超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話 作:VISP
C.E.80年代後半は、正しく戦争前夜と呼ぶべき日々だった。
ファウンデーション王国の提唱・設立した新たな国際機関としての人類統一連合。
東アジアは言うに及ばず、ユーラシア連邦も大西洋連邦も何だかんだと加盟した。
大洋州連合もその圧力に屈し、南アメリカ合衆国も再独立後間も無く発生した世界恐慌へのダメージから立ち直れずに加盟する事になった。
幾つかの例外として前大戦から中立を貫いたスカンジナビア王国、オーブ連合首長国、赤道連邦、汎ムスリム議会が挙げられるが、そんな彼らにもファウンデーション王国からの圧力は日を追う毎に増していた。
そんな彼らに手を差し伸べる者がいた。
『お困りのご様子ですし、お安くしておきますよ。』
ご存知火星連邦だった。
彼らは既に地球圏で旧式ながらも未だ多くの勢力で生産・運用が続いている名機たるバタラのバタラⅡへのアップデート及び他改修機の販売を格安で行ってくれた。
他にも貿易摩擦で取引額が大きく減った高品質な工業生産品や各種希土類等も格安で販売し、代わりに作物の種苗や家畜、高級な嗜好品等を大量に購入していった。
この行動を見ていたロゴス他地球圏の富裕層は火星連邦の裏の意図を察し、子息や資産の一部をまた火星連邦へと逃がすために行動を開始した。
この行動をファウンデーション王国は非難したが、あくまで個々人の自由な経済活動であるとしてそれ以上の対応は出来なかった。
何せ止めようにも物凄い勢いで火星連邦に資産が動き続けており、下手に止めようとすると意図しない形で経済危機が起きかねないと判断したのだ。
誰もがもう分かっていたのだ。
ファウンデーション王国は文字通り人類を一つの政体に統一するまで止まらない事を。
そして、火星連邦はそれを絶対に認めない事を。
二つの異なるイデオロギーが激突する時、どうなるか。
それは過去の人類史が既に物語っている。
即ち、激突である。
……………
「こら。」
「え、起きてたんですか!?」
いつも通りの深酒…と思っていたのはイングリットだけだった。
もう何度目かも分からないハーブティー()を淹れ、お楽しみタイムと思って服を脱がすために襟元を緩めようとしたイングリットに対し、寝たふりを解いたオルフェがその細腕を掴んだ。
「流石にこう何度も続けば違和感を抱くさ。」
「その割に何度も飲んでくださったみたいですけど…。」
「ゴホン!兎に角だ。イングリット、今後はこんな事は控えてほしい。私と君の関係はこんな形であるべきじゃない。」
宰相とその補佐官であり、同じアコードで同胞で、何より家族である二人。
イングリットはそれを恋へと昇華し、オルフェはそれに戸惑っていた。
戸惑っている間に食われたが、まぁそれはご愛敬で。
「いやです。貴方の心がラクス・クラインに向けられている事は分かります。でもどうか、一時の休息の間だけで良いのです。貴方の情欲を私に吐き出すだけでいいんです。だから…!」
「あぁ、いや、そうじゃなくてだな。」
最初から悲壮な覚悟を決めていたイングリットに対し、オルフェはそっと懐から小箱を取り出し、それをイングリットの前で開いた。
そこに入っていたのは、小ぶりなダイヤを埋め込んだシンプルなプラチナ製の指輪だった。
オルフェの収入からすれば些細で質素、しかし普段煌びやかな装飾と馴染み深い二人にとっては真心の感じられる贈り物だった。
「その、改めて考えたんだ。私は君と今後も一緒にいたい。どうか私と共に人生を歩んでくれないか。」
「オルフェ…!」
そのまま嬉しさのまま、イングリットはオルフェに勢いよく抱き着き、溢れ出した涙をそのままに返答する。
「私、私も…っ!ずっと、オルフェといたい!貴方と最後まで共にいたい!!」
「あぁ、私もだ。」
その日、二人のいる部屋の明かりはその後間もなく消えた。
しかし、その部屋から人の気配が消える事は夜が明けるまで無かった。
時はC.E.88年、戦争の足音が聞こえてき始めた頃の事だった。
……………
C.E.88年、遂にファウンデーション王国は、人類統一連合はその牙を露わにした。
