超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話 作:VISP
C.E.69年、度重なる食料生産プラントへの襲撃をザフトの活躍により全て撃退、反撃で壊滅させた事によりプラントを国家として成立させ得る軍事力を十二分に保持している事を証明した。
改めてプラント評議会は理事国に対して完全自治権の獲得及び対等貿易を要求、プラント理事国との交渉が幾度か行われるが平行線を辿るままだった。
C.E.70年1月1日までに回答が得られない場合、プラント側は地球への各種物資の輸出を停止することを宣告。
これにより、理事国とプラントの緊張が更に激化していく。
自らの生存圏を欲するプラント側と経済体制がプラントに依存する形に歪に変化していた理事国側では、当然成立する話ではなかったとも言えたが、斯くして事態は更なる混迷へと突き進み始めた。
「ビルゴ始めMDの制式採用が決まりました。直ぐにでも量産に入らせて頂きます。」
「流石に動きが早いですね。」
筆頭助手とも言えるアルバート・ハインラインの言葉に、ヒマリはだろうなと返した。
「当然でしょう。博士の発明したMDはプラントにおいて最も貴重な人的資源の消耗を抑制する素晴らしいものです。その有用性が分からない者は評議会にザフトは勿論、企業にも設計局にも居場所などありません。」
プラントの最も優れた資源は優秀な人的資源だが、同時に最も貴重な資源もまた人的資源に他ならない。
今は解除されたとは言え婚姻統制をする程に人口減少が問題視されていたプラントにとって、例え第二世代以降の生殖率の低下が解消されたとは言え直ぐに人口が増える訳もなく。
同質量の金よりも遥かに貴重な人材を機械で代替できるのなら喜んでするのが今のプラントでありザフトだった。
まぁビルゴに関してはオーバースペックな所は確かにあったので、色々とマイナーチェンジする必要はあるのだが。
「高コストの原因であるルナ・チタニウムの精製方法の改良とAIの情報収集はもう目処が立ちましたし、後はジンへのMDシステムの搭載とパイロット側の習熟、MD指揮用の装備の追加ですね。」
「後は艦艇にも作業・修理用のオートマトンなんかも搭載したいですね。何なら陽電子リフレクターも搭載してプラント防衛用の装備も持たせたいですし。」
「博士はプラントそのものへの攻撃も有り得ると…あぁいや、そう言えば連中は食料生産コロニーへの攻撃を予告していましたね。なら可能性は十分、では対応策も考えねば…。」
「プラントは確かに居住性・生産性も高いのですが維持コストが高く、耐久性も既存の円筒形コロニーに比べて劣りますからね。」
プラント評議会及びザフト上層部もまた同様に防衛対象としてのプラントの脆弱性は認識していたため、評議会が交渉を続ける中、着々とMDの生産を中心とした戦力整備を進めていた。
幸いと言うべきか、MDの有用性は即座に認められ、ビルゴの生産と同時にMD化したジンの生産も始まった。
前者はマイナーチェンジ(複列位相エネルギー砲の低出力・省エネ化+実弾兵装の搭載)に加え新たなラインを敷設する必要からそう数が揃える訳ではないが、後者は既存ラインをほぼそのまま使用可能なため、即座に量産が開始された。
有人機との違いもコクピット兼脱出ブロックがMD用AIユニットに交換されるだけだし、機体の戦闘データは既にパイロット達が実戦にて集めてくれたものが十分揃っていた事もあり、指揮官たる有人機の方がMDの指揮に習熟しさえすれば後は早い。
圧倒的物量をMSの性能と各自の技能(連携含む)でどうにか理事国の宇宙艦隊(この頃はまだ碌に各国が連携していなかった)を撃退していたのだが、やはり数的劣勢は万が一を考えるとキツいものがある。
クルーゼ率いるビルゴ小隊が対艦戦含めて圧倒的戦果を叩き出した事からもMDの早期配備は上層部と現場の双方から望まれていた。
結果、後方はデスマーチへ突入する事となった。
「まぁ私には関係のない事なんですけどね。」 どやぁ
「おっしゃる通りです。凡人で代替できる事は凡人を使えば良いのです。天才たる博士には博士にしか出来ない事をしていただくのが最も効率的であり、プラントの未来に繋がるのですから。」
「じゃぁメイリンちゃんに進捗確認お願いしますねアルバート。そろそろテロ屋が何かしらやらかしそうな気がしますし。」
「畏まりました。」
数年前の事、医療関係でドタバタしていた頃に人の端末の一つにクラッキングしてきたお馬鹿さん達の一人。
そいつがやたら腕が良くて端末の一つを斬り捨てる事になったが、その分相手側の情報を総浚いする事に成功し、有用な人材として確保する事に成功した。
