超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話   作:VISP

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火星編 人類統一連合編 6 ダイモス防衛戦

 C.E.90年半ば、遂に人類統一連合軍の先行艦隊が、次いで主力艦隊がもう間も無く火星圏へと到着する予定だった。

 統一連合艦隊の戦略として、火星圏に降りるためには要塞化された二つの衛星を攻略する必要があった。

 即ち、フォボスとダイモスである。

 フォボスの方が大きく、内側の軌道を公転し、ダイモスの方が小さく、外側の軌道を公転している。

 先ずはダイモスを、次にフォボス、そして火星本土となる。

 コロニーからは最低限の人員を除いて既に民間人の避難が完了しており、軍事的な価値は無い事、そしてプラント敗戦におけるマンパワーの浪費の観点から後回しにされる事となった。

 

 「間も無くだな、オルフェ。」

 「なんだシュラ、お前から顔を出してくるとは珍しい。」

 

 主力艦隊総旗艦ことヴァナヘイム級惑星間航宙戦艦グルヴェイグのブリッジ後方に位置する疑似重力発生区画の展望台にて

 そこで執務を終え、宇宙を静かに眺めて物思いに耽っていたオルフェの下に、唐突にシュラが現れた。

 

 「その端末は…イングリット達か。」

 「読んだのか?」

 「読まずとも分かる。顔が緩んでるぞ。」

 

 オルフェの持つスマフォ型の端末。

 そこには彼の愛しい妻子の姿が写っていた。

 対火星連邦遠征軍の総司令官としての職務の傍ら、それでもオルフェは決して妻子を忘れる事は無かった。

 録音した妻子の声を聴く事もあるが、やはり肉声には敵わないと思い、寂しさを募らせる日々だった。

 

 「率直に言う。次の戦いは我々が負けるだろう。」

 「らしくもない。お前がそんな事を言うとは。」

 「茶化すな。お前程じゃないが、オレも戦術指揮くらいは出来るし、歴とした国防長官だぞ。その上での判断だ。」

 

 シュラは自らに誇りある戦士としての在り方を課している。

 しかし、それは自らの技量に絶対の自信を持つが故の戒め、舐めプに近い。

 そんな彼が一切の驕りを捨てての断言という初めての事態にオルフェは面食らっていた。

 

 「他の三人も含めて、どいつもこいつも緩み切っている。先行艦隊が盾になっているのもあるが、これは火星側の戦略だろうな。」

 「気を抜いた所を不意を突いて一気に殲滅か。条約の関係で大量破壊兵器は禁じられているが…。」

 「連中はプラント程極端じゃないが、技術力はこちらを凌駕していると見て良い。」

 

 火星連邦への分析に関しては、ファウンデーションもその総力を挙げて行っているが、多くの部分は不明としか言いようがなかった。

 勿論、ビジネスマンや旅行客やそれを装った諜報員からの情報から、その技術力の高さは特筆すべきものがあると判断している。

 しかし、それ以上の具体的な軍事技術に関する情報は殆ど入手出来なかった。

 軍事施設へと潜り込んだ諜報員は残らず消息を絶ち、MIA判定を下された。

 地理的な要因もあって多数の諜報員を送り込んでスパイ網を構築する事も出来ず、民間人からの情報収集を主体に判断せざるを得なかったのだ。

 そして今、本格的に戦闘する事も無いまま、一方的に戦力を消耗させられ続けている。

 そんな状態でどう考えても決戦に向けて万全の準備を整えているだろう火星連邦の宇宙要塞へと、無策のまま突き進む?

 頭沸いてんのかテメェ?

 それが偽らざる理性的な面々の思いだった。

 話合いでどうにか形だけでもこちらの傘下に入ってもらえればそれで良かったのだが、それを正面から断られた上、体制の不備を指摘された事でアウラ女王は怒り心頭だった。

 それこそ戦って懲罰を与えよとオルフェ達に命じる程度には。 

 この時点でもう、選択肢は一つしか無かった。

 

 「そもそも前大戦からして盤面を引っ掻き回し続けた連中だぞ。どんな隠し玉を持っているか見当もつかん。」

 「それでもやらねばならなかった。でなくば、地球圏のあらゆる活動が停止する。」

 「ヘリウム3か。」

 「あぁ。月面からもう殆ど採掘できない以上、木星から採取してくるか、採取済みのものを火星から奪うしかない。」

 

