呪いの少女と祝福された世界   作:佳山針之介

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シルヴィア・ネクロタフィオと秘密の部屋
第15話 トワイグフェレスト村での日常


 夏休みに家に帰って来てからシルヴィアはどうにかこうにか宿題を進めた。魔法薬学と薬草学の宿題はスムーズに進んだのだ。

 しかし、変身術の理論的な話はあまり理解しきれていなかったし、魔法史は年表を見るだけで眠気が訪れた。

 ただ、夏休みに入って2週目で終わらせた。

 

「貴女って、結構ケイカク的に宿題を進めるタイプなのね。カンシンカンシン」

「ま、この夏休みにやりたい事があるからね」

 そう言ってシルヴィアはエプロンを纏い、袖を捲った。

「まさか……このイエを掃除するって言うの!?」

「そう、今から掃除をするの! いい加減汚すぎて過ごしにくいし!」

 シルヴィアは若干涙目で言った。本当は嫌だった。こんなあまりにも熟成されてしまった汚部屋を片付ける。と考えるだけで疲れてくる。

 しかし、シルヴィアはホグワーツに入学して、毎日のように図書館を見て思った事がある。そう、整理整頓された本棚と言うものは本を探しやすいのだ。

 この家では何か本を探そうとすれば最低3日はかかる。

 そんな部屋(現実)を変えたいとシルヴィアは強く思ったのだ。

 部屋がここまで散らかったのはシルヴィアが一人暮らしになってからだった。

 両親が生きていた頃は部屋は綺麗に保たれていた。シルヴィアは壊滅的な事に()()()を作るセンスに長けていたのだ。

 

 物を元の場所に戻さない。まず、元の場所が何処だったか忘れる。それがこの汚部屋が形成された主要因となる。

 そして、シルヴィアは残念な事に汚部屋に対してどうも感情を抱かなかった。

 自分1人の体が置ける椅子と大鍋を置ける最低限のスペース。そして、流し台があればそれで十分だった。

 よって、汚部屋はどんどんと酷くなっていき、結局ここまでに育ってしまったのだ。

 

「さて……まずはテーブルの上にある本を種類別に分ける事からね。」

 そう言ってシルヴィアは作業を始めた。

 部屋にある本は大きく分けると3種類に分けられた。

 まずは薬の調合関連。これが1番多い。そして次点で多いのが薬草についての本だ。これだけで部屋にある本の7割に上る。

 そして、その他。歴史書関連や魔術的な本。加えて羊皮紙の束。それらが細々とある。

 その他にも、薬を調合する為の大鍋。調合した薬を詰める薬瓶。薬の材料やらはあったが、それはどうにか綺麗に整頓されていた。

 シルヴィアはテーブルの上に散らばるように置かれていた本をそれら3種類の分けた。そうすると数年ぶりにテーブルの天板が姿を現した。

 

「次は……床に転がってる本の整理……か……」

 シルヴィアは重々しく床に転がっている本を手に取り、分別を始める。因みに、オリビアは優しい日差しが差し込む椅子の上でお昼寝中だ。

 シルヴィアも流石に部屋の片付けに梟が役立つとは微塵も思ってはいなかったが、それでもこう思うところがある。

 

「オリビアって……不思議な梟だよね……」

 誰も聞き手の居ない独り言を呟いた。

 オリビアは自分の事をよく心配して気にかけてくれる。

 その上で、先学期ではクィレルの危険性について見抜いていた。確かに、クィレルは一角獣(ユニコーン)の血を飲んでいたし、ヴォルデモートと言う亡霊に近い何者かが取り憑いていた。

 そして、理由は定かでは無いがシルヴィア本人を誘拐したのだ。

 この流れでいくと、来学期はオリビアが一番怪しんでいるスネイプが何かやるのだろうか? それは嫌だな。そうシルヴィアは思った。

 

 ……けれども、ただの梟がいつそんな能力を手に入れたのだろうか? ──と言うか、梟はそもそもそこまで頭のいい動物なのだろうか? 魔法界仕様とか言うやつなのだろうか?

