呪いの少女と祝福された世界   作:佳山針之介

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第33話 城内侵入

 シルヴィアはここ最近、ルーピンの為に完全脱狼薬の研究に勤しんでいた。

 スネイプやダンブルドアを伝って、シルヴィアの宿題提出が滞る事は各教科の教授に伝えられていたので、何も恐る事は無かった。しかし、シルヴィア自身自分はあまり頭が良くないタイプである事は十分承知していた。

 最近では記憶力はだいぶ良くなった(十中八九、薬を飲むのをやめたからだ)のだが、それでも怪しい部分があった。

 復習を続けなければ定着しない。

 シルヴィアは大真面目に今まで出された宿題を進めていた。勿論、ハーマイオニーの手伝いがあってこそ出来た話だ。(ただ、ハーマイオニー自体、忙しくて堪らないらしいのであまり手伝いを頼めない)

 変身術と魔法史は特にシルヴィアの苦手科目だったが、それに今年からはマグル学が追加された。

 

 確かに、シルヴィア自身、マグル学で学ぶ内容は大いに興味深ったし、バーベッジの教え方も悪くなかった。

 ただ、やれ歩いている人から見た、箒で移動している人の速度を計算で割り出せだの。物を持ち上げる際の力のかかり具合を計算で割り出せだの。塩を示す英語一文字を覚えろだの慣れないシルヴィアにとっては難しすぎる話だった。

 スリザリン寮で数少ないマグル学受講者であるアイザック・サザランドやヴァージル・マグワイアとも仲良くなり、その過程で2人は結構丁寧に教えてくれた(ヴァージルの言っている事はいちいち難解なので分からなかったが、少なくともアイザックの教え方は悪くなかった)ので、3分の1程度は理解出来た。

 

「ところで、シルヴィア。第1回目のホグズミード行きが決まったわよ。ハロウィーンのその日らしいわ」

 掲示板を見て来たダフネがシルヴィアに話しかけて来た。後ろにはいつも通り、パンジーとミリセントも居る。2人はホグズミードに行って、あれに行きたい、これに行きたいと盛り上がっていた。

 シルヴィアは丁度、天文学の星座図を仕上げていた。

「ホグズ……なんて言った?」

「ホグズミードよ。シルヴィアは知らないの!?」

 パンジーが信じられない! と言いたげな口調で言った。知らないものは知らないのでシルヴィアにはどうしようもなかった。

「そ、その……ホグズミードって……何なの?」

「イギリスで唯一の完全にマグルが居ない村よ。ホグワーツの程近くにあるの。ハニーデュークスって言うお菓子屋だったり、ゾンコって言う悪戯専門店。後は、ダービッシュ・アンド・バングズ魔法用具店も欠かせないわね。そんな店が軒を連ねている村よ。」

 シルヴィアは「へぇ〜」っと若干興味なさそうに呟いた。

 今のシルヴィアにはホグズミードという村より、天文学の星座図でズレた所に書いてしまった火星を消す作業の方が重要なのだ。

 

「ハニーデュークスのお菓子はどれも個性的でな……楽しみなんだ」ミリセントが涎を垂らすのではないか。と言う様相で言った。

「私は、マダム・パディフットの店に行ってみたいわ。店の内装がとっても可愛いんだって!」

「いやよ。あそこ、少女趣味がいき過ぎている店だって聞いたわよ?」

 パンジーの意見を咄嗟にダフネが否定した。ダフネは皮肉屋なので、若干パンジーと相性が悪いのだ。しかし、よくある事なので誰も気に留めない。

「……シルヴィアはちゃんと許可をもらったの?」

「許可?」完全に初耳だったので、星座図から顔を上げて3人に問いた。

「そうよ。貴女、もしかして届いた手紙全部読まないタイプ? 夏休みにマクゴナガルから来ていたじゃない。3年生からはホグズミード行きがあるから保護者から外出許可を貰いなさいって」

 ダフネが皮肉気に言った。

 確かに、読んでいない手紙が1通や2通あったかも知れない。

「許可貰っていないって……それ、結構ヤバいぞ?」

 ミリセントが焦り気味に言った。

 若干シルヴィアも焦り始めていた。今は忙しいとは言え、流石にみんなと一緒に娯楽を楽しめないだなんて悲しすぎる。……しかし、ある事に気が付いた。

「私って……親が居ないや……どうするんだろう、これ……」

「と、取り敢えず! スネイプの所に行ってみましょう! 特別に許可が降りるかも知れないわ。」

「う、うん……そうだね」

 シルヴィアは未完成の星座図を片して、3人と共に寮を出た。

 

