2025/02/27 タイトル変更
そうして、クリスマス休暇が訪れホグワーツから多くの生徒が立ち去った。
シルヴィアはこっそり、スリザリン生の集団から離脱してハーマイオニーと共にコンパートメントに乗り込んでいた。
あの入学式の時のように、車内販売のおばさんからお菓子を買い付けて2人で食べている。車窓は深い森の中から徐々に丘陵地帯、そして田園風景が見え始める。
「……こうやって、2人でコンパートメントに乗ってると入学式の日が昨日みたいだね」
シルヴィアは百味ビーンズを食べながらそう言った。
先程、百味ビーンズをハーマイオニーにも勧めたが、断られてしまった。その為、箱ごと抱えて食べていたのだ。
「そうねぇ……この3ヶ月間があっと言う間に過ぎていったわね」
ハーマイオニーはどこか落ち着かない様子だった。
「あぁ、ホグワーツの図書館の本持って帰れたらいいのに!」
ハーマイオニーはどうやら、ニコラス・フラメルや彼が作り出した何かしらの魔法道具について調べたいようだった。
しかし、ホグワーツの本の大抵は城外持ち出し禁止。その為、捜索の手を一旦休めるしか無かった。
一応、ポッターとウィーズリーに調べるようには言っているそうだが、彼らが休暇中、調べてくれるかは未知数。とも語っていた。
「わ、私も一応、家の本を探してみるからさ……落ち着いてよ。百味ビーンズ食べる? 今のところ変な味は出てないよ?」
そう言ってシルヴィアは半分ほど食べた百味ビーンズを見せた。
「ほ、本当に? もう、私、ゲロ味は勘弁よ?」
そう言いながらハーマイオニーは恐る恐る手を伸ばし、1つビーンズを取り出す。黄色いビーンズだった。
「パイナップルとかだとありがたいんだけど……」
そう言って口に入れる。一口噛んだ途端、ハーマイオニーはティッシュを取り出して吐き出した。
「な、何よこれ! ……ああ、最悪。多分鼻くそ味だわ!」
「えぇ!? な、なんで……?」
やはり、ハーマイオニーは百味ビーンズの出目がよく無いようだった。
シルヴィアはお詫びとお口直し用に、自分の蛙チョコレートをハーマイオニーに渡した。
「うぅ……ありがとう」
ハーマイオニーは蛙を捕まえるのが上手な様子でスマートに口の中に放り込んだ。
「えぇっと、今回は……あ!」
ハーマイオニーは、蛙チョコレートのカードを見るなり思い出したような表情でシルヴィアを見つめた。
「ん? どうしたの?」
「た、単純な疑問よ? そう、疑問。どうして、シルヴィアって500年前の人の名字を名乗ってる……の?」
シルヴィアは一瞬固まるが、また動き出す。
丁度、その時にハーマイオニーの蛙チョコレートのカードが見えた。
アルバート・ネクロタフィオ
1445年生誕1481年没。ネクロタフィオ家全盛期(1466〜1480)の当主。彼自身が当主になった記憶は正確には存在しないが、当主のような振る舞いをしていた。通称『殺戮卿』。300人以上のマグルと50人以上の魔法使いを殺した。と言う記録が残る。
ブラック家の次女・メロペーを娶るが後に殺害。その後、弟・セバスチャン、義妹マーガレットの共謀により1481年に命を落とす。メロペーの間に子供が居たようだが、魔力が不安定だった為にメロペーにより、殺害される。
「あーと、その〜……ハーマイオニーは知ってるの? ネクロタフィオ家が中々に酷い一族だったって……」
「う、うん。け、けど! シルヴィアはそんな人じゃ無いって知ってるわよ!」
「あはは……ありがとう。……それで、なんで500年前の人の名字を名乗っているか……だよね。」
シルヴィアはもう一度、ハーマイオニーの問いを繰り返す。
「ごめんね、ハーマイオニー。それについては全く分からないの……。
ダフネが想像した話によれば、その殺された筈のアルバートとメロペーの子供の血が続いていて、現代まで隠れ住んでいた。って言う話みたいなんだけど……私、全然両親の事を覚えていなくて……」
「そ、そうなの……ね。けど、大丈夫よ! 私は、シルヴィアがそんな残虐な人の子孫だったとしても、シルヴィアはそんな人じゃ無いって。知ってるわよ!」
「う、うん。私だって、ドン引きしたもん。その……アルバート・ネクロタフィオって言う人の所業は……」
そして、コンパートメントは随分と冷え切った空気になる。
