呪いの少女と祝福された世界   作:佳山針之介

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少し前に上げて削除した同名小説の改訂版です。
話の大筋は変わっていませんが、細かい部分がちょこちょこ変わっています。
誤字脱字等ありましたら報告お願いします。

2025/03/12 本文編集




シルヴィア・ネクロタフィオと賢者の石
第1話 森の少女 ※


 これはとあるイギリスの辺鄙な田舎村。トワイグフェレストと言う村の物語です。

 その時代、トワイグフェレストの村人達は健気に農地を耕し、少ない食料を得ていました。

 彼らは決して裕福とは言えない貧しい暮らしでしたが、それなりに幸せでした。

 村のすぐ裏手には、大きな森がありました。

 鬱蒼と生い茂る暗緑の森。いつ入っても夜のように暗く、その森こそがその村の名前の由来でした。

 その不気味な森の奥には小さな館があり、いつからかは分かりませんが女とその娘が住んで居ました。

 女とその娘は傷が癒える薬を、病を治す薬を作り村人に配りました。

 時には死に傾いた赤子を取り上げる事もあったのです。

 そうして、彼女達は村人からの信頼を集め、村人から賢女とまで呼ばれ厚い信頼を獲得したのです。

 

 

 ある時、村で作物の実りが悪い年がありました。村人達は大層困り、原因は何かと日々探していました。

 丁度、村を訪れていた帝国の商人が村人に嘯きました。

 

 『治らないと考えられた病を負った者が息を吹き返すような薬を作る女が、死にかけだった赤子を取り上げた女が賢女な訳が無い』

 『──そんな賢い女は、忌まわしき悪魔と契約した〝魔女〟では無いか』

 

 そして、魔女に対抗すべく神の名の下、正義を掲げた村人達が立ち上がりました。忌まわしき魔女に鉄槌を与えるべく〝魔法の館〟へと武装して向かいました。

 館には魔女。そして魔女の娘が居ました。

 村人達は魔女を倒そうとしました。しかし、魔女は村人達に魔法をかけて魔女の娘と共に森の奥へと逃げ出したのです。

 それでも、村人達はただでやられるほど弱くはありません。森に逃げた魔女達に向かって弓を引き矢を放ち、見事魔女に命中させました。

 魔女は怯み大人しく捕まり、すぐに火刑に処されました。

 

 魔女が火刑台に送られて3日後。遂に森の奥で魔女の娘が捕まり、娘も火刑に処されました。

 これにて魔女と魔女の娘は正義の村人に倒されました。

 めでたし。めでたし。

 

 ──しかし、その村はもうありません。なぜでしょう?

 

 

 イングランドの北方。スコットランドのすぐ手前にある鬱蒼と生い茂る深い森の奥。

 〝呪われた森〟〝魔女が住まう森〟と呼ばれ、度重なる時代の波に飲まれても尚、奇跡的に残った森。その奥に、1軒の古い小さな館が立っていた。

 その館には少女が1人孤独に暮らしていた。

 少女は、小柄で雪のように白い肌と白髪混じりの黒曜の髪。そして暖かい光を灯した灰色の瞳を持っており、とても時代遅れな服を身につけていた。

 少女は今日もたった1人だけの日常を過ごす。

 

 先程まで煎じていた魔法薬を空いている薬瓶に流し込み、大鍋を少女は流し台に持って行く。蛇口を捻り、ヤカンに水を入れて火にかける。ボンヤリと火を見ていれば、ヤカンから沸騰した事を知らせる音が空間を裂いた。

 少女は慌てて火を止めた。次に、予め用意しておいたティーポットに流し込む。そして、ティーポットからティーカップに紅茶を流し込む。すると芳しい香りが部屋に漂い、充満する。それを少女は1人で楽しむ。

 

