呪いの少女と祝福された世界   作:佳山針之介

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2025/02/19 加筆


第28話 2人のブラック

 北海の中央にある監獄、アズカバン。そこには大量の犯罪を犯し収監されている受刑者と大量の看守を務めている闇の生物、吸魂鬼(ディメンター)が居る。

 イギリス魔法界の中でも恐怖のその場所であり、まともな生活をしている魔法使いにとっては近寄り難い場所である。

 

 

【1981年11月8日日曜日】

 黒髪に灰色の瞳を持つ眉目秀麗な男が収監されている部屋に面会者が訪れた。その面会者もまた男と同じく、黒髪に灰色の瞳を持っており容姿端麗な女だった。

 

「御機嫌よう? 大量殺人犯シリウス・ブラック。アズカバン監獄の居心地はどう?」

 女は鎖に繋がれた男と対面するなり、そうほくそ笑みながら軽口を叩いた。しかし、シリウス・ブラックと呼ばれた男は極めて不愉快そうな表情をしており、半ば女を睨んでいた。

「……貴女は本当に私がマグルを13人殺したと考えているのか?」

「いや、全然。微塵も思っていない。だから、君がそのような罪で収監されていると聞いて大層驚いたものだ。」

 女はシリウスが言葉を言い切る前に否定した。シリウスは何処か安心したような表情になった。

「良かった。貴女のそのなんでも見通す瞳が曇ってしまったのかと思ったところだ」

「──私のこの瞳は閉ざそうとしても閉ざす事は出来ない。潰そうにも潰す事は出来ない。心の目だからな。……本当に迷惑な話だ。」

 女は自嘲するように言った。

「……本当は冤罪を吹っかけられた君の面会に、それなりに親しい親族としてすぐに向かいたかったんだが……生憎、ヴォルデモート討伐記念パーティーに忙しくてね」

 女はそう続け、悪そうにニヤリと笑った。

「そ、そうだ! ハリーは……ハリーは一体、どうなったんだ?」

「あ〜、そうか。そうか。君は『生き残った男の子』の顛末も知らぬままアズカバンにぶち込まれたんだっけ? おやまぁ……後見人だったのにお可哀想に」

 女はそうまた軽口を叩いたが、すぐに表情を戻し真剣な表情になった。

「……君の知っての通り、ジェームズ・ポッターとリリー・ポッターも憐れな事に、ヴォルデモートに殺されてしまった。その後、ダスティン・ヘイウッド? が君の空飛ぶバイクに乗って、ダンブルドア校長先生様のところに連れて行ったさ。まぁ、何があっても安全ではあるだろう。」

 シリウスはその言葉を聞いて大層安心した様子になった。

「いや、ちょっと待て、ダスティン・ヘイウッドじゃなくて、ルビウス・ハグリッドだ」

「あ、そう? まぁ、そこはどうでも良くて……ヴォルデモートが倒されて以来、魔法界はお祭り騒ぎさ。北へ南へ梟便を送りあったり、ケント、ヨークシャー、ダンディー州の魔法使いは空に祝福の花火魔法を放って、マグル界からは流星群騒ぎだと取り沙汰された。

 魔法事故惨事部の連中は東西南北、仕事をしすぎて亡者のようになっていた。悲惨な話だな」

 オフィーリアはあまり同情していない口調でそう言った。

「晴れて魔法界の英雄となったハリー・ポッター君はリリー・ポッターの妹夫婦の家へ預けられたらしい。マグルのね。どうやらあのダンブルドア校長先生様は魔法界に関わらせたく無いそうだ。……まぁ、確かにそうだろうね。自分が覚えて居ない事で持て囃されても不愉快なだけだ」

 女はそう言い切った。

「リリーの妹の家族? ……ジェームズからの又聞きに過ぎないのだが、彼らは非常に()()()である事を拘っていて、魔法と言うものを嫌っている。と聞いたのだが……?」

「さぁ、私はそこまで知らないさ。別に私は君みたいに慈善ボランティア組織に入るような素晴らしい心は持っていないんだ。ただ、一般的なマグルが好き好んで自分たちの常識が通じない魔法族(こちら)側に関わりたい、っと思うかい?」

 女はそう言い切ると面白いことを思い出した。と言う表情になった。

「あ、そう言えば、君をアズカバンに裁判無しでぶち込んだ当のご本人様である、魔法法執行部部長のバーテミウス・クラウチさんは息子のジュニア君が死喰い人(デスイーター)だったそうだ。

  同じく死喰い人仲間の我らが親愛なる、ベラ姉様。それと彼女の夫、彼の弟と一緒に闇祓いのロングボトム夫妻を正気が完全に無くなるまで磔の呪いをかけて、君と同じくアズカバンにぶち込まれた。

 それでバーテミウス・クラウチの権力はすっかり失墜して、国際魔法協力部部長に左遷されたそうだ。彼、 能力はあるのにお可哀想に……」

「ロ、ロングボトム夫妻が? 2人の間にはハリーと同い年の息子がいたはずだろう?」

「あぁ、そうだったね。えぇっと……確か、ネイサン君だっけ?」

「ネビルだったと思うが?」

「じゃあ、ネビルだ。そのネビル君は祖母のオーガスタ・ロングボトム婦人に引き取られたそうだ。彼もまた悲しき運命を背負ってしまったようだ」

 あまり興味なさげに女はそう言った。

 女は自身のローブのポケットより、マグル製の安い紙煙草の箱を取り出し1本取り出し、ふかし始めた。シリウスは目の前の女が学生時代から煙草を吸って居た事を知っていた為、なんら不自然には思わなかった。しかし、自分は吸わないので臭くて仕方が無かった。

「貴女はまだ吸っているんだな……それ」

「あ、煙草の事? 臭い?」

「出来れば、今すぐにも吸うのをやめて欲しいと思うぐらいには……」

「そ、」

 女は適当な返答をすると、ふーっと口から煙を吐き出した。シリウスはその煙の所為で咳き込んだ。女はお構いなしに煙草を吸い続ける。

 

「そう言えば、重要な事を聞いて居なかった。──君は一体誰に冤罪を吹っかけられたのかい? あの人狼の……えぇっと、ロムルス・ルパンだっけ? レムス・ルパンだっけ? それはローマ建国の王*1であり、何処ぞの怪盗の名字*2だっけ?

 まあ、彼の名前はどうでもいいのだが……兎に角、彼ではないのだろう? 君はずっと疑って居たそうだけども……」

「リーマス・ルーピンだ。君は相変わらず、人の名前を覚えないよな」

「直接、面を会わせれば手に取るように分かるから別に態々、覚える必要は無いのだよ。んで、誰なんだい?」

 シリウスは少々緊張した面持ちになった。

「ワームテールだ」

「それ誰? 君達がホグワーツ時代ちょっと有名なグループだったからって、私は君のご友人の名前とニックネームを一々把握していないのだ」

「すまない。……ピーター・ペティグリューだ。……と言うか、君の能力的に態々私の口から発させなくとも分かるのでは無いか?」

「……君が恨んでいる友の名を発するところを見てみたかっただけさ。ピーター・ペティグリュー……確か、君たちの腰巾着だっけ?」

「まぁ、今ではそうとも表現出来る。……私はあの時、とんだ過ちを犯してしまった。最後の最後になって私はジェームズとリリーに『秘密の守人』をピーターにするように勧めたんだ。ピーターは臆病だ。ヴォルデモートもとてもピーターが秘密の守人だとは思わないだろう?

