来る水曜日。シルヴィアはワクワクしていた為に昨晩は一睡もしなかった。
朝が訪れてから直ぐにハーマイオニーがクリスマスに贈ってくれたワンピースに着替える。そして、先学期のものが入れっぱなしのトランクの中の物を取り敢えず全て取り出す。
そして、昨日のうちに煎じておいた吐き気止めをいくつか詰め込んだ。
「よし、準備完了。さて……と、前のスネイプ先生の話によれば……まずは暖炉に火を付ける。」
そう言ってシルヴィアは部屋の片付けの際に発掘された火打ち石を素早く擦り暖炉に炎を灯す。暖炉は暖かくパチパチと音を立て始めた。
「そして……この
すると忽ち暖炉の炎はゴーっと言う音と共にエメラルド・グリーンに色に変え、炎は高く燃え上がる。
「うぉ〜……凄い見た目だなぁ……」
「シルヴィア、キヲツケテ行って来なさいな。」
「うん! ありがとう。オリビア」
シルヴィアは高く燃え上がるエメラルド・グリーンの炎の中に入る。
「漏れ鍋!」
そう言うと途端、巨大な穴に渦を巻いて高速で吸い込まれるような感覚に襲われる。
今まで聞いた事ないほどの轟音も一緒にする。回る回る。シルヴィアの体は永遠に回り続けていた。気分が悪くなって来た。
シルヴィアは心の底から思った。『魔法界にマシな移動方法は汽車以外無いのか』っと。
「痛っ……」
シルヴィアは床に打ち付けられた。幸いな事に(本当にそう言えるかは甚だ疑問ではあるが)その痛みで吐き気は吹き飛んでくれた。
「あら、シルヴィア! 大丈夫?」
耳慣れた声が聞こえた。シルヴィアが目を開けると栗毛色の出っ歯の少女。ハーマイオニー・グレンジャーが立っていた。
シルヴィアはそのハーマイオニーの手を借りて立ち上がる。そして周囲を確認した後、ここは漏れ鍋である。と認識をした。
「初めまして。君がハーマイオニーと仲良くしてくれているシルヴィアさんかな? 去年は駅で驚かせてしまって申し訳なかったね。」
そうハーマイオニーの後ろから男性が出てくる。隣には女性も居て、シルヴィアは恐らくこの2人がハーマイオニーの両親であるのだろう。と察する。
ただ、シルヴィアとして去年驚かされた。と言う事については身に覚えがなかった。きっと忘れてしまったのだろう。
「えぇ、どうも初めまして。シルヴィア・ネクロタフィオです。」
シルヴィアはそう自己紹介をした。ハーマイオニーの両親も2人共自己紹介をした。2人の話によれば、〝歯医者〟をしているらしい。
「は、歯医者……ですか? あの、歯をペンチで引っこ抜く……?」
シルヴィアは恐る恐る聞くがグレンジャー氏は優しい笑みを浮かべた。
「今はそんなもんじゃないさ。麻酔を歯茎に打ってそれから治療をするんだ。麻酔のおかげであまり痛みを感じる事なく治療を進められる」
「ま……麻酔……。つまりはドウェールですか?」
「き、君はよくそう昔の事を知っているね……魔法界ではそれらが使われているのかい?」
グレンジャー氏は若干引きながらそう言って来た。
シルヴィアとしてはドウェールが現在の魔法界で使われているとはとても思えなかった。
今まで、シルヴィア見て来た魔法薬で鎮静作用があるものは、阿片やブリオニア、ヒヨスが登場した事はないのだ。
あの魔法界の中で麻酔というか鎮静薬と言うか睡眠薬というかでお馴染みの『生ける屍の水薬』の材料はアスフォデルの球根の粉末、ニガヨモギ、刻んだカノコソウの根、催眠豆の汁。
阿片の〝あ〟の字ものない。だから、きっとドウェールは今の魔法界では使われていないのだろう。
「多分、そんな事ないです。因みに……その〜、今のマグル界ではどんな薬草を使って麻酔を作っているのですか?」
完全な知的好奇心だった。グレンジャー氏は食いつきの良いシルヴィアに引きつつ感心している様子だった。
「今だと、キシロカインって言う末梢神経から中枢神経への刺激の伝導、伝達を止める薬が使われていてね。それを使えば全身では無くて局所的に麻酔を効かせられるんだ。
そのキシロカインって言うのにはリドカイン塩酸塩って言う麻酔成分とアドレナリンって言う血管を収縮させる成分が入っていて……その生成に薬草が使われてるかは私は知らないのだけど、多分使われていないんじゃ無いかな?」