 部屋には山積み置かれた本やら、ギッシリと文字が記された羊皮紙の束。薬の材料やらが乱雑に置かれている。

 それらを華麗に避けながら、部屋中央に置いてある木のテーブルまで向かう。テーブルの上も酷く混雑していた。

 少女はティーカップを混雑しているテーブルの中で、奇跡的にテーブルが見える所に置いた。そして、少女自身は木の椅子に座る。木の椅子からは、ギシギシと怪しい音が聞こえた気がする。

 家具が少し古くなって来た気もするが、どうにかなるであろう。なんだって、ここは〝魔法の館〟なのだから。

 魔法の館にある家具には魔法がかかっている。ある程度劣化すれば新品に様変わりする魔法がかけられている。……らしい。

 少女にとって魔法についての話は、朧げな記憶の中で少女の親が話していたことだ。

 

 そして少女は、テーブルに積み重ねたままの読みかけの古い本を手に取る。

 今日、手に取った本は薬品の調合方法についての本だ。本のページを捲る音、古い本特有の古臭くとも芳しい香り。少女は本を読みながらのティータイムが、1日の中で1番のお気に入りの時間だった。

 

 この〝魔法の館〟で山積みになった本に囲まれ、魔法薬を作り、ティータイムを過ごす。それが少女の世界だった。幸せな日々。何も恐る事無く、哀しむ事なく過ごす事。それが全てだった。

 時々、薬の材料を取りに行く為に〝魔法の館〟を出る事はあった。それでも、最大で200m程離れた場所にある小川に水を汲みに行ったぐらいである。少女の世界はとてもとても狭かった。

 

 

 世界が本当は自分が知っている範疇よりもずっと広い事を。少女は知らない。人の生の厳しさを。残酷さを。

 少女は偽りの、虚飾に濡れた幸せを享受し続けていた。誰か作為によって、この偽りの楽園で過ごし続けた。

 この愛おしい、幸せはいつの日かに崩れ去る砂上の楼閣である事を少女は知らない。

 されども世界は醜く、想像よりも酷い事を少女は少しばかり知ってしまっている。なんて言ったって、少女の親は5年前に死んでしまった。……哀しい事に、何者かに殺されてしまったのだから。

 何があったのかは少女は憶えていない。勿論、親が誰に殺されたのかも覚えていない。少女はなんとなく悟っていた。これは自分の本能が消したがっている記憶である。と……。

 

「はぁ……」

 少女はため息を漏らす。そして、テーブルに置いたつい先ほど煎じた魔法薬の入った薬瓶に手を伸ばす。翡翠の魔法薬。あんまり飲みたくない色をしている。

 事実、有り得ない程に不味い。

 

 少女は過去に自分が作っているものだから、どうにかしてこの不味さを軽減させようとチョコレートを入れたり、砂糖を入れたりと試行錯誤した。

 しかし、その試行錯誤の結果は薬の効果が無くなってしまうと言う結末に至った。

 どうやら、魔法薬にチョコレートというものは相入れないものなのだ。それを少女は学び、その後落胆した。

 だから少女は飲み方に気を遣う事にした。それは単純明快な方法で、一気になるべく舌に乗せないように飲むと言う方法だ。

 そうやって飲めば少しばかり、味を感じずに飲み切る事が出来るのだ。

 

 しかし、少女としてもずっと不思議に思っていた。何故、自分はこの薬を飲まなくてはいけなくなったのか? これもまた憶えていない。

 きっと自分の過去の所為であろう。そう誰も居ない部屋にて1人呟き、覚悟を決めてから少女は薬を一気飲みする。

 

 

「ぐえー。やっぱり不味い……」

 少女はそう誰も居ない部屋に言った。その後、椅子に座り直して机の上に置いた本へ手を伸ばしてまた読み出す。

 

