超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話   作:VISP

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火星編 第17話 決戦前夜 後書き追加

 C.E.71年8月初頭 プラントにて

 

 現在、ザフト参謀本部ではボアズ戦の分析が行われていた。

 僅か半日程度で陥落してしまったボアズだが、生存者はそれなり以上の数がおり、長距離偵察用複座型ジン等に情報収集をさせていた事からも情報自体は問題なく集まった。

 その結果に、黒服や白服、赤服のザフト隊員達は頭を抱えていた。

 

 「バリア積んだ要塞とか無理ゲー。」

 「要塞使った防衛戦の強みを無理矢理ぶっ壊すとか逆に頭良いな?」

 「砲撃時のみバリア解除して終わったら即座に張るとか止めてくれよ…。」

 

 それはもう頭を抱える事しか出来なかった。

 何せ彼らにとって、宇宙要塞アルテミスは厄介でこそあれ、その位置的に戦略的価値はとても低かった。

 そのため全周囲光波防御帯の研究も余り進んでおらず、より利便性の高いPDも入手できた事から対処手段も少なかった。

 

 「一応、対ビームコーティング済みの実体兵器ならギリギリ…?」

 「で、それで要塞落とせるの?」

 「無理に決まってんだろ。」

 

 再び頭を抱えた。

 少なくとも、彼らの手持ちの札でアルテミスをどうにかできるものは無かった。

 

 「…再突入コンテナに対ビームコーティングを施して突破、内部のMS3機をバリア内部に送り込むのは?」

 「ゲイツ3機じゃ死にに行くようなもんだぞソレ。」

 「今ある試作機の内から選んでも、どうしようも無いぞ。」

 

 一応、ゲイツ先行試作型の様な高性能機はあるっちゃあるが、それだけだ。

 エースの乗る少数の高性能機を送り込んだ所で、要塞を陥落させる事は出来ない。

 況してやこの世界のMSは原作のそれよりも遥かに頑丈かつ数も多い。

 例えスーパーコーディネーターの駆るフリーダムがいようとも、PDを持つMSが多数存在するこの世界ではその殲滅力はどうしても限定的なものとなってしまう。

 

 「…MSの核融合炉を臨界状態で暴走させればどうだ?」

 「いい加減にしろよお前。」

 「やるにしても要塞内部の構造上脆弱な箇所複数で一斉に起爆しなけりゃ無理だ。その内部構造のデータなんか俺達は持っていない。」

 「おい!?」

 「何より、間違いなく特攻になる。だから無理だ。」

 

 きっぱりと、一人の赤服が言い切った。

 数少ない同胞の命を最優先とするプラントにとって、それは敗北宣言に近しかった。

 

 「議長だって馬鹿じゃない。決戦を前にしてプラン位あるだろう。」

 「あるかもしれんが、それは議長とその派閥の専任事項だろ。オレ達が考える事じゃない。」

 「くそ、火星連邦の参戦が無かったら…。」

 「言うな言うな。どうせ遅かれ早かれだ。」

 「…仕方ないから降伏に関する説明書でも配っとくか。」

 

 こうして参謀本部が一周回って現場指揮官達に密かに旅のしおりならぬ「降伏のしおり」を配り始める中、パトリックとその側近達もまた最終決戦に向けて頭を悩ませていた。

 

 「つまり、ジェネシスなら十分に対応可能なのだな?」

 「はい。あの光波防御帯は確かに厄介ですが、現状のジェネシスなら出力40%で貫通、撃破可能です。しかし、予定よりも完成を急いだため、超長距離の攻撃にはどうしても調整に時間がかかります。」

 「ふむ…後の問題は次弾までの時間か。」

 「構造上、照準用ミラーブロックは使い捨てで使用後は交換が必要です。そして、次弾発射には交換や本体の冷却とエネルギー充填含めて3時間は必要です。」

 「発射前のチェックを一部省略した場合はどうなる?」

 「移動だけでもあのサイズですから…どうしても1時間は必要になります。それに精度や出力の低下は免れないかと。最悪は自壊の可能性もあります。」

 「ぬぅ…妨害なく確実に撃てるのは第一射のみと考えるべきか。」

 

