前の事すら思いつかないのだから、やはりプラント評議会は国政の素人でしかないのだろう。
確かに迫害され、生存圏を獲得するためには致し方ない側面もあった。
だが、それで被害を受けた側、その可能性が高い側にとっては、そんな言い訳はどうでもよい。
因果応報、善因善果、悪因悪果。
MSという最大にして唯一の強みを失ったプラントは自らがした行いの報いを受ける事となる。ならねばならない。
『先行した偵察機より、目標の詳細な位置座標を受信しました。何時でも行けます。』
『よし、これより作戦行動を開始。MS部隊は出撃用意。ハイパービーム砲発射後、残敵を掃討せよ。』
プラント、そして地球連合にあるように、当然ながら火星連邦にもミラージュコロイドステルス技術は存在する。
それこそ原作において無法の限りを尽くしたソレは今現在国際法で規制もされていない。
何れは規制対象となるだろうが、少なくとも今次大戦中には有り得ない。
『艦隊各位、ステルス解除!これより敵戦略兵器破壊作戦を開始する!』
『MS部隊は全機出撃!電子戦機は後退し、MD部隊の指揮に当たれ!』
『艦を慣性航行へ移行。ジェネレーターは全てハイパービーム砲のチャージへ回せ。』
『ハイパービーム砲、砲身展開開始。チャージ完了まで後60秒。』
『友軍艦隊が砲撃開始。敵艦隊に命中弾複数確認。』
『ハイパービーム砲、発射準備完了。』
『射撃予定地点到着と同時に発射だ。友軍に射線軸上からの退避を再度通達せよ。』
『予定地点到達まで後40秒…30…20…10…』
『発射ぁ!!』
薄紅色の極太の閃光が宇宙を奔る。
それは見事に目標へ、宇宙への冒険から地球の破滅へと変わってしまったモノへと突き刺さる。
多数の大型核融合炉により展開されたPDによる実弾・ビーム問わぬ圧倒的防御力は、一瞬でその守りを貫徹する程の大出力ビームの一撃により破られた。
圧倒的な熱量により装甲は一瞬で蒸発、より脆弱な内部構造は吹き荒れる熱量により融解・蒸発・破断を繰り返し、やがてその破壊が全体へと伝わった時、限界を迎えた。
プラントの隠し玉の一つであった戦略兵器ジェネシスαは、その役目を果たす前にデブリへと変貌した。
『ビーム砲の命中及び目標の破壊を確認!』
『よし、各部隊は残敵の掃討に当たれ!アレのデータが他に渡れば後の世の禍根になるぞ!』
エース率いる一線級の部隊とは言え、奇襲からの防衛目標の破壊を達成されれば、その動きは必然的に鈍る。
ゲイツやジンⅡ、シグーⅡから成るザフト特殊防衛部隊に対し、機を逃すなと火星連邦軍から選抜された特務MS大隊が殺到する。
『な、なんだコイツラ!?』
『考えるな!今は生き残る事に専念しろ!』
これが同数の連合軍MS部隊ならば、殆どの場合は返り討ちにできるだけの実力が彼らにはあった。
しかし、今ここにいたのは火星連邦の特務MS大隊だった。
輸出用のデチューンしたものではない本物のバタラを始め、新型であるアマクサ、そして最新鋭機である3機のジンクスを含む増強大隊なのだ。
火星連邦軍内部でMS部隊は3機+オペレーターで一個小隊、その三倍で中隊、更に三倍で大隊となる。
アーガマで15機、サラミス2隻で6機、マゼラン2隻で12機、そしてビーハイヴによって30機近いMSを搭載・運用できる。
これだけで合計63機、パーツにばらした機体を含めれば大凡2個増強大隊と言った所か。
艦隊直掩機を除く40機近いMS部隊、パイロット達も実戦経験こそ無い者が殆どだが、それでも腕利きばかりが揃えられた状況となれば、如何にザフト特殊防衛部隊のパイロット達が優秀と言えどもどうにもならない。
混乱と数、機体性能の差によって早々に趨勢は決してしまった。
『ま、待て!降伏する!これ以上は止めてくれ!』
間もなく全滅という所で、敵指揮官機からの通信が入った。
『どうしますか?』
『…条約に則り、貴官を捕虜とする。即時武装解除が見られぬ場合は偽装と看做し撃墜するが、如何に?』
『降伏する。今から機体を降りる。』
その通信に対し、小隊長機であるバタラが破損した指揮官用ゲイツへと返答し、コクピットハッチが開かれ、パイロットがその身を宙に投げ出した。
『確認した。貴官が指揮官でよろしいか?』
『あぁ、私はアッシュ・グレイ。ここの防衛部隊の隊長だ。』
『では貴官からも周辺のザフト軍へ降伏勧告をしてほしい。捕虜への待遇は条約通りにすると約束する。』
この後、生存したザフト兵らはアッシュ隊長からの降伏勧告に対し素直に投降、ジェネシスα周辺での戦闘は終了した。
幸いにも過激なコーディネーター至上主義者は戦闘開始早々に突出して撃墜されたため、偽装降伏する様な者達は出て来なかった。
数の利でMS部隊が拘束され、早々に母艦を落とされた事も大きかった。
たとえこの場から逃げ出しても、MSだけでは余程の運が無ければこの辺鄙な宙域からプラントやヤキンドゥーエには辿り着けない。
確実に助かるには長距離航海可能な艦艇類を利用するしかないのだが、既に撃沈されている。
となれば、彼らが生き残るにはこうして降伏し、火星連邦側の艦に乗るしかなかったのだ。
こうして損耗率6割を超えて壊滅状態のザフト特殊防衛部隊は降伏、火星連邦の重要任務の一つが終わりを告げたのだった。
〇アッシュ・グレイ
本来ならばFAITH並に優秀だが「合法的に殺戮を遂行することが出来る」理由だけで軍に所属している殺人快楽主義者で、ザフト軍所属のパイロットの中でも屈指の危険人物……になる筈がその人格となった原因の事件が消えたために大きく異なる。
少年時代に出会った同じ難病を患う少女が某博士の開発した治療方法によって二人共々完治し、その時の出会いが切っ掛けで結婚、子供にも恵まれたために大分常識的で穏やかな性格となった。
そのため、特徴的な刺青や髪型はしておらず、極めて常識的で普通な風貌となっている。
コーディ至上主義等は一切持っておらず、純粋な優秀さから特務防衛部隊の隊長を務める事となった…のだが、スタンドプレーに走るプライドばかり高い部下達に頭を悩ませ続けていた。
〇長距離偵察用バタラ
頭部が索敵能力が強化された前後に長いタイプ(ほぼ原作エレバド)に、両肩のシールドがレドームに交換、左腕にカメラガン、右手に携行式のレーザー通信用レーザーライフルを装備したバタラの長距離偵察仕様。
基本的な構造はバタラのままだが、バックパックの瓢箪型のプロペラントタンクが2個に増加し、航続距離が延びている。
高い索敵・電子戦能力を持ち、ブリッツに比肩するミラージュコロイドステルスを搭載しているため、この機体を発見する事は困難を極める。
反面、偵察や電子戦時において邪魔になるとしてPDを含む通常の武装は一切搭載されていない。
長い航続距離とステルスを活かした偵察を主目的とするが、高い電子戦能力及び情報処理能力を活かしてMDの指揮官機として活躍する事も可能となっている。
反面、直接的な戦闘能力は低いため、専ら「艦隊の目」として運用される場合が多い。