「あ! そうだわ。シルヴィア。貴女に、クリスマス・プレゼントを渡したいんだけど迷惑にならないかしら?」
「め、迷惑だなんて……そんな……ありがとう。私からもクリスマス・プレゼント渡すよ。」
「本当!? 嬉しい!」
そこで、シルヴィアはハーマイオニーから住所を聞きメモをした。
しかし、そこでハーマイオニーへのプレゼントをどこから買えばいいのだろう? と言う疑問に至る。オリビアは元一般郵便配達梟だったし聞けば分かるだろうか……
そうして、いつの間にか車窓はロンドン市街に変貌しており、もうじきキングス・クロス駅に着く事が分かった。
「後、5分でホグワーツに到着します。プラットホームで姿現しを用いてお帰りになる生徒以外はマグルの服装に着替えた上で下車準備をしてください。
そして、お忘れ物無いよう今一度ご確認のほどをよろしくお願いします。お忘れ物をした際は魔法省魔法運輸部に連絡してください」
車内アナウンスが響いた。シルヴィアはあのマダム・マルキンからプレゼント価格で購入した服を着込んでいた。
「シ、シルヴィアって……その服しか持ってないの?」
「いや、持ってるには持ってるんだけど……マダム・マルキンに服のデザインが古い。って言われちゃったんだよね……」
ハーマイオニーは何かを心に決めた表情でいた。
間も無くホグワーツ特急は9と3/4番線に辿り着いていた。ハーマイオニーとシルヴィアは大勢の生徒達の波をどうにか乗り越えて、汽車からプラットホームに降り立つ。
「そう言えば、シルヴィアはどうやって帰るの? ここから結構遠いでしょ? トワイグフェレストって」
「大丈夫。スネイプ先生から〝
そう言ってシルヴィアはポケットの中に入れていた黒い羽ペンを取り出した。
「そ、そうなのね……。じゃあ、シルヴィアは9と3/4番線で待つって感じ?」
「そうだね。……じゃあ、ハーマイオニー。また新学期に会おうね。」
「えぇ! クリスマス・プレゼント楽しみにしててね!」
そう言ってハーマイオニーはマグルの駅のプラットホームへ、シルヴィアは9と3/4番線に残った。
「クリスマス・プレゼントねぇ……どうすればいいと思う?」
シルヴィアはトランクの上に乗っているオリビアに話しかける。オリビアは少し悩んだ様子を見せるがすぐに思い付く。
「そうねぇ……後で『ふくろう通信販売』のカタログを取って来てあげるからそれを見なさい。貴女、一応お金持ってるんでしょ?」
「あ〜、持ってる持ってる。よし、これで大丈夫! ハーマイオニーにプレゼントが渡せる!」
シルヴィアは嬉しそうに言うが一方、オリビアは不安でしか無かった。
このシルヴィアのプレゼントを選ぶセンスがどんなものか、オリビアに想像も出来なかったからだ。
「ご機嫌よう。そこのお嬢さん。失礼、少し話をさせてもらってもいいかね?」
そう言ってシルヴィアに話しかけて来たのは、プラチナブロンドに灰色の目、白い肌……どこかドラコ・マルフォイに似ており、どことなく上流階級感溢れる男性だった。
「は、はい……?」
男性は朗らかな笑顔を浮かべている。シルヴィアは気付く事無いが、それは計算され尽くしたものである。オリビアはすっかり警戒しているが、男性は気が付いていない。
「あぁ、そう恐る事は無い。わたしはルシウス・マルフォイ。君と同学年で同じ寮のドラコ・マルフォイの父親だ。……君は、シルヴィア・ネクロタフィオ……と言うらしいね? 本当かい?」
シルヴィアはマルフォイ氏について計りかねていた。一体、彼が何の為に自分に近付いて来たのかが分からなかったのだ。ただの息子の同級生への挨拶なんだろうか? それにしては何か裏を感じる。
「そ、そう……ですけど……」
「そうか……いや、気にしないでおくれ。今の時代にネクロタフィオ。と言う名字を名乗っている少女が居るとドラコから聞いて少し興味を持ったんだ。」
スリザリン寮に入った時と同じだった。マルフォイ氏は自分がネクロタフィオだから自分について興味を持っているのだ。
シルヴィアはネクロタフィオ。と言う名字に対して悪いイメージしか持っていなかったが故にそう言った人々に飽き飽きしていた。マルフォイ氏は朗らかな顔をやめ、真剣な表情になった。
「──聞くところによると、君の……ご両親は。まぁ、誠に残念な事に……もう亡くなっている。との事だが……何か援助の必要があれば、わたしに言ってくれないか?
