超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話   作:VISP

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火星編 第18話 第二次ヤキンドゥーエ攻防戦開幕

 C.E.71年8月初頭 プラントにて

 

 「この世はクソですわ…。」

 

 死んだ目で元「プラントの歌姫」ことラクス・クラインはそう愚痴を零した。

 シーゲル派失脚後、娘のラクスもまた芸能人として表に出る事は無くなった。

 何せ下手に表に出したら、反ザラ派によって担ぎ出されて旗頭にされかねない。

 盟友すら排除したパトリックにとっては今更だが、それでも以前は息子の婚約者にとも思った少女を排除する選択肢は可能ならば取りたくなかった。 

 そのため、監視下にあるクライン邸で親子共々軟禁状態にあった。

 

 「ラクス、そう悲観するものじゃない。」

 「でもお父様、プラントはこのままでは戦前に逆戻り…いえ、もっと酷い事になるのでしょう?」

 「まぁ…な。」

 

 たった5000万人しかおらず、生殖率の低過ぎるプラントでは地球連合を敗北させる事は極めて難しい。

 早期講和だけが希望だったが、ユニウス7破壊とNJ投下による双方の大虐殺がそれを不可能とした。

 後は順当に滅ぼされるか、地球を道連れにするかの二択だった。

 

 「我々にはもう祈るしかない。出来る事は無いんだ。」

 「はい…。」

 

 原作よりも遥かに早く決裂してしまったパトリックとシーゲル。

 その結果、シーゲル側が何も準備できないタイミングでパトリックら過激派によって拘束、軟禁されてしまった。

 故にプラントの暴走を止められる者はいなかった……かに思えた。

 

 「シーゲル前議長、来客です。」

 「何…?」

 

 だが、売国奴は死滅していなかった!

 

 「こんな時に申し訳ありません、クライン前議長閣下。私はギルバート・デュランダル。アカデミー所属のしがない研究員です。」

 「あぁ、聞いているとも。元メンデル所属だったか。」

 

 珍しい経歴で本人も優秀、何より偏屈者が多いアカデミーの研究者らの纏め役として動いてくれている事からシーゲルもよく覚えていたのだ。

 

 「単刀直入に言いましょう。このままではプラントは滅ぼされます。」

 「だろうな。」

 

 二人は互いに確信していた。

 ナチュラル絶滅を目指すパトリックの指導ではプラントは滅ぶと。

 どの道衰退して滅ぶ事を受け入れてるシーゲルとそうなる事がよくよく分かってる研究者のギルバートにとって、それはもう当然の事実だった。

 

 「例え生き延びてもそれは戦前の態勢への回帰、いえ、もっと酷い事になるでしょう。」

 「率直に言いたまえ。私を担ぎ上げたいのだろう?」

 

 目の前の悪党に対し、敵国の民間人の大量殺戮を(結果的に中立国も巻き込んで)実行した大悪党はとっとと本題に入れと言った。

 

 「クーデターをしましょう。せねばただ滅ぶだけです。」

 

 決戦前、プラントでも勝負に出る者達が現れた。

 

 

 ……………

 

 

 C.E.71年8月初頭 ヤキンドゥーエ要塞周辺宙域にて

 

 遂に地球連合・火星連邦合同艦隊がヤキンドゥーエ要塞へと迫り、開戦まで秒読みという時の事だった。

 

 「最後通告だと?内容は?」

 『は、は!こちらになります。』

 

 そっと部下が震える声で文書データをパトリックへと送信する。

 目を通すのに10秒ほど経過した後…パトリックは鼻で嗤った。

 内容は在り来たりな現政権の解散と武装解除を含む無条件降伏だった。

 実にナチュラルらしい単純な内容であるが、そも挑発以上の意味など無いのだろう。

 「最後まで平和を求めたがダメでした」と言い訳作りの断られるためのものにこれ以上時間を割いてやる必要はない。

 

 「今更だ馬鹿め、と送ってやれ。」

 『は!』

 「ジェネシスを使用する!目標、敵艦隊中央!」

 『議長!敵艦隊に新たな動きあり!』

 「何だ?」

 

