2025/03/12 本文編集
新学期が始まるなり、ハーマイオニーはシルヴィアとハリー、ロンを空き教室に集めた。
「えぇっと……ハーマイオニー? な、なんで私まで……?」
シルヴィアは若干居心地が悪そうに言った。
まさか、ポッターとウィーズリーが居るとはシルヴィアは思っていなかったのだ。シルヴィアとして別にポッターとウィーズリーに悪い印象がある訳では無い。
ただ、自分は恐らく悪い印象を持たれているだろう自覚があったので、この2人と一緒に居るのは若干気不味い。
「シルヴィアはニコラス・フラメル捜索で一番の功績者よ。どこかの誰かさん達はクリスマス休暇中ずっと遊んでいたようだから。
さて、シルヴィア。本、持って来てくれたわよね?」
「あ、うん。勿論。」
シルヴィアはそう言って教科書を持ち歩く用の鞄から〝直近100年の功績者〟を取り出す。
随分と古い本でハーマイオニーは興味津々な様子で写本を受け取った。
「それの48ページに書いてあるよ」
ハーマイオニーはシルヴィアに言われるなり、すぐに48ページを開いた。それは錬金術関連の事が書かれた章の1ページだった。
「なるほど……きっと、スネイプだかクィレルかはさて置き、この賢者の石を狙っている。って言う訳ね。」
「絶対、スネイプが狙っていると思うんだ。クリスマス休暇にあった事なんだけど──……」
そう言ってポッター語り出した。
どうやら、クリスマス休暇中に図書館にある〝閲覧禁止の棚〟を覗き行った時の話だそうだ。ポッターは〝閲覧禁止の棚〟の帰り道で学校の管理人であるフィルチに追いかけ回され、彼の飼い猫であるミセス・ノリスに追いかけ回され……をしたそうだ。
そんな時、夜の廊下に怯えるクィレルとクィレルを問い詰めるスネイプが居たそうだ。
「それで、怯えるクィレルにスネイプがこう言ったんだ『わたしを敵に回したく無いだろ? よくお分かりの筈だ。近々、また話すとしましょう。その時までにどちらの側に着くか決めておくんですな』って。」
ポッターのスネイプの声真似の再現度が絶妙に高く、シルヴィアとロンは吹き出した。
「多分、スネイプが〝賢者の石〟を手に入れるのを手伝えってスネイプが脅してたんだ。」
シルヴィアはそこまで聞いてまた困惑を深める。
一体、スネイプとクィレルどちらが賢者の石を盗み取ろうとしている犯人なのかどんどんと分からなくなっていったのだ。
「成程ね……う〜ん、ますますよく分からなくなって来るわね。シルヴィア的に言わせれば、どうやらクィレルには
「待って! クィレルが……なんだって?」
「クィレルにユニコーンの血の呪いの跡が見えるそうよ」
ポッターとウィーズリーは同時に困惑する。ただ、こちらは魔法界育ちのウィーズリーがすぐにピンと来たようだった。
「ユニコーンの血の呪いの跡って……クィレル何やってるんだ?」
「ど、どう言う事……?」
ポッターのみ理解していないので聞き返して来た。
「ユニコーンの血を飲めば不死の力を得られる。けどね、ユニコーンを殺すって一番罪深い事なの。だから永遠に呪われてしまうんだよ」
シルヴィアはすかさず解説を挟む。ポッターは非常に驚いた様子だった。
「クィレルはそんなリスクを払って何をしたいんだ?」
ハリーがそう問うが、みんな答えには辿り着けずに「う〜ん」と唸るしかなかった。
結局、今日のうちは一旦解散となり新情報が入り次第また集まろうとなった。
◇
暫くの間、特に本当に何も起こらなかった。いつの間にか
イースター休暇では山のような宿題が出た為、みんな一様に散々な休暇を過ごした。
また、クィレルはどんどんと青白く、ますますやつれて見えた。
一体、何が彼をこのような状態に至らしめているのかシルヴィアは見当も付かなかったが、ポッターによれば、スネイプから石を奪われないよう粘っている様子だ。と感心していた。
「やっほー、ハーマイオニー……って、どうしたの? そんなにシュンってしちゃって……?」
シルヴィアがいつも通りにハーマイオニーと勉強する為に図書館に訪れると、ハーマイオニーはこちらに心底参ったと言わんばかりの表情をしていた。
「シ、シルヴィア……あ、貴女は知らないのね……寮の点数の砂時計の存在……」
「え?」