 ──しかし、奴は裏切った!(ここでシリウスは椅子から立ち上がった)

  そして、私は奴を追いかけた。追い詰められた時、奴は悪知恵を働かせたんだ。奴は私の周囲を魔法で吹き飛ばした。私は杖を持って居たから無事だったが、憐れなマグルは13人殺されてしまった。

  聞いて驚け! 奴は動物もどき(アニメーガス)になって下水道菅から逃げ出して行ったんだ。自分の指を残してな! 死んだように見せかけたんだ! 私に殺されたように見せかけたんだ!」

 シリウスはそう叫んだ。女はその話を全て聞くと何処か納得した様子になった。

「成程……。君を見ているととても残酷で不愉快な光景が見えたが、その瞬間だった訳か。……あぁ、君にもう1個最悪な事実を教えて使わそう。そのピーター・ペティグリューは君に立ち向かい死んだ。という栄誉の元に勲一等マーリン勲章が授与されたようだ」

 シリウスは憎悪の表情になった。それを見て女はケラケラと嗤った。

「やはり、人が人を恨んでいる時の表情は最高だ」

 そう呟くように言いまた、ケラケラ嗤い出す。

 

「奴を探さなければ、ハリーの命が危ない!」

「それはどうかい? ピーター・ペティグリューはとても自分から行動を起こすタイプでは無いだろう? それよりも、君はもう少し自分を達観で見られるようになれればいいね」

 そう言ってシリウスが繋げられている鎖を指さした。途端、思い出したようにシリウスは椅子に座り直した。

「お願いだ。オフィーリア……奴を、ピーターを見つけ出してくれ……」

「そうしたい思いは山々なんだが……生憎、3日後にはオランダのアムステルダムで行われる、国際魔法薬学会に出席しなくてはいけなくてね……。

 その為に最近、オランダ語を学んでいるんだ。『 遅れてすみません(Excuses dat ik te laat ben)』『意味がわかりません。(Het lijkt mij onzin)』『 英語は話せますか?(Spreek je Engels?)』このくらいでいいと思うかい?」

 シリウスは目の前の女、オフィーリアに少々の怒気の籠った瞳を向けて居た。

「貴女が稀代の魔法薬学者であって忙しい事はわかる。だが……だが!」

「あ〜はいはい、分かった分かった。探すよ。ただ、指が1本無い以外あまり特徴の無い鼠を私はどうやって探せばいいのかい? 

 どこかで見た統計だけども、イギリスの水道管路の総距離は約34万5000キロ*3だそうだよ。

 君はマグルの知識には疎いと思うから参考までにご教示してあげると、地球1周は約4万キロだそうだ。地球1周分の大体8倍だ。虱潰しに探すのにも無理がある距離だ」

「……」

 シリウスはすっかり黙り込んでしまった。

「それに加えて、心底残念な事に、かの偉大なるダンブルドア校長先生様も君をマグルを13人爆殺して残酷な殺人犯であり、『秘密の守人』としてヴォルデモートに情報を漏らした張本人だと信じて疑わないそうだ」

「君のご友人であるリーマス・ルーピンもすっかりショックを受けてしまっていたし、不死鳥の騎士団の面々も君に失望している。……ついでに言うとセブルス・スネイプは君の事を殺してしまいたい程、憎んでいるよ。いやはや、自業自得なのに本当に彼は滑稽な奴だ」

「ちょっと待て、スネイプの奴って死喰い人だろう? なんでのうのうと外を歩いていんだ?」

「外どころか彼はホグワーツを歩いているぞ。魔法薬学の教授になったそうだ。君はあまりにも興味がなかった為に知らなかっただろうけど」

 シリウスは目を見開いて驚いていた。オフィーリアはすっかり愉悦の表情を浮かべていた。今のシリウスの状況が面白おかしくて堪らない。と言う様子だった。

「何故だ? あいつは学生時代から、死喰い人崩れな事をやっていたのに! 裁判でどうやって言い逃れしたんだ?」

「まぁ、人間というものは複雑怪奇でそこが面白いのさ。ただ、私が言える唯一の情報は……彼がダンブルドア側に最後の最後になって寝返ったそうだ。だから、ダンブルドアが彼を庇った。私は実際に裁判を傍聴したわけでは無いからね。詳しくは知らないが……と、私が言えるのはここまで」

 オフィーリアは勿体ぶったような言い方をした。

「ついでに言えば、我が従兄弟であるルシウス・マルフォイも上手いところ魔法省から追及逃れをして、シシー姉様と息子と共に、平穏平凡にお暮らしになられている。ほんとっ、癪に障る」

 あまり言葉に感情を込めないオフィーリアが唯一、憎悪の感情を込めて言った。

 

「……まぁ、けど、シリウスの坊やよ。ピーター・ペティグリュー探しの方法は私も色々と考えておくよ。……ピーター・ペティグリューが見つかるまで、どうか正気を失わないでくれよ」

 そう言ってオフィーリアは煙草の火を壁に押し付けて消し、そのまま床に捨てて立ち去った。

 

 

【1982年6月5日土曜日】

「久しいね、大量殺人犯シリウス・ブラック」

 オフィーリアが軽口を叩きながら面会室に入って来た。シリウスは以前、オフィーリアが訪れた時よりもやつれていた。

「ピーター・ペティグリューについての情報は手に入ったか?」

「い〜や、全く。一応、君の入って居た慈善ボランティア組織の人間にも何人か当たってみたが、それらしい成果は得られなかった。

 例えば、リーマス・ルーピンから情報を聞き出せないかっと思って少し会話をしたけど、残念。彼は一切の情報を持っていない。それどころか、魔法界は相変わらずの祝福ムードだって言うのに、彼もまたやつれていたよ。少しばかり可哀想だったから1食分奢ってやったんだ。人狼というものは、社会的弱者というのは本当に哀れな存在だ」

 そう言ってオフィーリアは降参の表情を見せながら、煙草の箱を取り出し、火を付けた。煙草の煙が部屋にのんびりと漂ってくる。シリウスは何度か咳き込んだが、オフィーリアは気にする仕草も見せずに吸い続けて居た。

「ずっと思って居たんだが……貴女はなんでマグルの煙草なんて吸っているんだ?」

「人生とはどれだけ早いタイミングで離脱出来るかが鍵なんだよ。人生とは歩き回る影法師で、哀れな役者だ。出番が終われば消えてしまう。」

「えぇっと……え?」

「つまりは人の生に意味なんてないって事だ。私の父が密かに好んでいたマグルの劇作家*4の言葉だそうだ。……私は早く、この無意味から解放されたいんだ。」

 そう言うとオフィーリアは煙草を吸い、煙を吐き出した。

「……そんな話よりも、シリウスの坊や? 私の苦労話でも聞いておくれ。私は、あのマッド-アイからも情報を抜き出せないかと思って話を聞きに行ったんだ。あの人、『油断大敵!』とか言ってすぐに呪文をぶっ放してくるから、危なっかしくて嫌いなんだ。ま、彼自身も彼の周りに居る闇祓いでさえ、何も知らないご様子だったが……。」

 シリウスは苦笑いを見せた。

「……そう言えば、かのホグワーツ魔法魔術学校変身術教授兼副校長のミネルバ・マクゴナガル教授が、魔法省時代の上司エルフィンストーン・アーカートとご結婚なされたそうだ。