わたしの家は、それなりに資金があって君を支援する事はなんら痛手にならない。何か困った事があれば言ってほしい」
「あ、は、はい……あ、ありがとう……ございます……」
そのシルヴィアの言葉を聞くなり、また朗らかな笑顔に戻って「ご機嫌よう」と言ってシルヴィアの前から去って行った。
少し離れた場所にドラコ・マルフォイとその母親であろう色白のすらりとした美女で、髪はブロンドで目は青い女性が立っていた。2人は怪訝そうにこちらを見ていた。
「……あれはマルフォイ氏よね。あの人中々にヨワタリ上手イのよ。
シルヴィアはへぇ……と返した。その話によれば元死喰い人ながら、ホグワーツで教授をやっているスネイプが一番の世渡り上手なんだろう。そうは見えないが。
「そろそろ、10分じゃ無いかしら?」
シルヴィアはそうオリビアに言われるなり思い出したかのように黒い羽ペンを掴む。途端、内臓がぐるっとかき回される感覚に襲われる。
「うっ……グヘェ……」
シルヴィアは胃液が喉を灼く感覚を覚えるが、吐きはしなかった。
顔を上げる。そこには、確かに見慣れた小さな館が静かに立っている。故郷は雪がしんしんと降っていた。
「久しぶりに……帰って来た……」
家のドアを開ける。
ホグワーツ入学前と変わらない様子で物は散乱しているし、本は高く積み上がっている。けれども、その光景がどこか落ち着くし、安心する。
「……ただいま。我が家」
◇
家に帰ってからまず、シルヴァイは家の中のニコラス・フラメル。と言う名前が書かれていそうな本を手当たり次第探してみた。と言ってもシルヴィアの家にある本は軒並み古い。
本当にこの中にニコラス・フラメルについて載っている本があるのか、半信半疑のまま捜索を続けた。
オリビアは部屋中の本を全部ひっくり返すかの勢いのシルヴィアを引いていた。
「あ、あった。あった! あった!! 見つけた〜!!」
シルヴィアはやっと探し出して3日目でやっとニコラス・フラメル。その文字が書かれている写本を見つけたのだ。写本の題名は〝直近100年の功績者〟と書かれていた。
『ニコラス・フラメル 1330年誕生〜
フランス・ボーバトン校出身。ボーバトン校を卒業した後に錬金術師として生涯を研究に注ぎ込んだ。一番有名で最大の功績は『賢者の石』の錬成。賢者の石は如何なる金属をも黄金に変える力があり、また飲めば不老不死になる命の水の源でもある。フラメル氏はペレネル夫人と共に500年以上を生き永らえる事を目標としているそう。』
「こんなにヘヤを散らかして……一体ナニを探していたの?」
すかさず、オリビアはシルヴィアの肩の上に飛び乗って来て聞いてくる。
「ニコラス・フラメルって言う人についてだよ」
「あら、錬金術師で賢者の石を錬成した歴史上唯一の人でしょ? 私にキイテくれたらすぐに答えられたのに」
オリビアがそう言うとシルヴィアの時間は止まる。
この3日間はなんだったんだと思い始めた。しかし、これ以上考えてはいけないと思い、次の行動に出る事にした。
「……さ、さて……オリビア。『ふくろう通信販売』のカタログを見せて? ハーマイオニーにクリスマス・プレゼントを選んであげなきゃだから……」
「クリスマスは今日よ? まぁ、今日中決めれば年内には届くと思うケド……」
シルヴィアはまた時間が止まる。今日がクリスマス? いつの間に、そんなに時間が経っていたのか……そう呆気に取られた。
「な、なんで先に教えてくれないの!?」
「私は、シルヴィアのミミモトで何度も言ったのに、シルヴィアはゼンゼン反応しなかったじゃないの!」
シルヴィアは少し思い返してみる。
確かに……確かに、オリビアの声が記憶の彼方から聞こえて来たような気もする。
