超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話 作:VISP
C.E.90年半ば頃、ダイモス防衛戦は佳境にあった。
(分かっていたが、これでも揺るがないか!)
人類統一連合艦隊旗艦ヴァナヘイム級惑星間航宙戦艦グルヴェイグの艦橋にて、表では涼しい顔を保ちながらも内心では予想通りの最悪の事態に頭を悩ませていた。
宇宙要塞とその防衛艦隊の撃滅。
これはC.E.世界の宇宙では殆ど前例のない難事だった。
数少ない例外がボアズとヤキンドゥーエ攻略作戦であり、物量と圧倒的火力、そして自らもアルテミス要塞を移動させて対抗すると言う非常に脳筋な戦術によって地球連合・火星連邦の連合艦隊はザフトに対して勝利した。
だが、地球から火星へと長距離航行するには宇宙要塞は無理がある。
例えレーザー核パルスエンジンやD.S.S.D.を制圧して設計させた艦艇用ヴォワチュール・リュミエールを取り付けたとしても、宇宙要塞という大質量を動かすのは骨が折れる。
そうやって多額の改修費をかけたとしても、少なくとも片道に年単位の時間が掛かりかねない。
人件費含む予算を考えると、国政を預かる身としてはどう考えてもNGだった。
だからこそ、オルフェは要塞の利点を潰す方向へと舵を切った。
ダミーバルーンにアンチビーム爆雷を用いて要塞及び艦隊の火力を一時的にでも低下させ、その隙に懐に飛び込んで、要塞砲を撃てない状況へと縺れ込む。
その状態でブラックナイトを中心とした精鋭MS部隊を出撃させて攪乱、更に前進して要塞に取り付く事で死角に潜り込み、同時に要塞に命中してしまう事から艦隊からの火力も封じる事が出来る。
正に肉を切らせて骨を断つこの戦術だが、最も重要なのは速さだ。
突如数が増えた様に見える艦隊が、防御を増した状態で一斉に突撃する。
その事による敵側の動揺に合わせた高速で敵艦隊と要塞へ接近する事こそがこの戦術の要。
だが、敵側の動揺が思ったよりも少なく、即座にされて嫌な手を打って来た。
爆雷を撒きつつ、後退して距離を取り、要塞砲(実際は大型レールガン搭載艦の主砲)と連携してこちらの勢いを止めようとしている。
更に光学観測を重点化する事でバルーンによる欺瞞も余り通じていない。
これが一般的なMSサイズの光学機器やセンサー系ならば十分騙せていたのだが…。
(いや、そもそもダミーバルーンを用いた対要塞戦術も火星連邦と地球連合が生み出した物。対抗措置位は事前に考案していたという事か。)
やはり、アコードだ何だと言っても人間に過ぎんな。
内心の自嘲を隠しながら、それでもすべき事をするために、オルフェは号令を掛ける。
『前衛の艦が排除され次第、12連装陽電子砲を一斉射及び無人MS隊は突撃!敵要塞への道を開け!』
前衛艦、その中でも盾役を任された艦はその出力の殆どをPDに回しつつ、装甲を増強する事で防御力を高めている。
これらを盾役として進軍していたのだが、火星連邦側の火力は凄まじく、想定したよりも前衛艦が削られる速度が速い。
このままでは一方的に撃破されると悟ったオルフェは即時に潰しの効くジンⅡやバタラから成る無人MS部隊を突撃させ、突破口を作らせようとした。
無人MSと言ってもMD程の完成度はない。
専ら対PD用を想定したレールガンやリニアカノン、表面にビームコーティングを施した大型ミサイルや砲弾を装填したロケット砲等を装備させ、火力支援に徹させるのが限界だった。
高度な機動、特に接近戦は不可能であり、この辺は蓄積したデータと費やした時間の差でもあった。
だが、要塞守備隊よりも遥かに数の多い火星遠征艦隊と合わせれば、その火力と物量もまた大いに脅威と成り得る。
『撃てぇい!』
放たれた砲火は防衛艦隊よりも多かった事から集中され、GNフィールドの限界を超えてしまった。
これにより幾つかの艦艇が中破に近い損傷を受け、防衛線から離れざるを得なくなった。