それがメイリン・ホーク。
原作におけるヤベー女TOP3の一人だ。
他?ラクスとカガリ。
大義名分とか政治的影響力とか一切無しで考えると堂々のトップと言える。
彼女にはファッション雑誌を読む感覚であちらこちらにクラッキングをする悪癖があり、これがまた酷い。
休息中にザフトのネットワークに保管されている個人情報を覗いたり、ホストコンピューターに侵入して警報を鳴らす等した他、下準備は必要だが本気を出せば要塞一つを掌握する事も可能である。
ザフト所属時はミネルヴァ隊のオペレーターとしてその活躍をよく支えたが、どう見てもハッカーとしての適性が高過ぎる。
故にヒマリ主は持ち前の電子戦能力とお手製の量子CPUとウイルスプログラムとファイアウォールによって才能を鼻にかけたクソガキをボコって捕らえたのである。
彼女に仕事を任せるために。
「それでメイリンさん、私が頼んでいた調べ物は終わりましたか?」
「は、はい!ばっちりです!」
顔は蒼褪め、震えている。
当然と言えば当然だ。
彼女はしっかりと自らの行いを明かされた犯罪者であり、しかも国家機密に属する情報を幾度も幾度も勝手に閲覧してきたのだ。
普通なら一瞬で豚箱行き、否、それすら幸運だろう。
下手をしなくとも闇から闇へ葬られ、最初からいなかった事にされていた。
今の彼女はそれよりも少しマシな、いない者とされた上で国家のために後ろ暗い仕事をやらされている非公式の人材だ。
何れは監視付きとは言え家に帰る事もできるだろうが、それは今ではない。
「い、言われた通りに調べましたが、やっぱり東アジアの方で戦術核弾頭が動かされた形跡があります。数は4つで、専用の輸送車両が動いた事が分かってます。」
「4つ。改装した穀物生産プラントと同じですか。」
とてもイヤーな符号である。
原作を知るヒマリにとってこの時点でこの情報をキャッチできたのは大いに意味のあるものであり、その諦観の染み付いた美貌をニヤリと歪ませる。
「よくやってくれましたメイリンさん。今後も引き続きよろしくお願いしますね?」
「は、はいぃ!失礼します!」
バタバタと涙目で退室していくメイリン。
それを止める事もせず、ヒマリは優先すべきタスクを組み立て、テキパキと行動を開始する。
「取り敢えず、今できる事をしましょうか。」
……………
「っ、のぉ!」
星の瞬き以外は殆ど暗黒の宇宙空間にて
あるMSが複雑なマニューバで牽制のために放たれるビームを回避しながら、宙域を最大速度で飛翔する。
ZGMF-1017モビルジン
通称ジンと言われるザフトにて初の制式採用されたMSであるこの機体はその操縦性・生産性・信頼性の全てが高く纏まっており、それでいてプラント理事国の採用しているMAに対して極めて優位に立っている事から現行最優の機動兵器として名高い。
理事国の主戦力たるMAミストラルやメビウスとのキルレシオ、実に7対1以上と大きな開きがあり、被弾・被撃墜時の生存性も高い事から現場からの評価も良好だ。
そんな機体でありながら、しかし最近、ジンは最強の座から引きずり降ろされてしまった。
「…ッ!」
悪態をつく暇もなく、盾を構えながら機体をロールさせる。
同時、相手からの射撃を受けた盾が左腕と共に蒸発、バックパックのウイングバインダーの左側も爆発した。
明らかに致命傷、誘爆しなかったのが奇跡であり、即座に脱出すべき状況でありながら、パイロットは諦め悪く足掻き続ける。
「まだだ、まだ…!」
正面のモニターには先の射撃を行った敵機、黒く重厚なMSが油断も隙もなくこちらに複列位相エネルギー砲を向けている。
ZGMF-1018 ビルゴ
MDという無人式MSであるこれは人的資源に乏しいプラントにとって次の主力兵器として実戦証明後に即量産が決定された。
未だAIの戦闘データの蓄積が不足しているとは言え、既にベテラン並の回避機動と射撃命中率を誇るこの新兵器をバカにするものはザフトにはいなかった。
惜しむらくは未だ近接格闘戦のデータが足りていない事だが、それとてこうしてシミュレーターであるが刻一刻とデータが積み重ねられていく中、十分な量が集まる時はすぐ来るだろう。
「ぬあー!やられたー!」
「いやー今回は長かったな。」
「お疲れー。最初から近接に入れればなー。」
ザフトのMSシミュレーション室にて
ミゲル・アイマンと同期の仲間達はここ数日、共に対MD戦闘シミュレーターを行っていた。
「やっぱ速い・硬い・強いだけはあるわ。」
「ジンの方が小回りは良いけど、それ以外はなー。」
「動揺も間違いも疲れも無い。そりゃ採用されるわな。」