 シルヴィアはそう答えの無い問いを考え始めてしまう。

 

「ま、私が考えて無駄だよね。」

 そう言い、シルヴィアは片付けを続行させた。

 

 

 結局、シルヴィアが床に乱雑に積み重なっていた本を全て分類し、本棚に納めるまで5日程度はかかった。

 最後に掃き掃除をして仕舞えば、部屋はあの時と同じように綺麗に整った。

 

「ふぅ〜、やっと片付いた!」

 シルヴィアは紅茶を淹れて椅子の座った。そして先程淹れた紅茶を飲み込む。

「にしても、ここは『魔法の館』なのだから、魔法で勝手に片付いてくれてもいいと思うんだけどなぁ……」

「片付けをするマホーはピンポイントでかかっていなかったんじゃ無いのかしら?」

 そうオリビアは若干呆れ気味に言う。「と言うか、物を元のバショに戻すくらいはテッテイしていなさいよ」そうとも言われてシルヴィアは少し不貞腐れて「はーい」と答えた。

 

 シルヴィアはその夜、久方ぶりに眠った。本当は本の下に眠っていたベッドで寝たかったが、シーツがカビ臭かったので今現在は天日干し中だ。

 その為、シルヴィアはいつもの通りテーブルに突っ伏して眠った。

 

 

「シルヴィア! 手紙よ!!」

 朝、オリビアのその声でシルヴィアは目が覚めた。ただ、もう一度寝てしまおうと。そう言う気持ちが先行した。

 しかし、オリビアはそれを許さない。オリビアはシルヴィアの頭をその嘴で突っついた。あまりの痛さにシルヴィアは結局、すぐ起き上がった。

「はいはい……何々〜?」

 シルヴィアはオリビアが持って来た3通の手紙に目を通す。

 1通目はホグワーツからの手紙で9月1日にキングス・クロス駅の9と3/4番線からホグワーツ特急に乗り込むように。と書かれていた。また、新学期の新しい教科書のリストも入っていた。

 

2年生は次の本を用意するように

 基本呪文集(2年生) ミランダ・ゴズホーク著

 泣き妖怪バンシーとのナウな休日 ギルデロイ・ロックハート著

 グールお化けとクールな散策 ギルデロイ・ロックハート著

 鬼婆とオツな休暇 ギルデロイ・ロックハート著

 トロールとのとろい旅 ギルデロイ・ロックハート著

 バンパイアとバッチリ船旅 ギルデロイ・ロックハート著

 狼男と大いなる山歩き ギルデロイ・ロックハート著

 雪男とゆっくり一年 ギルデロイ・ロックハート著

 

「う〜ん? 新学期には〝闇の魔術に対する防衛術〟の授業が廃止になって、〝物語〟の授業とか〝大衆小説〟の授業でも追加されるの?」

「そんな事無い筈だけど……そうねぇ……新しい〝闇の魔術に対する防衛術〟が女性でかつロックハートの大ファンの可能性が高いわ……」

 オリビアは心底、シルヴィアを気の毒に思うような言い方をする。

「ギルデロイ・ロックハートっていう人は、小説家なの?」

「なんて言えばいいのかしら……〝世界を実際に冒険し闇の生物と戦い、その()()を著作にしている作家〟……かしら?」

「え? つまりはノンフィクション作家……って事?」

 シルヴィアは若干引いていた。シルヴィアとしては完全にこのギルデロイ・ロックハートが書いた本の事を完全に大衆小説だと思っていたのだ。

 ところがどっこい。これらが全てノンフィクションであるとは信じ難い事実だった。タイトルからして大衆小説なのに……。

 

