シルヴィアは最初、1週間ぐらいで秘密の部屋へ特攻できる物だと思っていた。しかし、やはり現実はそんな糖蜜パイの如く甘いものでは無かった。
鏡はすぐに手に入れられたので問題無しだった。
次にシルヴィアは対バジリスク用の毒薬を作る為にイタチを使った薬作りに勤しんだ。しかしながら、この世に対バジリスク用の毒薬のレシピなどある訳も無く、作成に非常に苦戦していた。それに、スネイプの罰則があるので薬を長時間見てやる事が出来ずに失敗してしまった。と言う事だってあった。
クリフォードはその様子をどこか安心した様子で見ていた。シルヴィアとしてはクリフォードに手伝って欲しかったが、彼は手伝う気が一切無いようだ。シルヴィアとオリビアが頭を捻りながら薬の作成をしているうちに、残念ながら7匹のイタチが犠牲になってしまった。
シルヴィアは禁じられた森の端でイタチ達の遺体を敬意を持って埋葬した。
結局、それらしい何かが出来たのは
「ねぇ? シルヴィアは3年生で何の科目を選択するつもり?」
「え? 何の話?」
「シルヴィア……スネイプの話聞いていなかった訳? 3年生は新たに選択科目があるから、その中で2科目決めなさいって。イースター休暇の課題よ?」
ダフネにそう言われて、初めてシルヴィアは選択科目の存在を思い出した。
「えぇっと……占い学にマグル学……数占いに魔法生物飼育学。最後に古代ルーン語……なるほど。」
シルヴィアはリストに載っていた科目名を取り敢えず読み上げてみた。しかしながら、自分がどの科目を選べばいいのか見当も付かなかった。
「ダフネは何を選ぶつもりなの?」
「そうねぇ……占い学とマグル学は論外でしょ? それで、数占いは難しい教科だって聞いたから除外……魔法生物飼育学は、あの片腕と片足の半分以外の手足を失っている教授に教わるだなんて心配でしかないわ。それで、古代ルーン語。何をやっているか分かったものじゃないわ」
それでは、ダフネは何も選ばないつもりか。とシルヴィアは一瞬思ったが、ダフネはその後「うーん」と唸り始めた。どうやら、どれを選んだらより『マシ』かを選んでいるように見えた。
シルヴィアもそのダフネの様子を見てどれを選ぼうか悩み始めた。シルヴィア的にはダフネが無情にも切り捨てた占い学、マグル学、魔法生物飼育学が気になっていた。
シルヴィアは別に(自分が魔法使いであることを除けば)スピリチュアル的な人間では無い。ただ、自分の運勢がうっすらとでも分かれば面白いものだと思っていた。
また、マグル学も車すら知らない自分には必要な教養だと考えた。それに、魔法生物と関わるのも魔法薬学者になる上では必要な過程だと考えた。
……と言うことでシルヴィアは占い学、マグル学、魔法生物飼育学にチェックを付けた。
「話聞いてた? 2つよ2つ。選択科目は2つしか選べないの。……まぁ、話によれば全教科選択した人が過去に居たらしいけど……。物理的に無理なのにどうやってのかしら?」
ダフネはそうシルヴィアが持っているリストを覗き見しながら言った。シルヴィアはこの3つの中から2つ選ばなければいけなくなってしまったようだった。
益々、悩んでしまった。シルヴィアとしてどの科目も外し難い。
「う〜ん、じゃあ……」
結局、シルヴィアは占い学のチェックを消した。
シルヴィアはリストにチェックを入れてからダフネのリストを覗き込んだ。ダフネは少し悩んだ末、占い学と魔法生物飼育学にチェックを入れていた。
「マシなものを選んだまでよ。」
そう捨て台詞まで吐いた。けれども、まぁそれが1番スリザリン生的には安牌な選択だったようで、後々聞けば多くのスリザリン生がその選択を取っていた様子だった。
ダフネ曰く、スリザリン生でマグル学を取った人は『魔法よりも物理学を極めたい』が口癖のヴァージル・マグワイアと『人は旅する生き物だ』が口癖のアイザック・サザランドだけだったそうだ。
◆
翌日、シルヴィアにとって最も恐れていた事件が発生した。シルヴィアはダフネ、パンジー、ミリセントから叩き起こされた。土曜だから、もう疲れ切っていたので夕方頃まで眠りたかったのに……と言いながら、身支度を終える。そうして3人に腕を引っ張られながら談話室へ向かう。