 彼女はあの魔法戦争では災難に見舞われてばかりだった……。私には弟も初恋の人もいないから、本質的な感情は理解出来ないが、大切な人を惨殺された心の痛みは深いだろう。

 けれども、こうして幸せになれたようで……うん、実にめでたいね。」

「あとニュースと言えば、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世がイギリスを訪問されたそうで、カトリック教会とイングランド国教会が450年ぶりに和解したようだ。……まぁ、魔法族(我々)にとってはあまり関係が無いな。」

 オフィーリアがそう言う。あまりにも関係が無い話だったので、シリウスは頓珍漢な表情になっていた。

「世界は平和になりつつある。けど、君は残念ながら平和とは程遠い場所に居る。お可哀想に。

 ──あ、けど…… マグル界じゃあ、イギリスとアルゼンチンは紛争*5をしていたっけ? ま、それもまたどうでもいいか。

 ……今度来る時、何か持ってくるかい? クロスワードパズル集とか数独集を持ってこようか? 君、そう言うの好きだったよね?」

「あぁ、頼む。ここは酷く暇なんだ」

「そうかい。仰せのままに。……しかし、君が収監されて実に7ヶ月ほどが経ったけれども、正気で居てくれて本当に助かる。私はあまり焦らなくて済むし」

 オフィーリアはしみじみと言った。

「そう言えば、君にとっては逆に嬉しい話かもしれないが……君の母君のヴァルブルガ・ブラック夫人はすっかり心身ともに病ませている。彼女はあまり先が長く無いようだ」

「ふん、いい気味だ」

 シリウスは清々した、と言う声音で言った。

「彼女が亡くなれば、ブラックの名を継ぐ者はアークタルスお祖父様と我々だけになる。これが、純血貴族を謳ったブラック家の末路であると考えると笑えてくるよ。約500年前に『純血よ永遠に』の言葉を残した方のシリウス・ブラック*6はどう思うかね?」

「それは、大層悲しむだろうな」

 シリウスはわざとらしく、悲し気な言い方をしたが一切悲しんでいるようには見えず、かつオフィーリアも嘲笑の笑みを浮かべていた。オフィーリアは机の上に吸って居た紙煙草を押し付けて消し、床に捨てた。

「ま、私はこれから上下水道管に点検員のフリをして入る。と言う大事なお仕事があるので、帰らせてもらうよ。それではまた数ヶ月後に」

「あぁ……すまない……」

 シリウスはオフィーリアの背中に謝った。

 

 

【1982年10月31日日曜日】

「やぁ、今日も相変わらず大量殺人犯シリウス・ブラック。元気にしていたかい?」

 オフィーリアはいつも通りの軽口を叩きながら面会室に入って来た。ただ、オフィーリアの格好はいつもよりはしっかりとした格好だった。そして、シリウスと対面するなり手に持って居た薄い冊子を渡した。

「これは……?」

「決して、アダルト雑誌では無いぞ? クロスワードパズル集と数独集だ。それなりに難しいのを選んできた。これで暇を潰すといい」

 シリウスは冊子を受け取るなり、中身を見る。確かに一筋縄では解けなさそうな代物だった。

「これを渡すためだけにどれだけ時間を無駄にしたか思い知って欲しいものさ。2時間はこの冊子を調べられた」

「……あぁ、えぇっと、それはすまない。それより、なんで今日はそんなしっかりとした格好で? 遂に私の母が亡くなったのか?」

「いや、彼女はもう3年ぐらいは生きそうだ。介護するこっちの身になって欲しいよ。……今日は万聖節の前日(ハロウィーン)。即ち、魔法戦争の終結日でありポッター夫妻の命日だ。ちょっと追悼の式に出席して来てね。私自身、ポッター夫妻と関わりがあったし」

 その言葉を聞いてシリウスは打ちのめされる。

「──即ち、君の悲劇があって丁度1年とも言えるね。」

「……私の所為だ。私が秘密の守人を変えた所為で……ジェームズも、リリーもヴォルデモートに殺されてしまった。ハリーは親の元で育つ事が出来なかった」

 シリウスはそう後悔の念を語り出した。その語りの時には既にオフィーリアは紙煙草をふかしていた。

「まぁ、全てのタイミングが全て等しく最悪だったんだ。君が秘密の守人を変えたのは最後のトドメに過ぎなかった。ヴォルデモートに予言を伝えた者も居たし、ヴォルデモートと言う存在を育てる環境を生み出してしまった人も居る。

 ヴォルデモートその人を産んだ母親も居たのだし。そうやって不幸の連鎖が積み重なってしまったんだ。君が悪いのは……まぁ、精々最後の1%だけさ」

 オフィーリアは珍しく、人に寄りそうような発言をした。

「貴女は……なんだい? 修道院にでも入ったのかい?」

「人をただの非情な輩だと思われちゃ、迷惑だ。少しばかり君の境遇を憐れんであげただけだ。……アズカバンなんて私だったら3時間も耐えられない。それを1年間、正気を失わず、狂気に呑まれずに過ごせている。並々ならぬ精神力だと私が、評価してあげよう」

「そうかい……」

「後学の為に、アズカバンでも正気を保つ方法を教えてくれないかい?」

 オフィーリアはまた冗談を口にした。

「貴女はアズカバンに入る予定でもあるのかい?」

「無い方がありがたい。けれども、目前に冤罪によってぶち込まれてた人が居ると少々、この魔法界の司法制度が怖くなってくる。

 私の持論だが、魔法界はマグル社会を見習って三権分立をした方がいいと思う。まぁ、イギリス魔法界にマグル界ほどの民度や道徳心は存在し得ないのだから、恐らく1000年かかっても無理だと思うが……」

 オフィーリアの言葉をあまり聞かずにシリウスは少し悩んでいた。そして、少しして言葉を発した。

「……私が、アズカバンでも正気を保っている方法。それは、自分が無罪であると信じて疑わない事。それと、少しの小細工」

 シリウスがそう言った途端、オフィーリアはすぐに察しがついたようで笑った。

「君はやはり天性の才能ってのがあるよ。……けれども、そう言うのがあるから若干、お仲間からの信用度が低いのではないか?」

「……もしかしたら、そうかも知れない。それは反省する」

 オフィーリアはシリウスの反省を傍目で見ていた。

「そう言えば、今日の追悼の式でダンブルドア校長先生様に話しかけられたさ。彼は私にシリウス・ブラックの様子は如何か? と聞いて来た」

「そ、そうなのか……どうだった? ダンブルドアは私の事を疑ってそうかい? 私が本当にマグルを殺した殺人鬼だと思っている様子だったか?」

「まぁ、君があの犯罪をしたと確信している8割。2割は君が世間一般言われている所業をしたとは信じきれて居ないご様子だった。彼はいつもならばなんでもお見通し。と言う表情をしている癖に、今回ばかりは慎重に動いているようだ。珍しい話だな」

 シリウスは落胆した。ダンブルドアが、自分を無実だと信じてくれているならばなんて楽だったのだろう。と強く思った。

「そう言えば、貴女はいつだってダンブルドアの事を憎らしそうに語るが……どうしてだい?」

「……ただの同族嫌悪に過ぎない。──それよりも、面白い情報を与えてやろう。あの追悼の式には、かのセブルス・スネイプ現魔法薬学教授殿も来ていらっしゃった」

 オフィーリアは一気に話の方向転換をするが、そちらの方がシリウスの注意を十分に引ける話題だった。

「アイツッ! ……あいつの所為で何人か命を落としているって言うのに……」

「面の皮が厚いって言うやつだろう。彼は確かに魔法薬学では優秀だったが、その後の所業を考えるとあまりにも評価出来ない。まぁ、かの決意が本当のものであれば……まぁ、いいか」

