超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話 作:VISP
今や火星に帝国を築き、地球圏全体に大きな影響力を持つミョウジョウ・グループ。
その創設者たるヒマリ・ミョウジョウ氏であるが、当然というべきか物凄く敵が多い。
そらーもー笑っちゃうくらいには多い。
一応あのアズラエル財閥の関係者だと言うのに呆れる程には多い。
なにせ暗殺事件や事故が起きるのが日常茶飯事と言える程度には多い。
少なくても数日に1回、多い時は一日の内に5回は起きる。
原因は簡単、彼女が余りに優秀過ぎたが故だ。
あのジョージ・グレンの友人達の様なナチュラルの中でも心身共に上澄みな天才達やジョージ・グレン本人の様な人の善性を信じて行動する者はヒマリに対しても友好的だ。
少なくとも一度も対話する事なく即時敵対を選ぶ様な人々ではない。
原作のムルタ・アズラエルの様な商人としての面が大きい者達も内心は兎も角利用価値があるならば表面上の付き合いは何も問題ない。
問題なのは人の悪性をこれでもかと持っている連中だ。
ヒマリは大きなハンデこそあるが、ナチュラルでありながら並のコーディネーターを周回遅れにする程の知性の持ち主だ。
彼女の苦労や苦悩を知らないナチュラルならばその成功を妬み、時に憎み、剰え引き摺り降ろそうとするだろう。
コーディネーター、取り分け第一世代の親は「高い金を払って調整した子供が明確にあの天才よりも劣っている」と分かれば、或いは子供当人が何もされていないのに妬み、時に憎悪し、果ては排除しようとする。
また、「あんなナチュラルがいる訳ない!きっと彼女も遺伝子調整されているんだ!」という事実無根の言いがかりをされた事も幾度もある。
その度にヒマリは複数の医療機関で検査を受け、自身がナチュラルであると証明し続けた。
これが何度も続いたため、実はヒマリの遺伝子情報のデータが僅かながら裏社会にも漏洩しており、以後のコーディネートにも影響を与えたと言う眉唾な情報もあったりする。
こうした動きが遺伝子調整に対して過激な思想を持つ連中を刺激し、上記の暗殺騒ぎへと至るのだ。
しかし、ヒマリ・ミョウジョウはタダでは転ばぬ女だった。
この一連の事実無根のスキャンダルをヒマリは大いに利用した。
悪名は無名に勝る、とは誰の言葉だったか。
コーディネーターに勝る本物の天才(再構築戦争後には割と多数いたが)として
或いは疑惑の渦中の人物としての知名度を利用して、彼女は多くの発明を背景に起業したばかりの企業ミョウジョウ・ソフトウェアを大きく成長させた。
自分が一銭もかける事なく、赤の他人が面白おかしく宣伝してくれるのだ。
これ以上にリーズナブルな広告も無い事だろう。
そこからは早かった。
その天才的頭脳率いる優秀な社員達(ナチュラル・コーディ問わず所属)によって作られた高品質な商品群はどれもヒットし、瞬く間に市場を席捲していった。
この時、ヒマリは自分だけで巨大なグループを作り上げる様な真似はしなかった。
優秀か、或いは人格的に良しとされた者達、それでいて他に居場所のない者達を出自を問わずに受け入れていく。
唯一絶対の指標はグループへの帰属意識があるか否か。
それだけで遺伝子調整による差別を持たない優良な技術者・労働者はミョウジョウ・グループへと流れていった。
自分達のルールに従えば受け入れるのはアズラエルグループも変わらないのだが、こちらは過激な活動団体との繋がりが噂されているためか余りそういった人材が流入する事は無かった。
奇しくもコロニー建造ラッシュにある程度終わりが見え、40年代半ばからはプラント製の高品質製品が市場に流れだした頃の事だった。
プラント製に負けぬ程の高品質かつ理事国で無くても入手が容易な各種製品。
これに理事国の手綱を煩わしく思う非理事国は飛びついた。
無論、理事国としては自国の影響力確保を狙ってミョウジョウ・グループに首輪を掛けたかったが、それはつまりアズラエル・グループの分派に、ロゴスの分派に手を出すという事に等しい。
大体は検討で終わり、可決しても抜け穴マシマシのザル法案でしかなかった。
そうして儲けた金で更に事業を拡大し、更に儲け、更に拡大し…後はその繰り返しである。