 新たに齎された報告に、流石のパトリックも目を剥いた。

 曰く、火星連邦が拠点として曳航してきたコロニーがヤキンドゥーエへの直撃コースで加速し始めていると。

 

 「奴らめ、このヤキンが手強いと見て奇策に出たか。」

 『如何しますか?このままジェネシスを撃ってもアルテミスとコロニー両方には対処できません。』

 「予測される衝突コースは?」

 『こちらになります。』

 

 司令部の中央モニターに表示された予測コースは後10分もあればヤキンにコロニーが衝突する事を示していた。

 そんな窮地の中、パトリックはニヤリと口の端を歪めた。

 

 「ヤキン衝突1分前だ。そこなら同時にアルテミスとコロニー、そして艦隊中央を射抜ける。」

 『失敗した場合、かなりのリスクが出る事になりますが…。』

 「既に状況は我々の不利だ。ジェネシスの使用回数と発射間隔の問題もある。これで決めねば勝機は無い。最大出力までチャージしての発射ならば、コロニーもアルテミスも計算上無力化は可能だ。」

 『了解しました。直ぐに準備を始めます。』

 「よし、部隊各位は防衛ラインを維持せよ。予定時刻の1分前には発射予定宙域より友軍を退避させよ。タイミングが命だ。徹底させろ。」

 

 パトリックがそう指示を出した直後、連合艦隊からの準備砲撃、大量のミサイルと砲撃の雨が一斉に放たれた。

 遂に今次大戦の最激戦、第二次ヤキンドゥーエ攻防戦が始まったのだ。

 

 

 ……………

 

 

 大量のミサイルとビームやレールガンの砲撃、迎撃のためのレーザーやCIWSが飛び交う中、双方のMS部隊が進路を切り開く、またはそれを阻むために出撃してきた。

 

 『ナチュラル風情にやらせるな!連携しつつ、確実に防げ!』

 『空の化け物共をこれ以上のさばらせるな!連携しつつ、確実に数を減らすぞ!』

 

 PDが登場して以降、対MS戦闘は大きく変わった。

 PDによって既存の機動兵器とは比較にならない程の防御力を持ったMSに有効な攻撃は大きく限定される。

 よって、それまでの機動射撃戦主体ではなく近接白兵戦が重視され、例え防御されても衝撃によるノックバックが期待される事からビームではなく実弾、PDを貫通可能なレーザー兵器が主体となった。

 しかし、艦艇が戦闘機動中のMSへと攻撃を当てる事は大戦初期よりも更に難しく、撃墜は更にその上となる。

 機動性は比較的マシでも追随できないメビウス等のMAではやはり難しい。

 こうした新世代のMSを撃墜するのに最も効率的な戦法、それが重斬刀を始めとした実体近接武装を用いた白兵戦だった。

 双方が艦砲射撃が飛び交う中、MS部隊が射程圏内に互いを捕らえたと同時に発砲、回避機動とフェイント、牽制を交えつつ、小隊を維持しながらじりじりと隙を伺う。

 大規模会戦時では最早お馴染みとなるMS部隊同士の戦闘機動だった。

 

 『こ、の、ナチュラル共が…!』

 『馬鹿、止めろギース!』

 

 だが、一機の比較的経験の薄いジンⅡのパイロットが突出してしまった。

 隊長機が即座に制止の声を上げるが、彼は焦りと傲慢の代償を直ぐに支払う事となる。

 

 『猿風情が生意気n』

 

 それが彼の最後の言葉となった。

 最も近い位置にいたストライクダガーへと射撃を行いつつも殆ど真っすぐ接近していく機動は余りに隙だらけだ。

 待ってましたとばかりに数機の連合系MSによるレールガンの集中砲火により、PD内蔵シールドを弾き飛ばされ、ほぼ同時にレールガンによって装甲をぐしゃぐしゃにされ、内部の推進剤に誘爆したジンⅡはあっさりと爆散した。

 

 『くそ、よくもギースを!』

 『新入り、連携を乱すな!』

 

 こうなったら後はもう対ザフト戦術である「連携を組んで各個撃破」を繰り返すだけとなる。

 