「まぁ、そうなるわ。けど、彼って結構……ナルシストで、胡散臭いのよ。確かに、ロックハートはマホーカイのインフルエンサーであるとは言えるけど……

 ある時、彼のボウケンに着いて行ったワカモノが居たんだけど……彼はそれ以来ショーソク不明だわ。彼曰く、エイユー的な死を迎えた。とか言ってたけど」

「……な、にそれ……闇深そう」

 シルヴィアは先学期のような出来事に巻き込まれている*1のと、スネイプに人を疑え。と言う忠告を受けた為、今回は完全に〝闇の魔術に対する防衛術〟の教授を疑っているのだ。

 

 まぁ、教科書の案件は置いといて……とシルヴィアは次の手紙を見る。

 

 差出人を見るとハーマイオニー・グレンジャーと何処か堅苦しい字が書かれていた。

「あ! ハーマイオニーから手紙が来てる!」

 シルヴィアはすぐに封を切って手紙を見る。

 

シルヴィア、元気ですか?

 シルヴィアは確か、田舎の廃村近くで一人暮らしをしていると言ってましたね? 

 いくら保護呪文で守られた土地だろうとも油断は禁物ですよ。魔法使いやマグルの悪い人に絡まれないように気をつけてくださいね。

 私はそれとシルヴィアの宿題 (特に変身術、魔法史)が終わっているか少し心配です。まぁ、貴女だったらきっと大丈夫だと思うけど。

 私は勿論、勉強でとても忙しくしています。魔法の勉強って楽しいからつい、熱中しすぎちゃうのよね。

 ──もし、スリザリンの子達と何か約束をしていなかったら、私たちは水曜日に新しい教科書を買いにロンドンに向かうのでダイアゴン横丁でお会いしませんか? 一応、ハリーとロンも誘っていて2人と会うのがもし、嫌なら断っても大丈夫です。

 

「おぉ! 楽しそう!」

 シルヴィアは確かに帰りの汽車ではダフネ達、同室と一緒だった。

 ただ、3人はそれぞれ旅行に行くらしく、次会うのはホグワーツで。と言う話になっていたのだ。だったら、都合がいい。友達とダイアゴン横丁に行くだなんて楽しそうだ。

 

「あら、いいじゃない。みんなで行って来なさいよ」

「友達とショッピングって言うやつだよね? 楽しそう! うん、楽しそう!」

 シルヴィアは完全にテンションが上がり、すぐに羊皮紙と羽ペンを取り出し返信用の手紙を書き始めた。

 

御機嫌ようハーマイオニー!

 水曜日の件了解しました。すごい、楽しそうなイベントに私を誘ってくれてありがとう! 楽しみに待ってるね!

 シルヴィアはそう短く綴ると封筒に詰め、印をする。

 

「じゃあ、オリビア。これをハーマイオニーのところにお願いね」

「お安い御用よ」

 そう言ってオリビアは嘴にハーマイオニー宛の手紙を咥え、窓から飛び立った。それをシルヴィアはただ見つめた。

 

「……あ、そう言えば……なんで村に行っちゃダメってスネイプ先生は行ったのかな?」

 そう言った時だった。

 扉が叩かれる音がした。シルヴィアは一気に驚き杖を抜いた。誰だろうか? もう先学期のような目は散々だ。そう思い、杖を構えながらドアへと近付いて行く。

 

「……だっ、誰だ!」

「我輩はホグワーツ教授、セブルス・スネイプだが?」

 扉前の人物、セブルス・スネイプは大層呆れた声でそう答えた。シルヴィアはなんだ……と安心して扉を開く。

 そこには夏だと言うのに真っ黒なローブを着込んだスネイプが立っていた。

 顔は〝ここに来たくは無いがダンブルドアの命でやって来た〟と書かれているような表情だった。

 

