超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話 作:VISP
C.E.80年は、正に希望に満ちた年だった。
後一歩で地球そのものが滅びかけたプラント独立戦争とも、地球・プラント間戦争とも、宇宙大戦とも言われた大戦争から早10年近く。
漸く戦争の傷も癒え、人々が前を向いて明日へと歩み出し、平和な日々を謳歌する日々が続いていた。
無論、そうでない場所もあった。
アフリカはいつもの不安定で政情不安な有様だし、旧東アジア地域は分裂して群雄割拠からの紛争状態が続いている。
それでも、地球と人類が滅びる事が無いのなら、それはとても喜ぶべき事だった。
しかしC.E.80年代半ば、遂に来るべき時が来てしまった。
遂にプラントの人口が500万人を切ってしまった。
戦争前の最盛期は5000万人を誇った、作れぬものなきプラントだったが、しかし今やその繁栄の面影は無い。
戦争で1000万人近くを失い、その後の厳格な統治、伝手や資産のある者達は移住で出ていくばかり。
そうしてどんどん数を擦り減らし、今や500万人にまで減少していた。
残った者の多くはプラント生まれのプラント育ちのコーディネーター、その中でも抜きん出た所もコネもない者達だった。
無人となったコロニーは順次解体され、通常の円筒形コロニー或いはコロニー型輸送船の製造のための資材となり、良質だった製品も往時に比べれば幾分か品質も落ち、数は比べるのも烏滸がましくなって久しい。
もうプラント理事国にはプラントを維持しておくだけの利益を得る事が出来なくなっていた。
戦後、ロゴスを始めとした資産家達の目は地球圏の復興事業、そしてプラントを超える技術力を以て今もなお成長と拡大を続ける火星連邦の市場とそこから輸出される各種の高品質な製品に向けられていた。
特に火星連邦が開拓した木星自治区から届くヘリウム3等の核融合炉の燃料は極めて莫大な利益を産んでおり、地球圏のエネルギー分野が今最も熱くなっていた。
そして、ロゴスは迷う事なく損切りを決めた。
完全に赤字になる前に、プラント全基の本格的な解体を決定したのだ。
何せプラントの所有権は彼らにある。
解体も何もかも、彼らの思うがままであり、工業力こそ高いものの、維持管理費と難易度がやたらと高いプラントを何時までも保有しておくのはマイナスの方が大きい。
従順かつ優秀な技術者・労働者には自勢力の他の勤め先を紹介し、移動させるならば解体した所で火星連邦からの非難も無いだろう。
そうでない者?そんな奴らに手を差し伸べる義理は無い。
リストラするにしてもちゃんと法律に則った退職金を払うのだから、それで十分だろう。
本来ならば賠償金全額を払うまで移住も何も禁じて、死ぬまで強制労働の予定だったのを火星連邦との取引や各種兵器や特許の接収で多くを賄えたからこそこの程度で許してやったのだ。
これで文句を言ってテロリスト化するのなら、今度こそ絶滅してもらうだけだ、とロゴスは判断していた。
とは言え、移動させる人員の査定は違法コーディネーターという事もあって真面目に働いていれば余裕でクリアできるラインなので、殆どの旧プラント住民は新しいものの性能の低い工業コロニーへと集団で移住を開始した。
こうしてあっさりと、真面目に働かずに不満ばかりを募らせていた者達は故郷を失って投げ出される事となった。
戦後10年も苛烈な統治下にいながら、地球連合に対して反抗的だった1万人近い違法コーディネーター達。
身内を殺された怨恨、コーディネーターとしてのプライド、新技術開発の多くを禁じられた不満。
そうした様々な理由で選外とされた彼らは持てるだけの財産を持って追い出され、途方にくれた。
こんな事になるなら、あの時もっと必死に戦っておけば…と悔やんでも仕方ない。
どうすれば良いのかと苦悩していた時の事、
「我々が貴方方を同胞として受け入れましょう。」
彼らに囁く者達が現れた。
彼らこそが後にファウンデーション王国を建国する、アコードと言われる違法コーディネーター達だった。
そこからは早かった。
元プラントのコーディネーター達は何も無かった。
尊厳が無くとも、人は生きる糧さえあれば生きられる。
糧が無くても、尊厳さえあれば人は生きられる。
しかし、その両方が無いと人は最早どうでもよくなる。
故に、何でもする、何にでも成り果てる。
どんな怪しいものにだって縋る、頼る、信じる。