 便利な道具があっても、使い所を間違えてしまえば意味はない。

 況してや原作よりも完成度が低く、戦況が不利な状況では猶更に。

 現状、通常戦力での主導権は悔しいが地球連合・火星連邦側にあった。

 更に地球連合のアルテミス、火星連邦が運んできたコロニーという二つの移動拠点により、実質ヤキンドゥーエ要塞の利点を潰されているに等しい。

 ジェネシスならば十分撃破可能なのだが、一射で片方しか片付けられないと、残りの片方に引き続き苦戦を強いられる羽目になる。

 被害を減らすには、如何にして相手の要塞を効率よく破壊するか、それに尽きた。

 

 「更に相手の新型戦艦の陽電子砲まであるのか…。」

 「こればかりは通常戦闘で撃破するのが一番効率的かと…。」

 

 そこまでやった所で、アークエンジェル級3隻をどうにかしないと初弾発射以降は逆撃を受けてジェネシスが破壊される可能性が高かった。

 何せ収集したデータからもやたらと火力・防御・対空性能と高レベルで纏まっており、搭載MSも純連合産MSの重装備仕様(アサルトシュラウドのこと)が大量と来た。

 こちらのエース部隊をぶつければ落とせそうだが、それをすると他の戦線が数の差で食い破られかねない。

 

 「本国防衛部隊をこれ以上削減は出来ん。かと言ってエース部隊を突撃させるのも難しいか。」

 「各戦域の防衛を担当する部隊ですからね。ジェネシスによる戦略的勝利は出来ても、こちらの被害も尋常ではないでしょう。」

 

 優先すべきはプラント存続であり今次大戦の勝利、個人としては言うまでも無くナチュラル絶滅だが、このままではどちらも出来ずに敗北し、コーディネーターの未来は閉ざされる。

 

 「…仕方あるまい。エース部隊には火消し役を任せる。彼らには各エリアを飛び回ってもらう。敵新型艦が出て来た時は最優先で撃墜するよう命じろ。」

 「了解しました。」

 

 こうして、プラント側も何とか迎え撃つ準備を整えたのだった。

 

 

 ……………

 

 

 火星連邦産の全てのMSの操縦系統には、学習型オートマトンによる手厚い補助が付いている。

 これは人型兵器と言う従来には無い独特な構造の機械を自在に操るには従来のレバーやボタンだけでは余りに足りない事から、事前に多数のモーションデータや環境毎の設定等を登録し、適宜選択して使用する事で動作の簡略化・高速化を実現している。

 他にも新兵向けの簡易アシスト機能もあり、何と動作の音声入力も可能となっていたり、パイロットスーツの健康管理システムを応用して脳波を測定し、直接思考を操作に反映する事も研究されている。

 こうした機能だけなら一応連合産MSのナチュラル用OSで十分なのだが、学習型と付いているようにこのオートマトンはパイロットの操縦データが貯蓄されればされる程、その癖や傾向を学習して動作に反映・効率化していく。

 例えば、パイロットが咄嗟の接近に気付けず攻撃を受けそうになった場合、過去の操縦データから最も成功率の高い対処法をオートマトンが自動で行ってくれたりする。

 この自動機動は特に機動射撃戦において強く、所謂「アムロの回避・射撃データをトレースするジム」みたいな挙動を行う。

 また、このパイロットの操縦データを入力すれば、別の機体であっても問題なく操縦可能になるため、機種転換の大幅な短縮を可能にしている(決して0ではない)。

 ある種の自律型補助AIがこのオートマトンの正体なのだ。

 そして、自動でMSを戦闘機動させられるのなら、ある兵器を実用化可能という事だ。

 

 このオートマトンはプログラムの書き換えだけで容易にMDへと変貌する。

 