シルヴィアは自分で聞いておきながら、このグレンジャー氏が何を言っているのかさっぱりだった。
〝まっしょうしんけい〟や〝ちゅうすいしんけい〟とは何か知らなかったし、全く知らない成分が出て来た。
「な、なるほど……勉強して……おきます。」
シルヴィアはそう絞り出すように言った。一応は、メモはした。しかしスペルが分からないものなので、後で苦労しそう。とは思った。
「ところで……ネクロタフィオさんはあの暖炉から出て来たけれど、魔法界では暖炉に突っ込めば移動が出来る。って言うわけなのかい?」
「あ〜っと……その、私も先日先生から教えてもらったばかりなので……あまり詳し──「パパ! もう、シルヴィアが困ってるいるじゃない! ほら、これ。
そう言ってハーマイオニーは人数分の紅茶を持って来た。3人は各々にハーマイオニーの感謝の意を示してからティーカップを受け取る。そして、紅茶を飲んで少しの間休憩を取る。
「そう言えば、シルヴィアは夏休みの宿題は終わったの?」
「一応、全部終わらせたよ。変身術と魔法史が少し怪しかったけど、どうにかなった。ハーマイオニーは……終わっていないわけないよね……」
ハーマイオニーはシルヴィアが聞く以前にドヤ顔をしていた。
「えぇ、勿論! 夏休みの1週目で全部終わらせたわ。それからは魔法の勉強をずっとしていたの。シルヴィアは夏休みはどう過ごしていたの?」
「夏休みの宿題を終わらせてから、部屋の片付けをしてたの……私の部屋、酷く散らかってたからね……」
そう言うとハーマイオニーは驚いた表情になった。シルヴィアの部屋が汚い事に驚いたのか。しかし、すぐに何処か納得した表情になった。
「さ、紅茶を飲んだらグリンゴッツに行きましょ。教科書を買うように私達はマグルのお金を換金しなきゃいけないし、シルヴィアもお金下ろさなきゃでしょ?」
「そうだね。」
そうして、5人全員が紅茶を飲み終わった後にグリンゴッツに向かった。
シルヴィアはしれっと自分がグレンジャー家に馴染ませてもらっているのを単純に嬉しいと思った。
グリンゴッツに着いてからシルヴィアは思い出す。そう言えば、自分の金庫はトロッコで向かわなければならない。そこでグレンジャー氏が持っている紙切れに目がいく。
「まさか……ハーマイオニー? あの紙切れがお金?」
「え? えぇそうよ。あれは10ポンド紙幣よ。あれで本3冊ぐらいは買える筈よ。まぁ、ロックハート様の本は1.5冊ぐらいしか買えないだろうけど……」
本を買うのに.5冊とは何だ。とは思ったが、それ以上にハーマイオニーがロックハートと言う人物を様付しているのが気になった。
「ハーマイオニーって……まさか、ロックハートのこ──「何と、マグルのお2人がここに!」
嬉しそうな声が聞こえて来た。そこに居たのは燃えるような赤毛の男性だった。
シルヴィアはすぐに推測が付いた。
彼はロナルド・ウィーズリーの父親なのだろう。それに、それを確証付けるように赤毛の家族が後ろに居て、ロナルド・ウィーズリーやあの悪戯好きのフレッド、ジョージ・ウィーズリーがずらりと並んでいた。
「そこに持っていらっしゃるのは何ですか? あぁ、マグルのお金を換えていらっしゃるのですか。モリー、見てごらん!」
ハーマイオニーの両親は困惑気味に突っ立っていた。
モリーと呼ばれた女性は優しそうな顔で居た。ただ、夫であるウィーズリー氏(仮)の無礼を指摘していた。
「あぁ、グレンジャーさん。これは失礼。わたしはアーサー・ウィーズリー。魔法省でマグル製品不正使用取締局長をしておりまして。マグルの生活について興味を持っているのです。
君がハーマイオニーかね? ロンから君の事は聞いているよ? えぇっと、君は……?」
シルヴィアは正直言って、自分の名前を名乗るが嫌だった。別に悪気が無い事は知っているのだが、ロナルド・ウィーズリーは自分の苗字の所為で自分と関わりたがらない。と知っていた。
その証明にシルヴィアはまだロナルド・ウィーズリーと一対一で会話を交わした事が無かった。