 

「その事だが、7年前に君の養父母より許可のサインは受け取っている」

 そう言って、スネイプは引き出しから1通の手紙を取り出し、シルヴィアに渡した。シルヴィアはダフネ達が覗き込む中、封筒を開封して中身を見た。

 

 

 親愛なるアルバス・ダンブルドア校長先生へ

 私達は恐らく、今年末までの命でしょう。ですから、先にシルヴィア・ネクロタフィオのホグズミード行き許可書にサインをしておきます。

 3年生になったら、シルヴィアの所属寮の寮監に渡してください。よろしくお願いします。

 オフィーリア・ローズブレイドより

 

 オフィーリアの字は癖が強く、お世辞にも綺麗とは言えない……普通に汚い字だった。そして、封筒の中にはもう1枚紙が入っていた。

 

 わたくし、ヘンリー・ローズブレイドはシルヴィア・ネクロタフィオの養父として、ここに週末のホグワーツ行の許可を与えるものである。

 

 ヘンリーの字は何処か神経質そうな字だった。

「なんだか、シルヴィアの養父母さん? は自分の死を予見しているみたいだけど……予見者だったりしたの?」パンジーが純粋な疑問を呈する。

「さぁ……知らないけど……」

 そう言ってからシルヴィアはチラリとスネイプを見た。スネイプは自分の養父母についてどの程度知っているのだろうか?

「確認が出来たのならば速やかに立ち去れ。我輩も暇では無いのだ」

 スネイプにとって封筒諸共掠め取られてしまい、部屋から追い出された。

 

「ま、ホグズミード行きを許可されている事が確認出来ただけでも十分、ここに来た意味はあったってわけよ」ミリセントがそう言って丸くまとめた。

 

 

 来るハロウィーンの朝。シルヴィアもダフネもいつも通り寝坊した。ミリセントやパンジーは先に行ってしまっているようだった。

 

「ま、私達もボチボチホグズミードに行きましょ」

「うん、そうだね」

 2人ともいつもの週末通りにのんびりと身支度を済ませて、少々のお金を携えて寮を出て行った。

 

 城外はすっかり季節が変わっているようでダフネは「マフラー持ってくれば良かったわ……」と後悔の念を表明していた。

「ダフネはホグズミードでどこに行きたいの?」

「そうねぇ……取り敢えず、全部見たいかも。三本の箒のバタービールは他と違って美味しい。って聞いたし、叫びの屋敷って言うイギリスで1番恐ろしい呪われた幽霊屋敷も気になるわ」

 シルヴィアは一気に背筋が凍った。

「な、なんでそんなホラースポットが学校近くの村にあるの?」

「魔法界だからじゃない? あ、あとハニーデュークスでお菓子をアストリアに買ってあげたいわ」

「アストリアって……ダフネの妹さん?」

「えぇ、そうよ。そうね……シルヴィアにはなんやかんやあって紹介出来ていなかったわね。貴女、中々に忙しそうにしていたし。一体、宿題返上で何をやっていたのよ?」

 ダフネの追及をどう逃れようかとシルヴィアは考え込んでしまった。

「まぁ、言えないならそれでいいわよ。人には1つや2つぐらい隠したい事があるだろうし」

 都合よくダフネはそう言ってくれたので、シルヴィアは本当に助かった。

 

 その後、寒々しいホグワーツの校庭を抜けてホグズミードへ向かう道を歩く。3年生以上の生徒達は皆楽しそうに歩いていた。

「けどさ……ダフネ。思ったんだけど、今ってシリウス・ブラックが脱獄してどこかをほっつき歩いているんだよね? ホグズミード村なんかに生徒出しちゃって大丈夫なのかな?」

「いくら世紀の狂人シリウス・ブラックでも、ホグズミード村には現れないでしょ。もしかしたら、ドーバー海峡をいつの間にか超えていてイギリスにすら居ないかも知れないわよ。」

 ダフネは心配しすぎよ。とシルヴィアに言った。

 そこで、シルヴィアは以前ルーピンが言っていたことを思い出した。自分の養母であるオフィーリアはシリウス・ブラックの無罪を信じていたらしい。

 ルーピンは当初、シリウス・ブラックに何かを吹き込まれたのだろう。と言う口調だった。しかし、今まで色んな人の意見を聞く限り、オフィーリアは誰かに嘘を吹き込まれるような人間では無い。それどこか、何もかもを見抜いている。

 そんな彼女がシリウス・ブラックの無罪を信じていた。一体、どう言うわけなんだろう。

 