条約によって存在そのものが違法とされ、否定された違法コーディネーターは老いも若きも男も女も、あっさりとアコード達の口車に乗った。
そして、1年の準備期間の後に旧東アジア地域にて国盗りを開始した。
中華各地の軍閥、チベット、モンゴル、朝鮮半島、台湾、日本列島。
僅か5年という短期間でそれら全てを攻め落とし、時には外交交渉で納得させ、新たにファウンデーション王国と号した彼らアコードと旧プラントの違法コーディネーター達、そして各地の統一主義者達は圧倒的技術力・軍事力を以て旧東アジア地域を統一してしまった。
そして1年後、宰相オルフェ・ラム・タオの優れた手腕によって国内の安定化を確認した後、既に形骸化しかかっていた地球連合に代わる新たな国際組織として人類統一連合の設立を提唱した。
これには大西洋連邦とユーラシア連邦から大いに反対されたものの、混迷の続くアフリカの一部やファウンデーションという強大な仮想敵国が隣に出来てしまった大洋州連合が屈服する形で賛成に回った。
これを受け、ファウンデーションは地球圏統一事業の開始を宣言した。
手始めとばかりにユーラシアと交渉した後、混迷の続くアフリカ地域の再編事業を開始した。
ビクトリア周辺の防衛及び治安維持をユーラシアに任せつつ、驚くべき外交手腕と少数ながらも精強な近衛騎士団ブラックナイトスコード率いる精鋭部隊により、瞬く間に各地の民族主義者を撃破、元ザフト兵の傭兵達も吸収して僅か半年で混迷極まるアフリカを平定してしまったのだ。
そこからは早かった。
ユーラシアにてアフリカ平定の記念式典が開かれたのと同日、ユーラシア連邦各地で独立派が蜂起()したのだ。
再構築戦争以前の、何千年と続く民族主義が火を吹いたかの様に、ユーラシア連邦各地で荒れ狂ったのだ。
これに対し、当然ながらユーラシア連邦は後手に回った。
戦後、当然ながら軍縮していた彼らは多くの旧式兵器をPMCや他国に売却し、兵器類の更新も欠陥の解消等を除けば殆ど行われていなかった。
そこに各大都市含むあらゆる場所で火が点いたら、後手に回るのも当然だろう。
更に言えば、結構な数の政府閣僚が殺害された事もあり、軍部への命令系統が寸断してしまったのも痛かった。
無論、懲罰覚悟で展開した部隊もあったが、半数近くが戦後に締め直された綱紀粛正により国土が、市民が傷つけられていく様子を即応待機しながら見ている事しか出来なかった。
しかもテロリストが持ち出した戦力にはダガーのみならず、旧ザフト系MSも多数確認されたのだ。
後の調査で武装解除されたアフリカ系テロリストのものがファウンデーションが戦費の足しとしてFCS等を削除して作業用として販売したものだったが、複数のペーパーカンパニーを通じてテロリストの元へと渡ったらしい()。
「えぇい、仕方あるまい。これより我々は自衛行動を取る!ブラックナイトスコード、式典に参加した要人を最寄りの軍事基地まで護衛せよ!」
アフリカ平定で使用したフェムテク装甲へ換装したゲイツ改ではなく、完全な新設計の次世代機としてブラックナイトスコード・ルドラが式典には参加していた。
彼らはしっかりと役目を果たし、ユーラシア連邦首相含む要人の護衛を成功させた。
ここからの縁で、全土に広がってしまったテロ鎮圧のため、ユーラシア連邦は改めて正規軍に出撃命令を下したものの、出撃が知られるや否やテロリスト達は即座に撤退を開始、あっさりと逃げ去ってしまった。
勿論全てがそうではなく、数割は撃破に成功し、多くの捕縛者を確保したものの、彼らから拠点の場所を聞き出した頃には既に移動してもぬけの殻だった。
そして、次を探し始めた頃にはまた何処かの街が襲われる。
余りにも鮮やかであり、テロリストにしては余りにも統率の取れた行動だった。
思った様な成果が出せない政府と軍に、閉塞感と恐怖、何よりも生存本能から民衆は政府と軍に非難を向け、事態の早期解決を求めた。
なお、テロリストを非難する民衆は内心は兎も角として余りいなかった。
だってそれすると狙われるし…というのが大方の意見だった。
だが、軍縮により戦力が充実していない上に大気圏内飛行できる即応展開可能なAA級強襲揚陸艦もないユーラシア軍では急行可能な戦力は空軍のみであり、そちらも既存のスピアヘッドが過半で、高価なスカイグラスパーは殆どなく、PD搭載MS相手では火力不足も甚だしい。
警察や情報部の捜査でも犯行グループの捕捉にまで至らず、苦しい時期が続いた。