 『よし、型に嵌ったな。』

 『各機、このまま敵を減らしていけ!焦る必要はない!』

 

 時折逆に突出した新兵が狩られ、逆にザフト側に討ち取られながら、戦況はじれったい程ゆっくりと地球連合有利に動いていくのだった。

 これがエースや大戦初期からのベテランがいれば練度の差からまた違った話なのだが、ここにはいなかった様だ。

 一方の火星連邦VSザフトの場合はと言うと…

 

 『各機、気を付けろ!相手は見た事のない新型d』

 

 全てを喋り終える前に、隊長機のシグーⅡがレーダーの有効距離外から一撃で撃破された。

 それも、PD内蔵シールドを貫通して。

 

 『た、隊長!?なn』

 『動きを止めるな!狙撃だ!各機、乱数回避しつつ最大加速で突っ込め!』

 

 副隊長機の指示と共に、各機が訓練通りに乱数回避を入れつつ最大加速で射線元へと突っ込んでいく。

 MS戦ではもう滅多に無いというのに対遠距離攻撃としては最適な行動を即座に取れるのは流石と言える。

 

 『こちらに接近する反応あり。ジンⅡが3機、シグーⅡが1機。』

 『対応が早い。手練れだな。各機、乱戦になるぞ。訓練通りにやれよ。』

 『了解。なぁに、このアマクサのスコアにしてやりますよ。』

 

 火星連邦にとって地球連合とザフト双方のMS戦術は既に把握済みだ。

 一部エースの様な例外を除けば、他が取るべき最適な戦術等は全てデータが揃っている。

 バタラ(輸出仕様)という良質な餌と傭兵部隊に試験部隊、彼らの稼いだ血塗れのノウハウにより、如何にして現行のMSとその戦術を打破するのかは、既に明確な回答が揃っている。

 だから、レーザーやレールガンをより高出力にしつつ、MSの近接格闘戦能力を高めよう。

 そのためのピースは既にあった。

 輸出用にデチューンしてないバタラのセンサー系と出力ならば、狙撃仕様の大口径・大出力化した180mmロングレールガンの使用に耐え得る。

 新型の高出力・高耐久かつビームザンバーを持つアマクサならば、ザフトのゲイツや連合のデュエルであっても近接格闘戦で有利に戦う事が出来る。

 

 『な、はや!?』

 

 ジンⅡのPD内蔵シールドごと、アマクサのビームザンバーにより一撃で両断される。

 近代化改修しているとは言え、既に旧式機に分類されつつあるジンではPD搭載MSを撃破すべく設計・開発されたアマクサに勝てる道理も無い。

 辛うじて副隊長機のシグーⅡはジンⅡよりも高い機動性とパイロットの経験差からまだ持っているが、今最後の僚機が落とされた所だ。

 

 『く、こうなったら…!』

 

 そして最後の一機、既に幾度も被弾したシグーⅡは最後の手段に出た。

 

 『降伏、する。命までは取らないでくれ。』

 『了解した。機体を停止して降りてくれ。条約に順ずる扱いを保証する。』

 

 死にたくなかった副隊長は参謀本部が密かに配っていた「降伏のしおり」の手順の通り、火星連邦に降伏した。

 こうした光景は火星連邦相手だと各所で見られたが、逆に地球連合相手だと死ぬまで足掻き続ける光景が見られる事となるのだった。

 

 

 ……………

 

 

 徐々に不利になる状況を見て、撃つなら今と判断したのはヤキンドゥーエ司令部にいるパトリックだった。

 

 『敵コロニーの衝突まで、後5分を切りました!』

 『ジェネシスの発射準備完了!出力は100%で何時でもいけます!』

 『敵艦隊の一部にダミーを確認!艦隊規模を偽装している模様!』

 

