たのしい カードゲーム   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第3話『コストと制約(せいやく)

 ケイスケは次なるゲームの説明を始める前に、テーブルの上に広げたトランプを回収し、それを一つの束にまとめる。

 そして、トランプをテーブルの上に置いてから再びゲイルの方に向き直った。

 

「さて。ゲイル。一つ質問があるんだが。良いかな?」

『あぁ。構わない』

「先ほど戦い方を説明したわけだが……ゲイルはアレで納得できるか?」

『あれ。というのは?』

「山札からカードをめくって、それを見せ合って戦う事がさ」

『納得などしていない。が、君がそんな運だけの勝負をする訳が無いからな。あるんだろう? 続きが』

「ご明察。いやぁ、話が早くて助かるよ」

 

 ケイスケは笑みを浮かべたままトランプを上から5枚選びどんなカードか見ない様にしながらゲイルに手渡し、自分も同じ様に5枚のカードをゲイルに見せない様にしながら手に持つ。

 

「という訳でカードゲームの第二段階。手札について話そうか」

『手札?』

「そう。今俺達の手にある札が、手札だ」

『なるほど? カードの山が山札で、手にあるから手札か』

「そういう事だ。そして、山札と手札の一番大きな違いは……見える事だ」

『そして相手には見えない事。か?』

「その通り。そして今ゲイルの見えている物が、この瞬間にゲイルが出来る事でもある」

『つまりは、この手札の5枚が、この瞬間に私が出来る事であり、お前の持っている5枚がケイスケの出来ること、か』

 

 神妙に頷きながらゲイルは己の手札とケイスケの手札を見比べた。

 ゲイルから見れば、自分の5枚は分かっているが、ケイスケの5枚は分からない。

 どの様に戦えば良いのか。ゲイルは手札を順に見つめながら、思考を巡らせるのだった。

 

「これがカードゲームを知る第二段階であり、ある意味でカードゲームの本質だ」

『本質?』

「そう。カードゲームとはこの5枚から己の世界を広げてゆく事であり、広がっていく相手の世界とぶつかり合いながら、己の真に目指すべき場所へ突き進むゲームなんだ」

『……そうか』

「己のやりたい事を貫き通す為には、相手のやりたい事も知らなければならない。考えなければいけない」

『カードゲームにおける本質とは相互理解と対話か』

「その通り。そして、真に極まったゲームの果てでは、相手の思考と行動も、ぶつかり合った果てにある未来も。全てがこの手の中にあるだろう」

 

 ケイスケは強く右手を握りしめて、ゲイルを見つめた。

 今までよりもずっと真剣な眼差しで。

 

「その果てに俺は行きたい」

『……また少し、君の本質が見えた様な気がするよ。ケイスケ』

「そうか? まぁ、それが真実かどうかまだ分からないけどな」

『ふっふっふ。そうだな。相互理解と対話か。ふっふっふ。面白いものだ』

 

 ゲイルは自らの手札を見つめた後、目を閉じた。

 そして、しばらくしてから目を開き、ケイスケを見つめる。

 

『ケイスケ』

「なんだ? ゲイル」

『カードゲームの未来はどれくらい広がる』

「無限だよ。限界なんてない。カードゲームってのは、カードが増え続ける限り、どこまでも広がっていくんだからな」

『そうか。それがカードゲームか』

 

 ゲイルはケイスケの言葉を受け、再び目を閉じて考え事をしていたが、やがて落ち着いたのか、先ほどよりも柔らかい表情でケイスケへと視線を戻す。

 

『すまなかったな。また話を始めようか』

「おう」

 

 ケイスケは再びトランプのカードを集め、テーブルに向き直った。

 

「ここまでに『山札』『手札』の説明をしてきた」

『ふむ』

 

 話しながらケイスケはカードの束を右手側の適当な場所に置き、そこから数枚のカードを自分の体の近くに伏せた状態で置く。

 

「さて、これがスタートの状態な訳だが、間違いなく必要な要素が一つある。何だか分かるか?」

『……ふむ。戦うと言っている以上、戦う場所か?』

「そうだな。対戦型カードゲームである以上、戦う場所は必要だ。そして、そうだな……それは何となくこの辺りにしておこうか」

『このあたりのエリアか』

「そうだ。向かい側にゲイルが座った場合、俺から見て左側に山札を置く訳だが、俺の山札とゲイルの山札の間が戦う為のスペースという所だな」

『……なるほど』

 

 ケイスケは自身の山札の左側

 そして、イメージ上のゲイルが置いている山札よりも右側の辺りに、手札としたカードから2枚のカードを選び、置いた。

 