シルヴィアはそう言えば今日の朝、マルフォイがやたらと元気良さそうにグリフィンドールは150点減点されたと盛り上がっていた事を思い出した。(尚、スリザリンもなんで50点減点されているんだ? とセオドール・ノットが聞いた時、マルフォイは口を噤んでいた)
「ま、まさか……と、とんでも無い校則違反を……した……って事?」
ハーマイオニーは静かに頷く。シルヴィアは信じられなかった。ハーマイオニーは典型的な優等生なのだ。そんな彼女が校則違反な到底想像付かなかった。
「そ、それでね……マ、マクゴナガル先生から……こ、これが……」
そう言ってハーマイオニーはローブのポケットから手紙を取り出し、シルヴィアに見せた。
『処罰は今夜11時に行います。
玄関ホールでミスター・フィルチが待っています。 マクゴナガル教授』
「そ、それで……今朝。ハリーとロンがフィルチに脅されたそうなの。禁じられた森で一仕事してもらうって……」
シルヴィアはハーマイオニーを心底気の毒に思っていた。
しかし、禁じられた森で一仕事と言う単語を聞いてから、その役目を自分に移してはくれないだろうかと考え始めた。
「そ、その〜……ハーマイオニー? 今ってマクゴナガル先生、何処にいらっしゃるかな……?」
「え? ど、どうして?」
「えぇっと、ほら……えーと、私って森の中で住んでいたと同じじゃない? だ、だからハーマイオニーが心細く無いように。ね? 一緒について行けないかって……言ってみるよ!」
ハーマイオニーは数秒間口を開け閉めした。
「そ、そんな無茶よ!」
「言ってみるだけだよ! うん。今は変身術の教室に居るかな? 行ってみるね!」
シルヴィアはハーマイオニーが止める声も聞かずに足早に図書館を出て行った。
「あの、禁じられた森にはきっと状態のいい薬草が沢山植っている筈……。ふふっ」
シルヴィアがそう無邪気なような不気味なような……なんとも言えない笑みを浮かべていたのは、誰も知らない。
「何を言っているのですか。ダメに決まっているでしょう? 禁じられた森に行くのは校則違反に対する処罰です。」
シルヴィアがハーマイオニー達と一緒に禁じられた森に入りたいと言う意見はマクゴナガルにすぐさま退けられてしまった。
「それに、貴女のその軽はずみな行動。失望しました。スリザリンから5点減点としましょう。」
「そ、その! えぇっと……き、禁じられた森には……き、きっと! 哀れにも殺されてしまった若しくは、傷付けられた一角獣が居る筈なんです。か、彼らのち、治療をしてあげたいんです!」
シルヴィアは苦し紛れに理論を展開する。
「……確かに、貴女なら出来るかも知れませんね。ところで、何故ユニコーンが殺されてしまっていると言う事実を知っているのですか? 勝手に禁じられた森に入ったのですか?」
マクゴナガルはそう厳しく問い詰めた。シルヴィアは自分の吃りが帰って来る。
「えぇ、えぇっと……その、オ、オリ……わ、私の梟が言ってたんです。その……ユニコーンの血の呪いの跡が見える人が居るって……」
「それはどなたで?」
「えっと──「マクゴナガル先生! オースティンが独学で
突然、グリフィンドール生の6年生が乱入してきてシルヴィアは、クィレルの名前を伝えきれなかった。
「独学で変身術をやるの危険だとあれほどまで言ったのに……。分かりました。今行きます!」
マグゴナガルは呆れ気味にそう言ってからシルヴィアを見た。
「貴女も禁じられた森に付いて行く事を特別に許しましょう。但し、傷付いたユニコーンを見つけたら必ず治療をするのですよ。貴女はその為の要員なのですから」
「あ、ありがとうございます!!」
マグゴナガルはすぐに立ち去った。シルヴィアは嬉しくてその場で飛び上がった。
◆
シルヴィアは若干浮かれ気味で夜11時に玄関ホールへと向かった。
一応、手当が出来るように一通りの薬が入った鞄も持ってきた。
玄関ホールには今から葬式に出ると言わんばかりの表情をしたハーマイオニー、ポッター、ウィーズリー、そして心底不満気なマルフォイが居た。
「な、なんで……君が……ここに居るんだ?」
マルフォイとシルヴィアが面と向かって会話をするのは、歓迎会の時ぶりだった。2人には特に接点が無かったのだ。
マルフォイとしては〝マグル生まれであるグレンジャーと裏で連んでいる生徒〟と言う時点であまり関わる意味がなかったのだ。