「後、貴女へのクリスマス・プレゼントもタクサン届いているわ」
そう言ってオリビアは玄関の方を向く。シルヴィアは、恐る恐る玄関に向かって扉を開ける。
すると、いくつかの袋が玄関前に積み重なっていて、薄らと雪が積もっていた。シルヴィアは積もっていた雪を払い、全てのプレゼントを部屋に入れた。
「なんだか、やたらと沢山ある気がするんだけど……なんでだろ?」
「まぁ、イチオウ見てみなさい。その後、貴女にクリスマス・プレゼントをオクッテくれた人にクリスマス・プレゼントを返せばいいわ」
「あ〜、うん……そう、だね。」
シルヴィアはまず1つ目のプレゼントを見てみた。送り主はダフネで中身は薔薇の香りの香水だった。次のプレゼントはパンジーからで(オリビア曰く)高級紅茶の葉。
また、ミリセントからも来ており世界各国様々なお菓子の詰め合わせだった。どれもセンスがいいとオリビアは言っていた。これが巷で噂の『女子力』とか言うやつなんだろう。
次にやたらと大きな箱を見る。送り主はハーマイオニーだった。箱を開けると3着ほど服が入っていた。全てあのマグルの人々の服で白色のブラウスに青い吊りスカート。それに加えて紺色のワンピースも入っていた。
シルヴィアは歓喜した。これでキングス・クロスを不自然な格好で歩かなくていいのだ。
そして、次はなんとあのスネイプからだった。箱を開けると
「なるほど……つまりは……5人分のプレゼントを選べばいいのね?」
「いや、この魔法薬学キョージュはまた別でしょ」
オリビアにそう言われた為、シルヴィアはスネイプを除いた4人のプレゼントをカタログから選び始めた。
「う〜ん、これはどうかな? 〝一般家庭で使える魔法薬学〟」
そう言ってカタログに書かれていた本を指差す。煽り文句には〝これであなたも怪我知らず、病知らず!〟とも書かれていた。
「多分、スリザリンの同室女子3人は家にあると思うわ。それに、そのハーマイオニーって子はマグルのセカイで過ごしてるから使い所が無いと思うわよ……」
「そっか……じゃあ……〝イギリス全土魔法薬用植物百科事典〟は?」
カタログの煽り文句には〝皆様の健康と安全を支える一冊。野外キャンプ必携のバイブル!〟と書かれていた。
「それって貴女がホシイだけでしょ?」
「ゔっ……バレたか……」
シルヴィアはカタログを捲っては、絶妙なデザインのアクセサリーだったり、微妙に要らない魔法薬学、薬草学関連の本だったりを選んだ。
「あーもう、分かんないよ〜! 他人にクリスマスプレゼントなんか選んだ事ないんだよー!」
シルヴィアがそう魂の叫び声を上げた頃には日も傾き始めていた。
焦り始めて、シルヴィアはカタログをもう一度読む。
「……う〜ん、ハーマイオニーには〝インクの切れない万年筆〟? はどうかな。インクが切れないって一々インク壺にペン先を突っ込まなくていいって事でしょ?」
「あら? 急にセンスが良くなったわね。いいんじゃ無い。彼女、ケッコーな勉強好きだし」
それからはすんなりと決まった。
ダフネにはスリザリンカラーの小さな宝石がはめられたネックレス。
パンジーには(オリビア曰く)高級紅茶用角砂糖。
そしてミリセントにはシルヴィアが部屋のどこからか探し出して来たレシピで作ったお菓子(とっても美味しい)とその作り方だ。勿論、味の保証はしっかりとある。
「どうかな?」
「ま、悪くは無いと思うわ」
オリビアは、いつの間にか知り合いの梟を何匹か連れて来ており、それぞれに仕事を割り振っていた。
「あ、そうだ! ハーマイオニーにはニコラス・フラメルが見つかった事を報告しなきゃ」