「ここから戦闘が行われる訳だが、俺やゲイルが戦う戦場では俺達に協力してくれる多くの戦士たちが居る」

 

 ケイスケはカードを表にして見せながらゲイルに語り掛ける。

 このカードが共に戦う仲間なのだと示しながら。

 

「そして、俺達どちらかが敗北する前には、カードたちによる激しい戦闘がある訳だが、戦闘する以上両者無傷って訳にはいかない。戦闘に敗北し、傷つくカードも居る」

『そうだな』

「そういうカードは、戦場から退避して……自国の下で待機して貰う事にしようか」

『……負傷した戦士は戦闘に参加出来なくなるという事だな』

「そう。俺たちは強欲な支配者じゃない。傷ついた戦士は下がるべきだろう。それとも、ゲイルは限界まで戦わせた方が良いか?」

『いや。私も負傷した戦士を使う事には反対だ。自国のエリアへ戻すとしよう』

「そうだな。しかし、負傷した戦士とて、自国の争いをたた傍観している事は出来ないだろう。何かしたいと考えるんじゃないか?」

『そうだな。少なくとも私はそう考える』

「ならば、ここの彼らにも役割があるべきだ。そう。例えば戦場で戦う戦士の為に食料を作るなんてのも良いかもな」

『……ふむ?』

 

 ケイスケはトランプをそのままに、パソコンの前へ移動すると画面を見せながらゲイルに語り掛けた。

 

「さっきトランプをぶつけ合っていた時、ゲイルが言っていた強いカードを持った方が勝つのではないか。という疑問に二つほど新しい回答を渡そう」

 

 ケイスケはキーボードを叩きながらパソコンの画面に2行の文章を表示させる。

 

【使用条件による制約】

【使用タイミングによる制約】

 

「とまぁ、大きくこの二つの条件を追加する事で、カードは数字だけが全てではなくなり、全てのカードに無限の可能性が生まれ、全てのカードに限界を作る事が出来る」

『……まだ話が抽象的で分からないな』

「ま、そうだろうな。という訳でまた実際にカードを使って話していこうか」

 

 ケイスケは再びトランプの前に戻ると、手札を表にして山札の上から10枚ほど表にして待機所に置く。

 

「例えば、手札のこのカード。ハートの3を戦場に向かわせる為には、待機している者達に頑張って貰い、ハートを3つ生み出して貰う必要がある、とする」

『ハートを生み出したカードはどうなる』

「無論もはや戦場にも行けないし、生産する事も難しいだろう。戦闘が終わるまで静かに療養して貰うさ」

 

 ケイスケは待機所からハートのカードを3枚選び、山札の向こう側に置く。

 戦場に近いが、おそらくはもう戦場へ戻れないであろう場所へ。

 

『山札がダメージを受けたり、戦闘で負傷した戦士に新たな戦士が活する為の力を与える。流れは分かるが、最初はどうするんだ? まさか自分で山札を傷つけろとでも?』

「まぁそれも手段としてはあるんじゃないか?」

『ケイスケ』

「まぁ、冗談だ……とも言えない所がカードゲームではあるんだが、無論待機所以外のカードも戦士が動くためのコストを生産する事が出来るぜ」

 

 ケイスケは笑みを浮かべながら、自分のすぐ近くにあった手札を持ち上げてゲイルに見せる。

 

『ここでも手札を使うのか……』

「そういう事だ。ただし、手札はまだまだ元気な連中だからな。ハートだなんだって縛りは要らねぇだろう。何でも出来るぜ。こいつらは」

『どんな物のコストにも使えるが、手札はそもそも戦場へ向かわせたい……む、むむ。ケイスケ。これは手札が足りないのでは無いか? 5枚ではすぐに無くなってしまうぞ』

「そうだろう。そうだろう。であれば、俺とゲイルで交互に手番を回す際に手札を、そうだな……2枚ずつ補充しようじゃないか。嬉しいだろう」

『……恐ろしい事を考えるものだ。ケイスケ。一瞬ありがたいと思った自分に恐怖したぞ』

「はて。何のことやら」

『例えばその山札が50枚であれば最低でも25回手番が来るだけで終わりだ』

「ふ、ふふふ。残念だが、ゲイル。その恐怖心は正しいが……25回も手番は来ねぇよ。カードゲームはもっと早いんだ。言っただろ? 攻防の差分だけ山札は削れていくんだぜ?」

『……恐ろしいゲームを思いつくものだな。人間は』

 

 ゲイルはケイスケの凶悪な笑みにやや引きながら、笑みの様な物を浮かべるのだった。

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