「ボーッとしていると転ぶわよ」

 ダフネのその忠告は虚しく、次の瞬間シルヴィアは石に引っかかって転んだ。

「言わんこっちゃない……大丈夫?」

「あ、うん……」

 転んだシルヴィアの腕をダフネは引っ張り、シルヴィアは立ち上がる。

「ん? あれってシルヴィアの梟じゃない?」

 ダフネが指さしたその先には確かにシルヴィアの梟、オリビアが居た。オリビアはシルヴィアに気が付く事無く何処かへ向けて飛んで行っている。

「手紙も出していないのに……一体、何処へ行くのかな?」

「行ってみましょ。オリビアの恋人? 恋梟に会えるかも知れないわよ」ダフネが揶揄うように言った。

「お、オリビアに……恋梟!? そ、そんな……ありえ……あり得ない……」

「ありえーるかも知れないわ。さ、行きましょ」

 動揺しきってあたふたしているシルヴィアを引き摺るようにダフネは進み出した。

 

 暫く、オリビアの向かった方へ進めばそこは叫びの屋敷だった。

「叫びの屋敷が『叫びの屋敷』と呼ばれている所以を知っている?」

「えぇ? う〜ん……わ、分からないよ。夜な夜な誰かの叫び声が聞こえたからとか、そう言うありきたりな理由しか思いつか無いよ」

「まさに、そう。月に一度、狼の叫び声が聞こえたそうよ。まぁ、もう十何年前の話だそうだけど」

 シルヴィアはなんと無く叫び声の主人が想像出来てしまった。

「さ、中に入りましょ」

「え、不法侵入にならない?」

「ならないならない。さ、行ってみましょ」

「う、うん……」

 今日のダフネはやたらと元気がいい。シルヴィアは不思議に思いながらも、ダフネに腕を引かれるままに屋敷の中に入って行った。

 

 屋敷の中はボロボロで埃だらけでとても屋敷とは言えた物じゃなかった。どちらかと言えばボロボロの荒屋(Lv.100)と言う具合だ。

「ねぇ、ダフネ……もう引き返そうよ」

「折角、叫びの屋敷の中に入ったのよ。隅々まで探索しましょ」

「な、なんでダフネは今日はそんなに元気が──」

 微かに声が聞こえて来て、ダフネはシルヴィアの口に手を覆った。

 

────は確かにホグワーツに居るんだな!?

 誰か男が高揚したような声だった。シルヴィアもダフネも鳥肌が立って、その場に立ち竦んでしまった。

 シルヴィアもダフネも顔をガチガチになって顔を見合わせた。

 2人の悪い予想がどんどんと形作られていく。この声の主人はシリウス・ブラックだ。それも最悪な事に誰か協力者が居るらしい。

あぁ、決行日は今日だ! 今日にもアイツを殺してやる!

 ふと、扉が風に傾いて少し開いた。

 部屋の中には確かにオリビアが居て、そのオリビアは汚れきった髪がモジャモジャと肘まで垂れている男と対面していた。あれは確かにシリウス・ブラックだ。手配書で見た。

「オ、オリ──「大声出すんじゃ無いっ! 逃げるわよ!」

 ダフネに腕を引かれてシルヴィアは出口の方へ進み出す。

 2人とも走るのは遅い。すぐに息が上がる。しかし、シリウス・ブラックに殺される事無く、2人は叫びの屋敷から飛び出して人通りの多い通りに辿り着く事が出来た。

 

「い、生きた……生きた心地がしないよ……」

「ほ、本当に……本当にそうよ……」

 2人は息を上げて、近くにあったテラス席へ腰を下ろして、心臓の鼓動が落ち着くまで待った。

 

「……シ、シリウス・ブラックはなんて言ってったっけ?」

 シルヴィアはすっかり先ほどあった出来事が飛んでいた。

「ホグワーツに……誰かが居て。きょ、今日……その誰かを……殺すって……」ダフネは息絶え絶えに言った。

「そ、そう……そうだったね……」

 あの出来事でシルヴィアは完全にオフィーリアがシリウス・ブラックの無罪を信じていた。と言う事を、ただのオフィーリアの勘違いだろう。と言えるだけの根拠を手に入れていた。

「け、けど……どうして……どうして、オリビアが居たんだろう? それに、シリウス・ブラックも……梟と話せるのかな? それって凄く嫌なんだけど……」

 シルヴィアはもう自分に対しての偏見が増えてほしくなかった。

 ここで、シリウス・ブラックが梟語使い(アウルタング)(仮称)とでもなれば、蛇語使い(パーセルタング)と同じだ。また、自分に対する在らぬ噂が立つ。

「と、取り敢えず……ホグワーツに戻って大人に報告すべきだわ……。ハニーデュークスに行ってみたかったけど……今日ばかりはお預けね……」

「う、うん……早く帰ろう。」

 シルヴィアとダフネは本人達曰く、過去最高速度でホグワーツに戻り始めた。こんなに早い時間からホグワーツに戻る生徒はさほど居らず、帰り道の人は疎らだった。

 