 火星連邦のコロニー質量弾という名のデコイ兼破城槌は周囲にダミーバルーン製の偽りの艦隊を率いて、予測通りのコースを辿ってもう間も無くヤキンへと衝突する状態だった。

 この段階に達して漸く現場では敵艦の一部がデコイである事を見抜いたものの、単に的を増やして無駄弾を増やす目的だとしか考えられなかった…訳ではない。

 何か目的があるのだと推測はされたのだが、それを考えたり、対処する余力が既に払底していたのだ。

 今司令部要員らに出来るのはジェネシスという希望に縋り、彼らの希望通りのタイミングで発射するための努力を行う事だけだった。

 

 (これで終わりだ、ナチュラル共。)

 

 『敵コロニー、間も無く発射予定ポイントに到達!』

 「友軍への退避勧告!急ぎ射線軸上より退避させろ!予定ポイントに到達次第、最大出力で発射せよ!」

 

 自軍の戦略兵器による攻撃準備の報を受け、大慌てでザフト軍が予想された射線軸上より退避していく。

 同時、その動きを警戒してか地球連合・火星連邦の部隊も続けて退避していく。

 だが、その後方から迫るコロニー質量弾と更に背後のアルテミス要塞はそのサイズから退避は不可能だった。

 

 『友軍の射線軸上からの退避完了!』

 『予定ポイントまで後30秒!カウント開始!』

 

 全てが順調だった。

 プラント本土まで後僅かという所まで追い詰められておきながら、この時ばかりは全て順調だった。

 それがお膳立てされたものだと、パトリックは事前に気付く事は出来なかった。

 

 『ジェネシス、ミラージュコロイドステルス解除!』

 『10・9・8・7・6・5・4・3・2』

 「思い知れナチュラル共!この一撃が、コーディネイターの創世の光とならん事を!」

 

 こうして、後に「今世紀最も邪悪な科学技術の集大成」と言われる事となる戦略級ガンマ線レーザー砲「ジェネシス」が発射され、宇宙を巨大な光の渦が貫いた。

 

 

 

 




〇180mmロングレールガン
 火星連邦の技術開発局が開発した、MS携行式の大口径・大出力レールガン。
 現在地球連合・ザフトで運用されているPD搭載MSを一撃で遠距離から葬るための遠距離射撃兵器プランの一つとして開発された。
 外見はアトラスガンダムのレールガンであり、三本の給電レールによって弾体の誘導・加速を行う。
 給電レールの断面は六角形であり、温度状態によってレールそのものが回転し、別の面で再び弾体の誘導・加速を行う事で大出力故の排熱によるレールの歪みを抑制している。
 本体後部の上側に弾倉、グリップ先端に冷却材タンクを備え、MS本体の掌のコネクターから直接給電する事で使用する。
 敢えて低出力にする事で既存の携行式レールガン同様に機動戦時に片手撃ちも可能となっているが、本来の対PD搭載MS用の出力の場合は両手持ち、可能ならば機体を固定した状態での狙撃を推奨している。
 デチューンしたバタラ(輸出仕様)の出力及びセンサー系ではその性能を完全に活かせず、また反動抑制のためのパワーも足りていない事から使用は通常のバタラを始めとした火星連邦系MSやデュエルやゲイツ等の高性能機でしか真価を発揮できない。

〇バタラ(MD仕様)
外観・性能・武装等は一切変更が無い火星連邦所有のバタラであるが、MDシステムによる無人運用が可能となっている。
が、通常仕様との相違は学習型オートマトンに専用プログラムを入力しただけである。
無人機故の電子戦等に対する脆弱性はあるものの、パイロットの生命維持を無視した機体の限界性能を発揮しつつ、既存の生産ラインのまま生産可能かつパイロット無しで数を揃えやすいという大きな利点を持つ。
学習型オートマトンの機能を活かした高い学習機能を持っており、戦えば戦う程に有効な動作・戦術を学習して取り入れていく
また、SPC通信により太陽系内の他全ての学習型オートマトン搭載MSから常時運用データを受信し、リアルタイムでフィードバックする事が可能となっている。
前線に出回ればそれだけで勝利が確定しかねない程の戦略的価値から、その存在は完全に秘され、徹底した情報統制が行われている。
地球圏で秘密裡に運用される際には長距離偵察用バタラを指揮官として、敵勢力へのジャミングや破壊による無線封鎖が徹底した状態でのみ許可された。
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