それが仮に魔法界の純血の旧家であり、父親から接点を持てと言いつけを受けてもだ。
「禁じられた森には、傷付いたユニコーンが沢山居るようだから彼らの治療係として付いて行く事になったの」
シルヴィアはどこか誇らしげに言った。
「き、禁じられた森だって!? 森に行くなんて! 生徒は入っちゃいけないはずさ! それに、狼男が!」
「……ふん。精々怖がるがいい。森には狼男よりもずっと恐ろしいもんが居る……。」
そう言ってヌルっと出て来たのはランプを持ったホグワーツの管理人のフィルチだった。
シルヴィアは驚いて10cmほど飛び上がった。マルフォイは泣きそうだったが、フィルチは何処か活き活きとしていた。
「それで、何故、他の1年生が傷付いたユニコーンの治療目的で付いて来るかは知らんが……生きてホグワーツを卒業したいと言うなら……嬢ちゃん。引き返すならば、今だぞ?」
「だ、大丈夫です……」
シルヴィアはそう絞り出すように言った。フィルチはニタリと嫌な笑みを浮かべ「愚かな嬢ちゃんだ」と呟くように言った。
「付いて来い。そこの4人、逃げようとだなんて考えるじゃないぞ。そんな事したらもっと酷い事になるからねぇ」
フィルチはそう言って出発する。一行は真っ暗な闇に包まれた校庭を横切った。
「イ、イッタイ……何事よ!?」
オリビアが急旋回の後シルヴィアの肩に急に乗っかって来た。
シルヴィアは一瞬体勢を崩しかけるが、ギリギリで転ぶと言う事態は避けた。そしてオリビアに「一旦静かにするように」と一言言って一行に着いて行く。
少し歩くと森の端に建てられた掘立て小屋に辿り着く。
ハーマイオニー、ポッター、ウィーズリーはその掘立て小屋を見て安心したような表情をした。その掘立て小屋前にはあの組分け前に1年生を先導した大男、ハグリッドが立っていたのだ。
「フィルチか? 急いでくれ。俺はもう出発したい」
ハグリッドはすぐに言った。フィルチはポッター達の表情から何かを読み取った表情になる。
「あの木偶の坊と一緒に楽しもうと思っているんだろうねぇ? 坊や、もう一度よく考えた方がいいねぇ……君たちが行くのは森の中だ。もし全員無傷で戻って来たら、わたしの見込み違いだがね」
そう言ってケタケタと笑っていた。
対して、シルヴィアは森の中にはどんな薬草が生えているか、〝ブリテン島全土魔法薬用植物百科事典〟を見て夢膨らませていた。
「夜明けには戻って来るよ。こいつらの体の残ってる部分だけ引き取りに来るさ」
そう嫌味たっぷりにフィルチは言って城へ帰って行った。
「えぇっと、お前さんは……「シルヴィア・ネクロタフィオです」おぉ、そうかい。シルヴィア。その梟はお前さんの梟かい?」
ハグリッドはフィルチが居なくなるなり、シルヴィアの肩に乗っている梟、オリビアについてツッコミを入れた。
「そうです。」
「ほぉ、賢そうな梟を連れておるな。その梟も着いて来てくれるのか?」
「えぇ、勿論!」
シルヴァイはそう答えるが対して、オリビアは嫌そうな目でハグリッドを見ていた。この事は普段オリビアと接する機会が無い4人にとっても分かる事だった。
「よーし、それじゃ、よーく聞いてくれ。なんせ、俺達が今夜やろうとしている事は危険なんだ。みんな軽はずみな事をしちゃいかん。しばらくは俺に着いて来てくれ」
ハグリッドが先頭に立って、一行は進む。
「シルヴィア、貴女何か校則違反したの? それにしてはあまりにも重すぎる罰だと思うんだけど……」
「私は、何もしてないよ。マクゴナガル先生に無理言って着いて行っていいってお許しをもらったの」
シルヴィアはオリビアの問いに対して小さな声で答えた。シルヴィアは丁度一行の一番後ろだった為、誰も気にしていなかった。
「貴女ショーキ!? マエに話したわよね? 禁じられたモリはキケンだって」
「……憧れは……止められないんだ。」
シルヴィアはそう小声で言った。
オリビアは大きなため息をついた。その頃には森の外れまでやって来た。
ランプを高く掲げ、ハグリッドは暗く生い茂った木々の奥へと消えていく細い曲がりくねった獣道を指さした。
森の中を覗き込むと、少し湿った冷たい一陣の風がみんなの髪を逆立てる。
「あそこを見ろ。地面に光った物が見えるか? 銀色の物が見えるか? ユニコーンの血だ。何者かに酷く傷付けられた一角獣がこの森の中に居る。今週になって2回目だ。水曜日に最初の死骸を見つけた。みんなで可哀想な奴を探し出すんだ。助からないなら苦しまないようにしてやらねばならん」