「ね、ねぇ? ダフネ……あの道の先に居るのって……誰かな?」

 ホグワーツに戻る為の道には長い丈の黒いローブを纏って、こちらを見ている(?)人が居た。その人は、フードを深く被っていた為に男か女かそれすら分からなかった。

「う〜ん……闇祓いとかかしら? まぁ、知らない大人には話しかけない。話しかけられたとしても無視するのが得策ね。さっさと行きましょ」

「そうだね……」

 シルヴィアは不審に思いながらも歩み続けた。

 謎の黒いローブの人は道の真ん中に突っ立っていて、あまり広くない道的には邪魔な存在だった。

 ダフネは意を決したかのように声を上げる。

「そ、その〜……道の真ん中に突っ立っていると、邪魔なんですけど」

「………。」

 黒いローブの人は何も言わずにただ突っ立っていた。

「そ、その〜! 聞こえてますか? 道の真ん中に突っ立っていると邪魔なんですけど!」

 

「悪いとは思っている。しかし、わたしはやり遂げなければならないのだ。ハリーの為にも」

 

 この黒いローブの何者かは何か言い始めた。穏やかな声音だった。

 ただ、これで分かった事がある。この黒いローブの人は男だ。声が完全に男だった。

 

「は、はぁ? ハリーってハリー・ポッターですか? ……まぁ、いいや。その、退いてくれませんか?」

「君がシルヴィア・ネクロタフィオだね。オフィーリアから話は聞いていたよ。君も君のお友達も聡明そうだ。──ただ、君の聡明さは今のわたしにとっては少々、厄介らしい。」

 ダフネは咄嗟に危機を察知したようで、杖を高く空に上げて花火を打った。

 ──しかし、それとほぼ同時にローブの男の手に握られた杖はシルヴィア達の方へ向いていて、白い眩い光が2人へ向かっていた。

 

 

「ここら辺で花火が上がっていたけど……君達かい?」

 グリフィンドールの監督生、パーシー・ウィーズリーが駆けつけて来た。

「え?」

 シルヴィアもダフネも顔を見合わせてキョトンとしていた。

「私達、さっきここに来たばかりで……他の人じゃないですかね」

「そうか……済まなかった」

 そう言ってパーシー・ウィーズリーはホグワーツの方へ駆けて行った。

 

「さ、ハニーデュークスに行ってアストリアにお菓子を買って三本の箒でバタービールを1杯飲みましょ。」

「そうだね。」

 シルヴィアとダフネはホグズミード村の方へ歩いて行った。

 

 

「ホグズミード村、楽しかったねぇ」

 シルヴィアは満足気に寒空の下、歩いていた。ダフネもまたハニーデュークスで買って来たお菓子を袋一杯に詰め込んで嬉しそうな笑みを浮かべていた。

「きっとアストリアは喜んでくれる筈だわ」

「うんうん、楽しみだね!」

 シルヴィアもニコニコ笑っていた。

 

 やがて2人は、スリザリン寮へ辿り着きダフネは自身の妹であるアストリアを探し出す。

「はい、アストリア。これがホグズミードで買って来たお菓子よ。好きなだけ食べていいのだからね」

「わぁ〜! お姉様ありがとうございます!」

 ダフネの妹。アストリアはダフネを小さくしてもう少し儚い感じにした少女だった。

 全体的にダフネよりも色素が薄いのだ。金髪の髪は眩しいくらいだった。ブルーの瞳もまた色素が薄く、少々血管が見えていた。

「それで、貴女にはまだ紹介していなかったけど、この子が私の友達のシルヴィア・ネクロタフィオ。」

「姉から常々話は聞かせて頂いています。魔法薬学の才能が特に溢れていると」

 アストリアは希望に満ちた瞳でシルヴィアを見ていた。シルヴィアはその真っ直ぐとした瞳に見つめられて照れるしかなかった。

「あ〜ははは……な、なんか出来るからね……よ、よろしくね。アストリアちゃん」

「よろしくお願いしますです!」

 シルヴィアは同学年の中でも小柄な方だったが、それでもアストリアの方が小さくて可愛らしかった。シルヴィアは自分より小さい人がフリットウィック以外にも居て安心した。

「さて、そろそろハロウィーン・パーティーの時間ね。シルヴィア。今日は絶命日パーティーとかいうヘンテコなパーティーの先約は入っていないわよね?」

「うん、流石にね。あのパーティーは人間が行くべきパーティーでは無いよ……」

 