そこにはいつも通り無表情のスネイプがスリザリン生を集め、前に立っていた。そして、シルヴィアがやって来たことを確認すると話し始めた。どうやら、シルヴィアがスリザリン生の中で1番寝坊した生徒だったらしい。
「また、何者かの手によって生徒が襲われた」
スネイプがそう言い始めた。しかし、スリザリン生の多くはせせら笑っている。それどころか何かを期待している様子も感じ取れた。
「今度はどのマグル生まれが襲われたのですか?」
ドラコがそう聞いた。シルヴィアは彼が『穢れた血』と言う言葉を使わない事は意外とは思ったが、後に聞いた話によればスネイプの目の前で『穢れた血』と言う言葉を発すると烈火の如く叱って来るらしく(但し、減点はしない)、スリザリン生の中でも暗黙の了解となっていた。
シルヴィアはそれも意外だと思った。彼は表面上には出さないが、どうせマグル生まれを蔑視しているに違いない。と思っていたからだ。
「レイブンクローのミス・クリアウォーターとグリフィンドールのミス・グレンジャーだ」
スネイプは顔色一つ変えずに言った。シルヴィアは膝から崩れ落ちた。そんな中、ドラコや彼の取り巻き。またエイブリー、マルシベールは喜びを分かち合っている様子だった。シルヴィアはすっかりと気分が悪くなった。
「全校生徒は夕方18時までに、各寮の談話室に戻るよう。それ以後は決して寮を出てはならない。授業に行く時は、必ず教授が1人引率する。トイレ等で寮に出る際も必ず教授に付き添ってもらうように。クィディッチの練習も試合も、全て延期だそうだ。夕方は一切、クラブ活動をしない事」
スネイプはそう言ったものの、あまり心配している様子は無かった。スリザリン生徒にマグル生まれは殆ど居ない。よって安全だと思っているのだろう。それに、スリザリン生の多くも自分は襲われる事は無い。と思っている様子だった。
「今、言ったことを守るように」
そう言ってスネイプは立ち去って行った。
その後はスリザリン寮は若干のお祭りムードが漂った。数ヶ月の間、沈黙を貫いて来た継承者がやっと行動を起こしたのだ。しかし、シルヴィアにとってはとても気分のいいムードでは無かったので、早々に寝室へ向かった。
唯一良かった事があると言うならば、誰1人としてシルヴィアがスリザリンの継承者だと騒ぎ立てなかった事だろう。その部分だけは良かった。
シルヴィアは今日にでも秘密の部屋に突入するか悩んだ。ただ、とてもじゃ無いが疲れが取れきっていなかった。その為、明日に先延ばしした。
……──本当は秘密の部屋に行くなんて怖い。それでも、マグル生まれの生徒達を恐怖に陥れた犯人がとても許せなかった。シルヴィアは震えながらも準備を進めた。
◇
最悪な事。と言うのはいつも続くものらしい。
ハーマイオニーとペネロピー・クリアウォーターと言う生徒が襲われた次の日。噂によれば森番のハグリッドがアズカバンへ送られたそうだが、その話は殆ど誰も話題にしなかった。
そんな事よりも重大な事件が起こった。それは、ダンブルドアは理事会によって停職処分が下されたようで、学校を立ち去ってしまった。その所為で、学校中はすっかり大パニックに陥ってしまった。
誰もがヒステリックになり、ウィーズリーの双子印のエセ護身用グッズが城内に広がった。尤も、スリザリン生の中でドラコのような純血主義を掲げている生徒はふんぞり返って城内を歩き回っていたが……。
シルヴィアはいよいよ時が訪れたとして、今日の授業終わり対バジリスク用毒薬を取りにクリフォードの居る空き教室へ向かった。
「シルヴィア。僕からの最終警告だ。君は秘密の部屋に行くべきでは無い。命というものは尊いものだ。君の命だって同様にだ。命を無謀にも危険に晒すような真似はしないでおくれ」
クリフォードは警告と言いつつ、懇願するように言った。
「まぁ、そうだよね……行くのはやめておくよ……」
「本当かい!?」
クリフォードは目を輝かせて安堵した様子でシルヴィアを見つめた。
「うん。そこまで言われちゃ、流石に……。それに、やっぱり……怖いし。けど、この毒薬は危ないものだから回収して禁じられた森の端にでも埋めておくよ」