「ユニコーンを襲った奴が先に僕達を見つけたらどうするんだい?」
マルフォイは恐怖を隠しきれない様子でそう言った。
「俺やファングと一緒に居れば、この森に住むものは誰もお前さん達を傷つけはせん。道を外れるなよ? よーし、では2組に別れよう。そこら中血だらけだ。一角獣が少なくとも昨日の夜からのたうち回ってるんだろう」
「僕はファングと一緒がいい」
マルフォイは急いでそう言った。
「よかろう。断っとくが、そいつは臆病だぞ。そんじゃ、ハリーとハーマイオニー、ロンは俺と一緒に行こう。ドラコとシルヴィアはファングと一緒に別の道だ。」
ドラコは何処か安心したようなそうでも無いようなそんな表情になっていた。
シルヴィアはハーマイオニーと離れ離れになってしまった事実に憂いながらも、どんな薬草が植っているか楽しみにしている様子だった。
オリビアは、そんなシルヴィアを呆れている。
「もしユニコーンを見つけたら緑の光を打ち上げる、いいか? 杖を出して練習をしよう」
そう言って5人は各々杖を取り出し上空に緑の光を打ち上げた。
「それでよし。もし、困った事が起これば、赤い光を打ち上げろ。みんなで助けに行く。じゃあ、気をつけろよ。出発だ」
そうして一行は2組に分かれた。
「……ねぇ、君はなんで一緒にここまで付いて来たんだ? それに、梟なんかも肩に乗せて……」
マルフォイは震える声を抑えながら、そうシルヴィアに聞いて来た。
「薬草を集めたかったの。自分の家を取り囲む森も色んな薬草が植わってるけど、この禁じられた森にも色々植わってそうだったから。来てみたかったの。
梟の方は……まぁ、勝手に付いて来たの。」
シルヴィアはそう言うなり、地面に薬草を見つけたようで屈んで草を刈り、鞄の中に入れた。
「……君って変わったよね。入学の日はずっとオドオドしていたのに……ハロウィーン辺りから結構……ミリセントに方向性が似て来た」
「そうかな? けど、ミリセントは私と違って箒に乗れるよ? 私、乗った事ないけど……多分無理だよ。」
「なんで、そう……こう変わるんだ? この数ヶ月で……」
マルフォイは大層シルヴィアの性格の変化に驚いているようで、質問を重ねて来た。
「なんでかな……。あ、ハロウィーンの時にトロールが出たじゃない? あの時、トロールとたまたま会っちゃって……。
なんだか、その時感じた恐怖が人生最大だったからもう恐怖を感じなくなったのかも。」
「ふーん……」
マルフォイはなんでも無いといった表情をしていたが、随分と驚いている様子だった。その間もシルヴィアは薬草を見つけては鞄の中に詰めていた。
「き、君って……ほんと、不思議な……人だよ」
その様子を見ていたマルフォイはドン引きしながらそう言った。
「……ん?」
シルヴィアは少し先に少し動いている影を見た。
頭に角が生えた白馬。それは紛れもない一角獣だった。一角獣の元には白銀の液体が見えた。そう怪我をしている一角獣なのだ。
「怪我をしているユニコーンだ!」
そう声を上げるなり、シルヴィアはユニコーンの元へ駆け寄った。遅れてマルフォイも駆け寄って来た。
「ミスター・マルフォイ。これを持っていて!」
そう言うなり鞄から包帯を取り出した。
「ぼ、僕のことは別にドラコって呼んでくれて構わないんだけど……」
「え? あぁ、そうなの?」
シルヴィアはあまり気に留めない様子で包帯をドラコの手の上に乗せた。
次は鞄の中から薬瓶を取り出して、ユニコーンの傷に塗り込む。
ユニコーンは最初はシルヴィアの手から逃れようと必死に足掻いたが、段々と落ち着いていった。
「やっぱり、一角獣ってヘンな生き物ね。ニンゲンの女に触れられちゃえば落ち着いちゃうなんてね」
オリビアがそう口を挟むが、シルヴィアは気にせずにその頃には地面に落ちていた適当な枝をユニコーンに当てて、ドラコに持たせていた包帯を取って、丁重に巻いた。
あっという間にユニコーンの傷の治療を終わらせた。
「多分、3ヶ月ぐらいで治るからね。治るまでハグリッドの元に行ってね」
そうシルヴィアが言う。その言葉を理解したのか理解していないのか不明だが、ユニコーンは頷くように頭を動かし、森の奥へ駆けて行った。