 しかしながら、文字が滑って本の内容は一切、入って来なかった。

 どうしても、少女は気になってしまうのだ。自分の忘れてしまった過去について……。その記憶を紐解こうとしてしまう。それが碌でも無い結果に至ると知っておきながら……。

 ──しかし、少女は自分の過去の記憶など紐解けない。

 いつも記憶の行き止まりに辿り着く。そんな事を毎日続けているのだから、積読は減らないばかりの日々だったのだ。

 

「私に、何があったの……かな?」

 少女の自問。誰も答えを言う人はいない。

 少女は何度目かのため息を吐き、本に視線を移す。本は丁度、トリカブトの効能について書かれているページだった。

 

 ふと窓の方から聞いた事の無いコツコツと言う音が聞こえた。少女は音を立てないように、恐る恐る窓へ近づいてみる。

 

 少女は目を丸くさせた。今見ている現実が理解出来ない。と言う表情だ。

「ふっ、梟?」

 そこに居たのは確かに、梟だった。目が灰色の梟だった。少女は図鑑の中でしか、梟を見た事が無い。

 少女は困惑しながらも窓を開け、梟を家の中へ招き入れる。その梟の足には何やら封筒が掴まれており、梟はその手紙を少女の元へ落とした。少女は封筒を拾い上げ、よく観察してみる。

 

 封筒には中央に『H』と金文字で書いてありその周りに獅子、穴熊、鷹、蛇が並んでいる。少女の元に自分宛の手紙が来たのは、短い11年間の人生の中で初めてだった。

 手紙とは、少女にとっては物語の中に出て来る架空の存在だったのだ。その為、浮かれているのが半分、不気味に思っているのが半分だった。

 本当に自分宛の手紙だろうか? 少女は、宛先を確認しようと封筒の裏を見る。

 

「宛先は……えっと、【トワイグフェレスト 鬱蒼と生い茂る深い森の奥 『魔法の館』 シルヴィア・ネクロタフィオ様】──えぇ!?」

 

 封筒の宛先は、気持ち悪いくらい細かく書かれている。ここで少女、シルヴィア・ネクロタフィオは不気味に思った。一体、差出人は誰なのだろう?

 一旦、手紙から手を離し、テーブルの上に置いて封筒を外からじっと眺めた。

 特に変な物が付けられてはいない。しかし、それはシルヴィアが分からないだけで、何か魔法的な物が付いているのかも知れない。

 この得体の知れない手紙は、どんな得体の知れないものをくっ付けているのだろうか?

 シルヴィアは悩みに悩んだ末、この封筒を開けなければ話は進まないのだろう。と、封を慎重に切って中身を取り出す。

 中から2枚折りになっている羊皮紙が出て来た。その羊皮紙を開く。

 

「差出人は……【ホグワーツ魔法魔術学校校長 アルバス・ダンブルドア マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会長】か、肩書き……多く、ない?」

 

 ここまで読んでシルヴィアはクラクラしてしまった。こんなに肩書きをびっしり書いては、なんだかこちらが脅されている気分になる。

 シルヴィアはまた一旦テーブルの上に手紙を置いて一息置く。

 ただ、1つ気になった事がある。この肩書きの多い人物であるダンブルドアという名字。何処かで聞き覚えがあったのだ。

 どうにか記憶を辿るが、結局いつも通りの記憶の行き止まりに辿り着いてしまったので、仕方なくまた手紙を手に取って読み始める。

 

「何々……?【このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可され──……えっ? ホグワーツ魔法魔術学校って?」

 

 シルヴィアはここで頭を悪い思考の方へ高速回転させる。

 これは誰かしらの悪戯であり、陰謀である。それも自分の親を殺した人達が自分が生きている事を知った上の宣戦布告の手紙なのだ。そうシルヴィアは結論を至らしめた。

 あまりにも自分の考えは、突拍子の無い結果かも知れない。しかし、5年前自分の親を、罪の無い自分の親を何者かに殺された。という記憶を持っているシルヴィアにとっては、命の危機を感じたのだ。

 