 オフィーリアは意味深な事を言ったが、シリウスはスネイプに対してキレ散らかしていた為に話を聞いて居なかった。

「さて、2日後にはスイスのジュネーヴで執り行われる国際魔法薬学会にて研究発表をしなければならないんだ。幸いな事にドイツ語もフランス語もイタリア語もそれなりにできる方でね、ロマンシュ語*7と言うのは最近になって初めて知ったんだが……。マイナー言語のようだし、私が気にする問題でも無さそうだ。

 あぁ、忘れず毎週火木に上下水道管へ点検員のフリをして入っているさ。成果らしい成果はないけど……。取り敢えず、また今度。ピーター・ペティグリューが見つかるまで、どうか正気を失わないでくれよ」

 そう言ってオフィーリアは今度は煙草を捨てる事無く、吸いながら立ち去った。

 

 

【1983年9月5日土曜日】

「久しいね、大量殺人犯シリウス・ブラック。……誠に申し訳ないんだが、今日は様子を見に来ただけで少々時間が無いんだ。君の聞きたいことについて全て答えてしまうと、ピーター・ペティグリューについての情報は本当に特に何も無い。

 私は実にこの1年と数ヶ月間で数百キロの上下水道管を歩いて回ったが、本当に成果が無い。人生の中で人生を歩まされている気分だ。

 ついでに言うと私は昨今、忙殺される勢いで仕事が降って来ている。給料があるから嬉しい気持ちがあるが、それでも忙しいちゃありゃしない」

 オフィーリアは実にここまでの言葉を一息で言ってしまった。

「正直に言うと鼠の動物もどき(アニメーガス)ピーター・ペティグリューを見つけ出すだなんて無理な注文だと思う」

 シリウスはオフィーリアからの言葉に実に悩ましてしまった。

「私としてはハリー・ポッター君がホグワーツに入学してくる年が肝だとは思う。ただ、それまで君の精神は耐えられないだろう? ……何処か、心当たりは無いのか? 例えば……そうだな。彼の実家や隠れ屋とか……」

「一応、実家も隠れ家も知っているが……奴がそこに居るかは……」

「まぁ、情報はあるに越したことない。いいから教えてくれ。私はあと10時間後にはブラジルのアマゾンの熱帯雨林にある、カステロブルーシューに魔法省の役人連中と共に視察に行かなければならないんだ。

 ポルトガル語にはあまり触れて来なかったが、あまり心配する事はない。それよりも、そのカステロブルーシューがアマゾンの熱帯雨林のどこなのかが分からない事が問題なのだ。ほんと、まじでふざけてるよな。」

 オフィーリアがそう愚痴っている間にシリウスはクロスワード集の切れ端にピーター・ペティグリューの実家の住所と隠れ家の住所を書いた。

「へぇ、実家がケント州のメードストンか……ふーん、なるほど。んで、隠れ屋がゴドリックの谷から10マイル*8園内。つまりはイングランド西部地方。なるほど、カステロブルーシューから帰って来て時間に余裕を見つけて行ってみる。何か手がかりがあるかも知れない」

「あぁ、色々とすまない」

 そうシリウスが言った頃にはオフィーリアは立ち去って居た。今回、オフィーリアは本当に急いでいたようで、煙草を吸わずに立ち去った。

 

 

【1984年2月29日水曜日】

「やぁやぁ、大量殺人犯のシリウス・ブラック。今日は珍しく、ロンドンは天気が良かった。ここはいつ訪れても気が病む程には天気が悪いが……」

 オフィーリアはいつも通りのテンションでシリウスの目の前に現れた。今度は煙草を咥えながらやって来た。

 シリウスはすっかり痩せこけて居た。しかし、その灰色の瞳に正気は残っているようでオフィーリアをはっきりとした眼光で見つめて居た。

「……ピーターの動向は……どうだい?」

「全く掴めずまま……だ。あぁ、ペティグリューの実家があるケント州のメードストンに行って彼の母君に会って来たさ。母君は1980年に夫を亡くし*9、すっかり傷心し切って居た時にピーター・ペティグリューが友人によって爆殺されて随分と病んでいる様子だった。昼だって言うのに、部屋のカーテンをびっしりと締め切ってしまって……。」

 オフィーリアは大層不憫そうに語った。

「ただ、やはり彼女の前にピーター・ペティグリューは現れて居ないようだった。それどころか、私の姓がブラックだと知るとすっかり気が動転してしまって、追い出されてしまった。……まぁ、しょうがないさ。ブラック家にまともな人間なんてドロメダ姉様以外、居ないに等しいんだ」

「あぁ、確かにそうだな。……隠れ家はどうだったか?」

「隠れ家の方だが……本当に何も無かった。もぬけの殻。と言う表現が正しいか……なんにも情報が無い。捜査は行き詰まり。迷宮入りっといった具合だ」

 そう言ってオフィーリアは煙草の煙を吐き出しながら、一緒にため息も吐き出した。

「私の疑問ではあるのだが……ピーター・ペティグリューはもうイギリスに居ないのでは? 例えば、ドイツの黒い森(シュヴァルツヴァルト)だったり、アルバニアの森……ソビエト連邦にあるシベリアの森……は、流石に寒すぎて無理か。他には中国湖南省の武陵源(ぶりょうげん)なんかに行って仕舞えば、私達の追跡から確実に逃れられる……」

「いや、ピーターはイギリスを出ない。奴は臆病者だ。他国に行くなんてリスキーな事はしない筈だ」

 シリウスは即座に否定した。オフィーリアは「まぁ、確かに臆病な鼠はドーバー海峡を越えられないか。」と言いながら煙草の煙を吐き出した。

「じゃあ、誰かの家のペットになっている。と言う仮説はどうだい?」

「そ、そこまで人間性は捨てて無いんじゃ無いか……?」

「……追い詰められた人間とは、人間性を簡単に捨てられるモノだ。実際、ピーター・ペティグリューは周囲に居たマグルを13人吹き飛ばしてその罪を友人であった筈の君に押し付けたんだ。彼がそこまで人間性を捨てて居たとしてもなんら疑問には思わない」

 オフィーリアはそう冷笑した。

「──まぁ、取り敢えず今まで通りの調査方法は継続しよう。いい結果がすぐに出るとは期待して欲しく無いモノだけど……。あ、そう言えばドロメダ姉様の娘っ子のニンファドーラちゃんが遂に来年度にホグワーツへ入学するようだ。おめでたいね」

