超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話   作:VISP

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火星編 人類統一連合編 9 ダイモス防衛戦その4

 

 『艦隊各位へ告ぐ。この戦闘の趨勢は決した。遺憾ながら本艦隊は撤退を開始する。』

 

 この通信に対し、人類統一連合軍火星遠征艦隊は速やかに撤退へと移行する事で応えた。

 全員が何処かで理解していたのだ。

 態々遠く火星まで遠征した所で、何の利益にもならない無駄な戦いになると。

 しかし、政治がそれを必要とした。

 女王に命じられたのなら、王政であるファウンデーションとその影響下にある人類統一連合は従わねばならない。

 

 『ただし、降伏は各員の任意とする。火星連邦軍及び政府は誠実だ。降伏した所で君達に無体は働かないだろう。これは先行艦隊も含むものとする。』

 

 これには僅かな先行艦隊の生き残りからも歓声が上がった。

 だって強制的な手伝い戦でやる気マイナスで督戦隊がいる状況でやる気が上がる筈もない彼らからすれば、例え先程まで殺し合いをしていた相手だとしても渡りに船だったからだ。

 

 『撤退する艦は指定座標αへ集結せよ。敵の増援艦隊が来るまで時間は無いぞ。』

 

 この通信を境に火星遠征軍は撤退を開始した。

 ダイモス防衛艦隊は疲弊して損害の多い味方と降伏・救援要請を出す敵艦隊の回収に専念する事を決定した。

 一方、数は多くないが、足回りが損傷した事から時間稼ぎを決意した敵艦隊に対しては改アーガマ3隻が対応する事となった。

 その頃、邂逅を果たしたOガンダムとブラックナイトスコード・シヴァの2機はと言うと…

 

 『数だけは、多いな!』

 

 一分と経たずに5機のMDバタラを撃墜したものの、撃墜される寸前のバタラごと最大出力のGNドッズライフル及び拡散状態のGNドッズガンの連射に巻き込む事で、シヴァに有効打を与えていた。

 機体の爆散による破片や衝撃は盾によって防いだものの、ドッズ効果を伴ったGN粒子というバリア殺しまではそうはいかず、盾を持っていた左腕と主兵装の近接対装甲刀を損失した。

 だが、損害に関しては既に指揮下のMDバタラを6機も失ったOガンダム側が負けているのは明白だった。

 

 『潮時か…オレの命の使い道はここではないか。さらばだ!』

 『この、待てぇ!』

 

 背を向けて加速していくシヴァに対し、追撃のドッズライフルを放つが、その射線は悉く見切られ、命中する事なく見送る事となった。

 

 『はぁ~~~折角のデビュー戦が散々ですね。…気を取り直して仕事しますか。』

 

 溜息一つで意識を切り替え、未だ抵抗を続ける敵艦隊へと進路を向ける。

 GN粒子の貯蔵量は半分を切っているが、通常の既存機体と艦艇相手ならば問題ない。

 GNドッズライフルを対艦出力に設定した後、レーダー索敵範囲ギリギリから敵残存艦隊へ向け、照準を定める。

 

 『ではさようなら、職務熱心な軍人さん方。』

 

 放たれたドッズ効果を伴う圧縮状態のGN粒子はその威力を遺憾なく発揮してPDごと装甲を貫通、敵艦艇を一撃で轟沈せしめた。

 後は3度それを繰り返すだけで、戦闘は終結した。

 

 『追撃戦は本艦隊でのみ、か。ここで挟み撃ちに出来てたら…言っても仕方ありませんか。』

 

 この10分後、フォボスからの艦隊が到着する。

 正にタッチの差で人類統一連合火星遠征艦隊は撤退に成功したのだった。

 だが、まだ終わってはいない事は誰の目にも明らかだった。 

 

 

 ……………

 

 

 「そうか、シュラは帰投したか。」

 

 その報告を聞いて、オルフェはほっと安心した。

 家族であり、同胞であり、エースパイロットにして軍事の最高指揮官でもある彼の無事の帰還は心底喜ばしいものだった。

 