「期ですね。それでは予てから温めていた火星開発プランを始動します。」
準備は整ったと同時、彼女はこれまでの方針を転換した。
あくまで既存事業の隙間産業がメインだったグループの全体方針を、更なる宇宙開発へと振り向けた。
パイの取り合いではなく、パイを原料から自分で作る方針へ。
ミョウジョウ・グループはその社運を賭けて火星開発を開始した。
同時に世界中へ委託される多くの事業。
大は冷え始めたコロニー建造の追加ラッシュであり、小は高品質製品の生産拠点の移動。
その一つに食料生産コロニー群の一部の管理委託業務があった。
これは実質的なプラント理事国のプラントへの手綱、食糧管理政策の一環だった。
態々地上で買い付けて打ち上げず、現地である宇宙で買い付け、プラントへ送る。
この管理をアズラエルグループへと委託し、有名無実化しかけている食料管理政策に改めて実を入れる。
あくまで地球の現体制へとミョウジョウ・グループが喧嘩を売っている訳ではないと証明するためのものであり、これまでの事は委託料で不問にすると言う話だった。
こういう感じで色々と謀略を巡らせ、邪魔の入る可能性を減らしたミョウジョウ・グループは次々と火星へと進出していった。
残った地球圏はミョウジョウ・グループという異物こそあるものの、大凡原作のそれに近い情勢となった。
即ち、自分で散々かき回したソレがヒマリにとって予測し易い盤上に戻った事を意味する。
後はそこで可能な限り中立として立ち回り、利益を上げていくだけだ。
それだけならば残った人材でも十分可能な範囲に収まる。
もし連合なりザフトなりが武力に訴えかけてきたならば、その時は脅迫されたとして屈する事も許可されている。
無論、そこで武装勢力が蛮行を働こうものならしっかり証拠を残して、後のネタにするだけの用意も残して。
「後はこちらに残る人達の選択次第です。私は一抜けさせてもらいますよ。」
こうしてミョウジョウ・グループ、否、今の世界に失望した人々の脱出船団の第一団は火星へと旅立っていった。
「まったく、どうしてこうなったやら…。」
船団の長、その苦悩は深いままに船団は火星への路を行く。
……………
C.E.48年、最初の開拓船が火星宙域へと到達した。
火星開拓、と言ってもテラフォーミングが直ぐに終わる訳もない。
ナノマシンの投下の他、足りない水や酸素を投下し続ける必要があるし、拠点の設営も必要だが、激烈な砂嵐とうっすい磁気のせいで宇宙からの放射線やら有害物質やらが直に降り注ぐ。
それでいて二酸化炭素が中心だが僅かながら大気もある。
と言っても地球の地表に比して0.06気圧でしかないが、これも考慮せねばならない。
ちなみに雪も降ったりする。
更に重力が地球の約三分の一なので、一度砂嵐が起きるとかなり長い間巻き上げられた砂塵が落ちずに滞留するから視界も悪いし、機械の故障を誘発する。
そんな地球とはまるで違う環境を人が住めるようにしていくのだから気長にやらねばならず、出来たとして他にも優先するべき事は山とある。
だから当然と言うべきか、足場固めから始める事となった。
先ずは到着したコロニー第一陣による各種情報収集である。
既存の情報と照らし合わせ、何が必要かを改めて計算し、開拓へ向けた最適な行動を探る。
「ふむふむ、大凡事前情報通りですね。」
「では予定通りに作業を開始します。」
「よろしくお願いします。安全第一に。」
火星の二つの衛星、即ちフォボスとダイモス。
内、より巨大で内部に多くの氷が埋蔵しているフォボスに前線基地を設営していく。
なお、金属類は火星表面に酸化鉄の形で存在しているため、露天掘り状態なので現状不足はない。
「後は順繰りにやっていきましょう。焦る必要はありません。」
前線基地の設営完了後、そのまま採掘を開始し、水を確保していく。
如何に極めて高度な循環システムがあっても、消費してしまう水分は存在する。
だからこそ水と空気の確保は至上命題となる。
採掘し、採掘し、採掘し、必要なあらゆる資源を集め、資材に変換し、必要な施設や道具を揃えていく。
その合間に、捻出できたリソースを人口増加対策や研究へと割り当てていく。
幸いにも、地球圏とのリアルタイム通信が可能な事から追加の物資や人員は順次送られてくる。