「人の名前を覚えているなんて貴女にしては珍しいな……」

 シリウスは大層、感心したような表情になっていた。

「君に会う数時間前、丁度会ったからな……。あの子はとても快活でいい子だったよ。きっと、グリフィンドールかハッフルパフに入るんじゃ無いか?」

 そう言ってオフィーリアはケラケラと笑い、煙草の煙を吐き出した。

「まさか、ニンファドーラと会う時にも煙草を吸って居たわけじゃ無いよな?」

「流石に吸ってない。未来に光溢れるお子ちゃんの前で煙草を吸うほど私の精神は腐って居ないさ」

 そう言うとオフィーリアは、立ち上がり部屋にある小さな小さな小窓の外に広がる荒れ狂う海を見始めた。

「……いつ来ても思うのだが、本当にここは人間の住む場所じゃ無い。人の幸福を吸い取る化け物と、幸福を吸い取られても構わない程度には凶悪な犯罪を犯した魔法使い。なんて素晴らしい関係性! そう宣った輩の頭の中に、マグルが国際連合総会とやらで打ち立てた世界人権宣言をぶち込んでやりたいものだ」

 オフィーリアはそう皮肉混じりに言った。

「ま、その世界人権宣言なんて言う高尚なものを打ち立てたマグルも、理想通りに行かないご様子だが……魔法界よりはずっとマトモに社会は動いているだろう」

「貴女は本当に不思議な人だ……」

「自分が不思議な人という自覚はある方だが……一応、問おう。どこがかい?」

 シリウスの呟きにオフィーリアは振り返って聞いた。

「……貴女は昔からブラック家の家系図からは抹消されず、かつあのベラトリックスに邪険に扱われない程度の態度を見せている。

 だからと言って純血主義では無い。マグルの社会構造を真面目に勉強している様子だって見受けられるし、マグルの趣向品を嗜んでいる。

 そして、すっかり家系図から抹消された私を気にかけてくれている。……こ、この際、聞いてしまいたいのだが……貴女の本心は一体どこにある?」

 シリウスがそう聞くとオフィーリアは大声で笑い出した。狂ったように笑い出した。腹を抱えて笑い出した。シリウスは困惑した様子でそれを眺めていた。

 5分程度は笑って居ただろうか。オフィーリアはやっと笑うのをやめ、長くなって居た煙草の灰を床に落としてからシリウスと対面して座った。

「人の心とは実に単調でつまらないものだ。生まれながらにして他者の感情、思想、胸中が手に取るように分かる私にとっては尚更の話だ」

 オフィーリアは、心底つまらなそうにそう語り出した。

「これは私の持論に過ぎないのだが……ブラック家の人間は皆、こぞって他よりも単調だ。

 ……確かに、激情に飲まれがちで不安定な精神を有しているのは事実として存在する。ただ、その激情も私にとっては風の無い日の湖が如く平らだ。それを扱うのはレタス食い虫を踏み潰すより簡単な話だ」

「……だからこそ、あのベラ姉様の感情をコントロールして私に対して悪い印象を受けさせないようにすることも可能だ。それは他のブラック家の面々に対しても同様に。君の母君であるヴァルブルガ・ブラック夫人だってそうだ」

 そこまで一切り語り終えると一旦、煙草を吸った。

「私にとって人生とは2度繰り返される物語のように酷く退屈なものだった。けれども……そんな私の人生の中でも。君は、君達は非常に面白かった。君達の悪戯はどれも最高だった!」

 オフィーリアは恍惚とした表情で語った。いきなり、大きな声をあげるものなので、シリウスはびっくりしてしまった。

「私は自分がなんでも一歩先を知っていて、世界とは全て定められた筋書きによって動いていると思い込んでいた。先ほども言った通り、私にとって人生は繰り返される物語のようなものだった。

 それに、実際、私には私のこの忌々しい瞳にはその筋書きが全て見えてしまったからね」

「──しかし、その思い込みは君達によって破壊された! 君達の行動はいつでも私の想像を凌駕したんだ。私は初めて人間を面白いと思ったんだ。それでいて、君達にはダンブルドアのような不快感は無い。私は君達を気に入ったんだよ」

 オフィーリアは、今までに誰にも見せた事が無いような笑みを浮かべた。シリウスはすっかり話に付いていけない。と言う様子を見せて居た。

「……貴女は何故、そこまでダンブルドアに不快感を覚えているんだ?」

「あの老人の瞳は、鏡に映る私の瞳と色は違えどそっくりだ。……なんでも見通す憎たらしい瞳を持っている。前も言っただろう? 『ただの同族嫌悪に過ぎない。』って」

 オフィーリアはそう憎たらしいような口調で言った。

「そう言えば、貴女はヘンリー・ローズブレイドの事を気に入っている様子だったが……まさか、同じような理由で?」

「そうかも知れない。彼はまた秀才だ。私の思考を凌駕する能力を持っていると思う。私は自分がクラブ長として魔法薬学クラブを私物化し、メンバー集めをする時。まず目に入ったのが彼だった」

「彼の能力は確かに、世間的に見れば私よりは劣っている。それどころか、彼は学年で1番にはなれなかった。

 けれども私は、彼が私以上の何かを持っていると確信したんだ。その確信は途轍もない程に適当な確信であり、どうせ言語化なんか出来ない代物なんだろうけれども」

 やけに饒舌なオフィーリアをシリウスは驚いた表情で見ていた。

「なんだ? 人の顔をそんなに見て。蠅でも居るのか?」

「いや……その、貴女がまるで恋する乙女のような事を言っているのに……驚いて……」

「恋する乙女? シリウスのお坊ちゃん。冗談はよしてくれ。私は別に彼に対して恋心を抱いている訳では無い。と言うより、この27年間の人生で恋だの愛だの友情だの……そう言った陳腐な感情を理解した事は無い。それによっぽど特殊な事が起きない限り、永遠に理解出来ないだろう。」

 オフィーリアはまさに、その恋や愛。友情を軽蔑するような笑みを浮かべた。暫く、軽蔑の笑みを浮かべていたが表情を元に戻した。

 

「実を言うと魔法薬学クラブのメンバー集めをしている時、私が重視したのは魔法薬学の能力よりも人間的な面白さだった。魔法薬の腕は二の次だったんだ。」

 そう前置きしてからオフィーリアはまた語り出した。

「リリー・ポッター……当時はエバンズか。彼女も面白いと思った。誰に対しても愛を持って、何処か期待したような態度で接する事が出来る」

「こんな、精神が腐り切っているような私に対しても、先輩としての尊敬の念を持って接してくれた。……彼女は正に人間の善性をてんこ盛りにしたような人間だった。この世界に生きる人間として、珍しい存在だ。絶滅危惧種だ。保護しなくてはと思った。」

「セブルス・スネイプは確かに純血主義と言う一般的に言うと邪悪な思想を抱いて居た。しかし、その根底にあるのはコンプレックス、自己矛盾。そして、笑ってしまうほどのダブルスタンダード……」

「──その心は実に歪で……実に、美しいと思った。あれほどまでに複雑な情緒を同時に成立させれたのは、中々の才能では無いか? ……勿論、悪い意味で」

 ケラケラとした独特な笑い声をオフィーリアは上げた。

「先ほどから話に出ているヘンリー・ローズブレイドは、当初。自分が1番優秀だと思っているような人間だった。しかし、ホグワーツ生活でその虚栄心に近い思想は全方向から打ち砕かれ、崩されたんだ」

「それで、彼は一体何をしたと思う? ただ直向きに努力を続けたんだ。私は、無駄な努力というものは極限まで省いた人生を歩んでいたモノでね。彼のその行動は意外性があって面白かった。いつ、その無駄な努力を止め、絶望するかが楽しみで楽しみで仕方が無かった」

「しかし、彼のその高尚な心は絶望する事を許さなかった。……彼は今も尚、努力の道を諦めていない。実に滑稽で……そして、何よりも尊敬出来る」

 