「あぁ……これはここ数ヶ月間ずっと凄い臭いを放っていたからね……。さっさと捨ててくれ……」
「じゃ」
シルヴィアはそう言って毒薬の入った大鍋を持って教室から出て行った。クリフォードは大層安心した様子で胸を撫で下ろした。
一方シルヴィアはクリフォードの居る空き教室から少し離れた空き教室で、大鍋に入っている毒薬を全て薬瓶に詰めた。そして鞄に詰める。
先ほど言った事は、怖い。と言う言葉以外全て嘘だ。シルヴィアは今から秘密の部屋に向かおうとしていた。
クリスマス・イヴに見た母親が言っていたように、秘密の部屋の入り口があると言う地下3階の南東の部屋へ向かった。
スリザリン寮自体が地下数階に渡ってあるので、地下空間自体を恐ろしいとは微塵も思わなかった。それでも、やはり1人は心細かった。
けれども、ここでオリビアを連れて来たとしても彼女を傷付けてしまう。それならば、1人で行った方がよっぱど荷が軽い。
「シルヴィア。貴女、1人でヒミツの部屋に突入しよう、とか言うバカなコト考えたでしょう? 私にはそんな貴女のコードーは全部オミトーシなのよ」
南東の部屋の前に辿り着くなり、そこにはオリビアが待ち構えていた。暗闇の中で輝く灰色の瞳は背筋を凍らすぐらいには恐ろしいものだったが、どこか安心している自分も居た。
オリビアはやがて、シルヴィアの腕に飛び乗ってきた。もう慣れたのかそれともオリビアが気遣ってくれたのか、あまり痛いとは感じなかった。
「……そうだね、私が馬鹿だった。」
シルヴィアオリビアの頭を撫でながらそう言った。
「私は、シルヴィアのミカタなんだから! 私をじゃんじゃん、タヨリなさいな」
「うん……うん。ありがとう。オリビア。本当にありがとう……。じゃあ、一緒に秘密の部屋へ向かおう」
そう言ってシルヴィアは部屋のドアノブを捻った。しかし、いくら力を加えても部屋のドアは開かなかった。
「ここを開けなきゃ、部屋の中にある洋服箪笥に辿り着かないのに……」
シルヴィアは焦りを覚えてきた。自分の力があまりにも弱い所為なのか? それとも、何者かによって開かないように細工がされているのか。どちらから分からなかった。
部屋に向かわなければ、継承者にもバジリスクにも会えない。それじゃあ、話が進まない。シルヴィアの焦りは次第に酷くなっていく。
「シルヴィア。落ち着きなさい。ココはスリザリンが作ったヘヤの入り口よ。ちょっとカンガエテみなさいよ」
そう言われて、少し悩んだ。しかし、シルヴィアでも少し悩む。だけで済んだ。
「分かった……『開け』」
シルヴィアは蛇語を発する。するとガチャ! と音が響いた。再び、ドアノブを捻って押し開けるとドアは安易と開いた。
「開いた!」
すぐに部屋に入る。部屋内部は入室者が確認されるとパッと松明が灯り、部屋を怪しく照らした。どこか、カビ臭く埃臭かった。そして、部屋の中には重厚な机と椅子があり、椅子の上には何冊か得体の知れない古い本が置いてあった。
シルヴィアは少しばかり、覗いてみたがどれも分厚い埃に被っており、何について書かれている本かは判別不可能だった。
「この部屋はサラザール・スリザリンのシシツだったのかしら?」
「……分からない。けど、不思議な事が1つだけある」
シルヴィアは手を顎に当てなが言った。
「何かしら? そんなタンテーみたいなポーズを取ってみたりして……」
「ここには……数百年間立ち入られていない気がする……」
こんなに埃まみれな部屋であれば、人が立ち入ったら跡が付きそうなものだ。しかし、その跡は微塵も存在しない。秘密の部屋は開かれ、怪物であるバジリスクも城内を彷徨いている筈だ。それならば、この部屋はもっと人が居た痕跡があってもいいはず。それが存在し得ないのだ。
「他にも入口があるのかな……」
「ま、それについてはイマ考えてもムダよ。さっさとサキに進みましょ」
「それもそうだね」
シルヴィアは部屋の後ろに置かれていた随分と豪華な装飾が施された洋服箪笥を前にする。洋服箪笥は随分と昔に作られたものだと素人目で見ても分かるものだった。
