超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話   作:VISP

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火星編 第3話 火星連邦の対外政策と戦争序盤

 C.E.63年のプラントのエネルギー部門へのテロに端を発するプラントと理事国間の、否、ナチュラルとコーディネーター、列強と植民地、搾取する側とされる側の軋轢は、遂に破裂した。

 

 C.E.70年、コペルニクスの悲劇、血のバレンタイン、エイプリル・フール・クライシスを経て、両陣営の互いへの敵意は過去最悪の状態となってしまった。

 最早止める術は無く、行き着く所まで行くしかない。

 多くの知識層はそう判断した、せざるを得なかった。

 それ程までに、両者の確執は深く大きく広くなっていたのだ。

 

 『まぁそんな事になったら困るんですよねぇ。』

 「でしょうねぇ。」

 

 そしてちゃっかりオーブの中立宣言に乗っかる形で、火星自治区は「火星連邦」として独立と中立宣言を果たしてました☆

 下手に自治区のままだと攻撃の対象になるかもだし仕方ないネ☆

 そのため、市場は絶賛戦争関連と中立国関連の株価が上昇傾向となっていた。

 おまけに有力者やその家族なんかが沢山亡命してきたりで人口も戦時なのに増加傾向さ☆

 

 『するならするで大いに結構。でも長引かれると市場が戦時体制で固定化されて美味しくないんですよ。こっちもまだまだ輸入したい物資はあるんですし。』

 「うちも前から警告してたんですけどねぇ。こっちの警備部門が頑張っても、肝心の軍が意図的なサボタージュや暴行事件起こしてちゃ世話ないですよ。」

 

 SPC(共時性パリティ通信)による地球ー火星間でのリアルタイム通信。

 未だ人類でも数える程しかないこの貴重な通信設備を使う事が出来るのが、この二人だった。

 一人はC.E.随一の天才にして火星の開拓者ことヒマリ・ミョウジョウ博士(御年70歳)

 対面するはアズラエルグループ次期総帥にして大西洋連邦の国防産業連合の理事、そしてロゴスのメンバーであるムルタ・アズラエルである。

 

 『その割にリスク分散が成ってなかったみたいですね、ムルタ君?』

 「耳が痛いですねぇ。いやはや、ユーラシアと東アジアからの妨害が無ければもう少しマシだったんですが…今更ですね。」

 『ロードの悪ガキは相変わらずと。もう少し大人になってくれると助かるのですが…期待するだけ損ですね。』

 

 そんな人類でも最上位層の権力者の一角である二人は重大な話し合いをしていた。

 即ち、今次大戦におけるスタンスの確認である。

 と言っても、今の会話で既に確認は終わった様なものだが。

 

 『ムルタ君はテロ屋の支援者になったみたいですが、ああいうのはちゃんとしっかり使い切るようにしなさいね。じゃないと後で困りますから。こちらには来ないようにしてますが、そっちは沢山いるのでしょう?』

 「分かっていますとも。あくまでこの戦争の間だけです。うちにだってコーディネーターの社員はいますからね。流石に役員はいませんが。」

 『その位のスタンスで良いのです。考える事も真面目に働く事も止めた連中にはその位で十分。』

 

 本人はもう20年近く火星圏にいると言うのに、地球圏の最新の情勢はしっかり抑えている辺り、やはりこの方は侮れないな、とムルタは思う。

 拾ってくれたグループへの義理立てとして自分達を気にかけてくれているのは助かるが、もう妻子持ちの自分ですら何時までも子供扱いなのはやっぱり老人だなとは思うが。

 

 『取り敢えず、うちの会社からナチュラル用MS操縦システムのプログラム、その利用許可を出します。機体自体は生憎と火星圏にあるので無理ですが。』

 「ハードの解析と開発は進んでいますのでご安心を。うちのスタッフだって優秀ですからね。」

 『よろしい。では約束通りそちらに卸してたプラント向け食糧品に関しては今後直接プラントへ卸させてもらいます。』

 「えぇありがとうございます。今後もよろしくお願いしますね。」

 『えぇ、ムルタ君も無理をしないように。』

 

 通信が切れ、緊張の途切れたムルタは大きく息を吐いた。

 あの大叔母は本当に尊敬しているし、感謝しているが、常にこちらを採点していると分かる視線を寄越してくるのが辛い。

 その採点で落第すると大体酷い事になると分かっているので余計に。

 実際、それで落第した父は一時業績を大きく下げてしまった事もあった。

 祖父の取り成しと何だかんだ甘い彼女からの支援で持ち直したが、それが原因で彼女へ余計に頭が上がらなくなってしまった。

 

 「今回はこの位ですが、他にも色々欲しいものはあるんですけどねぇ。」

 