ただ、ここは自分が名乗らない限り話が進まないだろう。
「シ、シルヴィア……ネ、ネクロタフィオ……です。」
ウィーズリー夫妻は酷く驚いた表情になる。シルヴィアは、この場から自分の影をも残さずに消えてしまいたい。と思った。
「そ、そうかい……あぁっと! グレンジャーさん。あとで漏れ鍋で一緒に一杯飲みませんか?」
グレンジャー夫妻はこの後、歯医者の営業時間なので今度にして欲しい。と濁して答えた。
ウィーズリー氏は今度にして欲しい。と言う言葉を物凄くポジティブに捉えたようで、ではまた後日! と元気よく言った。
「あとで、ここで会おう」
とロナルド・ウィーズリーはハーマイオニーに呼びかけ、ウィーズリー一家と一家と共に行動していたハリー(シルヴィアはここでハリーが居るのに気が付いた)は小鬼に連れられた。きっと地下の金庫へ向かうのだろう。
シルヴィアも自分のお金を下ろさなければならない。と思い手近な小鬼に話しかけようとする。
「ねぇ? シルヴィア。もし、シルヴィアが嫌じゃなければの話なんだけど……魔法界の金庫。少し見せてくれない……?」
「うん、全然構わないよ。」
そうしてシルヴィアはグレンジャー一家を引き連れる形で小鬼に話しかける。
「えぇっと……ローズブレイド家の金庫からお金を下ろさせてください」
そう小鬼話しかけるとすぐに他の小鬼が登場して来て、シルヴィアとグレンジャー一家を案内する。
「ねぇ? ローズブレイド家って一体?」
「両親の苗字みたい。多分……私の親戚……なのかな。ダフネによれば、私を産んだ両親が亡くなってからの養育者だったんじゃないか。とか言ってたけど……。
私、確かに6歳まで親と過ごしていた筈なの。けど、一切思い出せなくて……」
そう言うとグレンジャー夫妻は酷く悲しげな表情をしていた。
「そうかい……何かあったら、わたし達を頼ってくれていいんだからね。わたし達は魔法使いでは無いから……あまり支援できる事は少ないだろうけど……」
グレンジャー氏はそう言った。
あのマルフォイ氏も同じような事を言っていたが、マルフォイ氏のようにネクロタフィオ。と言う苗字だから近づいて来た人物では無いのでシルヴィア的に印象は良かった。
しかし、自分の祖先がとんでも無い人殺し一族だった事を知らない人に自分の身を案じてもらうのは申し訳ない。と言う気持ちにシルヴァイは駆られた。
「あ、ありがとうございます。」
シルヴィアは色々考えた末にその一言だけを発した。その時、丁度タイミングよく地下のトロッコ置き場に辿り着き、一行はトロッコに乗り込んだ。
「なるほど、魔法界の金庫はトロッコで移動をするのか」
グレンジャー氏はウィーズリー氏ほどでは無いが、未知との遭遇に心躍らせている様子だった。ただ、その様子もトロッコが出発してすぐに失われてしまった。
トロッコでの移動はお世辞にも気分がいいものではないのだ。
そうして、500番金庫に辿り着いた頃にはシルヴィアとグレンジャー夫人は酷い吐き気に襲われた。
シルヴィアはすぐさまトランクから吐き気止めを取り出し、グレンジャー夫人に渡してから自分も飲み込んだ。
「す、凄いわね……これ……吐き気が一気に薄まっちゃったわ……」
グレンジャー夫人は目を丸くさせてそう言った。シルヴィアは誇らしげな表情になる。
そして、ローズブレイド家の金庫から去年スネイプが引き出したのと同じくらいの額を引き出した。
帰りもまた気分の良い旅では無かったが、吐き気止めを飲んでいた為、シルヴィアもグレンジャー夫人も吐かずに済んだ。
地上に戻ってくるとウィーズリー一家がそこに居た。本当に大世帯で皆が皆燃えるような赤毛なのでよく目立った。
「さぁ、フローリシュ・アンド・ブロッツ書店で教科書を買いに行きましょう」
ウィーズリー氏の掛け声で一行は書店へ向かう。
「あぁっと……シルヴィア……でいいかい? 僕はロンでいいからさ」
ロナルド・ウィーズリーがシルヴィアに語り出した。
「僕のパパとママは君の……特に、名字について酷く驚いていたよ。けど、まぁ、君はスリザリンだけど悪い人じゃないからって説明したら納得してくれたから……その、気を悪くしないでおくれよ」