そう言ってシルヴィアは羊皮紙にニコラス・フラメルが見つかった事。彼が錬金術師だった事。そして彼の最大の功績が賢者の石の錬成で、飲めば不老不死になる命の水の源である事を綴り、梟に任せた。
「ふ〜、これで一件落着!」
「良かったわね。じゃあ、私達はプレゼントをオトドケしてくるから半日グライ開けるわね」
「うん! よろしくね!」
そうして、梟一団はシルヴィアの家から離れて行った。
シルヴィアは入学案内の時にスネイプに下ろしてもらったお金の大半を使ってしまった為、少々の罪悪感と達成感に苛まれた。
けれども、友人達へのプレゼント代だ。多分妥当だろう。……まぁ、数冊魔法薬、薬草関係の本を自分用に買ってしまったが……。
そんな中、部屋を見る。ニコラス・フラメル探しで足の踏み場も無いぐらいに本が散乱してしまっており、軽く絶望を覚えた。
「まぁ、片付けなきゃ……話は進まないよね……」
シルヴィアはノロノロと片付けを進めた。
◆
「シルヴィア! 帰ったわ──……って大丈夫?」
オリビアが帰る頃には足の踏み場程度は出来ていたが、シルヴィアは疲れ切って狭い床に寝っ転がっていた。
「まぁ、ガンバッテ片付けをしたのね。まだ随分と散らかってるけど……。
そうそう、シルヴィア。ダイアゴン横丁でクリスマスケーキが大安売りしてからカッテ来たの。私からのクリスマスプレゼントよ」
「ふ、梟なのに、クリスマスケーキ買えるの……?」
「あら、マホー界的には案外、梟のチュウモンも聞いてくれるミセが多いわよ」
「へぇ……」
シルヴィアはオリビアのその言葉に少々疑心暗鬼になりながらも、買って来たと言う小さいクリスマスケーキに目をやる。
苺が1つ乗った可愛らしいケーキだった。シルヴィアは台所からフォークを持ってくる。
「オリビアは要らない?」
「イラナイわ。だって私、梟だもの」
「う〜ん、確かにそれもそうかもね」
そうしてシルヴィアはケーキを食べ始めた。始めて食べる甘さにシルヴィアは思わず驚いてしまう。
「すっごい、美味しいね、これ。こんなに美味しいケーキだなんて人生初かも。」
「それはヨカッタわ」
そうして、シルヴィアは家族と……では無いが、大切な人(人でも無いが)とのクリスマス(も過ぎてしまったが)を過ごす事が出来た。
「ふぁ〜、なんだかここ最近ホグワーツで人間らしい暮らしをしていたから、眠くなって来ちゃった……」
そう言うなり、シルヴィアはケーキが乗っていた皿を退かして眠り始めてしまった。
「ニ、ニンゲンらしい生活って……ナニよ。」
そう、オリビアが呟く頃にはシルヴィアは深い夢の世界に堕ちていた。
オリビアは仕方がなくシルヴィアに毛布でもかけてやろうとする。しかし、この部屋には毛布らしき物は無い。
オリビアはため息を吐いてからシルヴィアの開きっぱなしだったトランクの中からホグワーツのローブを取り出しそれをシルヴィアにかけてやる。
それからオリビアもシルヴィアの近くで丸くなって眠りだした。
◆
「し、しかし! 何故、ご主人様は……あ、あの、ただの少女……をね、狙うんですか?」
深い不気味な夜の森の中に怪しい影が居る。
ターバンを頭に巻き付けたひ弱そうな男。彼は小川の向こうに見える小さな館に目を向けながら何者かと会話をしていた。
「あの、小娘は……とても高い価値を持っている娘だ。クィレル! いいから、俺様の言う事を素直に聞いてあの家に向かえ。あの小娘を攫ってくるんだ!」
「ヒィ! わ、わか、わかりました!!」
ターバンの男、クィレルは小川へ向かおうとする。
『ユルサナイ……呪ッテヤル』
「だ、誰だ貴様!!」
クィレルの肩をがっしりと掴む何者かが男の後ろに居た。
声は野太いが、女の声だった。本当に世界の全てを呪ってしまいそうな、そんな憎悪と復讐心に塗れた声だった。
