超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話   作:VISP

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火星編 第20話 エース 後書き修正

 C.E.71年8月初頭 ヤキンドゥーエ要塞周辺宙域にて

 

 『クソ、硬過ぎる!』

 

 ヴェステンフルス隊長ことハイネ・ヴェステンフルスとその部隊員達。

 全員が最新鋭機たるゲイツに搭乗し、開戦からずっと戦い続けた同質量の金よりも貴重なベテラン揃いの正しくエース部隊。

 そんな彼らをして、火星連邦先行艦隊の壁は余りに高く、厚かった。

 

 『く、そ…!』

 『アンディー!?くそ、今助ける!』

 

 また一機、ゲイツが致命的な被弾をした。

 だと言うのにバタラは何機か撃墜に成功しているものの、火星連邦の新型機は未だに一機も落とせていない。

 

 『また一つ。』

 

 右腕を丸々とバックパックの右側を破壊され、動きの鈍ったゲイツがアマクサのシールドのアクチュエータ内蔵式の対特殊装甲バイスクローによってその胴体を鋏まれてしまった。

 右から挟まれたせいで腰部のレーザー砲も使えず、重斬刀も上手く勢いが載せられず、左腕のシールドも意味を成さない。

 両肩がオレンジに塗装されたそのゲイツはそれでもバルカン砲を0距離で連射し、手足を動かして脱出しようとしているのだが、出力差によるパワーの差もあって逃げ出せず、完全に詰んでいた。

 

 『や、やめてくれェェェェッ!!』

 

 通信機器から聞こえてくるのは機体が徐々に歪み、圧縮され、潰れていくコクピットの異音と部下の死を目前とした絶叫。

 例えPDを機体に搭載しているゲイツと言えども、その防御力には限界がある。

 レーザーは素通りだし、高速で質量弾を叩き込むレールガンに大出力のビーム兵器に近接格闘戦には効果が薄い。

 況してや、PDの開発元である火星連邦産の機体が対策していない訳がない。

 対ビームコーティングされたバイスクローの熱耐性を活かしながらPD搭載機を殴打、或いは鋏み潰す。

 とても、とても有効な攻撃手段なのだろう…その残虐性を除けば。

 救援しようにも、そんな分かり易い動きをした途端に周囲から一斉に攻撃される上、眼前の手練れから目を離せば死あるのみだ。

 実際、そうやって既に2機も犠牲になり、内1機はこれと同じ末路だった。

 

 『いやだこんな死にk』 ぶちゅんっ

 

 液体の詰まった袋が破裂する様な音と共に、絶叫は途絶えた。

 

 『きっさまらァァァァァァッ!!』

 

 普段の飄々としたハイネの面影は既に無い。

 苦楽を共にした部下を残虐に、見せびらかす様に殺された彼の頭からは既に任務の存在は消えていた。

 

 『うへぇ、やっぱこれあんまり使いたくないなぁ。』

 

 アマクサのパイロットはそう愚痴を零す。

 まぁ確かに人道的ではない。

 だからこそバイスクローの間にビーム刃発生器が付いているのだが、PD搭載機だと効果が今一つなので確実性を取るのならコレが一番なのだ。

 まぁ敵も味方もトラウマになるので効果は兎も角大不評なのだが。

 

 『向かってくるのなら単に処理すべき敵だ。気負うなよ。』

 『分かってるって。』

 

 ジンクスが機動性で翻弄した後、GNショートビームライフルの連射でゲイツを撃墜して合流してくる。

 機体性能の差もあって、殺到してくるザフトMS部隊はあっさりと処理されていく。

 数の多さから二個大隊近い先行艦隊のMS部隊にも相応の被害が出ているものの、その被害はあくまで想定内でしかない。

 そして、本陣の近くにエース部隊含む有力戦力を多数集めたら、前線が手薄になるのは当然の理だった。

 

 『くそ、敵が止められない!増援を、増援を乞う!』

 『学生共に引き摺られて陣形が乱れてる!誰か援護を!』

 『か、囲まれた!?助けt』

 

 前線からは引っ切り無しに殆ど悲鳴の救援要請がヤキン司令部に届くが、既に予備戦力は払底しており、出せるものは無い。

 そして、ジェネシスの次弾発射まで後30分以上の間がある。

 プラント側の人員の脳裏に敗北の二文字が浮かぶ中、例外が現れた。

 

 『くそ!こちらパワー!敵MS部隊の攻撃により陽電子砲が大破!戦略兵器破壊は残り二隻で頼む!その分、こちらが前衛となって2隻を守る!頼んだぞ!』

 

 何とアークエンジェル級3番艦パワーが対艦攻撃を受け、左右の陽電子砲が大破してしまったのだ。

 その分、他2隻の盾となるべく前に出たのだが、それでもジェネシスへと投射する火力が減じてしまったのは確かだった。

 

 『ふぅ、漸く一隻か。これは骨が折れるな。』

 

 ラウ・ル・クルーゼは漸く目的の一つを達成したものの、残り2隻への対処を考えると頭が痛かった。

 

 (アークエンジェル級3隻のジェネシスへの砲撃の妨害とはね。私でもキツ過ぎるぞ。)