蛇を象った取手を回し、扉を開くと何も入っておらず、とても埃臭かった。そして、洋服箪笥の底には跳ね上げ式扉が付いているのがすぐに確認できた。
シルヴィアはすぐに扉を開ける(結構重かった)。扉を開けると、どこまでもどこまで続いて行く穴が見え、僅かに梯子が続いているのも見えた。
「クライわね……明かりをチョーダイ」
「う、うん。勿論……〈ルーモス 光よ〉」
シルヴィアは杖を光らせ、それを片手に持って梯子を伝って降り始めた。暗闇の中、あまり信用し切る事が出来ないような少々古びた梯子を降りるのは恐怖でしか無かったが、オリビアも一緒に降りてくれた事だけが救いだった。
どのくらい経ったのだろうか? シルヴィアにとっては1時間ほど降り続けた頃にやっと床に辿り着いた。腕はすっかり疲れて、次の日の筋肉痛は確定だろう。と思った。
「さ、秘密の部屋のイリグチまで進みましょ」
「うん……ここはまだ秘密の部屋じゃ無いんだよね……」
落胆したような安心したような。そんな奇妙な感覚がシルヴィアを支配した。しかし、この地下空間。シルヴィアが見えているだけで分岐があまりにも多いのだ。
「これって、正しく辿り着けるのかな……」
「総当たりで行くに決まっているでしょ? どうやって行けばいいのかゼンゼン思い付かないもの。先ずは直進してみましょ。そこがダメだったらここまで戻って来る。それでいいわね?」
「えぇ……う、うん……まぁ、そうだね」
シルヴィアは抗議したかったが、それ以外にいい方法は特に思いつかなかった。その為、素直にオリビアの言う通りにする事に決めた。
不自然に響く自分の足音。どこからか滴って床を濡らす水。地下を吹き抜ける冷たい謎の風。時々聞こえて来るネズミの鳴き声。
どれもこれも、シルヴィアの恐怖心を掻き立てるのに最適な要素だった。シルヴィアは3度ほど、蛇の死骸を踏みつけてしまい、恐怖のあまり泣きそうになった。しかし、オリビアが励ましてくれた。そのおかげでシルヴィアは前へ進む事が出来た。
「行き止まりか……」
「イキドマリね。さっきの梯子のところまで戻って、右の道へ向かいましょ」
「うん……」
シルヴィアはなるべく恐怖心を抑えて、気にしないように行動していた。しかしながら、ふとした瞬間に心を恐怖心が占拠する事がある。しかし、オリビアが居るからこそ、シルヴィアは進める。1人じゃ無いから前へ進めた。
オリビアは置いて行こうと考えていた随分と前の自分を呪い、それでも来てくれたオリビアに深い感謝の意を心の中で示した。
右の通路は分岐点が沢山あった。
「どっちに行けばいいかな……?」
「う〜ん、そうね……トリアエズ、右にずっと行ってみましょう」
「うん……」
シルヴィアは不安になりながらも分岐が出て来る度にシルヴィアの言う通りに右へ曲がった。右に曲がり続けて5回目に行き止まりになった。
「じゃあ、戻ってマホーで焼印でもつけておきましょ」
「え〜っと、確か……〈フラグレート 焼印〉」
壁に向かってそう唱えると×印の焼印が刻まれた。
「じゃあ、左に行って。その次はまたミギにずっと行ってみましょう」
「うん。」
次は2回ほど右に行けた。しかし、次、右に行こうとすると地面が崩落していた。そして、崩落した地面は深い深い闇の底にあるようでシルヴィアは怖くて覗けなかった。
「ここもチガウみたいね。焼印をつけて左に向かいましょ」
「……分かった」
左へ向かってからまた右に向かう。右にもう一度向かおうとすればそこは行き止まりでまた、焼印を付けて左に向かった。
そうして、シルヴィアは結局左に2回曲がり、次は右に6回。左に1回曲がってから右に3回。そして、左に曲がり最後に右に曲がると遂に大きな大きな壁が見えた。
どのくらい時間がかかったかはシルヴィアにはとても理解出来なかったが、オリビアは何回もネズミを捕らえて食していた。そのうちの1回は捕まえたネズミが
壁には4匹の蛇が絡み合った彫刻が施してあり、蛇の目には輝く大粒のエメラルドが嵌め込まれていた。それが秘密の部屋への入り口だとシルヴィアには無意識のうちに理解する事が出来た。
「私は1人じゃ無い……」