『此ノ森ニ入ルナ。此ノ森ォ穢スナ……ユルサナイ……呪ッテヤル!』
そう言うなり、女はクィレルの肩を砕くような勢いで力を強め始める。
クィレルは咄嗟に身を翻し、女の手から逃れる。しかし、女の姿は見えなかった。
『アノ年老イタ男ノ所為デ、力ガ弱マッテイル……。ユルサナイ……呪ッテヤル』
そう女の声のみが聞こえた。クィレルはすっかり震え上がり、足がガクガクとしていた。
「ご、ご主人様! 帰りましょう! 帰りましょう!! あの小娘ならホグワーツに居る時に十分狙うチャンスがあります!」
「ほぉ? それで、貴様は結局何度ポッターを殺し損ね。何度石を奪うのに失敗し、何度あの小娘を攫うのに失敗している?」
「ヒィ! も、申し訳ございません! わ、わたしにもう少し時間を! 時間を下さい! 策を、策を練りますから!」
クィレルは苦しみながら何者かとそう会話をする。
「……ん、誰か……居た、のかな?」
家から目を擦りながら、シルヴィアが出て来る。シルヴィアは、辺りを見渡すがシルヴィアの目にはクィレルが映らない。
「今だ! 行け!」
クィレルは声と共に駆け出す。小川に足を入れた時だった。
先ほどまで川幅が1mも無かった小川が、急にロンドンに流れているテムズ川ほどの川幅になった。それに加えて水深も深くなっていった。
極め付けは、水底からクィレルの足を引っ張る何者かが居た事だ。
『ユルサナイ……呪ッテヤル!』
水の中で確かにそんな声が聞こえた。
「気の所為……かな」
シルヴィアは家の中に戻って行った。
その頃にはクィレルは何十メートルか流されていた。クィレルはどうにか足掻き続けて自分の足を引っ張ている手を振り解いた。
「ゲホッ……ゲホッ、ゲホッ……こ、これは……い、一体……?」
「強力な保護呪文だ。クィレル。貴様が何を考えているのか我輩には皆目検討が付かないが、妙な真似をやめるのだ。自分の教え子の女子生徒を誘拐だとか本当に洒落にならんからな。」
川岸に上がったクィレルを見下ろしていたのはスネイプだった。
「セ、セブルス!? ど、どう……どうして……ここへ?」
「……──散歩だ」
「さ、ささ、散歩!?」
クィレルは非常に驚いた様子でスネイプを見上げていた。スネイプの瞳はいつも通り暗い黒色だった。
「さぁ、貴様はホグワーツへ帰れ。クィレル」
「い、言わなくとも! そ、そうするつ、つもりだ!」
クィレルはそう言うと姿現しでその場から立ち去った。
スネイプはすっかり小川に戻った川の水を何本かの薬瓶に詰めて姿現しで立ち去った。
マルフォイ氏:
ルシウス・マルフォイ。ドラコ・マルフォイの父親。魔法界の貴族的な人。ネクロタフィオと言う名字を名乗っている少女がスリザリンに入寮してきた。と言う事からシルヴィアに興味を持つ。シルヴィアに何かあれば援助すると言ったが、優しさからでは無い。
シルヴィアはネクロタフィオ家が結構やばい一族だと知ったので、自分がネクロタフィオであるから近付いて来る人に飽き飽きとしていた。その為、その援助に乗る気にはならなかった。
『ふくろう通信販売』:
魔法界の通信販売。
『ユルサナイ……呪ッテヤル』さん:
姿が見えない謎の人。野太い女の声でかつ、世界の全てを呪うような憎悪と復讐心に塗れた声である。クィレルの肩を砕こうとしたり、川底に引き摺り込もうとしたりする。『アノ年老イタ男ノ所為デ、力ガ弱マッテイル……。』らしい
小川:
平常時は小川をしている川。しかし、侵入者が現れるとテムズ川ぐらいに川幅が伸び、かつ何者かに川底に引きずり込まれそうになる。怖い。
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