 

 戦後、敗戦すればプラントはその自治を大幅に制限されるだろう。

 常に厳重な監視を敷かれ労働に従事する、最低でも戦前並かそれ以上に抑圧された生活となる事は確定していた。

 もし勝ったら?プラントの勝利=ジェネシスを地球に撃ち込むなので地球圏滅亡ルートが確定するので考えない事とする。

 で、敗戦した後の扱いを少しでも良くするためにも地球連合ではなく、火星連邦側がより主導権を握る形で降伏する。

 それがギルバート・デュランダルを始めとした反体制派の目的だった。

 そのためにも地球連合には「火星連邦がいなければ甚大な被害、下手すると敗戦していた」程度の被害を受けてもらう必要があった。

 

 『っと、新手か。』

 

 勘に従って即座に乱数回避を行うと、先程までいた位置にレールガンの弾丸が通り過ぎていく。

 見れば戻って来たデュエルFやデュエルダガーFがラウのゲイツへレールガンとミサイルを放ちながら接近してくる。

 PDを内蔵した追加装甲Fことフォルテストラにより、その防御力はバタラを凌いでアマクサに比肩、一部では凌駕する程だ。

 如何にラウが駆るゲイツと言えども複数相手では分が悪いと言わざるを得ない。

 

 『さて、後1隻は仕事をさせてもらうぞ。』

 

 弾薬や推進剤、融合炉の消耗を脇目にチェックしながらラウは愛機を敵機へ向けて加速させた。

 

 

 ……………

 

 

 戦場がヤキンドゥーエとジェネシスへとより近づく中、その最先鋒として戦うアーガマから事前にひっそりと抜け出していた機体があった。

 ミラージュコロイドステルスを展開した長距離偵察用バタラである。

 しかも今回はコクピット内に追加のシートを設置した複座仕様だ。

 混戦に成りつつある戦場を最低限のブーストと慣性航行で移動して辿り着いた先にあったのは…ジェネシスである。

 全周囲から攻撃されてる訳でもないのでPDも全周囲に展開されている訳ではない。

 空いている場所を通り抜けてジェネシスに取り付くと、MSサイズのメンテナンスハッチを探していく。

 ヤキン司令部からの遠隔操作で基本は無人とは言え、内部に出入りするためのメンテナンスハッチは存在する。

 

 『メンテナンスハッチを発見。開錠作業を開始する。』

 『了解。こちらも端末からクラッキングを開始します。』

 

 それを素早く見つけ出して取り付き、作業用MS向けの開閉スイッチを操作していく。

 MS向けの回転ロック機構の他、人用の操作端末から電子ロックも付いているが、電子戦も得意とする長距離偵察用バタラには無力だ。

 クラックによって一分とせずに開錠に成功、素早く侵入を果たす。

 基本的にジェネシスを内部から破壊するのは困難を極める。

 発射の際は本体内チェンバー(中枢部にある反応炉)で何とか実用化したNJCにより再び使用可能となった原子爆弾(核分裂弾。ニュークリアカートリッジとも呼称)を爆発させてガンマ線の線源とし、それをコヒーレント波に変換することにより得たレーザー光を一次反射ミラーに照射して焦点を調整、本体ユニット正面に設置された二次反射ミラー(一次、二次ともにミラーに発生させた力場が物質では不可能なガンマ線の反射を実現している)に反射してエネルギーを集中させ、目標に向けて照射する。

 こんな構造のため、内部での核爆発に耐え得る耐久力に加え、外部は複数の大型核融合炉を動力源とするPDによって守られている。

 とは言え常に全方向とはいかず、その守りには隙間があり、こうして入り込む事も出来る。

 では、何処を破壊すればジェネシスを使用不能とする事が出来るのか?

 回答は一つ、原子爆弾を移動するためのシステムである。

 

 『よし、原子爆弾の格納庫を発見した。』

 

 ジェネシスは使用前に格納庫内の原子爆弾を自動的に運び出し、本体内チェンバーへと設置して、発射命令を受けてから起爆、発生したγ線を変換して発射する。

 故にこの比較的脆い原子爆弾の移動システムを破壊する。

 移動システムと言っても無人作業機械で弾頭をチェンバー中心へと移動させるだけの単純なものだ。

 この無人作業機械及び原子爆弾格納庫の扉の開閉システムの破壊が目的だ。

 幸いにもまだ次の原子爆弾は設置されていない。

 二次反射ミラーの設置完了かその間際まで出さないのだろう。

 これ幸いと見つけ出した格納庫の扉をサクッとクラックして開き、内部にあった幾つかの無人作業機械を通信用レーザーライフル(出力調整済み)を照射して破壊していく。

 戦闘用ではない作業機械類が軍用出力のレーザーに耐えられる訳もなく、次々と焼き切られていく。

 

 『無人作業機械の全機破壊を確認。』

 『壁際の操作端末にアクセスしてください。ウイルスを流します。』

 