 シリウスは心底、オフィーリアを怖いと思った。

 自分はそれなりにオフィーリアと付き合いが長く、つかみどころが無い。と形容されるオフィーリアの事を少しでも知っていると思って居た。しかし、それでもオフィーリアは自分の想像を上まわったのだ。

「私はその後、君達シリウス・ブラックとジェームズ・ポッターも勧誘しようと思った。ただ、勝手にそっちからクラブに入りたいという申し出があったもんでね。

 ──まぁ、それでいいだろうって思って私はその申し出を受理した」

 オフィーリアは自分の記憶を丁寧に振り返るように語っていた。シリウスは吸魂鬼の側に居るよりも、オフィーリアと話していた方が正気を失われると本気で思った。

 

「勿論、君達とセブルス・スネイプが犬猿の仲であり、呪文を掛け合う仲と言うのも勿論、知って居た。

 人狼と言う社会的弱者すら受け入れる反権威的リベラルグループと、まともなお友達が居ない純血主義を掲げる排外主義者であり、死喰い人予備軍……」

「元々、両者は校内で度々対立していた。そんな両者を同じクラブのメンバーと言う同じ属性にしてしまえばどうだろう? 絶対面白くなると確信していたんだ」

「正直に言うと、私は争いを見て愉悦を感じると言う邪悪な性分を持っているし、その事を十分に自覚はしているからね。ま、流石にヴォルデモートの所業はドン引きするけど……」

 オフィーリアはそう言って邪悪な笑みを浮かべた。

「──さて、君は随分と動揺仕切っているようだし、私はこれで帰るさ。勿論、ピーター・ペティグリューの捜索は続けるつもりだ」

「ちょっと待て!」

 椅子から立ち上がり、外へ出ようとしたオフィーリアをシリウスは引き留めた。

「なんだい?」

「何故、私に自分の心の奥底にあるだろう感情を語ったんだ?」

「君はどうせ、命短いと思ってね。君は私の予想に過ぎないけれども……10何年ぐらいしか生きない。君もまた激情に呑まれやすいタイプだ。その激情によって死ぬだろうね。だから、君に伝えようが伝えまいがどうでもいいと思ったんだ。」

 そうシリウスに余命宣告をしたオフィーリアは涼しい顔をして、煙草を壁に押し付けて床に捨てた。そして「では、また数ヶ月後」そう言い残して立ち去った。

 

 

【1984年11月3日土曜日】

「これはこれは、大量殺人犯のシリウス・ブラック。お久しぶりだね」

 オフィーリアはいつも通りの態度でやってきた。シリウスは少々恐れたような表情でオフィーリアを見つめていた。

「そう恐れずとも……私は人を取って食ったりなんかはしないさ」

 そう言うといつも通り、ローブのポケットより煙草を取り出しふかした。シリウスはいい加減慣れてしまい、咳き込みはしなかった。

「ところで、大体先々月ぐらいにホグワーツに行く用事があったんだ。何処ぞの新米魔法薬学教授の代替を頼まれたからね。どうやら、彼の陰険さはご健在だったようで生徒。特にグリフィンドール生から悉く嫌われていた。全く、懲りないし大人気ない大人だよ。

 ……──それはどうでも良くて……私は生徒達の中で、鼠を飼っているような奇妙なご家庭は無いか聞き回ったんだ。すると、あの赤毛の……代々グリフィンドールの……えぇっとなんだっけ?」

 オフィーリアは頑張って思い出そうとする。ただ、シリウスにはすぐに見当が付いた。

「まさか、ウィーズリー家の事を言っているんじゃ無いよな?」

「あぁ! そうそう、ウィーズリー家だ。どうやらウィーズリー家では大体3年前から鼠を飼っているようだ。まぁ、その鼠をこの目で確認しない限り、決めつけるのは早計だが──……。」

「まさか、本当にアイツはそこまで人間として落ちたのか?」

 シリウスは物凄く引いている様子で話を聞いていた。

「私は鼠を飼っている。と言うウィーズリー家の息子に、その鼠を見せて欲しいと頼んだんだ。彼は素直に見せてくれると約束してくれた。……しかし、見せてくれると言ったその日に、鼠は猫に食われて死んでしまったようだ」

「はぁ!?」

 驚きでシリウスは大声がその口から飛び出た。

「彼の話によれば自分のベッドのシーツが少しばかり血だらけになっていて、鼠が居なくなっていたそうだ。だから、猫に食われたんじゃ無いか。と……」

「それは絶対に生きている! 奴は3年前と同じ手口を使ったんだ!」

「あぁ、私だって馬鹿じゃ無い。同じ事をしたものと確信して、城内を探し回った。ただ、考えてみてくれたまえ。あの城だ。ホグワーツ城だ。ロウェナ・レイブンクローが手によりをかけて作り出した城だ。

 頭のおかしい構造物がありすぎる。通常時であればただの愉快な仕掛けに過ぎないが……あの時ばかりはロウェナ・レイブンクローを呪った。……そして結局、ピーター・ペティグリューを見つけ出す事は出来なかった」

 シリウスは、大層落胆した様子を見せた。

「勿論、代替教授を頼まれていた期間。即ち、1ヶ月ほどはずっと鼠を探して回った。しかし、見つかる事は無かった」

「あぁ……忍びの地図があれば……」

 呟くように発せられたその言葉にオフィーリアはすぐに反応した。

「忍びの地図? なんだいそれは……まさか君達、あの頭のおかしい城の地図を作ったのか!?」

「あぁ……そうだとも。ホムンクルスの術を使って作り出した精巧な地図だ。あれがあれば……きっとピーターが何処に居るかは一眼で分かったのに……」

「そんな便利なものがあるならば先に言ってくれ! と言うか、そんな高度な魔法道具を在学中に作ったのか? マジか……凄いな……」

 オフィーリアは大層感心した様子を見せた。

「まぁ、そんな事があって……ピーター・ペティグリューは人の家に飼われている。と言う事が分かった。ただ、いくら私でも魔法族の家に戸別訪問して『鼠飼っていませんか?』だなんて馬鹿馬鹿しい。……という事で鼠用のお菓子なんかを制作してみたんだ」

「はぁ……?」

「きっと鼠を飼っていて愛して止まないその人ならば、このお菓子を買うだろう。私はこれを1週間前に作り上げ、昨日遂にふくろう通信販売に登録した。

 この鼠用のお菓子は自宅配送だ。つまり私は、注文を受けたら注文をした側の個人情報を受け取る事が出来る。それで、お菓子を送る。その後、少し経ってから『顧客満足度調査』とか銘打って、鼠の様子を問うんだ。その際に、鼠の指が欠損していないか確認する。

 もし欠損している鼠を飼っているご家庭があれば、何かしらの理由付けをして戸別訪問をする。そして何かしらの理由付け、例えば……病気になっているとか宣って、引き取るんだ。その後、変身解除呪文で正体を暴けさせれば良い。

 その後はそれなりに似ている鼠をロンドンの地下から探し出して、何事もなかったようにその鼠を飼っていた家に返せば良い。そして、私はピーター・ペティグリューを見つけました。シリウス・ブラックは無実です。そう言ってしまえば、君の冤罪は晴れる。」