「どっ、どうしよう? どうしよう!?」

 シルヴィアは直ぐに梟を抱えて部屋に入れ、窓を閉じカーテンを閉ざす。梟も部屋に入れたのは、シルヴィアのただの庇護欲である。

「わ、私はどうすればッ!」

 そう嘆きの声を上げるとシルヴィアは直ぐに家の窓とカーテンを全て閉じて部屋の床に蹲るようにする。さながら懺悔するキリスト教徒だった。

 ──ただ、シルヴィアはこの一連の行動により、少々頭が冷やされていった。手紙の文章を読み解こうとし始める。

 

「学校、学校……。魔法の、魔術の学校? そんなのお父さんもお母さんも言って無かった。このホグワーツ魔法魔術学校が一体何処にあるのかなんて知らない。わ、私は……どうするべき……?」

 シルヴィアはフラフラと立ち上がり、梟を見る。梟は、丸い灰色の瞳でシルヴィアを真っ直ぐ見ていた。

 

「あなた……って言ったって動物と話せる訳ないよね……」

「──私をイキナリこの散らかった部屋に押し込んでみたと思ったら、カーテンをご丁寧に全部締め切って、オイノリするように床に座るだなんて……イソガシイ娘だコト。それに娘はジダイ遅れな格好をして……イミ分からないわ。」

「えぇ!? なっ、なんで……言葉を……?」

 

 シルヴィアは驚いた。

 動物達が人類と同様、自らの同族達同士でコミュニケーションを取る。と言うのは本で読んで知っていた知識ではある。しかし、それは人間が理解出来ないものである、という事も勿論知っていた。

 それなのに、この梟は自分に向かって話し出したのだ。驚く他無い。

 ここは物語の中の世界、童話の世界では無いのだ。シルヴィアにとっては、この世界は現実なのだ。なのに、動物の梟の言葉が分かった……。

 

「あら? 私のコトバが分かるのね。珍しいニンゲンだコト。貴女、名前ハ?」

「えっ、えっ……?と、えぇっと。私は、私の名前は……」

「──貴女、まさかとは思うけど……ジブンの名前を忘れた訳じゃ無いわよね? そのコミュニケーション能力だとホグワーツでのセイカツが今からでも憂いられるワ」

「わっ、私は……アッ……あーと、シルヴィア・ネクロタフィオ。です」

 先程手紙で読んだとは言え、忘れかけていた自分の名前を自分のその唇から紡ぎ出す。

 梟は呆れたような表情だった。とシルヴィアは思った。

 

「シルヴィア・ネクロタフィオ? ふーん、大層フキツな名前だコト。けど、名前のヒビキは美しいワネ。私のナマエとチョット似ているし。貴女のお母さんはいいセンスしてたんじゃない?」

 梟はシルヴィアの名前を誉めた。そこでシルヴィアは顔を紅潮させる。

「貴女、ホグワーツについてよくワカッテいなさそうだったわね?

 普通、オヤが居る場合はオヤがするものだし、ホンライであればホグワーツについてのカイセツはホグワーツのキョウジュが務めるモノなんだけど……トクベツに私が教えて差し上げまショ。カンシャしなさい?」

「はっ、はい……ありがとうございます……」

 シルヴィアは、梟の独特な話口調と優しさに戸惑いながら、梟に感謝の意を伝える。

 

「じゃあ、まずはカーテンを開けるトコロからね」

 梟に言われシルヴィアは気が付く、先ほど焦って窓もカーテンも閉じてしまった。よってこの部屋の中は夜のように暗いのだ。

 すぐさまシルヴィアは立ち上がりカーテンを開き放ち、部屋に光を入れる。

「ウン、これでいいわ。太陽の光以上にトウトイものは無いもの」

 そう梟が窓を向きながら言うとシルヴィアの方を向き直す。

 