パイロット達からのMDシステムとビルゴの評価は高い。
しかし、同時にそれのみでの運用には断固として反対していた。
「こっちが電子戦装備でジャミングしながら狙撃すると比較的楽。」
「盾構えて突撃して近接戦すると比較的楽。」
「連携も甘いな。お互いの死角はカバーできても誤射の可能性のある状態だと絶対に発砲しないし。」
この様に、無人機特有の融通の利かなさや蓄積データの不足からある程度以上の腕前のパイロットからは鴨にされていた。
だが、決して見下される事は無い。
ジンにはない高出力、圧倒的な火力と防御力。
MSという自分達と同じ舞台で互角かそれ以上に戦える兵器を相手に油断する程、最初期のザフトパイロット達の練度は低くない。
「まぁビームサーベルのリーチならこっちも十分やれる。」
「後は如何にしてその間合いに入るかだな。」
「電子戦用装備の増産も始まったし、互いに苦手を補えるな。」
指揮官用ビルゴはその装甲材と核融合炉搭載の関係上、ジンの7倍ものコストとなる。
対してMD搭載の無人仕様のビルゴは精々3倍で済む。
パイロットの育成に関わる費用や時間、死亡時の遺族年金等を一切含まずに。
これが人的資源に乏しいプラントに受けない筈がなく、ジン用のMDシステムと共に無人仕様のビルゴ、それらの指揮管制及び機動に追従するためのジンの電子戦装備と追加スラスターユニットは急ピッチで量産されていた。
「嫌がらせじゃない、次の大規模戦闘が何時始まるとも分からん。今の内に出来る努力は尽くしておくべきだ。」
「ビームライフルに陽電子リフレクター。ジン用の奴も早く配備してくれると有難いんだけどな。」
「ちょっとEN消費がキツいが、あの弾速と威力はイイ感じだしな。」
実際、重突撃機銃ではMAメビウス相手に一発で終わらせる事は難しい。
ミサイルの迎撃にはバルカンを使えるが、メビウス相手だと近距離で直撃でも最低数発はいる。
しかし、ビームライフルなら直撃すれば遠距離からでも一発なのだ。
「リフレクター内蔵シールドにビームライフル。効果はビルゴが実証済みだ。」
「バッテリー追加でちょい重くなったけど、これ位なら許容範囲か。」
「追加のセンサー系とスラスターのお陰でビルゴへの追随も問題ない。後はオレらの慣れの問題だな。」
MDを前面に出しつつ、有人機がその隙を埋める形で統率する。
それがザフトの出したMSとMDの同時運用理論であり、現時点での最適解だった。
これらMD指揮官機はバルカンの撤去と脚部へのスラスターユニット追加で結果的に射撃の手数が低下したものの、MDの存在がそれを十二分に補えるとして許可された。
「あークソ。学習速度が早過ぎるだろ。次、三人で行くぞ。オレは突っ込む。お前らは電子戦と機動戦で攪乱な。」
「あいよー。」
「あ、じゃぁ次はリフレクターとビームライフルありにしようぜ。どうせ実戦じゃ使う事になるんだし。」
こうして、パイロット達もまたそれぞれにできる事を積み重ねていく。
C.E.70年まで残った時間は僅かの頃だった。
○陽電子リフレクター発生基内蔵シールド
表側中央に陽電子リフレクター発生基、裏面にバッテリーを追加したもの。
発生基自体にも装甲を付けた分も合わさって重量は増加しているものの、艦載ビーム砲も確実に防げる程の防御力を持つ事から採用。
ザフト系MSの共通ハードポイントを採用していれば他の機体にも装備できる。
現在、最前線の有力部隊に優先して配備されている。
○ビームライフル
ビルゴのショートバレルビームライフルを主兵装とすべくロングバレル化、スコープを追加したもの。
グリップとハンドガード先端に専用バッテリー(ジOと同形式)があり、一個につき通常15発、最大出力で5発が発射可能。
他にも掌のコネクターを介して機体本体からの給電での使用もできる。
オプションとしてアンダーバレルにランチャー(榴弾・散弾・徹甲弾等)を追加可能になっている。
○追加センサー
原作における長距離強行偵察用複座型ジンの一部装備を簡略・オプション化したものだが、性能はヒマリ主による技術力ブーストにより長距離強行偵察用複座型ジンとほぼ同等となっている。
バルカンポッドの代わりに頭部両横に複合カメラとセンサーが追加され、MD隊の指揮官機として必要なだけの索敵・情報処理能力等を付与している。
○追加スラスターユニット
原作におけるジン・ハイマニューバの脚部に装備された増加装甲兼高機動スラスターと同じもの。
無人機故に有人機よりも急激な機動を可能とするMDへと追随するために追加された。
原作よりも高性能だが、関節部への負荷も増している事から後の全体アップデートまで扱いには注意が必要とされた。