「あ、うん……あ、ありがとう。」
シルヴィアとしてスリザリン=悪い人の式に若干違和感を感じたが、そう感じてもしょうがないか。とは思った。
しばらくして書店の近くまで来てみると、驚いた事に黒山の人だかりで、表で押し合い、へし合いながら中に入ろうとしていた。
その理由はしばらく不明だったが、ハリーが見つけ指をさして教えてくれた。それは上階の窓に掛かっていた横断幕だった。
「本物の彼に会えるわ!」
ハーマイオニーが黄色い声を上げる。
「だって、彼って、リストにある教科書を殆ど書いているじゃない!」
グレンジャー夫妻は大興奮している娘に困惑をしていた。
ハーマイオニーがロックハートと言う人物が著名な魔法界の英雄であり、インフルエンサーである。と解説すると納得いったような表情になっていた。
人集りの殆どがウィーズリー夫人ぐらいの年齢の女性ばかりでドアのところには当惑した顔で男性が1人立っていた。
「奥様方、お静かにお願いします……押さないで下さい。……本にお気を付け願いします……」
ハリー、ロン、ハーマイオニー、(ハーマイオニーに手を引かれた)シルヴィアは群衆を押し分けて中に入った。長い列は店の奥にまで続き、そこでギルデロイ・ロックハートがサインしていた。
4人は急いで〝泣き妖怪バンシーとのナウな休日〟を含む学校指定のロックハートの本を1冊ずつ引っ掴み、ウィーズリー一家とグレンジャー夫妻が並んでいるところにこっそり割り込んだ。
割り込み。と言う行為に対してシルヴィアは強い拒否感を感じたが、それはそうとあの列を全て大真面目に並んでいたら日が暮れてしまう。と思い、割り込みをした。
「まぁ、良かった。来たのね。もうすぐ彼に会えるわ」
ウィーズリー夫人は息を弾ませ、髪を撫でつけながらそう言った。ハーマイオニーも瞳が恋する少女だ……。
間も無くすると、ギルデロイ・ロックハートの姿がだんだん見えて来た。
座っている机の周りには自分自身の大きな写真がぐるりと貼られ、人垣に向かって一斉にウィンクし、輝くような歯を見せびらかしていた。
本物のロックハートは瞳の色にピッタリの忘れ草色のローブを着ていた。
彼の周りには気が短そうな男性がうろちょろしており、大きなカメラで写真を撮っていた。
目が眩むようなフラッシュ(シルヴィアは実際に数秒間目が見えなくなった)を焚くたびに、ポッポっと紫の煙が上がった。
「そこ、どいて。日刊予言者新聞の写真だから」
カメラマンはロンに向かってそう言った。ロンは「それがどうしたんだって言うんだ」とカメラマンに踏まれた足を摩りながら言った。
それが聞こえたのか、ロックハートが顔を上げた。まずはロンを見てからその隣に居るハリーを見た。じっと見つめていた。ハリーは嫌な表情になっていた。ロックハートは勢いよく立ち上がり、叫んだ。
「もしや、ハリー・ポッターでは?」
興奮した囁き声がり、群衆がパッと割れて道を開けた。ロックハートが列に飛び込み、ハリーの腕を掴む。そして正面に引き出した。群衆は一斉に拍手をした。シルヴィアはハリーの心情を案じた。
ロックハートはきっとハリーの事すら自分の箔を付ける為の何かとしか思っていないだろう。ハリーの表情は死んでいる。シルヴィアはハリーが不憫で仕方がなかった。
カメラマンはこの書店に雲を作るのか如く、シャッターを切りまくっていた。
「ハリー、ニッコリ笑って! 一緒に写れば、君と私で一面見出し記事ですよ!」
そして少ししてからハリーはやっと手を離してもらった。そうしてこっそりウィーズリー一家の元に戻ろうとした時、ロックハートはハリーの肩に腕を回して、がっちりと自分の側に締め付けた。シルヴィアは心底、ハリーが不憫に思った。
「みなさん。なんと記念すべき瞬間でしょう! 私がここしばらく伏せていた事を発表するのに、これほどまで相応しい瞬間はまたとありますまい!」
ロックハートは仰々しくそう言った。ハリーの目は死んでいる。