「……貴女は中々、私のナマエを聞かないから名乗るけれども、私の名前はオリビアね。貴女とオナジク綺麗なナマエだわ。ヨロシク。」

 梟がそう言うとシルヴィアは「ほわぁ……」となんとも言えない声を出す。その様子を見た梟ことオリビアは、呆れた目をシルヴィアに向ける。

「ホント、貴女って誰かと会話するコトが無かったのね。……さて、ホグワーツについて教えて上げるわ。先にイッテおくと、私は、梟だわ。よって、梟シテンだから結構適当なヒョウロンだわ。勘弁してね。私は唯のユービンブツをハコブだけの梟なんだからね」

 そうオリビアが前置きを置いてホグワーツについて話し始める。シルヴィアはメモを必死に取りながら、話を聞いた。

 

 

「つ、つまりは、その……ホグワーツという場所は……ブリテン島に住む11歳以上の魔法使いの多くが行く……魔法教育機関──って事ですか?」

「まぁ、今まで言ったコトをゼンブ引っ括めるとそう言うケツロンが出るわね。あまりにもヨウヤクしすぎな感じがするケド」

 困惑していた。シルヴィアにとってあまりにも初めて聞いた話が多かったのだ。

 シルヴィアの親は一切ホグワーツについて話していなかった。まだ、その時では無いと判断して話さなかったのか、若しくは娘にホグワーツに行ってほしく無かったのか、どちらかシルヴィアにはどうしても判別は付けられないが、一切話さなかったのだった。

 自分がどうすればいいかシルヴィアは悩み始める。その間、オリビアが口を開く。

「一応のハナシだけど……入学をジタイするコトも理論上出来るわ。ケド、大抵のバアイは……その許可証に大層な肩書きと共にナマエが書かれている、好々爺アルバス・ダンブルドアが送り込んで来る教職員にホダされて、行くコトになるわ。だから、ホントに理論上はジタイ出来るって話ね。」

「な、なんなんですか、その……届いただけで毒みたいな手紙は……」

「ふん、それについては私もドージョウしてあげるわ。貴女みたいなコはジタイしたくて堪らなそうだからね」

「なっ、なんで分かるのですか!?」

「……カオに書いてあるわ」

 シルヴィアは自分の顔を触り、直ぐに手鏡を取り出す。それを見たオリビアは呆れた表情になる。

「……イマのは比喩表現よ。貴女って……そう言うのもウトイのね……なんだか、可哀想な子ね……」

 オリビアはそう憐れんだ。

 シルヴィアは何かを言い返したかったが、特に何も浮かばないのでその場で黙っているしか無かった。

「さぁ、シルヴィア。テガミを書きなさい。ジタイするにしても了承するにしてもテガミを書くのがジョーシキであり、レイギよ?」

「は、はい……」

 シルヴィアはタンスから羊皮紙を1枚、羽ペンを1本取り出す。

 

「あっ、あの。オリビアさん。手紙ってどう書けば……?」

「貴女って、マホウよりも先に社会的ジョーシキを学んだ方が良いと思うわ。

 ……そうね。まず、羽ペンを握って? テガミはまず頭語を書くの。コンカイは『拝啓』って書きなさい──」

 その後の『一般郵便梟オリビアによる手紙の書き方講座』は、2時間以上に渡った。夕日の光が部屋に差し込むぐらいの時。遂にシルヴィアは、返信用の手紙を書き終える事が出来た。

 

「オッ……オリビアさん……あまりにも、こう……スパルタ過ぎませんか……?」

 シルヴィアはダメになった羊皮紙の山を見つめながらオリビアに言う。オリビアは既に手紙を掴んで飛ぶ準備をしていた。

「貴女があまりにもポンコツだったのがいけないのよ。まぁ、サイシューテキには書き上げられたんだし良いじゃない。それにケッコウ、貴女字がキレイだし。

 兎に角、これはシッカリとホグワーツに届けておくわ。──まぁ、ジタイの意が受け入れて貰えるはミチスーだけど……。確実にホグワーツのキョージュが来ると思うわ。くれぐれもあのセイカクも見た目も最悪な奴が来ない事をイノッテおくのね」