 火星連邦がこの学習型オートマトンをブラックボックス化している最大の理由である。

 物理・電子問わず無理に開けようとすれば、その時点で自爆、或いは自壊して何も残さない念の入れようだ。

 これさえ積めればMSはどれも無人兵器と化し、人的資源を消費せずに戦力を揃える事が出来る。

 更に言えば学習型の名の通り、戦えば戦う程に有効な動作・戦術を学習して取り入れていく。

 それをSPC通信可能な、つまりほぼ太陽系全域に及ぶ通信網でほぼノータイムで同期してくるのだ。

 もしこれが前線に出回れば、それだけで勝利が確定しかねない。

 この戦略的価値から、その存在は完全に秘され、徹底した情報統制が行われている。

 現在は実戦テストのため電子戦能力に優れる長距離偵察用バタラによって指揮する一個小隊のみが運用されているが、何れは火星連邦全体で使用される事だろう。

 また、学習している操縦データは火星連邦が買い取っている地球連合・ザフト双方の操縦データも含まれており、毎日の様に大量に入手しては学習・効率化し、他のオートマトンへと同期している。

 何せ現在の戦況までに両陣営のみならず世界中で多数購入・生産された火星連邦の傑作MSである。

 その操縦データは膨大な量に登り、日夜製造メーカーと教導部隊によって解析され、実機開発や操縦訓練に反映されている。

 なお、輸出用バタラの学習型オートマトンは全てデータの送信のみ可能で、受信及び自動アップデート機能はオミットされているため、こうした事情が筒抜けになる事は無い。

 余談だが、現在最も重要視されて毎日大量に収集している操縦データは「機動射撃戦からの接近して近接戦闘でトドメ」となっている。

 今次大戦でMDが前線に大々的に配置される事は時間的にも無理だが、将来的には何れ火星連邦の敵を打ち砕く事になるだろう。

 

 

 ……………

 

 

 C.E.71年8月初頭 ボアズ跡地 

 

 地球連合艦隊に、遂に火星連邦主力艦隊が合流した。

 同時に、両艦隊首脳部および外交官らが曳航してきたコロニー内施設にて会談、外交官らは戦後に向けて話し合い、艦隊首脳部はヤキンドゥーエ及びジェネシス攻略作戦の細部を詰める事となった。

 とは言え、どちらも多くは領事館勤めの大使等が内容を詰めており、最終確認の赴きが強いのだが。

 

 「では、戦後はこのように。」

 「えぇ、お互いに良き戦後を迎えましょう。」

 

 そして半日後、地球連合と火星連邦は戦後について大凡の合意を得た頃、最も激戦となるであろうヤキンドゥーエ攻略作戦を前にして艦隊首脳部は最後の打ち合わせをしていた。

 

 「やはり第一射が問題か。」

 「はい。大凡の位置は特定できていますが、やはり確実に潰すには目標がステルスを解除しない事には難しいでしょう。」

 

 一応、火星連邦側には対ミラージュコロイドステルス技術はあるのだが、これはMDシステムと同様に最高機密に指定されており、仮想敵国である地球連合にその存在を教える事は出来ない。

 そのため、この合同作戦では別の手段でステルス状態のジェネシスを発見、破壊せねばならない。

 

 「未完成ですが、第一射は政治的理由からも撃たせる必要があります。予測ではこちらの曳航してきたコロニーを加速させて敵要塞へぶつけるコースを取れば、制御システムが要塞内にある関係上、撃たざるを得ないと見ています。」

 「うぅむ、何とか射線軸上の部隊の退避さえ間に合えば良いのだが…。」

 「ダミーバルーンを用いて艦隊規模を偽装し、敵の攻撃ポイントを誘導する事も考えていますが、この辺は運に近いのが何とも…。」

 

 もしザラ議長が予想以上のキチガイぶりを発揮して初手から地球を狙った場合、その時点で地球は滅亡する可能性がある。

 だが、その場合は現在宇宙で活動中の地球連合軍が完全にテロリストと言う名の死兵と化し、プラントを滅ぼす事だろう。

 条約も何も関係なくなったら、それこそ核融合炉臨界からの自爆すら平然と行う者も出る事が予想される。

 そうなると、地球圏は間違いなく滅ぶだろう。

 人の夢、人の望み、人の業の果てに終わるのだ。

 