そして最も大事な事だが、間も無く選挙の時期が近づいていた。
こんな状況で選挙しようものなら、速攻でテロの標的にされかねない。
厳重な警備をしようが、テロを未然に防がない限りは確実に被害が出る。
その事態をユーラシア首脳部は肯定する事は出来ず、さりとて法律で定められた選挙を行わない事は許されない。
が、それをするには圧倒的に時間と人手が足りていない。
虱潰しのローラー作戦を行うには、戦時中なら兎も角として今の軍縮後のユーラシアでは何もかもが足りていなかった。
『お困りのご様子ですし、我々が助力いたしましょうか?例のテロリスト共、どうやら貴国と我が国の境界線付近に潜んでいるみたいですし。』
そして、善意の第三者が声をかけてきた。
色々と疑惑があるのは確かだが、その辺りはぐっと飲み込んで、ユーラシアはファウンデーション王国とこの事件において協力関係を締結する事となった。
それからは割とあっさりと済んだ。
嘗ての地球連合3大構成国の2つが手を組んだのだから、当然の結果として、双方向から挟まれたテロリストはあっさりと鎮圧され、最終的には押し込んだ主力部隊の最先鋒を巻き込んでの自爆で一連の事件は終了した。
何とか選挙は行えたものの、現政権の力不足は目に余るとして首相は落選したものの、それでも最低限の仕事を果たす事は出来た。
そしてファウンデーション側への見返りとして、新たな国際組織たる人類統一連合の成立に協力する事となる。
経済面や軍事面ではなく、あくまで外交的努力で済むならばマシだろうと政権交代後のユーラシア連邦も改めてこれを承諾し、先ずは国際テロを未然に防ぐための枠組みとしてスタートしていく事となった。
……………
一方、大西洋連邦と火星連邦は平和だった。
片や実質地球の盟主であり、片や成立から間もないとは言えその友好国。
どちらも地球人類圏で最大規模の経済力を持つ二か国は互いが一番の取引相手であり、蜜月関係にあった。
特に木星自治区から齎される核融合炉の燃料たるヘリウム3は月面から採取される量が減少傾向にある事から盛んに取引されており、大きな利益となっていた。
そうして得た外貨で火星連邦は地球圏から円筒コロニー改装型移民船を発注し、火星への定期便を増やし、同時に到着後は新たな居住コロニーとして改装する。
内部には人だけでなく、ミョウジョウフーズで十分なノウハウが積まれた食料生産工場が建築されており、多くの野菜類や家畜の育成も行っていた。
こうした家畜や野菜類と共に運ばれてくる微生物等もまた、火星には無いものだった。
テラフォーミングは進んでいるが、未だアーコロジーや地下都市が主体となっている火星地表の住居では、こうしたものを栽培するスペースが足りていないし、土壌を改善するためにもこうした有機物や微生物の購入は必要不可欠だった。
勿論自らコロニーを建設して食料生産工場を建てる事もしているが、それだけではどうしても必要量には至らず、この10年間は常に一定の新規コロニー建設を発注している状況だった。
戦後の復興需要による融合炉の燃料の需要増加、そして継続的な新規コロニー建設の受注こそが大西洋と火星の大事な双方向繋がりだった。
「では、その繋がりを断とうではないか。」
こうして、ファウンデーションの次の謀略の矛先が大西洋連邦と火星連邦へと向けられた。
〇ゲイツ改
ファウンデーション王国が建国初期に採用した機体。
ゲイツをベースに主装甲をフェムテク装甲に換装、PDを撤廃してその分の余剰出力を機体のパワー及びレールガンへと回す事で機体性能の底上げを図っている。
旧プラント技術者の協力もあって、OS等も最新のそれにアップデートされつつ、アコード達の乗機として反応速度の向上を主眼とした調整を行っている。
外観の変更こそほぼ無いものの、地上での運用を考慮して頭部前面と脚部にワイヤーカッターが追加されている。
カラーリングはオルフェ機は白、他の機体は黒をベースにそれぞれのパーソナルカラーがサブカラーとなっている。
入念にカスタムされているがアコード達にはまだまだ不満があるらしく、けれども他の機体よりはマシという事でブラックナイトスコードが開発されるまではこの機体に搭乗する事となる。
この機体の運用データを元に、ブラックナイトスコード系が開発されていく事となる。
武装は携行式レールガン、複合防盾システム(20mmバルカン×2、ロケットアンカー内蔵)、頭部20mmバルカン、レーザー重斬刀。