直ぐに他の艦艇がその穴を埋めようとするが、その僅かな隙を突く形で人類統一連合艦隊が防衛線に食い込んでいく。
『落伍した艦は狙うな!盾代わりにしろ!取り付き次第陸戦隊の投入を開始せよ!』
このオルフェの命令により戦線から離れる艦はほぼ撃沈される事はなかったものの、その分味方からの射線を塞ぐ形になってしまい、要塞に取り付く隙を与えてしまった。
『物資搬入口と思われるシャッターを発見!抉じ開けます!』
『よし、揚陸艇を出せ!陸戦隊、出番だぞ!』
歩兵を満載した揚陸艇が砲撃によって破壊されたシャッターへと突撃、内部へと突入していく。
全員が要塞内の制圧戦を想定したパワードスーツを纏った精鋭歩兵達だ。
ナチュラルが主体で構成されているが、その練度はかなりのものだ。
少なくとも、違法コーディネーターとは言え同数の普通の歩兵では敵わない程度の戦力だった。
『要塞内部に敵歩兵部隊の侵入を検知!』
『目標は此処か動力炉か…。要塞内戦闘を開始する!歩兵部隊及び防衛用オートマトンは迎撃せよ!』
パワードスーツを含めた歩兵部隊と対人仕様のオートマトンが迎撃に走る。
要塞内の構造を把握してる分だけ防衛側が有利だが、それでも数は人類統一連合が勝る。
忽ち要塞各所で戦闘が発生し、安全地帯ではなくなってしまった。
即ち、防衛艦隊の補給・修理に割けるだけの余力が大きく減じてしまった事を意味する。
『司令、このままでは押し切られる可能性が!』
『いや、まだだ。制宙戦闘はこちらが有利だ。それに時間を稼げば増援が来る。』
事実、ここダイモスは確かに火星絶対防衛圏の片割れだが、こちらはそのサイズ上配備できる艦隊に限りがある。
しかし、フォボスならばダイモス防衛艦隊の3倍近い戦力が待機しており、既に救援要請も送っているので直に増援が到着するだろう。
それまで保たせればよい。
実際、勝算はあった。
出撃したMD部隊により、敵艦隊及びMS部隊は打撃を受けている。
また、艦艇の数こそ相手側がこちらの3倍近いが、性能はこちらが上回っている。
艦艇のキルレシオは2.5:1とこちら有利で、MS部隊(MDと敵エース含め)は1:3位になる。
数の差を含めればほぼ互角と言って良い。
要塞に取り付かれ、要塞砲による支援や後方の拠点として活用できない事は大きな失点だが、それでも時間稼ぎ程度はまだ十分可能と言えた。
『各員、奮起せよ!時間は我が方の味方だ!1分1秒でも長く時間を稼げ!そうすれば味方が来る!』
人類統一連合による火星侵攻作戦、その中で初の大規模戦闘たるダイモス防衛戦は佳境に入ろうとしていた。
……………
『やれやれ、何機いるんだか。』
何体目になるかもう忘れたバタラⅡを切り捨てながら、ブラックナイトスコード・シヴァのコクピットでシュラは呟いた。
正確な射撃、堅牢なPDと装甲、優秀な空間機動性と素直な操縦性。
成程、バタラは優秀な機体だ。
近代化改修でアップデートされたバタラⅡは前期型の長所を受け継ぎつつ、短所を潰した傑作機と言って良い。
火力に関しても極めて強力なビーム兵装を搭載し、攻防共に纏まっている。
しかも必ず僚機と連携する事で僅かに残った隙もほぼ消えている。
だが、所詮は普通のナチュラルが駆る量産機でしかない。
そも近接戦闘に特化させたピーキーなシヴァを駆るシュラにとって、火星連邦の一般パイロットと量産機は程良く強く、倒すと気持ちの良い相手だった。
戦闘開始と同時に艦隊の最先鋒として突撃、砲撃の雨を掻い潜りながら目に付く全てを切り刻んできた。
既に50近いMSと4隻の艦艇を撃破した彼だが、機体には目立った損傷はない。
これもフェムテク装甲の恩恵だが、そうでなければ流石に死んでいた場面もあった。
『っとぉ!』
殺意を感知したと同時、機体を加速させて射線から離脱する。
コンマ数秒後に赤いビームが視界の端を通過していく。
『敵のエースを確認!交戦を開始する!』
『連携を崩すな!奴は手強いぞ!』
『分かってる!味方の仇を討つぞ!』
(数を落とす事を優先したが、これ程の手練れが多数いるとはな!)