「期は満ちた。人類は真に一つとなり、より遠く、より高く飛翔すべき時が訪れた。しかし、未だに人類は一つになれていない。この状況を我らファウンデーション王国は大いに憂うものである。」
「よって人類統一連合として初の行動、即ち人類勢力の真なる統一事業の開始を宣言する!」
こうして始まった人類統一連合の、ファウンデーション王国が主体となった地球圏の人類統一事業は遂に最終段階へ到達した。
この宣言の直後、未だ独立を保っていたスカンジナビア王国、オーブ連合首長国、赤道連邦、汎ムスリム議会に対して一斉に人類統一連合への最後の加盟勧告を行った。
しかも48時間後に返答を義務づけるというおまけ付きで。
実質的な最後通牒である。
これに激怒したオーブ・赤道連合・汎ムスリム会議は即座に拒否、同時に中立連合を設立して徹底抗戦の構えを取ったが、手遅れだった。
なお、この時油断なくオーブが中心となって戦争における禁止行為を明確にした戦時条約が結ばれ、大量破壊兵器の使用及び民間船舶やコロニーへの攻撃、虐殺行為等が禁止される事となった。
連携される前に実行された人類統一連合軍側の電撃戦により前線レベルでの連携を取る事が出来ず、元々地理的にほぼ全方位を囲まれたスカンジナビアが真っ先に降伏し、次いで汎ムスリム議会、赤道連邦、そしてオーブの順で陥落し、全土が占領下に置かれる事となった。
とは言え、中立連合もタダで負けた訳ではない。
事前に購入していた最新のバタラⅡ(輸出仕様)及びその生産ラインを最大限利用し、更にオーブの独自開発したアストレイと合わせて多数のMS部隊を展開、未だダガー系が数的主力である人類統一連合軍に対して、数で劣りながらも互角の戦闘を繰り広げたのだ。
人類統一連合軍の主体であるユーラシアと旧東アジア軍のMSはダガー系、それも前大戦からOSの調整位しか近代化改修を行っていないため、最新版のバタラ系列機の相手は荷が重かった。
具体的には近代化改修され、アマクサのパーツを移植されたバタラⅡ及び4脚の陸戦重装型バタラⅡ、そしてマリンバタラが猛威を振るい、この人類統一戦争初期の中立連合の戦線を支えた。
特にマリンバタラは脅威であり、アクア装備のダガー系と旧式化したザフト水泳部しか水中用MSを持たない人類統一連合の水中戦力は多数が撃破された。
しかし、地上においてはファウンデーションの近衛騎士団及び一般兵の中でもベテラン等の精鋭に配備されたブラックナイトスコード・ルドラ及び簡易版のグレーソルジャーの投入が始まると防衛線が突破され、そこから崩される事例が多発し、徐々に戦線は縮小し、縮小すればする程に防衛線への圧力が増していった。
それでも中立連合は最後まで粘り強く戦い続けた。
特にオーブは島国としての特性を大いに生かして制空権と制海権の確保に特化した軍備をしており、火星連邦から購入したマリンバタラの他、独自に生産したビーム旋回砲塔を備えた制空戦闘機ムラサメを用いて人類統一連合軍相手に果敢に戦い続けた。
その中には一部を赤く塗装されたエース専用機もあり、グレーソルジャーを始めとした高性能量産機も多数撃破される事となった。
だが、本格的に精鋭であるブラックナイトスコードが投入され始めると劣勢となり、遂には本土周辺を残すのみとなってしまった。
難民船等への攻撃が戦時条約で禁じられていた事もあり、多くの国民を宇宙へと脱出させた後、火星連邦行きのコロニー改装型輸送船へ移動して地球圏から離脱していった。
この中にはオーブ連邦首長国の次期後継者であるカガリとその婚約者アレックス・ディノの他、有力者らの子息の姿もあった。
その後、これ以上の犠牲は無用としてウズミ他政府首班は降伏を選択し、人類統一連合はこれを受託した。
これが約半年続いた人類統一連合による地球圏統一戦争の幕引きだった。
これ以降、人類統一連合は新たに加えた領土に対して占領政策の一環として遺伝子による適正診断、即ちデスティニープランを実施し、新たな世界秩序の姿を内外に見せつける形となった。
とは言え、原作の様にスラム街等を敢えて残して役に立たない人間を捨て駒にする様な真似はせず、あくまで安価な労働力として扱うという点はまだマシと言えたが。