 オフィーリアは自慢げに語ったが、シリウスは何処か納得言っていない様子だった。

「なんだか、こう……回りくどく無いか?」

「……それは分かっている。自分でも随分と馬鹿らしい考えだとは自覚している。しかし、これぐらいしか方法は思い付かなかったんだ」

 何処か、疲れた。と言う表情でオフィーリアは言った。

「それに、稀代の魔法薬学者がそれやっているって……なんか、周囲の人に引かれないか?」

「流石に偽名でやっている。マシュー・スティーブンスと言う鼠愛好家のご老人。と言う設定でやっているさ」

「それは……まぁ、良かった……」

「取り敢えず、果報は寝て待て。と言う事だ。ま、アズカバンのような劣悪な環境でまともな睡眠が取れるとは、私には到底考えられないのだが……」

 オフィーリアはそう言うとニヤリと笑って煙草の煙を吐いた。

「ただ、無駄な努力はしない派だったが……ここに来て、あんな事をするとは。鼠のお菓子作りの為に鼠が500匹弱犠牲になった。彼らに敬礼を忘れずに」

「貴女ってやっぱり色んな意味で怖いな……」

「そうかい?」

「ただ、ありがとう。私の為に色々としてくれて……」

「早く娑婆に出て、新鮮な空気でも吸ってまた私の予想を凌駕する事をしてほしくてね。ポッター夫妻は死んでしまった。

 セブルス・スネイプはダンブルドアに懐柔されて以来、つまらなくなった。まぁ、根本的な所は変わっていないが……普通にホグワーツで教授として職を得ているところがつまらない。彼には底辺という味の汁を啜って欲しかった。

 ヘンリー・ローズブレイドは面白いが、面白い人間は沢山いた方が愉快だ」

 そう言ってオフィーリアは煙草の煙を吐き出す。

「貴女は、禁煙ってものは出来ないのかい?」

「私はこれでも禁煙のプロだぞ? 今のところ14回は成功している」

「それは一般的には、禁煙出来てないって言うんだ!」

「……んまぁ、子供でも出来れば辞めるんじゃ無いか?」

「それはつまり、一生禁煙しないって事か」

 シリウスはすっかり落胆していた。そんな中、オフィーリアは煙を吐き出した。

「……さて、私は3ヶ月後に開かれるフランスのボルドーで行われる魔法薬学会の準備をしなくてはいけなくてね。帰らせてもらうよ。」

 オフィーリアはいつものように煙草をポイ捨てして帰って行った。

 

 

【1985年11月17日日曜日】

「おやおや、お久しぶりだね、今日もまた大量殺人犯のシリウス・ブラック」

 オフィーリアはシリウスの元に訪れる。1年前に会った時よりも随分と弱っているように見えた。

「いや〜申し訳ないね……。本当は今年の8月ぐらいに訪れてやりたかったんだが……酷く忙しかったんだ。随分と空いてしまった。元気?」

「あまり……元気では無い……。ピーターは?」

 オフィーリアは頗る不憫そうな表情になった。

「それが、一切手がかりが無い。確かに、売り出した鼠用お菓子は鼠を飼っている奇妙な界隈にヒットはした。しかし、どの鼠も指は欠損していなかった」

「ヒットしたんだ……。それでも、ダメだった。っと……」

「あぁ、そうだ。私だって忙しい合間を縫ってどうにか、顧客満足度調査で送られてきた鼠の写真には全て目を通した。しかし、どの鼠もただの鼠だった。私は見落としなどはしていない。

 つまり、ピーター・ペティグリューはマグルの家庭に逃げ込んだか、上下水道管生活に戻った。若しくは、鼠状態のピーター・ペティグリューを飼っているご家庭が、貧乏で鼠用お菓子を買っていないか。それのどれかだ。……全く、私にとってはお手上げ状態だ……」

 オフィーリアはまたいつもの通りに煙草をふかし始めた。

「……そう言えば、あのヘンリー・ローズブレイドと今度、イングランドの北方でスコットランドのすぐ手前にある『呪われた森』に行ってみよう。って言う話になったんだ。その森はあまりにも長年、人が立ち入っていないから珍しい薬草があると学生時代から睨んでていてね。

 あの森は鬱蒼としていて、昼間でも夜のような森であると聞いた。もしかしたらそこにピーター・ペティグリューが隠れ住んでいるかもしれない。鼠は上下水道管では無くたって生息している。森こそ、生物の生まれの地さ。森に還ったのかもしれない。」

「……その理論はあまり分からないが、ピーターが居そうな場所があるならそこを探して欲しい。」

 シリウスはあまり元気がない様子だった。

「そう言えば……ハリーの様子はどうか分かるかい?」

「ハリー? あぁ、ハリー・ポッター君ね。君から聞かれた時の為に何度か彼の住んでいるらしい、サリー州リトル・ウィンジング、プリベット通り4番地に向かって様子を伺った事はあるが……あまりいい環境では無いようだ」

「な!? やっぱり、叔父叔母家族にいじめられているのか!?」

「その通り。彼はネグレクトを受けているのか、いつもみずぼらしい格好をさせられている。かけている眼鏡だって螺子が緩んでもうすぐ壊れる。と言った代物だ。

 それに、外傷がいくつか見受けられた。それらを放置しているダンブルドアが信じられない。と私でも思った程度には酷い具合だった」

 シリウスは今にでも泣き出してしまいそうな表情になっていた。

「私が! 私が、秘密の守人を変えたばかりに!」

 そう嘆きの声を上げた。

「私の所為で、ハリーはそんな不憫な目に……」

「……一応、マグルの警察には通報したが……数日保護されて帰されていたね。なんでだろう?」

 オフィーリアは心底不思議がっている様子を見せた。

「ま、私から報告出来る事はこのくらいだ。全く、ピーター・ペティグリューは狡猾だ。彼、グリフィンドールよりもスリザリン寄りの人間だったんじゃないか?」

 そう問うが、シリウスはすっかり自分の行動を後悔し、ピーター・ペティグリューの所業に業を煮やしている様子で会話にはならなかった。

 オフィーリアはそんなシリウスと会話する事を諦めて、キリのいい所まで煙草を吸うとまたいつもの通り、壁に押し付けて消して床に捨てて帰って行った。

 

 

【1986年5月18日日曜日】

「御機嫌よう、大量殺人犯のシリウス・ブラック」

「……看守から今日来る面会者は、オフィーリア・()()()()()()()だと聞いたのだが……一体?」

 シリウスは当惑した様子でオフィーリアに聞いた。オフィーリアはゆっくりと面会者用の椅子に腰掛けた。

「私は確かにヘンリー・ローズブレイドに籍を入れたが、これは魔術的な細工を行う為にした事だ。つまり、愛があっての結婚では無い」

「へ? じゃあ、どう言う経緯で?」

「……あまり詳しく他人に語るな。とダンブルドア校長先生様に言われていてね。それに、私もその意見には賛成だ。だから、結果だけ述べよう。私達は子供を引き取った」

 そう言ったオフィーリアの表情は、シリウスが今までに見た事が無いほどに平穏で幸せそうだった。シリウスは2つ意味で驚いた。

「ど、どんな風の吹き回しで?」

「だから、それは誰にも語るな。とダンブルドア校長に強く言われているんだ。ただ、名前は教えてあげるよ。シルヴィア・ネクロタフィオって言う子だ。……あの子は可愛らしい子でね。人の悪意や作為などに一切触れずに生きてきた子なんだろう。純粋無垢で清らかな心を持っている。そして何よ──「ちょっと待てくれ!」