50年代後半からはD.S.S.D.との技術協力もあり、後続の艦艇には艦艇用大型ヴォワチュール・リュミエールを搭載した事で火星まで片道3か月まで短縮できた。
加えて、地球圏各地では遺伝子調整に対する差別・迫害が劇化する一途であり、安住の地として火星を目指す者達が少なくなかった事から人員の補充も途切れなかった。
この宇宙である限り、水も空気も何処かにあり、作る事が出来る。
娯楽や美食なんかは慢性的に不足していたが、それでも尊厳を奪われて死ぬよりはマシだと人は来る。
衣食住があるならば人は増え、集まり、社会を形成していく。
地球から余りに離れた火星が争乱に満ちた地球圏とは独自の路を歩むのに時間はかからなかった。
「あっと言う間に10年ですか。早いものです。」
そうやって開拓を始めてから約10年が経過する頃には、衛星だけでなく、火星全土にある程度の拠点の設営が完了した。
そして、多くの研究が実を結んでもいた。
火星という極限環境に適応した新型の作業機械、それらをベースとした兵器群。
それらの材料となるルナチタニウムを始めとした低重力環境下での特殊合金類の冶金技術の発展。
電磁力操作技術の発展により実用化されたプラネイト・ディフェンサーというバリアによる拠点や機械類の保護。
AI技術の発展によるマンパワーのある程度の改善。
こうした発明により、火星圏全ての開発が活発化していく。
老いてなお天才ぶりの衰えないヒマリ火星自治区初代代表により、火星の暮らしは大きく前進した。
特に自治区内の低所得者層にも娯楽や嗜好品が十分行き渡るようになった事は大きい。
これは生産が拡大した事もだが、地球圏のミョウジョウ・フーズの規模が更に拡大して多くを火星圏に輸出している事も大きい。
加えて、地球圏の情勢悪化に伴い、富裕層の安定した投資先として火星開発関連が最適とされた事も大きい。
「よし、そろそろ私は研究に専念します。自治区とグループの面倒はお願いしましょう。」
研究4:政治関係3:商売3だったのが、遂にヒマリは研究に専念する事にした。
徐々に人任せにしていたが、これで彼女は実質的に後進に後を譲った形となった。
とは言え、未だその影響力が絶大である事に変わりはないのだが。
「取り敢えず、私の細胞使って脳だけのクローン作りましょう。私一人だけでは疲れますし。」
コロニー「メンデル」にも伝手があるヒマリは、クローン関連の技術も当然持っていた。
序に問題も把握したので改善案や対処法も送ったので、もしかしたら仮面野郎が仮面被る可能性が消えたかもしれないが、それはさておき。
『さぁ私。次はルナチタニウムの改善ですよ!』
『電磁バリア類、どうせなら完全に機体に内蔵して装甲全部に適応するのも有りですかね?』
『一々水と空気持ってくるの面倒ですね…。エネルギーは余裕あるんですし、物質転換炉いけませんかね…?』
『うーん、マーズスーツの開発だけは上振れしてしまう。あぁもうそっちは今いらないのにー!』
『よし、各種植物プラントの遺伝子改変および生産プラントの改良案できましたね。』
『輸出用の火星特産品。中々出来ませんねぇ…。』
『…よし、計算完了。これなら火星のコアの再加熱による地磁気の安定化が出来る筈。』
「私達、頼むからもう少し整理して話してください。こっちはもう年寄りなんですよ…。」
こうして、7体のバイオ脳ヒマリ達と本人の手により、火星の技術開発は地球圏を遥か置き去りにするレベルで加速していく。
時はC.E.60年代、遂に理事国とプラントの間に致命的な罅が入り始めた頃であった。
なお、ヒマリ主は運命編終わって劇場版の頃、下手するとこっちに襲い掛かってくる事も考慮しています。
火星自治区行政府…文字通り火星自治区の内政関係を纏めるお役所。大体住民かヒマリ主の無茶振りに困らせられる立場。
ミョウジョウ・グループ火星支部…大体火星圏で流通するものは全部ここの商品だし、住民もほぼここの社員。現在の目標は地球圏に輸出できる商品の開発。今はミョウジョウグループからの持ち出しで運営してるので、内需だけじゃなく外需も欲してる。
他企業…一応いる。高級嗜好品とかの販売がメイン。どっかの工作員が混ざってたりもするけどそういう輩でもちゃんと労働してるなら見逃してくれる。破壊工作?やろうとした瞬間に肩ポンされます。持ち込みも現地作成も大体全部監視されてるからね。