「君……シルヴィア。その技術はどこで手に入れたんだい?」
呆気に取られていたドラコがやっと口を開く。
「う〜ん、分からないけど。昔、お母様と村の人の馬の治療をした事はあるんだよね」
「君のお母様? あぁ……オフィーリア・ブラックか……」
ドラコは困惑した様子でシルヴィアに聞いた。シルヴィアは少し悩む仕草をしてからドラコの目を真っ直ぐ見つめた。
「……え? ドラコも私のお母さんの事を知っているの? あぁ、けど、私……お母さんの事をあまり覚えていないから……これは一体いつの記憶なんだろう?」
シルヴィアが疑問に思い出す。
しかし、その途端、頭痛に襲われる事になる。突然、頭痛に襲われ苦しむシルヴィアをドラコはオドオドして見るしかなかった。
「だ、大丈夫かい!?」
「大丈夫……だ、だい、だいじょ、ぶ……」
オリビアは素早く飛び立った。
それを見届けてからシルヴィアの意識は闇の中へと堕ちて行った。
◇
シルヴィアは夢を見ていた。あの懐かしい幸せだった日々の夢だった。
『お母様! ヤドリギ、カモミール、ミントを採って来ました! 今度は何をしましょうか?』
夢の中のシルヴィアは5歳ぐらいで、籠を一杯の薬草を持って家に帰って来ていた。その様子を見た黒曜の髪を持つ母親は笑顔を浮かべていた。
『そうねぇ……小川で水を汲んできて頂戴』
『はい! わかりました!』
シルヴィアは桶を持ってまた家の外へ飛び出す。そして近くの小川で少々の水を汲み、また帰って来る。
『どんな薬を作るのでしょうか?』
『今日は、熱冷ましの薬でも作ってみようと思っているの。そろそろ冬だし……』
『見てていいですか?』
『えぇ、もちろん。いつかは貴女も作れるようにならなければいけない薬だわ。』
シルヴィアはその後、ずっと母親の調合の様子を見ていた。しかし、徐々に眠くなっていって船を漕ぎ始める。その様子を母親は聖母のような温かい笑みを浮かべて見ていた。
『あら? 疲れちゃったのね……そうね、今日はおやすみなさい……』
そう言うと母親はシルヴィアを抱き抱えベッドまで連れて行く。そして毛布をかけてやる。シルヴィアはそこで完全に眠りについた。
◇
シルヴィアがそんな温かい夢から目覚めると、あの医務室の天井がすぐに目に入った。
部屋の明るさからして夜も随分と更けているようだった。
「わ、私は……一体?」
シルヴィアはそう言葉を紡ぎ出す。
少し姿勢を起こすと隣にオリビアが居るのが見えた。オリビアは寝ていたようで意識を取り戻したシルヴィアを見るなり目を細く開けた。
「オキタのね」
「う、うん……わ、私は……どうしちゃったの?」
「貴女は禁じられた森で倒れたのよ。あのドラコ・マルフォイって言う少年は酷く驚いていたわ。私がハグリッドを連れて来てバンジキュースだったけど。あれからまだイチニチしか経っていないからアンシンしなさい」
シルヴィアは禁じられた森であった事を薄らと思い出す。
そうだ、自分はユニコーンの怪我を治していた。そして、何故か頭痛がして倒れてしまった……。
「トリアエズ、マダム・ポンフリーを呼んでくるわよ」
そう言ってオリビアはシルヴィアの隣から飛び立った。
間も無く、寝巻きのガウン姿のマダム・ポンフリーがランプ片手に現れた。
「あぁ、起きたのですね。良かったです。さ、お水を飲みなさい」
そう言ってマダム・ポンフリーは杖を振ってコップを飛ばしてくる。
中には水も入っていた。シルヴィアは受け取るなり、水をチビチビと飲み始めた。
「全て飲み終わったらまた眠りなさい。そうすれば朝にでも退院出来ると思いますから」
「はい。」
マダム・ポンフリーは忙しそうに去って行った。
シルヴィアも水を全て飲み切ると眠気がやって来て、また深い眠りについた。
ただ、寝る前に1つ思った事があった。あの水、何処かで飲んだ事がある、と。
自分は決して水のソムリエではないが、あの特徴的な風味は知っていた。しかし、その何処かを思い出す前にシルヴィアの眠りは深くなっていた。
フィルチ:
アーガス・フィルチ。性格が非常に悪いホグワーツの管理人。
シルヴィアの母親:
薬草を集め、煎じて薬を作ったりしている人。
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