 『機体は既に修理を開始しています。次の戦闘までには十分間に合うかと。』

 「分かった。敵艦隊の追撃もある。作業を急がせてくれ。」

 

 幸いにもシュラのブラックナイトスコード・シヴァの予備パーツは豊富にあるし、撃破された他三名のルドラのパーツも使えるので整備・修理に困る事はない。

 これはカルラも同様であり、何だったらグレーソルジャーの予備パーツもあるので問題は無い。

 しかし、はっきり言って状況は最悪だった。

 何とか指揮系統を維持したまま撤退できたものの、艦隊は軍事上の壊滅=約3割が撃沈乃至落伍しており、生き残りの艦艇や艦載MSにしても戦闘に参加して無傷のものはなかった。

 一応地球圏では最新鋭、最低でも近代化改修が行われたものだけの主力艦隊でこれなのだ。

 捨て石にした先行艦隊の離脱は一隻も確認できておらず、良くて降伏、悪くて撃沈だろう。

 できれば相手側の人員リソースを削る意味で降伏の方が都合が良いのだが、それは兎も角。

 

 (問題は如何にして地球圏まで撤退するかだ。)

 

 火星連邦の戦力は完全にこちらの想定を上回っていた。

 バタラの改修機や無人機、アマクサは分かる。

 しかし、正体が一切不明の粒子を利用する敵MSやその武装は余りに驚異的だった。

 こちらのPDや対ビームシールド、FT装甲を容易く貫通するそれらに対し、自分達は余りに無力だった。

 

 (まともに戦っては勝てない。ならば、まともに戦わずに逃げ延びるのみだ。)

 

 その明晰な頭脳でオルフェはすっと解決策を導き出した。

 だが、彼の頭脳はどう足掻いても犠牲は0に出来ないと解答した。

 

 「已むを得ん。こんな手は使いたくなかったのだがな。」

 

 生き残った艦隊各位の指揮官らへと30分後に緊急のブリーフィング開催を通達する。

 次々と了承される通達に良心を苛まれながら、オルフェは冷酷にして優雅な宰相の仮面を被りながら旗艦のブリッジへと向かった。

 

 「ブリッジ、艦隊各位の状態を纏めろ。特にミサイルの残弾数を。大至急だ。」

 

 そして犠牲に見合う結果を出すべく、オルフェは先ず艦隊の現在の情報を集める事とした。

 

 

 ……………

 

 

 『状況は危機を脱しました。しかし、依然として予断を許さない状況です。』

 

 一方その頃、戦略的勝利を手にした火星連邦側の被害も大きかった。

 宇宙要塞ダイモスの内部は敵歩兵部隊により大きなダメージを負っており、防衛艦隊もまた同様だ。

 特に艦艇は撃沈数こそ少ないものの、中大破の割合で言えば人類統一連合側とそう変わりはない。

 戦闘に参加したMS部隊に至っては有人機が3割、無人機は5割が未帰還となっている。

 ダイモスありきとは言えここまで押されたのだから、救援が間に合わねばそのまま陥落していただろう程に大きな損害だった。

 加えて大量に降伏してきた先行艦隊に救助した友軍敵軍問わない多数、否、無数の負傷者の治療で大規模医療設備を搭載した病院船はフル稼働だ。

 そこでは今もなお医療従事者と患者達が迫り来る死との闘いに明け暮れている。

 無論、火星連邦にはシスターズの開発した医療用ナノマシンや溶液に満たされたメディカルポッド等の最新の医療機器が多数あるが、それでも救えぬ命というのは存在する。

 そんな自然の摂理を他所に、通信が寸断された要塞の司令室から予備の司令室へと集まり、指揮官らは今後の戦略を話し合っていた。

 無論、そこにはSPC通信を用いて火星連邦政府と軍の上層部及び現在敵艦隊を追撃中のフォボス所属艦隊の姿もある。

 