自分達とはまた異なる技術体系によって慣性・重力制御を可能とした「量産型」MS。
それを艦隊の半数近くまで配備している事に気付いた時、アコード達は顔を引き攣らせた。
地球圏ではMS搭載サイズの反重力機関は自分達の独占技術だったが、火星連邦では実用化をすっ飛んで既に量産して久しい事を察したのだ。
圧倒的技術格差に内心で頭を抱えながら、シュラは己の役割を熟し続ける。
『各機、数を活かせ!機体性能は火星側が上だ!死にたくないなら連携を維持しろ!』
テレパシーにより、改めて同胞達に警告を送るシュラ。
だが、残念ながらその警告は一手遅かった。
『くそ!コーディネーター所か、たかがナチュラルにぃ!』
『な、止めなさいグリフィン!』
アコードの一人、グリフィン・アルバレストの乗機たるルドラが小隊三機で連携するジンクスⅡへと突撃する。
無論、FT装甲を採用したブラックナイトスコード・ルドラならば、凡百なパイロットと機体相手ならば負ける事は有り得ない。
だが、相手は普通ではない。
機体の基本性能はほぼ互角だが、火力は圧倒的に相手が勝っている。
これだけならばまだ勝機はあったのだが、周囲に存在する人形達にはアコード特有の読心能力は意味を成さない。
『MD隊は突撃。後に退き撃ちに徹しろ。一機ずつ確実に減らすぞ。』
『('◇')ゞ』
MDから了解の意が返されたと同時、5機のバタラ(MD仕様)がそれぞれアコード達の駆るブラックナイトスコード・ルドラへと射撃を開始する。
人間の限界を超えた機動にFT装甲やPDすら貫通するGNドッズガンの射撃、何よりも無人機という特性上動きを読む事が出来ないため、必死に回避しつつレールガンで応戦する。
『お前らなんかが、俺達アコードにぃ!』
『やはりこちらの動きを先読みしているな。だが、詰みだ。』
攻撃を巧みに回避しつつ応射してくるジンクスⅡ、その射撃を回避しながら距離を詰めるグリフィンのルドラ。
火力が一方的に差がある関係上、距離を詰めて接近戦に持ち込まない限りはグリフィンに勝利は無い。
だが、迂闊な突撃は乱戦において悪手である。
通常、MDは有人の指揮官機1機につき、2機が配置される。
有人のジンクスⅡが3機にバタラ(MD仕様)が5機。
では、もう一機は?
『あ』
その思考を読んだ時、既にグリフィンはレーザー重斬刀を弾かれ、ノックバックで致命的な隙を晒していた状態だった。
空かさず、今まで敢えて後方にいた1機のバタラ(MD仕様)から放たれたGNドッズガンの一撃がルドラの上半身を蒸発、次いで爆散させた。
『う、うわあああああああああああッ!!』
『グリフィンンンンンンンンンンンッ!?』
アコード同士のテレパシーを通じ、断末魔の思念を悟ったダニエルとリューが混乱と怒り、何より恐怖によって絶叫を上げる。
同時、動きの乱れた二機を感情の無い人形達が捕らえた。
『馬鹿者共が…ッ!!』
三人の同胞達の思念が消えた事に、シュラは怒りと共に吐き捨てた。
確かにアコードは優れている。
しかし、絶対ではないのだ。
スペックが高くとも、それを使い熟せないのでは意味がない。
今まで格下ばかり相手にして勝利してきた経験上、他の奴らは失敗の経験が極端に薄い。
その点、シュラはパイロットとしては兎も角、国防長官として兵站を管理しつつ指揮官として時に敵の反撃によって想定を超える打撃を受けた事もある。
特に対中立同盟最後の戦い、オーブ攻略戦等では予想以上に軍備を整えていたオーブ軍相手に手痛い反撃を貰った。
そうした経験を持つシュラはイングリットやオルフェ同様、他のアコード達とは異なり、人として成長していた。
だが、他の4人にはそれが無かった。
それが致命的な差となって、今3人の命が消えた。
『仇を取ってやれるかは分からんが…タダでは済まさん!』
バタラ(MD仕様)を切り捨てながら、シュラは只管に戦場を駆け抜けた。
MDのAIは合成音声の他、文章で受け答えしてくれます。
付き従う有人機側からの設定によってはAAで対応してくれますw