「ハリー君が、フローリシュ・アンド・ブロッツ書店に本日足を踏み入れた時、この若者は私の自伝を買う事だけを欲していたわけであります。
──それを今、喜んで彼にプレゼントいたします。無料で──(ここで聴衆は盛大な拍手をロックハートとハリーに送った)──この彼が思いつきもしなかった事でありますが……」
ロックハートの演説はまだ続く。
シルヴィアはさっさと本を買ってこの書店から出て行きたかった。こんな人口密度の高い空間はもう懲り懲りだった。
「間も無く彼は、私の本〝私はマジックだ〟ばかりでなく、最も良いものを得られるでしょう。彼もそのクラスメートも、実は〝私はマジックだ〟の実物を手にすることになるのです。
みなさん、ここに、大いなる喜びと、誇りをもって発表いたします。この9月から、私はホグワーツ魔法魔術学校にて〝闇の魔術に対する防衛術〟担当教授職をお引き受けする事になりました!」
聴衆はワーっと沸き、拍手した。ロンはウェーっという反応を見せ、シルヴィアも大体同じ反応を見せた。ハリーの顔は死んでいた。
ハリーはロックハートから全著書をプレゼントされた様子で重さによろけながら、スポットライトの当たる場所から逃げて来た。
シルヴィアは心の中でハリーがこの空間を乗り切った事に最大の敬意を示した。
その後、やっとこさ会計の列が進む。ロン、ハーマイオニーが会計を終え一足先にその場を離れる。
後ろの方からドラコの声が聞こえ、間も無くマルフォイ氏の声も聞こえて来た。少しするとあのウィーズリー氏とマルフォイ氏が口論を始めている様子だった。
シルヴィアがみんなの元に向かった時にはウィーズリー氏とマルフォイ氏は殴り合いの喧嘩を始めていた。ウィーズリー夫人が悲鳴を上げ、店員も止めようと叫んでいた。
シルヴィアはあの基本は人当たり良さそうなウィーズリー氏が、あの上流階級の香りを放っているマルフォイ氏が殴り合いの喧嘩をするなんて……と驚いた。そして、大人と言うものは大きいだけの子供である。と持論を心の中で展開した。
あの森番の大男、ハグリッドが止めに入って事なきを得たが、ウィーズリー氏は唇を切っており、マルフォイ氏の目には何か分厚い本……例えば〝毒きのこ百科〟だろうか? それで殴られた跡があった。
マルフォイ氏の手にはお古の〝変身術入門〟が握られていた。目を妖しくギラギラと光らせて、それを燃えるように赤い赤毛の少女(ロンの妹だろうか?)に突き出した。
「ほら、チビ、君の本だ。君の父親にしてみればこれが精一杯だろう」
完全に小悪党の捨て台詞だった。7巻続いた物語の中で2巻目ぐらいに出てくる、それもその巻のラスボスではなく、途中の敵が負けた時に言い放つ台詞だ。
ハグリッドの手を振り解き、ドラコに目で合図して、マルフォイ氏はさっさと店から出て行った。
「アーサー、あいつの事はほっとかんかい」
ハグリッドは、ウィーズリー氏のローブを元通りに整えてやろうとして、ウィーズリー氏を吊し上げそうになりながら言った。
「骨の髄まで腐っとる。家族全員がそうだ。みんな知っちょる。マルフォイ家の言うこたぁ、聞く価値がねぇ。揃って根性曲がりだ。そうなんだ。」
シルヴィアはこの空間に居るのが若干居た堪れなくなって来た。ハグリッドは知らないが、この場にいる人(グレンジャー夫妻を除く)は皆、グリフィンドールだ。
その〝骨の髄まで腐っている根性曲がり〟と同じ寮の自分はどんな顔をしてれば良いのか……。ただ、シルヴィアとしても深く考えても無駄だと考えた。
「さ、さっきは災難だったね……ハリー……」
シルヴィアは漏れ鍋へ帰って行く道中、ハリーに話しかける。
「あの人、いったいなんなんだい? あの尊大なナルシストは」
ハリーは散々な思いをした所為でロックハートへのアンチを高めていた。
「オマケにハーマイオニーがあいつにメロメロなんだ! ふざけてるよな」
ロンがそう抗議するように言う。その言葉がハーマイオニーの耳に入ったのかハーマイオニーは鬼の形相一歩手前の表情で3人を見つめた。
「3人は彼がどんな功績者か知らないの? 闇の魔術に対する防衛術連盟の名誉会員で、勲3等のマーリン勲章を受賞しているのよ?