 シリウスがオフィーリアの話を遮った。オフィーリアは非常に嫌そうな表情になった。

「何?」

 怒気を孕んだ声だったが、シリウスは物怖じせずに疑問を投げかける。

「ネクロタフィオって……あのネクロタフィオ? 『墓場の君主』の? もう500年近く前にネクロタフィオ家はそれこそ、ローズブレイドって名前を変えた筈じゃ?」

「シリウスの坊や? 今は、細かい事はどうでもいいんだ。……それよりも聞いておくれ、あの子を見ていると心が浄化されるような気分になるんだ。あの子を引き取って以来、私の今までのモノクロの人生が一気に色鮮やかになった」

「多分、あの子は天の使いかなんだと思う。天使じゃなかったとしても、あの子は私の天使であり女神だ……」

「どうか、あの子には幸せになって欲しい。──されど、摂理(かみ)は決してそれを赦さないようだ……」

「あぁ、神よ、天の主よ、我らの父よ……または、運命の女神(モイラそれかフォルトゥーナ)よ……この際、あの癪に障る老人(ダンブルドア)でも良い。神でも人間でも亡者でも。この際、誰でもいい。あの子を救い給え……」

 オフィーリアはシリウスの言葉を殆ど無視して、引き取った子、シルヴィア・ネクロタフィオについて延々と語り始めた。そして、最後には祈り始めたのだ。シリウスはそんなオフィーリアを見て、ただただ困惑を深めていた。

 

「あぁ、シリウス。君に言っておきたい事があるんだった。」

「な、何だ?」

「私は近いうちに死ぬ。具体的に言えば、半年後にはこの世に居ないと思う。」

「は!? ……どう言う事なんだ?」

 オフィーリアは満足そう自分の余命宣告をした。シリウスはすっかり困惑してしまった。

「……いいから、私とヘンリーは死ぬんだ。これで、ブラックの名を持つ人は2人になる。君はどうせ結婚なんてしないだろうし、これでブラック家は断絶だ。……悲しいやら嬉しいやら」

 殆どシリウスの問いに答えていなかった。オフィーリアのその灰色の目は何処か酔ったようなものだった。

「私は、あの子と出会って初めて……愛を知ったんだと思う」

 オフィーリアはそう続けた。

「私が死んだら……君に手紙が行くようになっている。ドロメダ姉様に頼んでおいたんだ。彼女、嫌がっていたけど手紙を届けるだけだから。って言ったら渋々了承してくれた。シリウス。君の無罪を証明する事が結局出来なくて申し訳ないとは思ってる。

 けど、君は……いつの日か自分の手と足で無実を証明する事が出来ると思う。君達の悪戯は最高に面白かった。君はそのセンスでハリー・ポッター君を楽しませてやってくれ」

 そう言うなり、オフィーリアは立ち上がった。

「貴女は……煙草をやめたんだな……」

「そりゃあ、子供が居るんだ。煙草は体に悪いから、子供の手から離した方がいい」

「……なんで、自分が死ぬって分かったのか?」

「私は勘がとても優れていてね。お母様もお父様だってそうだった。2人は晩年、自分の死期を悟って心を病ませていた。

 ……私だって、死にたく無い。あぁ、こんな感情を抱くなんてな。けど、私は……あの子の、シルヴィアの成長を見守ってやりたい。

 けれども、どうやら私にはそれは出来ないそうだ。けど、シルヴィアは……──まぁ、成人ぐらいはしてくれると信じている。成人すらも……少々、危なっかしいけど……」

 オフィーリアの灰色の瞳には、確かに涙が浮かんでいた。

「じゃあ、シリウス。君が健やかに生きてくれる事を切に願っているよ」

 オフィーリアは、シリウスが今まで見た中で1番穏やかな表情でそう言い、立ち去った。

 そうして、シリウスは1人になった。

 

 

【1987年1月25日月曜日】

アズカバン監獄 受刑者シリウス・ブラックへ

 お久しぶりです。アンドロメダ・トンクスです。私は正直、貴方の所業を恐ろしいと心底思っていますし、それが故に手紙に長文を書きたくありません。

 簡潔に述べます。オフィーは半年前に結婚したヘンリー・ローズブレイドと共に1986年12月25日に亡くなりました。ダンブルドア校長から連絡があった時は驚きましたが、確かに亡くなったそうです。死因は教えてくれませんでした。

 確かに12月26日には葬儀を執り行い、彼女達の遺言書通りに『トワイグフェレスト』と言う廃村にある廃教会の墓地に埋葬されたそうです。埋葬はダンブルドア校長とその他、ホグワーツ教授達の手によって行われたようで私は詳しく知りません。

 オフィーは生前、自分が死んだらシリウス・ブラックに一筆手紙を書いて欲しいと言っておりました。私はその遺言に従ってこの手紙を書きました。返信は不要です。

 さようなら。

 アンドロメダ・トンクスより

 

 

 

【1993年7月28日水曜日】

「あぁ……やっと見つけだぞ! あいつは、あいつはあいつは。ホグワーツに居たんだな!?」

 そう半狂乱で笑い続ける黒髪の男が居た。すっかり痩せこけて目の隈は濃くはっきりと刻まれて居た。

 男の座っている床には新聞紙が落ちて居た。

 

魔法省官僚 グランプリ大当たり

 魔法省・マグル製品不正使用取締局長、アーサー・ウィーズリーが今年の『日刊予言者新聞・ガリオンくじグランプリ』を当てた。

 喜びのウィーズリー氏は記者に対し「この金貨は夏休みにエジプトに行くのに使うつもりです。長男のビルがグリンゴッツ魔法銀行の『呪い破り』としてそこで仕事をしていますので」と語った。

 ウィーズリー一家はエジプトで1ヶ月を過ごし、ホグワーツの新学期に合わせて帰国する。ウィーズリー家の7人の子供のうち5人が現在そこに在学中である。

 

あぁ……やっとやっと……やっとだ! あぁ、12年間もこの時を待ったんだ! このアズカバンで! 殺そう。殺してやろう!

 

 男の悍ましい、喜びの叫び声は北海の荒れ狂う波に打ち消された。

 

 

 

 

【1993年7月29木曜日】

ブラック、アズカバンを脱獄か!?

*1
(リーマスという名前はローマ帝国の建国者で狼と馴染み深いロムルスとレムスを連想させる)

*2
(ルーピンという名字は「ルパン」と読める。と言うかそっちの方が正しい)

*3
(政府統計(『Discover Water』)によるが、いつのデータかは不明 )

*4
(シェイクスピア)

*5
(フォークランド紛争)

*6
(独自設定である)

*7
(スイスの公用語である。しかし、南東部にあるアルプス北山麓の渓谷地など極めて限られた土地でしか使用されていない(wikiより))

*8
(約16km)

*9
独自設定である




約20,000文字お付き合いいただき、誠にありがとうございました。

オフィーリアはベラトリックスやナルシッサ、アンドロメダの事を姉様。と呼んでいますが、黒姉妹の妹ではありません。また、シリウスの姉でも無く、シリウスとは従兄弟です。黒姉妹とは従兄弟(シリウス)の従姉妹という関係性です。
学年的には、ベラ、ドロメダ、シシー、オフィーリア、シリウス、レギュラスと言う順番です。

次回は本編入ると思います。多分。けれども、投稿日は不明です。許してください
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