 今回は取引材料の関係でナチュラル用MSのOSだけだったが、本当ならもっと色々欲しかったのが本音だ。

 現在ミョウジョウグループで運用中の核融合炉にニュートロンジャマーへの対抗装置、そしてMSに対抗可能な兵器。

 恐らく、否、間違いなく彼女はそれらを既に用意している。

 しかし、対価も無く一方的にそれらを要求する事は最悪の場合アズラエル・グループそのものが見限られる可能性はある。

 取引は慎重に行わなければならない。

 加えて、ロード・ジブリールを始めとした反コーディネーター過激派への対応も考えねばならない。

 戦時下である今は良い。幾らでも出てくる代えの利く戦力として使い潰せる。

 しかし、戦後になればプラントの違法コーディネーター達はプラントを稼働させる労働力として扱わねばならないのに、連中はそこに核ミサイルを撃ち込んだ前科がある。

 この戦争中に使い潰さねば、必ずや禍根となるだろう。

 

 「疲れましたし、今日は上がりであの子達に会いますか…。」

 

 今後のやるべき事を思うとムルタ・アズラエルの身体に疲れがどっと圧し掛かった。

 家庭においては普通に愛妻家な頑張る企業人である彼は、明日頑張るために妻子の下へ充電しに向かうのだった。

 

 

 ……………

 

 

 『という訳で、食料の安定供給は何とかなりそうですよ。』

 「ありがとうございます、ミョウジョウ博士。」

 

 ここはミョウジョウ・フード所有の多数の食料生産コロニーの一角。

 普段は会社役員しか使えないこの場所を特別に許可されているのはプラント評議会から派遣されてきた外交官であるカナーバ議員だ。

 通信相手は勿論ヒマリである。

 

 「契約通り、地球圏のミョウジョウグループのコロニーの警護はお任せを。」

 『えぇお願いしますね。商売には安定した航路が必要不可欠ですから。』

 

 戦争で社員ごとコロニー壊される位なら恭順して商売しようぜ!

 そんな精神でヒマリは開戦が予期された時点で自社役員に働きかけていた。

 即ち、宇宙で優勢となるだろうプラント側に媚びを売って商売続けようぜ!と。

 実際、原作においてはこうした理事国側のコロニーの多くはザフトの攻撃により破壊されており、残っていたのは要塞や中立国のコロニーのみ(ヘリオポリスは襲撃されたが)。

 それにコロニー産の食料を購入するのは同じ宇宙の住民か火星の様な未だ食料自給率が不足気味な所だけで、プラントも元から重要な顧客なのだ。

 間に挟まるプラント理事国が消えてより安価に購入できるようになっただけと言える。

 

 『ユニウスの件は残念でしたが、これで一先ずは安心ですね。』

 「えぇまぁ…。これで皆に顔向けできます。ありがとうございます博士。」

 

 こうした地球連合とプラント双方への取引により、地球圏のミョウジョウ・グループは戦争による直接的な被害をほぼ受ける事ない立ち位置を得た。 

 後は火星圏の繁栄のためにもまだまだ必要な地球環境が滅びないようにどう立ち回るかであった。

 

 (これで双方が焦ってやらかす可能性は減るでしょうが…C.E.民ですからねぇ。)

 

 絶対面倒な事になるだろうな、という確信がヒマリにはあった。

 

 

 ……………

 

 

 一方、火星自治区改め火星連邦でもまた急ピッチに自衛のための戦力整備を始めていた。

 

 『ではミョウジョウ博士、報告をお願いします。』

 『えぇ。先ず軍の対MS兵器は既存の作業機械を発展させたマーズスーツでよろしいかと。』

 

 火星行政府庁舎の機密通信室にて、火星連邦内の実質的トップ達がデジタル会議を行っていた。

 

 『このマーズスーツ、既存機向けラインの手直しでほぼそのまま生産可能。コストも相応ですし、経験者ならば習熟期間も短いのが特徴です。第一号の名前は…そうですね、バタラとしますか。』

 

 マーズスーツ、それは火星の過酷な環境での運用を前提とした人型・準人型兵器の総称である。

 元がコクピットブロックを中心に、それぞれの用途に特化したパーツを装備させて運用する作業用重機が元型となっており、パーツを換装すれば容易に別の機体へと変化できるのも特徴だ。

 なお、コクピットブロックの構造はプラント編であったコクピットブロック兼脱出ポッドと酷似している。

 

 『ビーム兵器にプラネイト・ディフェンサーの搭載。確かにこれならば…。』

 『コストも良く、操作性も学習型オートマトンの補助で申し分ないですな。』

 『用途毎の改修も容易と。流石ですな。』

 