なんで、そんな功績者を認めないか不思議に思うところね。ハリーも彼と写真を撮れるなんてまたとない機会だったのよ?」
ハーマイオニーはそう3人を捲し立てた。3人は互いに顔を見合わせ口を噤んだ。
「そして、彼はなんと言ってもハンサムで〝週刊魔女〟のチャーミングスマイル賞は5回連続で受賞しているのよ!」
3人はハーマイオニーがどこにいってしまうのだろう。と半ば懸念を抱き始めた。
「兎に角! 彼の功績は本物よ。何故、彼が今まで〝闇の魔術に対する防衛術〟の教授をやっていなかったのかしら? あんな、気弱な吃り誘拐犯よりも全然マシだと思うわ。」
ハーマイオニーはそう言い切った。
その頃には漏れ鍋に辿り着いていた。3人はやっとこのハーマイオニーの説明から解放されるのだと安堵していた。
グレンジャー一家はマグルの世界に帰るのでここでお別れした。また、シルヴィアはウィーズリー一家と顔を合わせるのが若干気不味かったので、漏れ鍋の奥の暖炉からこっそりと退散した。
グレンジャー夫妻:
調べても名前が出てこなかった。
シルヴィアとは去年の9月1日にキングス・クロス駅で会っている。歯医者をしている。歯医者の麻酔について興味を持ったシルヴィアを感心しており、色々話しているが、多分12歳には情報量が多い。どこかのウィーズリー氏程では無いが未知との遭遇を楽しんでいる。
親を亡くしたシルヴィアに同情を示し、何かあったら支援をする。と言っている。
ウィーズリー氏と飲みに誘われたがやんわりと断っている。
ウィーズリー夫妻:
アーサー&モリー。ウィーズリー兄弟の両親。アーサーはマグル製品不正使用取締局長をしており、マグル文化に興味がある。
シルヴィアの名字を聞いた途端、驚いた表情になり以後、スルーしている。
モリーはロックハートにお熱。
ギルデロイ・ロックハート:
フローリシュ・アンド・ブロッツ書店でサイン会をしていた魔法使い。イケメン。魔法界のインフルエンサー。
闇の魔術に対する防衛術連盟の名誉会員で、勲3等のマーリン勲章を受賞している。また、『週刊魔女』のチャーミングスマイル賞は5回連続で受賞している。
今年のDADA教員。嫌な予感しかしない。
ドウェール:
アルコールベースの混合物に胆汁、アヘン、レタス、ブリオニア(多年生のつる植物)、ヒヨス、ドクニンジン、酢が含まれていた(wikiより)
生ける屍の水薬:
麻酔というか鎮静薬と言うか睡眠薬というかでお馴染み。
材料はアスフォデルの球根の粉末、ニガヨモギ、刻んだカノコソウの根、催眠豆の汁。
キシロカイン:
歯茎を切ったり歯を抜いたりする際に痛みを軽減するため使われる。虫歯治療とかで注射を打たれるときに使われていると思う。殆ど、グレンジャー氏が説明してくれているが、塩酸リドカインという麻酔薬に血管収縮薬のアドレナリンが混ぜている。らしい。
これは投稿者が2025年に調べた結果であって、作中の1992年には違う麻酔薬が使われていた可能性がある。
10ポンド:
日本円で(2025/02/01時点で)1920円ぐらい。1ガリオンが5ポンドぐらいらしいので、2ガリオンに換金出来る。
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