 まぁ原作ザラパパも最初の一射は迫る連合艦隊中枢をぶち抜いたし、既に仕込みはしてあるのだが

 

 「ご安心を。もしもの際はこちらの内通者がザラ議長らを排除、可能ならば拘束する段取りとなっています。」

 「余りそういうものに頼りたくはないのだが…仕方ないな。」

 

 何故、第一射を許すのか。

 それは戦後社会の情勢が問題だった。

 この戦争の根底に関わるコーディネーターへの迫害。

 確かに一般市民として暮らし、戦争に参加していないコーディネーターは被害者と言える。

 しかし、彼らは証明してしまったのだ。

 たった5000万人しかいないプラントがその技術力を結集すれば人類を、地球を滅ぼせると。

 既に億単位の民間人の死亡者を出した国家がそんな力を持ったまま存在する事は絶対に認められないというのが地球連合と火星連邦の統一した見解だった。

 だが、それは所詮プラント理事国と火星連邦の意見でしかない。

 中立国を中心に、そんな過激な意見には賛同したくないという者は多い。

 

 ならば、そいつら全員に当事者となってもらえば良い。

 

 地球連合・火星連邦VSプラントではなく、地球人類VSプラントの構図へと書き換える。

 あのオーブの獅子ことウズミ・ナラ・アスハがそうだった様に、ジェネシスという戦略兵器の存在を以て、プラントを地球人類の敵へと仕立て上げるのだ。

 地球全体を滅ぼす兵器を開発し、実戦で使用する。

 後は勝った後にでも照準データが「次は地球を直接狙っていた」とでもでっち上げれば済む話だ。

 こうすればコーディネーターへの迫害意識は過去のそれを大きく更新する事となるだろう。

 それも全地球規模でだ。

 勿論オーブはそれでも中立として受け入れはするだろうが、市民感情を完全に操れる訳でもないし、全てのコーディネーターを受け入れられる訳もない。

 少なくとも地上に取り残されたザフト地上軍を受け入れる余地は無いだろう。

 然る後、居場所を失い、迫害に怯えるコーディネーターをプラントに送り出し、戦争で減った労働人口を補填する。

 その後はそれまで以上の監視を付け、ブルーコスモスが入らないようにしつつ、労働へ従事させる。

 これで大凡戦前の状態に戻す事が出来る。

 もしまかり間違って独立しようとするのなら、それこそ本格的な弾圧が「地球のため」という錦の旗の下で行われるだろう。

 一応火星連邦としてはプラント独立は「今次戦争の被害の賠償金全て+慰謝料を払い終えたら+それとは別に監視・防衛用駐留軍を置く」ならば有りだったが…今を以て経済的損失は計上不能であり、下手すると返済まで百年単位かかる見込みなのだ。

 そこまでいくとコーディネーターがほぼ絶滅する方が早そうなのであまり意味は無かったりする。

 これが地球連合・火星連邦双方の上層部が描いた戦後戦略となる。

 

 「これも政治か…。少しでも被害が減るように努力するしかないか。」

 「まぁやるべき事は大体終えたのです。後は我々と将兵が気張るしかないですな。」

 

 ボアズ陥落から三日後、遂に今次大戦最大の激戦と言われるヤキンドゥーエ攻防戦が開始される事となった。

 

 




MS総合性能比較表

・最低ランク
プロトジン、初期ザウート

・低ランク
初期ジン系、鹵獲ジン、グーン、ストライクダガー系、バクゥ系、ディン系、ザウート改、バタラ(輸出仕様)系

・中ランク
バタラ系、シグー系、ゾノ、ジンⅡ、デュエルダガー系

・高ランク
アマクサ、ゲイツ系、デュエル系

・最高ランク(GNドライヴ搭載機のみ)
ヴァラヌス、ジンクス系
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