それでも多くの人間から優秀となるべく遺伝子調整された違法コーディネーターを贔屓している様にも見られており、未だ各地で潜在的反政府組織としてテロ活動を行っているブルーコスモスからは凄まじい反感を買う事となった。
だが、優秀極まる宰相と地球圏最強クラスの近衛騎士団ブラックナイトによりそうした反政府勢力は瞬く間に制圧され、一月と保つ事なく全ての構成員が逮捕或いは射殺されて終わった。
こうしたデスティニープランを主体とした統治政策は他の人類統一連合参加国からも非難の声が上がったものの、効率よく発展している点を強調してこの意見を退けている。
ファウンデーションの直接統治下にある旧東アジア、次いでアフリカもその統治により効率よく復興・発展をしているものの、やはり多くの被差別者を生んだ事から非難の声が上がって…しかし消えていった。
声を上げる=差別対象である遺伝子的劣等者という風聞が生まれたため、下手に主張する事が出来なくなっていたのだ。
もしそう周囲から判断されれば、途端に嘗てのコーディネーターの様な迫害を受ける可能性が高まる。
それが分かるからこそ、誰もが口を噤む事を選んだのだ。
また、強硬手段に出ればどうなるかも既にブルーコスモス壊滅の一件により知られていた事も大きかった。
一方、油断なく内政の自治に関してはきっちりと確約していたユーラシアと大西洋は国内を荒らされる事こそ無かったものの、頭を抱えていた。
混乱し、離脱すべきという意見もあったユーラシアだが、既に人類統一連合の経済圏に組み込まれている以上、下手に離脱すれば経済破綻が起こる可能性が高く、監視もされている事から迂闊に動けなかった。
大西洋連邦はやっぱこうなったかーと事態を冷静に見つめていた。
人類史上何度もあった政府公認の差別や迫害。
それが起きる可能性を早期に察知していた大西洋連邦は、しかし自分が既に人類統一連合の経済圏に組み込まれている事も理解しつつ、改めて守りを固める事にした。
彼らは分かっていたのだ。
ファウンデーションが火星連邦と激突し、結果はどうあれ大惨事になるだろう事を。
〇陸戦重装型バタラⅡ
前大戦時に活躍したバタラ(陸戦重装型)に対してバタラⅡと内装系に限り同様の改修を施した機体。
基礎構造こそ変更はないものの、使用されたアマクサの核融合炉を始めとした内装系により性能が向上し、前大戦から20年近く経過している時代でも陸戦兵器として第一線で活躍している。
出力が向上した事でPDやレールガン、機体そのもののパワーが向上しており、パイロット次第では最新鋭機相手でも十分戦闘に耐え得る機体となっている。
追加装備として脚部に水上用フロート、雪上用スキー、砂上用サンドボードが存在し、本体の推進系と合わせて通常歩行や履帯よりも高速で移動可能。
〇ムラサメ
オーブ初の純国産制空戦闘機。
本来ならばMSへと可変する戦闘機として完成する筈だったのだが、国産MSのアストレイの開発計画が遅れた事から開発計画が遅延、その後は予算の兼ね合いから停止されていた。
しかし、大西洋連邦のスカイグラスパーの活躍から新たに制空戦闘機として開発計画が再始動した。
当初はレールガンかリニアガンを搭載しようとしたが射撃反動により機体の安定性が著しく損なわれる事から廃案になり、火星連邦の技術協力もあって当初バタラ向けに開発されていたビームライフルを小型低出力・砲塔化して再設計したものを搭載する事になった。
推進系統は3発式のジェット・ロケット併用エンジンを搭載しており、高級制空戦闘機として良好な性能を発揮した事で制式採用された。
左右の主翼にそれぞれ三つのパイロンを、胴体下部に兵器庫を備え、状況に応じて装備を追加できる。
開発が遅れたため実戦運用された数は多くないが、オーブ領空の制空戦闘を中心に多くの戦果を挙げた名機として記録された。
仮想敵機であるスカイグラスパーに対して本体重量の面でやや劣るものの、兵器庫や燃料の搭載スペースは多い事から継続戦闘能力においては勝っている。
しかし、本機とスカイグラスパーが直接戦闘する機会は終ぞ無く、人類統一連合による火星侵攻作戦の頓挫した後で大西洋連邦軍との大規模合同演習で初めて交戦する事となる。
武装は20mm機首バルカン×2、砲塔式ビーム砲×1。
オプションで3連装多目的ミサイル、8連装小型ロケット弾、大型対艦ミサイル、対地攻撃爆弾他を搭載可能。