 結局、人類は旧世紀から続く資源を巡る争いから抜け出す事は出来なかった。

 月のヘリウム3はその表面から数m程堆積している砂、レゴリスに含まれる形で存在する。

 月が誕生してから45億年、その間に太陽で発生したヘリウム3が太陽風に乗って飛ばされ、蓄積し続けた事でその埋蔵量は100万トンにも達する。

 それは人類が1万年以上使用するに足る量だったが…ここはガンダム世界である。

 この世界は地球圏を飛び超え、火星や木星、金星ですら人々は戦争をし続けた。

 結果として月のヘリウム3は幾度もの文明発達と滅亡の度に徐々に減っていき、今や殆どを採掘し切ってしまったのだ。

 と言っても、費用対効果を無視すればまだ多少は取れるのだが、沢山ある場所が分かっているのならそちらから欲しいのが人というものだった。

 加えて、何時までも火星に資源の大元を握られた状態に嫌気の差した者達が多かった事も大きい。

 そうでなくば、幾ら女王の命令と言えど宰相たるオルフェの権限で却下していた。

 

 「負けは必然だとして、消耗を抑えろと言う事か?」

 「いや、そっちじゃない。」

 

 すっと、一歩近づいて、シュラは小声で囁いた。

 

 「もしもの時は俺達も見捨てて撤退しろ。イングリットは兎も角、母上とリデラードでは国を治める事は出来ん。故にお前だけは何が何でも生き残れ。」

 

 その内容に、オルフェは愕然として目を見開いた。

 

 「お前ホントにシュラか!?偽者じゃあるまいな!?」

 「喧嘩売ってんのか貴様は!!」

 

 突然の罵倒にキレるシュラ。

 珍しく心配してるのに返された言葉がこれではそりゃキレるのも無理ないだろう。

 

 「っとに!…言うべき事は言ったからな。もしもの時はオレが殿を務める。後は任せたぞ。」

 

 最後にそれだけを言い捨てて、シュラは展望台を去っていった。

 二人が直接顔を合わせて話したのは、これが最後となった。

 この二日後、遠征艦隊はダイモス攻略作戦を開始する事となる。

 

 

 ……………

 

 

 衛星ダイモス

 フォボスと並んで火星開発の最初期に入植し、拠点として整備されていった火星の衛星の片割れなのだが、現在は火星圏絶対防衛線の双璧として軍事要塞へと改装されている。

 その大きさはもう一つの衛星フォボスと比べて遥かに小さいものの、内部に水や空気を含んでいた事から初期の開拓では重宝され、積極的に採掘されていた。

 現在は採掘が終了し、採掘跡に軍事基地としての施設を設置して運用されている。

 形状は凸凹のあるジャガイモの様になっており、最大直径は約15kmとなっている。

 ちなみに月は3470km、フォボスは27kmとなっている。

 こんな感じなので、月の様なグリマルディ戦線が構築される程の大きさは無く、全土を要塞に改装する事が出来ている。

 

 Q、で、そんな念入りに構築された要塞の防衛線に疲弊した艦隊で勝てるの?

 A、勝てるわきゃねぇだろうがぁ~~~~!

 

 これである。

 要塞本体の展開するPD、4重に展開するGNドライヴ搭載艦隊戦力による防衛線、バタラⅡとジンクスⅠとⅡにおまけでアマクサが主体となる防衛部隊、何よりPDを平然と貫通してくる艦砲射撃とMS部隊の携行武装。

 士気も装備も指揮系統も万全なこんな連中に長い航海で妨害されまくって疲弊し切りの先行艦隊が勝てる訳が無いのは道理であった。

 

 『まぁそもそも宇宙要塞を相手に艦隊で平押しではどうにもならんとは、前大戦で証明されているからな。』

 

 例外として、特装陽電子砲等の超高出力の熱光学兵器、そして核弾頭やジェネシスの様な戦略兵器が挙げられる。

 他にも結局成功しなかったが、要塞やコロニーを質量弾としてぶつける方法もある。

 しかし、そうした戦略兵器や巨大質量弾の類は条約により禁止された。

 

 Q、じゃあどうやって要塞という後方の安全地帯を持つ防衛線を突破するの?

