超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話   作:VISP

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火星編 第21話 粉砕

 C.E.71年8月初頭 ヤキンドゥーエ要塞周辺宙域にて

 

 『く、これ以上は無理か…!後退するぞ!各機、消耗の多い機体から下がれ!』

 

 ジェネシス破壊のために射撃位置への移動と妨害の排除を目的としたアークエンジェル級3隻からなる特務艦隊に対し、クルーゼ隊はギリギリまで食い付き続けた。

 結果、最も練度の低い三番艦パワーの陽電子砲2門、更に二番艦ドミニオンの右舷陽電子砲1門の破壊に成功した。

 撃沈こそ至らなかったものの、ジェネシスへと向けられる火力を半分にまで削り取る大金星を上げたのだ。

 しかし、相応に被害は多く、アスランら赤服組が抜けていた事からMS部隊は半減する程の被害だった。

 それでもデュエルFにデュエルダガーFの猛攻と唯でさえ充実したアークエンジェル級3隻の対空火力を相手にしてよくぞ此処まで出来たと褒め称えられるべきだろう。

 

 『くそ、ここまでやられるとは…!』

 『艦長、如何致しますか?』

 『…作戦は続行する。火星連邦側に連絡を。』

 『よろしいので?』

 『作戦失敗こそ忌避すべき事態だ。下手すると地球が滅びるんだぞ?政治は余所でやってもらうさ。』

 

 地球連合としては、火星連邦に良い所を取られると困るのだ。

 戦後、火星連邦に相応の利権の譲渡と引き換えに参戦を願い、そのための各種工作を行う事で無事に参戦に漕ぎ着けた。

 しかし、戦後の統治を考えると今大戦で余り良い所のなかった東アジア連合を筆頭に、火星連邦に余り利権を持っていかれると困る者がそれなりにいた。

 そうした派閥からの意見で、ジェネシス破壊作戦は本来ならば地球連合所属のアークエンジェル級3隻(全部大西洋連邦所属だが)で済ませる予定だったのだ。

 それを火星連邦側も分かっていたため、敢えて「発射タイミングはアークエンジェルに一任する事」で事前に同意していたのだ。

 まぁ余り貰い過ぎても後の禍根となるからと火星連邦上層部も納得ずくの事だったが、ここまで追い込まれてしまったのでは仕方ない。

 

 『火星連邦の特務艦隊より返信。事前協議通り発射タイミングはこちらに任せるとの事です。』

 『ありがたい事だな…。よし、敵が後退した隙に発射予定地点に進出する!各員は無事な陽電子砲を防衛しつつ、最大出力での発射準備を始めろ!一撃で決めるぞ!』

 『予定地点到達までこのままいけば3分。それまでに発射シークエンスを完了してください。』

 

 こうして、最後の花火の時間が迫っていた。

 

 

 ……………

 

 

 同宙域 同時刻 火星連邦先行艦隊にて

 

 『そうか。地球連合独力での破壊は無理だったか。』

 『どうしますか?』

 『消耗の激しい機体は順次補給を始めよ。こちらも予定通りに動くぞ。』

 『了解です。』

 

 火星連邦先行艦隊は迎撃に出てくる敵戦力の殲滅に成功し、漸く一息ついた所だった。

 余りの物量に本来なら秘匿する予定のジンクスまで駆り出される程であり、やはりプラント侮り難しと火星連邦側は思い知らされた形だった。

 それでも機体性能と連携の練度もあって逆に殲滅に成功するのだから、彼らの実力も凄まじいものなのだが。

 そんな時にザフトのエース部隊によってアークエンジェル級3隻が攻撃を受け、合計6門ある陽電子砲の内、実に半数が無力化されてしまったとの通信が来た。

 

 『通達された発射予定時刻まで後3分だ。それまでに最大出力での発射準備を済ませておけ。』

 『最大出力ですか?』

 『そうだ。手加減はいらん。本来よりも砲数が少ないのだ。失敗する訳にはいかん以上、ここで全力を尽くす。』

 『了解しました。最大出力での発射準備を行います。』

 『万一の場合はハイパービーム砲のユニットごと分離する。終わるまで気を抜くなよ。』

 

 このアーガマのモデルとなった原作におけるネェルアーガマ。

 そのハイパーメガ粒子砲はコロニーレーザーに匹敵する程の威力(効果範囲は別)を持ち、照射時間を調整すれば小艦隊すら全滅させる、ギリギリ戦略兵器に分類されない拠点攻撃用兵器だ。

 況や、この世界の天才とそれに憧れる者達によって開発されたアーガマのハイパービーム砲の威力は如何ほどなのか?

