異世界輪廻~不殺(ころさず)の英雄譚~   作:OrengeST

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幕間(まくあい):女神天族リッカの戯れ

さて、諸君。

お前は誰だ、と言われないうちに自己紹介をしておこう。

これからも時々、顔を出させてもらうので今後の親睦も兼ねて。

 

先ほどの久我山英佑の独白の最中に突然現れたのは誰あろう、このわたしだ。

 

名はリッカという。天界を統べる女神(じょしん)天族が一柱。

容姿はご想像にお任せするが、長いブロンドの髪を束ねた、嬌艶(きょうえん)端麗(たんれい)な、

うら若き乙女と想像していただいて差し支えない。

 

もっとも、他のお姉さま方に比べれば、まだまだ些か発展途上といったところはあり、

どこがとは言わぬけれど、ともかく、これからの成長にも期待してくれていい。

 

そして、天の川銀河の太陽系の小さな惑星の、これまた小さなイチ生命体である久我山英佑を、

酸鼻(さんび)を極めた凄惨(せいさん)な現場からヘッドハントしたのも、このわたしである。

 

理由は何かって?

 

特にはない。(たわむ)れだ。

強いて言うなら、天の川、という銀河の名前が可愛らしいと思ったし、

天の川の『天』は、わたしが住まう天界にも一脈相通(いちみゃくあいつう)ずるものを感じたからだ。

 

そして、君たちも既に察しているところかと思うが、この久我山英佑という男。

なんと―—

英佑(えいすけ)を音読みすれば、『えいゆう』になるではないか!

 

はい、ありがとう。

わたしの耳には、君たちの拍手喝采が聞こえているよ。

このエルメンスルを救う英雄は、久我山英佑以外に他にない、と思ったね。

君たちもそうでしょう?

 

……え? 阿呆らしいって?

まあ、そういってくれるな。

神は戯れが好きなんだ。なまじ、たかだか永遠ばかりの命を持っているがゆえに。

戯れだけじゃない。喜劇も悲劇も、それが苛烈であればあるほど、大好きなんだ。

 

ほら、君らの世界にシェイクスピアという男がいただろう。

あいつのロミオとジュリエットとは傑作だった。

あれの最後に、わたしは笑い転げたよ。姉様方は、笑うところじゃない、と強かに額を打ってくれたが。

 

そういう点では、わたしが偶然に地球を眺めてみたあの頃に、

久我山英佑ほど妙な因果で絡まった生命は居なかったわけでもあり、

彼であれば、悲劇になろうが喜劇になろうが、面白いものを見せてくれると思った……

というのが、わたしが採用通知を叩きつけた最大の理由なのかもしれないな。

 

なになに?

悲劇でもいいのかって?

そりゃあ、いいに決まってる。

絶対に世界を救ってくれよ、なんて殊勝(しゅしょう)な精神の持ち主は天族にはおらんのだよ。

 

果ては、人族の滅亡。天族の危機。冥界による全界掌握。

 

これもまた、面白い結末じゃないか。

とはいえやっぱり冥界の王みたいに強い奴が順当に勝つんじゃあ、面白くないかな。

できれば、か弱き物のあがきってやつが、見てみたい。

 

天界って、退屈なんだもの。

 

 

 

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