「……そ、その教授に対して散々な言い方じゃありませんかね……?」

 シルヴィアはその『セイカクも見た目も最悪な奴』に同情の意を少し込めながら言う。

「いや、彼はホグワーツ史上サイアクのキョージュだわ。元死喰い人(デスイーター)だし、なんでダンブルドアはあんな奴をキョージュに添えてのかしら?……まぁ、良いわ。きっと貴女の元にはフクコウチョーが来るだろうからアンシンして大丈夫よ」

 そう一気に言うと翼を大きく広げる。シルヴィアにとって〝元死喰い人〟の意味がよく分からなかったが、聞けるような暇はなさそうに見えた。

 

「えぇっと……今日は色々と手取り足取りありがとうございました……」

「まぁ、大したコトじゃないわ。梟と話せるニンゲンが物珍しかったから、付き合ってアゲタだけよ──また、会えると良いわね。」

 そう言うと窓から飛び出し、風に乗って宵闇が迫る空を舞い始めた。オリビアが飛ぶのは早くすぐにシルヴィアの肉眼からは見えない距離になる。

 

「──行っちゃった……変な梟さん。えぇっと、オリビアさんだっけ? すぐに色んな事忘れちゃうから嫌だな……早く日記に書かないと。」

 そう言いながら、シルヴィアは引き出しから分厚い日記帳を取り出した。そして、今日あった奇怪な出来事を事細かに書き綴る。

 大切な日記帳。忘れやすいシルヴィアにとっては必須の道具であり、シルヴィアが5年前に親から貰った最後の誕生日プレゼントだった。

 どうやら日記帳には魔法がかかっているそうで、無限に日記を書けると言う素晴らしい代物だった。

 

 

「……──オリビアさんに、ホグワーツの教授が来るのはいつなのか聞いておけば良かった。」

 そう呟いて窓の外を眺める。もう既に煌めく星々が登ってきており、月も静かに輝いていた。

 森の木々が揺れる音が遠くから聞こえる。先程の怒涛の出来事が嘘のように思えた。

 実は、幻覚を見ていたのでは無いか。シルヴィアはそうとまで思った。

 しかし、ダメになった羊皮紙の山を見てあの出来事は間違いなく現実である事を実感した。

 

「さて、と。薬を作らなきゃ」

 シルヴィアは立ち上がり、大鍋の元へ向かう。しかし、流し台に置いただけであって洗い忘れていた事を思い出し、シルヴィアは静かに落胆のため息を吐いた。

 

 シルヴィアは非日常から日常に戻る。今までの通りの生活をまた送り始める。

 

 

人間は、誰しもが運命から逃れないのと同じように、君もまた森から逃れられない。森に囚われし少女よ。君はどんな物語を歩むのだろうか? 

少女よ出来るものならば、森の中で足を止めずに歩み続けるのだ。何度道に迷おうともその森から出るのだ。

自らに贈る鎮魂歌の歌詞を考えながら歩み続ければ良い。自らの墓碑に刻む言葉を考えながら行けば良い。

少女よ、運命に抗えよ。少女よ、森に囚われ続けるな。君ならば、森を通り抜けられる。私はそう信じよう。

 Ophelia Black

 






【挿絵表示】


 少し前に上げていたのに消してしまい申し訳ありません。どうしても話の流れが気に入らず、修正を加えたい。と思って、勢いで消しました。
 評価をしてくれた方々、感想を寄せて頂いた方々、お気に入り登録をしてくれた方々、しおりを挟んでいた方々。この場で謝罪をいたします。
 勝手ですが、ここで再出発を切らせていただきます。なるべくエタら無いように頑張っていくつもりです。どうかよろしくお願いします。これから楽しんでいただけたら幸いです。
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