 

 『間も無く発射予定時刻です!』

 『アークエンジェルとの通信回線開け!統制射撃準備!』

 『こちらアークエンジェル!間も無く発射予定時刻です!トリガータイミング同期願います!』

 『よし来た!一発で決めるぞ!』

 

 エース部隊の迎撃に成功して戦場の一部が沈静化する中、遂にその時が訪れる。

 

 『アークエンジェル、特装砲1番、2番、展開完了。』

 『ドミニオン、特装砲2番、展開完了。』

 『指定座標への照準良し。射線軸上の友軍へ退避勧告…退避確認!』

 『陽電子形成良好。エネルギー充填率、40…60…80…100%に到達!』

 

 『ジェネレーターは全てハイパービーム砲のチャージへ回せ!最大出力だ!』

 『ハイパービーム砲、砲身展開開始。チャージ完了まで後30秒。』

 『ハイパービーム砲、発射準備完了。』

 『トリガータイミング同期良し。友軍に射線軸上からの退避を再度通達せよ。』

 『充填率100…120…140…160…180…200に到達します!』

 

 『『『撃てぇいッ!!』』』

 

 暗い宇宙の戦場に、4条の巨大な閃光が奔った。

 目指すのは宇宙に浮かぶパラボラアンテナの様な、宇宙開発の目的のために生み出されながらもナチュラル絶滅のための戦略兵器へと作り変えられた忌子たるジェネシス。

 3条の陽電子ビームと1条の極太の粒子ビーム砲が、ジェネシスを守る大出力PDへと衝突する。

 複数の大型核融合炉に支えられた電磁バリアは相応の防御力をジェネシスに与え、並の艦隊砲撃ではビクともしない。

 だが、放たれた4条の砲撃はその貫徹力においては核弾頭にすら匹敵、或いは凌駕し得る代物だった。

 数秒の拮抗の後、先ず粒子ビーム砲がPDを貫き、それによって過負荷がかかったのか、次々とPDが出力低下、酷い所では完全にダウンした。

 そんな状態で残りの3条の陽電子ビームを防げる筈もなく、遂にジェネシス本体へと4条の戦略級砲撃が命中した。

 装甲を破断・溶解・蒸発させながら、原子爆弾含むジェネシス内部がものの数秒で焼き尽くされていく。

 10秒もする頃には各所で爆発が発生、30秒もする頃には盛大な爆発と共に木端微塵に砕け散った。

 創世の光を騙る終末兵器の、派手な散り様だった。

 

 『ハイパービーム砲ユニット溶解!電装系に過負荷!排熱追い付きません!』

 『ユニット切り離し急げ!ダメコン用オートマトン起動!乗員の被害確認は!?』

 『発射時の電装系からの逆流で感電と火傷の者が一名!他は無事です!』

 『医療班に連絡!これ以上人死には出させるな!』

 

 そして、派手な散り様を演出したアーガマは限界まで酷使したハイパービーム砲ユニットが過負荷により融解、更に電装系への過負荷とオーバーヒートにより船体にダメージが入ってしまった。

 ここまで被弾はあっても小破で済ませていたのに、これでは中破判定を受けてしまうだろう。

 

 『アークエンジェルから通信です。「戦略目標は達成した。協力に感謝する」との事です。』

 『そうか、こちらからも「貴艦隊の武運長久を願う」と返しておいてくれ。』

 『了解しました。』 

 

 唯一の逆転の希望であるジェネシスが破壊された事から、ザフト側の抵抗は徐々に収まり、戦場にあった負け戦の気配が遂に確定してしまった。

 ここから始まる「戦後」に、関係各位は頭を悩ませる事となる。

 しかしその前にヤキンドゥーエ要塞内にてプラントの「終わり」が始まっていた。

 

 

 ……………

 

 

 同宙域 ヤキンドゥーエ要塞司令部にて

 

 「馬鹿な…ジェネシスが…我らの、創世の光が…。」

 

 そこには顔を蒼白にし、がっくりと項垂れるパトリック・ザラの姿があった。

 自分達の安住の地としてプラント独立を志し、しかし戦乱によって愛妻と多くの同胞達を殺され、祖国を道連れにする覚悟でナチュラルに対する復讐を実行してきた男の執念の結果がジェネシスだったのだ。

 もうここまで来ては逆転の目は無い。

 それは狂気に蝕まれたパトリックにも十分に理解できた。

 

 「議長、此処はお逃げください。後の事は我々が時間を稼ぎます。議長は後のプラント独立のため、お逃げください。」

 「…私に生き恥を晒せと言うのか。」

 「はい。でなくば、今日まで死んでいった同胞達に顔向けできません。」

 

 側近の言葉に、パトリックは苦悩した。

 はっきり言って、もう彼にはナチュラル根絶以外の生きる目的が無かった。

 このまま何時か来るかもしれない時を目指して無為に戦う日々を過ごす事は果断な彼をして限界があった。

 その苦悩の隙を突いたかの様に司令部の扉全てが開かれたと同時、遂にプロテクトギアを装備した歩兵が一斉に突入してきたのだ。

 