 粗方破壊し終わった事を確認すると、内部の操作用端末にクラッキングし、ジェネシスの制御システムにコンピューターウイルスを流す。

 主な効果は警報類の麻痺と監視カメラ・センサー系の映像や記録のループ化であり、目的は工作発覚までの時間稼ぎだ。

 すべき事はしたと、今度は格納庫の外に出て扉を閉める。

 そして長距離偵察用バタラの手の甲にあるトリモチランチャーで外側から物理的に開かない様に接着する。

 後は気付かれないようにジェネシス内部から脱出してアーガマに帰投すれば任務完了である。

 おまけでチェンバー内に機雷等も撒いておけば更に時間稼ぎになるのでもう言う事はない。

 これで暫くは発射不能、運が良ければ人が来て機雷撤去→格納庫を解放→原子爆弾を設置するまでの時間は稼げる事だろう。

 

 『遅延工作完了。これより帰投する。』

 『帰るまでが遠足ですからね。お願いしますよー。』

 

 

 ……………

 

 

 同時刻、ヤキンドゥーエ要塞近傍宙域にて

 

 『くっそ、がァ…!』

 

 必死にレールガンを連射しつつ、乱数回避を繰り返す事で辛うじてハイネは延命していた。

 幾度となく繰り返される乱数回避の激しいGにより、目の前が真っ黒になりかけているが、それでも彼は足掻く事を、生きる事を諦めていない。

 しかし、オレンジ色に塗装された専用ゲイツの左腕は既に前腕半ばから先が存在せず、各部の装甲にも被弾が確認されていた。

 PDのお陰で未だ撃墜を免れているが、それももう限界が見えている。

 度重なる無茶な機動と被弾によりフレームに歪みが出たらしく警報が鳴り止まない。

 特に左前腕は対ビームコーティングシールドが最も分厚い筈のハードポイントとの接続部ごと切断されており、もう武装として機能する事は無いだろう。

 推進剤も弾薬も過半を消耗しておきながら、しかしハイネは降伏しない、できない。

 今、ヴェステンフルス隊の最後の一機である自分が降れば、この厄介な敵部隊が完全にフリーとなるのだ。

 そうなったら間違いなくジェネシスへと取り付かれる。

 他の友軍ではどうしようもないと断言できる程に、この火星連邦の小規模艦隊は隔絶した実力と機体性能があった。

 事実、目の前の橙色の粒子を発する新型は自分の駆るザフトの最新鋭機たるゲイツを一顧だにしない程の性能を誇っている。

 こんな奴らがフリーになったら一般兵の屍の山が出来るだろう。

 それが分かっているからこそ、ハイネは退く事が出来なかった。

 

 『ま、だ、だぁ…ッ!』

 『いいや、これで終わりだ。』

 

 狙い澄ました様に、否、完全に狙ったのだろう。

 混線によって聞こえて来た敵パイロットの声と同時、三方向から全く同時に橙色のビームが連射される。

 見れば橙色の粒子を放つ火星連邦の新型3機が連携し、こちらを囲むと同時に手首のビーム砲から独特な色のビームが雨霰と連射され、弾幕を形成する。

 威力はそこまで高くないのか、大半はPDによって防がれて装甲を貫いてくる事はない。

 問題なのは視界がほぼ橙色の閃光で埋まってしまった事だ。

 即座に加速して弾幕の圏内から離脱しようと最も弾幕の薄い空間に向かって離脱を試みるが…これが罠だった。

 

 『なッ』

 

 視界の先、確かに誰もいなかった筈のそこにまた一機、火星連邦側の機体(脚部や胴体からバタラの系列機)が突然現れたのだ。

 そして、その手にはこちらに銃口を向けたライフルが握られていた。

 直後、ハイネの意識はカメラを焼く閃光と同時に途絶えた。

 

 

 

 

 




〇ハイネ専用ゲイツ
 カラーリング以外は通常の量産型ゲイツと変更は無いものの、リアアーマーにレールガン用の追加弾倉×3を纏めたマガジンラックを持つ。
 部下のヴェステンフルス隊のゲイツも両肩がオレンジ色に塗装されているだけで、実際の性能に違いは無い。

〇フォルテストラ
 この世界の連合系MSの内のハイエンド機、即ちデュエルとデュエルダガーに装着可能なスラスター・武装内蔵型追加装甲装備システム。
 追加装甲は各部にPD発生器を内蔵しており、装甲そのものの防御力と相まってバタラを超え、アマクサに比肩する防御力を有する。
 各部の追加スラスターによって重量増加による運動性・機動性低下は最小限に抑えられている。
 反面、反応速度や操作性の悪化、地上戦での重量増加による大幅な運動性の低下等もあり、十全に扱えるのは一部のエースやベテランのみとされ、生産数は多くない。
 武装は原作通りで主に右肩にレールガン、左肩に6連装多目的ミサイルを内蔵しているが、その2つから自由に選択も出来る。
 被弾状況に応じて適宜追加装甲を分離可能であり、意図的にぶつけたり、排除と同時に内部に仕込まれていた煙幕と閃光弾を用いて敵の視界を奪う事で奇襲や撤退を行う事もできる。
 一応ダガーにも装備可能だが、融合炉非搭載機では出力不足からスペックを最大限発揮する事が出来ないため非推奨。
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