「ワタシが居るわよ。シルヴィア。過度にオソレル必要は無いわ。」
「うん。ありがとうね、オリビア……──『開け』」
シルヴィアはそう扉の前で言う。壁は4つに裂け、絡み合っていた蛇が分かれ、両側の壁がスルスルと滑るように見えなくなった。シルヴィアは酷い恐怖を覚えたが、オリビアが居る。なんとか足を踏み出して部屋の中へ入って行った。
◆
シルヴィア・ネクロタフィオが失踪してから実に20日弱が経っていた。教授達が一丸となってシルヴィアを探したが、特に成果が得られた日は無かった。校内では様々な憶測が飛び交っていた。
スリザリンの継承者に誘拐されたのでは無いか。誰の目も届かぬどこかでスリザリンの怪物によって石にされたのでは無いか。もしくは、その怪物に殺されてしまったのでは無いか。
ただ、誰1人としてシルヴィアを継承者と疑う者は居なかった。それだけはシルヴィアにとって幸運だっただろう。
「ねぇ! 貴方は何も知らないのですか!?」
ハリーとロンは目の前に居るゴースト。クリフォード・プリンスに追及をしていた。クリフォードはすっかり悩みきった。と言う表情で居た。
「僕たち、君がシルヴィアと仲が良かったって知っているんだ! 君は何かを知っている筈だ!」
クリフォードは上を向いて下を向いてからハリーとロンに視線を移した。
「確かに……僕は彼女に秘密の部屋に向かわないように言った。……一瞬、彼女は聞き入れてくれた。けれども、それは嘘だったんだ。彼女は僕の警告を無視して行ってしまった……。きっと……彼女は、バジリスクに殺されてしまったんだ……」
そう悲劇的にクリフォードは言葉を捻り出した。
「貴方はバジリスクを知っている……って事は、秘密の部屋が何処にあるのか知っているのですよね? 教えてください。シルヴィアを助けない貴方の代わりに僕達が行きます!」
ハリーはその力強い緑の瞳をクリフォードに向けた。
「……その瞳を見ているとリリーを思い出すよ。君の母親のリリーもそんな瞳を──「話を逸らさないで!」
クリフォードはハリーの怒号に目を丸くさせた。
「僕の母さんの話を出して、僕の気を外らせようとしないで。今はシルヴィアだ。僕らはシルヴィアを助けなければならないんだ」
「……君達は、シルヴィアが生きていると思っているのかい?」
「思っています。シルヴィアは強い。彼女は『機知に富む才能。断固たる決意』を持っている。だから、絶対に生きている!」
ハリーはそう言い切った。クリフォードは完全に打ち拉がれたような表情になった。
「実を言うと……どうやら秘密の部屋は17世紀に水道工事が施工された時に、当時のスリザリンの末裔だったコルヴィヌス・ゴーントと言う人物がどこかに移したそうだ。ただ……彼女が知っている入り口は恐らく元の入り口の可能性が高い……」
「どちらでもいいから早く教えてください!」
「──……シルヴィアが入ったと考えられる入り口は……地下3階の南東の部屋。洋服箪笥の底にある跳ね上げ式扉を下がった地下通路をずっとずっと進んだ先にある。ただ、本当に本当に複雑怪奇だ。
彼女がそこで迷っているとは、あの梟が居るから到底考えにくいけど……秘密の部屋に向かうならもう少し分かりやすい入り口を使った方がいい。」
「もっと分かりやすい入り口はコルヴィヌス・ゴーントが移した入り口。嘆きのマートルが居る3階女子トイレにある……」
「分かった! ありがとう!」
そう言ってハリーはロンの腕を引いて走り始めた。
「待った! 君達本当に行くつもりなのかい!?」
クリフォードは叫んだが、既にハリーとロンは随分先に走り去って行ってしまっておりクリフォードの声は聞こえていない様子だった。
「──あぁ、神よ。どうか、どうか彼女を……生かしておくれ……。」
クリフォードは祈るように言葉を絞り出した。
シルヴィア:
選んだ選択科目はマグル学と魔法生物飼育学である。
ダフネ:
選んだ選択科目は占学と魔法生物飼育学である。
次回投稿日は未定です。なるべく今週中に出せるようにしたいです。
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