「ど、どうされたのですか? ホグワーツって……家庭訪問、ありましたっけ?」

 シルヴィアがそう困惑しながら言いつつ、部屋に通すとスネイプは呆れたように深いため息を吐いた。

「手紙で通達した筈だが? 君がいつでも移動出来るように君の家にある暖炉に煙突飛行ネットワークをひ──……?」

 そう言った途端、スネイプは少し驚いた顔になった。

「どうしたのですか?」

「いや……なんでも無い」

 シルヴィアは少し悩んだ後、スネイプが驚いたのは部屋を綺麗にしたからだろう。と結論づけた。それに、してもシルヴィアはそんな通達見ても無いし、聞いても無い。

 ……ここで思い出した。シルヴィアはハーマイオニーの手紙を見るなりテンションを上げてしまい、最後の1通を見ていなかったのだ。

 シルヴィアは自分の行動を深く反省したがそれと同時に、手紙が来てから1時間も経っていないのに押しかけるスネイプも如何なものかと思った。

「その〜……煙突飛行ネットワークって……なんですか?」

 スネイプはそこから説明しなければならないのか。という顔になった。

 シルヴィアは居た堪れなくなり、すぐにスネイプに椅子を出した。そして、紅茶を淹れる為に流し台に向かった。

 紅茶を出すとスネイプは一口飲んでからすぐに煙突飛行ネットワークについて語り出した。

 

「……な、なるほど、つまりは魔法使いは暖炉とこの粉……〝煙突飛行粉(フルーパウダー)〟があれば何処へだって飛べる。と言う事ですか?」

「あぁ、その通りだ。また、魔法使いの家の暖炉で無くとも一時的に煙突飛行ネットワークに加える事が出来る。

 これによって魔法使いはマグル界にも移動出来る。まぁ、魔法省の管轄なのであまり目立つ真似はしない方が良いのだが」

 シルヴィアは説明を聞いて、深く頷く。

「まぁ、君の場合だと安全面上、漏れ鍋に繋げるのみに控えた方がいいだろう。漏れ鍋はキングス・クロス駅にも近い。

 場所が分からないようならば、漏れ鍋の店主や君のご友人に聞けばいい」

 そうスネイプは全て言うべき事は言い切った。と言う表情になり、杖を取り出した。そこで、シルヴィアは思い出す。

 

「この家の暖炉は……結構、汚いですよ……ちょっと、待っててください。お掃除するので!」

 シルヴィアとして先の大掃除で暖炉の汚れは気になっていた。

 ただ、今は夏だ。いくらブリテン島でも暖炉を使う事などない。ならば、埃を払う必要も数年前に燃えた木の残り滓を退かす必要も無い。そう判断したのだ。

 

「いや、いい。魔法で済ませる」

 そう言ってスネイプは暖炉に杖を向ける、そして〈スコージファイ 清めよ〉と言うと忽ち暖炉は新品同然に綺麗になった。

「わ〜お、まさにマジックですね……」

 シルヴィアはよく分からない事をスネイプに対して言う。スネイプは華麗にスルーした。

 

「あ、あの……そう言えば……その〜、少し前に小川の向こうに行くな。とか村に行くな。って先生仰っていたじゃ無いですか? ……あれって何でなんですか?」

「あの時はクィレルが君を狙っていた。まぁ、正確に言うのであればクィレルに取り憑いていた『闇の……──例のあの人』が君を狙っていたのだが……」

 シルヴィアは確かに納得した。自分は攫われたし、結構散々な目にあった。家に居る間も狙われていたと考えると末恐ろしい話ではあるが……。

 

「そ、その……何故〝例のあの人〟は私を攫ったのですか?

 あの人はクィレル先生を通して私に〝マグルを恨んでは無いか?〟とか、〝マグル達に復讐を果たす事が出来る〟とか言いました。

 けど、私はマグルに対して憎悪の感情を抱いている訳ではありません。……何故、あの人はそんな言い方をしたのでしょうか?」

 シルヴィアがそこまで言って顔を上げるとスネイプが非常に苦々しい表情をしていた。

 ただ、シルヴィアに見られている事に気がつくとすぐに表情をいつものつまらない仏頂面に戻す。

 

「ダンブルドアにも言われたのだろう? 〝その真実に辿り着くべきでは無い〟と。その言葉を素直に受け止めて平凡な毎日を過ごしていればいい。

 ──我輩は使命を果たした。この煙突飛行粉は置いて行く。これで漏れ鍋に行き教科書の買い出しをすれば良い」

「は、はい……そ、その、ざ、残念ながらクィレル先生は死んでしまったじゃ無いですか?