 『第一波は凌いだものの、ここで敵艦隊を完全に撃滅せねば、間を置かずに第二波が来るでしょう。そうせぬためにも撤退中の敵艦隊に追撃を行います。』

 『残念ながら、消耗の激しいダイモスから戦力は出せません。フォボスからの艦隊のみになります。降伏した敵軍の武装解除作業もありますので。』

 『幸い、敵艦隊はこちらで既に捕捉済みです。』

 『狙撃部隊も予測進路上に移動中。我々が追いつく頃には射程圏内かと。』

 『敵艦隊への攻撃成功は確実。となれば次はどうするべきか。』

 

 そこで、軍部と政府高官の顔がはっきりと歪んだ。

 

 『人類統一連合、正確にはファウンデーションへの逆撃は可能かね?』

 『不可能です。諦めて講和に舵切ってください。』

 

 そう!人手不足の火星連邦に!地球圏制圧なんて!出来る訳がないのである!

 プラントよりも人手はあるし、実質ユーラシアと東アジアだけだが、その二国だけでも手一杯になるのが誰でも分かる程度には広大なのだ。

 少なくとも地球圏への侵攻や人類統一連合への反撃なんて命じられたら、軍部は多数がストライキを起こす事は明白だった。

 

 『敵艦隊への追撃はまぁ、成功するでしょう。しかし、この戦争の畳み方に関しては我々もさっぱりです。』

 

 それは以前から散々議論されていた難題だった。

 ぶっちゃけ、ファウンデーションの内政干渉に端を発するこの戦争は最初から不毛なものだった。

 イデオロギーや宗教、人種の違いから来る戦争に、否、近代国家にとって戦争が利益になるものなんて一部の例外を除いて殆ど存在しない。

 プラント独立戦争は数少ない例外側だが、あれは余りに特殊過ぎるので参考にならない。

 

 『ヘリウム3を巡る貿易摩擦に関してはこちらが譲歩する事も出来ますが、内政干渉だけは不可能です。』

 『デスティニープランですか。実質的な職業選択の制限は流石に承諾できかねますからな。』

 

 遺伝子による極めて高精度な適正診断。

 それが自分の進路に合っている、或いはまだ決めていないならそれでも良いだろう。

 だが、絶対に嫌だと思う進路への適正を示されたら、人はそれに従うだろうか?

 少なくとも反対する者が必ず出る事は分かるし、既に別の目指す進路がある者も従わないだろう。

 そして、火星連邦は民主制であり、他国からの内政干渉を許さない。

 頭でっかちの研究者の、それも精神に異常を来している余命幾ばくもない女性の言に従う程、火星連邦は愚かではなかった。

 

 『交渉するにしてもアウラ女王が退位してからでしょうな。』

 『彼女の病状から、余命は10年も無いでしょう。こちらでナノマシン治療を受ければ別ですが。』

 『つまり、今は無理と。』

 『まぁ、そうなるね。』

 

 全員が頭を抱え、或いは天を仰いだ。

 どないせっちゅーねんこんなん。

 

 『…先ずは、目の前の事に集中しましょう。敵艦隊との予想会敵時刻に変更は無いな?』

 『は。現状のままなら約20時間後になります。』

 

 遅れてきたフォボス艦隊が先んじて撤退を開始した敵艦隊に追いつくにはその位の時間が必要だった。

 船速は火星側が有利なものの、負傷者の救助活動に参加したが故に余計に遅れてしまったのだ。

 

 『よし。それでは我々フォボス所属艦隊は敵艦隊と戦闘に入るまで準戦闘配備とする。敵が置き土産や伏兵を配置していないとも限らん。索敵は密にせよ。』

 『それと、狙撃部隊は敵進路上につき、離脱する敵艦隊を攻撃せよ。ただし、撃沈ではなく可能な限り推進部分を破壊しろ。交渉の手札にもなるし、こちらの情報を渡さずに済む。』

 『以上だ。各員の働きに期待する。』

 

 こうして、火星連邦と人類統一連合の戦いは次のステージへと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うーん時間がないのもあるけど筆が進まぬ
後もう一戦やった後、事後処理して冷戦期突入かなー
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