 「何者だ!」

 

 側近や護衛らの誰何の声に反応する事なく、プロテクトギア部隊により抵抗を試みた者達は瞬く間に制圧されていく。

 護身用に持っていた拳銃を抜き、撃つ事に成功した者もいたが、拳銃弾数発に返礼されたのは分隊支援火器から放たれる鉛玉だった。

 

 「両手を頭の上に上げろ!コンソールにも触れるな!」

 

 あっという間に司令部は制圧され、オペレーターらは両手を頭上に持ち上げて降伏の意を示していく。

 ものの1分程で司令部は完全に制圧され、パトリックは捕らえられた。

 

 「お前か、シーゲル…!」

 「久しぶりだな、パトリック。」

 

 最初はC.E.43年、L5の新型コロニー建設に従事していた時に出会った。

 それ以降、二人は気が合ったのか友人として何かとつるみ、時には喧嘩しながら共に多くの仕事を熟していった。

 そして翌年のC.E.44年、遂に新型のL5コロニー群の第一陣10基(後のアプリリウス市)が完成した。

 大規模生産基地としての意味から「プラント」と呼称され、この日からプラントの歴史は始まった。

 更に翌年にはコーディネイターの人口が地球圏で推定で一千万を突破し、現在で言う違法コーディネーターは身の安全のために多くがプラントへ向かった。

 そして莫大な利益を産み始めたプラントへの投資は継続され、そこに従事するにはコーディネイターでなければ無理という図式は崩れず、プラントは拡大を続けていった。

 やがて「プラントで作れないものはない」とまで言われるようになったが食料、特に穀物の生産は厳重に禁じられ、ほぼ100%を理事国からの輸入(後にミョウジョウ・グループからの購入)に頼るという状況であった。

 この頃から反コーディネイターを訴える組織によるテロ事件が発生し始めた。

 しかし、自治権がなく非武装が徹底されているプラント側には対抗手段はなく、コーディネイターの間に不満が高まり続けた。

 この状況に対し、シーゲルとパトリック達は同士と共にプラント内での自治権、貿易自主権の獲得を訴え、政治結社「黄道同盟」を結成した。

 だが、プラント理事国は黄道同盟の活動を圧殺した。

 彼らからすれば金の卵を産む鶏が喚こうが、所詮は鶏に過ぎないと判断したのだ。

 また、多くの人々は今日に至るまでコーディネーターの具体的な能力への理解が不足しており、人と同じ姿をした化け物扱いする者達も多い。

 そんな者達が独立した後、迫害した自分達に襲い掛かるのではないか?

 そんな経済的・心理的理由からプラントの独立は認められず弾圧された。

 勿論、これはプラント在住のコーディネイターたちの反感を買った。

 この事態に黄道同盟は地下に潜り、プラント内でコーディネーターによる完全な自治独立を目指した一つの勢力を築き始める。

 これが後のザフトとなった。

 C.E.53年にはプラントの運営を各市の代表による「プラント評議会」が行う事となる等の一定の成果はあったものの、やはり経済的・心理的理由から理事国はプラントの独立活動を弾圧し続けた。

 その隙間産業でミョウジョウ・グループも巨万の富を築き上げていたのだが、それはさておき。

 これに加えてS2型インフルエンザの大流行による混乱により地球の政治・経済が大混乱、更にこれをコーディネーターによるテロ行為とする風聞が流行した事もあり、遠い閉鎖環境で安全かつ安定して高品質の工業製品・医療物資を生産可能なプラントの価値が急上昇してしまった。

 そこに激化する迫害と疫病を恐れて地球から移住した多数のコーディネーター達により齎された情報により、地球・プラント双方の互いへの悪感情は留まる事を知らなかった。

 そんな中でプラント理事国によるプラントへの重い生産ノルマが課され、反対すると武力での鎮圧が行われ…その対応としてMSの開発が始まった。

 後はもう皆が知っている通り、坂を転がる石の様に事態は悪化し続け、遂には双方が虐殺に手を染める未曾有の大戦となってしまった。

 

 「何故、だ…ナチュラルの根絶こそ、我らコーディネーターにとっての…!」

 「失礼。」

 

 バチバチバチッ!

 世迷言を全て吐く前に、歩兵の持つ電磁警棒によりあっさりとパトリックは気絶させられた。

 

 「拘束しろ。決して死なせるな。」

 「了解。」

 

 気絶し、ぐったりとしたパトリックをシーゲルは黙って見送る。

 その目に浮かぶ感情は余人には理解できないものだったが、完全にその姿が見えなくなるまで、シーゲルは嘗ての友の背を見送った。

 

 「我々は進化した訳ではないのだよ、パトリック…。」

 

 その背にはただただ哀愁が酷く圧し掛かっていた。

 

 

 

 

 

 

 




後は停戦演説と後始末だけで終わりです
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