 つまりは……その、私を狙う人が居なくなった。って言う事ですよね? えぇっと……もう小川の向こうや村に行ってもいいですか?」

 スネイプは一瞬迷ったような表情をしたが、直ぐに元に戻った。

「……まぁ、自分の好きにして構わないだろう。我輩からは行かない事を勧めるが……。

 それに、ここら辺にはマグルは少ないとは言え、時々マグルが来たりする。見つかると厄介だから気をつけなさい」

「わかりました!」

 そうして、スネイプはフルーパウダーを置いて家の外へ出る。

「あぁ、そうだ。君に鍵を預けよう。これは君のご両親の金庫の鍵だ。ローズブレイド家の金庫から金を下ろしたい。と言うんだ。無駄遣いをしないよう気を付けて金を使いなさい」

 そう言ってスネイプはシルヴィアにグリンゴッツ銀行の金庫の鍵を寄越した。

「あ、あの……スネイプ先生はそのローズブレイドさんをご存知なのですか? ヘンリー・ローズブレイドとオフィーリア・ローズブレイドを……」

 シルヴィアはダフネやクィレルが言っていた名前を口に出す。するとスネイプは明らかに面倒臭い。と言う表情になった。

「……2人は優秀な魔法薬学者だった。これは入学説明の時に言っただろう? それ以外に何を知りたい?」

 スネイプの〝それ以外に何を知りたい?〟の言い方はこれ以上聞いてくれるな。と言う言い方だった。

 

 しかし、シルヴィアとしてここで聞けなければ、もう長い間この事について聞けなくなる。と思った。

「何故、私には……その2人についての……記憶が、無いのでしょうか?」

「校長は君に言った筈だ。〝真実に辿り着くべきでは無い〟っと。君は知るべきではないのだ」

 スネイプはこれ以上聞くな。の雰囲気をより一層強めた。

「け、けど! 私は……私は何も知らないままで良いのでしょか? 両親の事をまともに知らない子供のままで居ていいのでしょうか?」

「知るべきではないのだ! 何度言えば良いんだ!」

 スネイプは痺れを切らしたかのように言った。

「あ、あ……す、すみません……ごめんなさい……」

 シルヴィアはそう平謝りした。スネイプはいつの間にか姿現しで帰って行っていた。

 

「……あぁ……お、怒らせちゃった……」

 シルヴィアはもう居ないスネイプに対して深い反省の色を見せる。

「──それにしても……なんだか、他の寮生よりは気にかけてもらっている気がするんだけど……他の寮生より避けられている感じが否めないんだよね……何で何だろ?」

 シルヴィアはそんな矛盾を疑問に思いつつ、取り敢えずは先ほど怒られたのを忘れるように久々に小川の向こう側。村に行ける喜びを噛み締める。

 村には古い顔馴染みが居る。色々あって会いに行けていなかったが、久々に会いに行ける。

 

「ふふん〜、お菓子でも焼いて行こうかな〜」

 シルヴィアはそう言って先程の反省の色を取っ払ってウキウキで家に戻り、お菓子を作り始めた。

 シルヴィアは薬作り=料理と思っているタイプである。

 なので、レシピさえあれば料理は出来る。レシピはクリスマスの時と先程の片付けにて、いくつか見つけていたので直ぐに作業に取り掛かる事が出来た。

 