 A、砲撃を互いに完全に封じて肉薄する。

 

 あっさりと壊滅した先行艦隊を押しのける形で、主力艦隊が前に出てくる。

 その行動に後退する意志は無く、故にダイモス防衛艦隊から砲撃が放たれる。

 ミサイルにレールガンというお決まりのものから、新たに搭載されたGNドッズキャノンの一撃により、幾らかの艦艇が展開していたPDを貫いて直撃し、轟沈していく。

 それでいて人類統一連合側からの砲撃はGNフィールドによって完全に防御、或いはPDによって大きく減衰してしまい、碌な有効打にならない。

 このまま行けば順調に勝てる、火星連邦側がそう思った時の事だった。

 

 『よし、プランA発動!アンチビーム爆雷及びダミーバルーン射出!前衛艦は予定通り盾となれ!』

 

 だからこそ、選んだのは的を増やし、相手の射撃を減衰しつつ、盾を構えての突撃だった。

 完全に脳筋戦術だったが、火力と防御に勝る相手には有用な戦術である事は確かだった。

 

 『敵陣に対し突撃せよ!懐に飛び込めば、誤射を恐れてこちらには撃てん!』

 

 実際、有効な戦術だった。

 要塞砲も艦砲も、その威力から下手に味方に当ててしまうと大ダメージは避けられない。

 だが、それは懐に飛び込めればの話だ。

 火星連邦の技術力は彼らの想定を大きく超えていた。

 具体的には、MS一機一機が主力戦艦を一撃で撃沈可能な火力を持ち、防御力もフェムテク装甲に比肩、バリア機能を含めれば凌駕するという事を。

 レールガンとレーザー重斬刀による制宙戦闘が主体とされるこの世界のMSに、対艦級の火力を連射可能なMS用装備が量産配備されている等、彼らの想像の埒外だったのだ。

 更に言えば、彼らが先行艦隊が蹂躙される時に見ていた戦闘では、奥の手の一つであるワイオミングとアーカンソーは後方に控えていた。

 何よりも、彼らの使うダミーバルーンやナチュラル用OSは元々火星連邦の、ミョウジョウ博士由来の品なのだ。

 

 『敵艦隊、ダミーバルーン及びアンチビーム爆雷を展開。こちらに吶喊してきます!』

 『落ち着け。どちらも数に限りはある。全艦、爆雷を撒きつつ後退しろ。アンチビーム爆雷の効果が消えるまでビームの使用は控え、実弾で対応せよ。ワイオミングとアーカンソーは出番だ。一番突出してくる敵艦を叩いて足を止めてやれ。各員はダミーに騙されるなよ。光学観測を怠るな。』

 

 アンチビーム爆雷が展開されているのなら、ビームを使わなければ良い。

 敵艦隊が突撃して距離を縮めるてくるのなら、こちらは後退すれば良い。

 ダミーバルーンが展開されているのなら、騙されずにしっかり敵に向けて撃てば良い。

 

 『そろそろ敵の特務隊も出てくるだろう。控えていたMD部隊を出す。』

 『よろしいのですか?』

 『ここが切り時だ。折角200機もあるんだ。多少使い捨ててもバチは当たるまい。』

 

 要塞司令官はアコード側の戦術をしっかりと見切っていた。

 これは諜報活動でファウンデーション側を凌駕していた火星連邦とそれに協力していたロゴスや中立同盟の働きもあった。

 なお、ここまでMDを温存していたのは何の事はない、単に指揮官となるパイロットの習熟が余り進んでいなかったのが理由だ。

 加えて、バタラ系の生産ライン自体はここダイモスにもあったのだが、どっちかというとバタラⅡの生産を重視して回していたため、そこまで多くは無かったのだ。

 それでもパーツ共有率は高いため、多少ラインへの負荷を無視してフルで回せば数を揃える事が出来る。

 勿論、指揮官がいない場合でも要塞からの命令を受信すればその指示に従う程度の事は可能となっている。

 こうして、僅かな希望へと突き進む人類統一連合主力艦隊の前に、唐突に1200mmレールカノン搭載艦2隻と死を厭わぬ無人MS200機がお出しされる事となったのだった。

 

 『態々火星まで死に物狂いで来てくれたんだ。盛大に持て成してあげようじゃないか。』

 

 突撃する艦隊に対してアーカンソーとワイオミングから放たれた1200mmレールカノンが突き刺さり、派手に轟沈させると同時、ドッズガンを装備したMD化したバタラ(無人仕様)が一斉に襲い掛かった。

 

 




なお、まだ隠し玉がある模様。
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