 マーズスーツ一号機、バタラ。

 元型となった重機同様、機体の各パーツが単一機能に特化し、かつ容易に交換可能なブロック構造となっているこの機体は既存のジンと同程度のサイズながら高い性能と生産性を実現している。

 本家と異なる点はミノフスキー物理学のそれではなく、あくまでこの世界の技術で再現された火星圏専用MSである事だろう。

 火星の環境に対応するため、両肩のシールドと左前腕には機体固定式のプラネイト・ディフェンサーが装備されており、有害な放射線や汚染物質、激しい砂嵐から機体と搭乗者を防御している。

 ビルゴの様な広範囲への展開こそ出来ないものの、その分エネルギー効率に優れ、展開可能時間が延長している。

 また、下半身は本家の大腿部にスラスターと収納可能な着陸脚の他、地上走破性を重視した四脚や履帯(軽量の一対、重装の二対の二種)やホバーユニット、更に追加ブースターユニットもオプションとして存在している。

 武装面に関しても基本的なビームライフルとビームサーベルの他、マシンガンやバズーカ、ロケット砲に携行式ミサイル、対艦刀やスコップ等がある。

 反面、量産性を重視した徹底的なコストカットにより、機体固定武装の類はビームサーベルとプラネイトディフェンサーの他はオプションのバルカンポッドシステムしかない。

 操縦方法もスパロボOGのリオンよろしく学習型オートマトンによる補助によってナチュラルでも十二分に可能なレベルに収まっている(勿論訓練は必須だが)。

 それでもC.E.70年半ば頃としては破格の性能を持っている事に変わりは無いだろう。

 

 『まぁ主力機はこれで良いとして、残りはどうしましょうか?』

 『それならば、開発局からブロック構造を採用した新型艦艇の開発案が出ています。』

 『アレですか。確かにアレなら十分でしょう。それでは…』

 

 粛々と話し合いは進んでいく。

 元々事前協議は既に済んでおり、このビデオ会議は最終確認としての要素が強い。

 

 『やはりこの戦争、一筋縄では終わりませんか…。』

 

 約一時間後、会議も大体終わった頃、代表者の一人が呻く様に呟いた。

 

 『当然でしょう。積もり積もった火種が遂に火事になったのですから、早々消えやしませんよ。』

 『今まで放置していたツケですな。まぁそれを嫌ってこちらに来た我々の台詞じゃないですが…。』

 

 既存の社会秩序ではコーディネート技術及びコーディネーター達に対する回答を用意できなかった。

 一応トリノ議定書で過剰な身体能力向上を伴う遺伝子改変技術は禁止されたが、既に生まれて来た者達からすれば存在そのものを否定されたも同然だ。

 故にこそプラントという受け入れ先を用意し、その出資分の利益を享受したのがプラント理事国だったのだが…人々の反コーディネーター感情はそうした理性を上回ってしまった。

 結果として、多くの人々から迫害を受けたプラントのコーディネーター達はそれに匹敵、或いは上回る程の報復を地球連合に対して行った。

 

 『まぁあちらで殺し合う分には放置で良いでしょう。こちらはこちらですべき事をしましょう。』

 『開拓に社会福祉に開発に自衛戦力の拡充。我々がすべき事は多いですからな。』

 『各々すべき事をしていきましょう。我々はもう火星連邦の指導者なのですから。』

 『では、本日の会議はこれにて。』

 

 こうして、幾度目かのビデオ会議は終了した。

 

 「さて、私達もこれを実用化しないといけませんね。」

 『幸い、もう実験室レベルの成果は出ています。』

 『機動兵器レベルのサイズと出力効率も間も無くですね。』

 『問題は毒性の除去ですが…まぁ間に合わせてみせましょう。』

 『実機への運用試験は無人仕様にしたバタラをベースにしましょう。』

 『MDシステムの実用化も急がないといけませんね。』

 『火星圏の人口はまだまだ2億人程度。地球連合の国力を考えると足りませんからね。』

 『忙しい忙しい。のんびりできるのは何時になる事やら…。』

 

 ラボの中で、7基のバイオ脳と共にヒマリは開発に勤しむ。

 その視線の先、強化ガラス越しの無人の実験室には多数のコーン型の容器に納められた何かの発電機の様なものが並べられていた。

 

 「GNドライヴ・T型。ふふ、ガンダム世界は繋がっており、物理法則もまた同じく。各種粒子やシステム類は開発に成功しさえすればしっかり動く。そして電力を使ってGN粒子を生成する変換炉だけならば、木星圏に行かずとも可能。ふふ、我ながらナイスな発想です。」

 

 無人の実験室内部、そこには赤い粒子が舞っていた。

 

 

 

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