「カエッタわよ〜……ん? ドウシテお菓子をツクッテいるのかしら……?」

 帰って来たオリビアはお菓子を完成させて籠に入れているシルヴィアを見て大層驚いた。

 シルヴィアは確かに甘いものは好きだ。しかし、それ以上に食が細く食に興味が無い。

 その為、シルヴィアが自分の為にお菓子を作る意義が無かったのだ。

「ん〜? スネイプ先生から村に行っていい。て言うお達しを頂いたからね。折角だから久々に顔を出そうかな。って。ねぇ、オリビア? 6年間顔を出さなかった口実……何がいいかな?」

 オリビアはただただ黙っていた。シルヴィアはそんなオリビアを不思議に思って何度か声をかけたが、しかし返事は無かった。

 シルヴィアは結局、1人で口実を考え、親の看病をしていた。と言う口実を編み出した。

 

「まぁ、そうね……シルヴィアの……スキにするといいわ。私は行かないけど……」

「え、行かないの? ……ま、そっか……」

 シルヴィアは残念そうに行って、お菓子を詰め終わった籠を腕に下げる。

 

「じゃ、行って来ま〜す!」

 

 

 少女はお菓子を配る。籠の中に入った自分が作ったとっておきのお菓子を。

 村人はそれを受け取る。皆喜び、笑顔を浮かべている。

 その笑顔を見て少女も微笑む。幸せな時間だった。

 

 少女は村を歩く。かつて自分が過ごした村を。

 歩き慣れた道。それは村の中心へ至る道。

 幸せの記憶に浸りながら村を歩いて行く。

 村を懐かしむようにのんびりと歩く。

 

 すれ違う村人達は少女を見ると皆、声をかける。

 少女は呼びかけに応じ、笑顔で村人達に挨拶をする。

 穏やかな午後の追憶。

 

 流れて行く風は心地よくて、木々の間から刺さる日差しは夏のものとは思えないほど暖かった。

 

 

「久々に村に行けて楽しかった! メアリーお婆ちゃんなんかすっごい心配してくれちゃって。それで、お婆ちゃんからもお菓子をもらっちゃったの!」

「そ、それはヨカッタわね……」

 シルヴィアは満面の笑みを浮かべる。

 しかし、オリビアの反応は何処かおかしい。シルヴィアは不思議に思うが、オリビアはそう言うタイプの梟だった気がした。

「そ、そうだわ。シルヴィア。貴女、サイキン薬は飲んでいるのかしら?」

「あ! 飲んで無いし、作っても無いや。ありがとう、教えてくれて!」

 シルヴィアはそう言うなり、貰って来た〝お菓子〟が入った籠をテーブルの上に置いてから流し台に向かい大鍋と向き合う。そして、ただ黙々と作業をし、翡翠の薬を作り出した。

 そして、シルヴィアは飲み込んだ。

 シルヴィアはここで強い眠気が訪れた。その眠気は初めて薬を飲んだあの日にも似ている気がした。そう言えば、あの日見たものはなんだったか?

 シルヴィアは本能で日記帳を取り出し、今日あった事を箇条書きした。そして、倒れ込むようにベッドへ潜った。そうして、気を失うように意識は闇の底へと堕ちていった。

 

 

「……このジョーキョーは……どうにかしなくちゃいけないわね。けど、ワタシの力はあまりにも──」

*1
クィレル/ヴォルデモートに誘拐され、ハリーを殺そうとけしかけられる





ギルデロイ・ロックハート:
 世界を実際に冒険し闇の生物と戦い、その()()を著作にしている作家。胡散臭い。魔法界のインフルエンサーではある。
 シルヴィアは大衆小説を書く作家だと思っていた。

煙突飛行:
 魔法の移動手段のひとつ。「煙突飛行ネットワーク」を使った移動。魔法界の住居は暖炉同士がネットワーク化されており、煙突を通り抜けることで互いの住居に移動することができる。

トワイグフェレスト村:
 シルヴィアの家の近くにある村。小川の向こう側にある。


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行ける気がするので、2月3日(月曜日)にもう1話投稿します。
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