 そうして、シルヴィアとダフネ、それにアストリアはハロウィン・パーティーに参加するために大広間へ向かった。

 大広間にはフリットウィックが腕に縒りを掛けた飾りが一面に広がっていた。

 何百ものくり抜きカボチャに蝋燭が灯り、生きた蝙蝠が群がり飛んでいる。燃えるようなおオレンジ色の吹き流しが、荒れ模様の空を模した天井の下で、何本も鮮やかな海ヘビのようにクネクネと泳いでいた。

 シルヴィアはいつも通り、食事にはあまり手を出さなかった。

 ハニーデュークスのお菓子を少々食べすぎたのだ。結局、シルヴィアはサラダに載っていたトマトを2切れほど食べただけだ。

 

 宴の締めくくりは、ホグワーツのゴーストによる余興だった。壁やらテーブルやらからポワンと現れて、編隊を組んで空中滑走した。

 クリフォードはそんな馬鹿げた余興に参加するものか。と言う様子で大広間の隅っこでそれらを観覧していた。

 また、グリフィンドールの寮憑きゴーストである〝ほとんど首無しニック〟はしくじった打首の場面を再現して大受けしていた。しかし、シルヴィアには何が面白いのかがよく分からなかった。

 

 そうして、みんなお腹一杯、満足一杯で寮へ帰って行った。

 

「ネクロタフィオにグリーングラス! 俺、見たぜ? 2人で叫びの屋敷へ肝試しに入ったみたいだな。屋敷はどうだったか?」

 マシュー・エンフィールドが寮へ帰る道すがら聞いて来た。

 エンフィールドは、スリザリン生からうっすらと嫌われているその人だ。

 何故かと言えば、みんな抽象的な事しか言わないが、何処か純粋な狂気を感じる。と言う理由で一応意見は収束している。

「え? 叫びの屋敷なんて行ってないけど?」

 ダフネがそうすぐに返答した。シルヴィアも自分が叫びの屋敷に行った記憶なんて無い。

「はぁ? だって、俺は2人が屋敷に入っていくのを見たぞ? スナイドだってその場に居て、根性があるな。って言っていたし……それに、ブラッドフォード達は2人が真っ青な顔をして屋敷から出て行ったのを見た。って言っていたぞ?」

 シルヴィアとダフネは顔を見合わせた。全く、その記憶が無いんだ。

「怖すぎて記憶を失ったのかい? なんだ、つまんねぇの。感想聞こうと思ったのに。」

 そう言うとエンフィールドは前の方に歩いていたブレーズ・ザビニの方へ向かった。

 

「ねぇ、無い記憶があるらしい。って怖く無い?」シルヴィアが問う。

「物凄く怖いわ……だ、誰かに忘却呪文でもかけられたのかしら?」

「けど、なんで忘却呪文をかけらえているのかな……」

 シルヴィアが疑問を口に出す。

「こ、これは、これはこれは……私のただの推測に過ぎないわよ?」

 ダフネが前置きをした。

「──わ、私達……見てはいけないものを見てしまったのかも知れないわ。例えば、犯罪現場とか……」

 その言葉にシルヴィアもダフネも身を震わせた。

「く、口封じに……こ、殺されたり……しなくて……良かったね……」

「本当にそうよ!」

 

 ダフネが嘆くようにそう言った頃にはスリザリン寮の談話室に辿り着いていた。

「あぁ、恐ろしくなって来たわ。何を見たのかはさっぱりだけど、寮の寝室ならば大丈夫よね?」

 ダフネは自分の身を抱き締めるようにして問いた。

「そ、そうであって欲しいものだよ……」

 そうして、シルヴィアとダフネは逃げ込むように自室の中に入って行った。

 

「見たとしたら……なんだと思う?」

「今の時期だったら……やっぱり、シリウス・ブラック関係とかじゃないかしら?」

 シルヴィアはそこでルーピンが言っていた事を思い出した。

 

「そう言えば……私の養母の方。オフィーリアの方は、シリウス・ブラックの従姉妹だったみたいなの」

「あぁ、確かにそうだったわね……」

「そ、それで……オフィーリアは──「大変よ!」

 扉を乱暴に開けたのはパンジーだった。後ろにはミリセントも付いて来ていた。

「な、……何よ?」

「シ、シリウス・ブラックがグリフィンドールの寮に侵入しようとしたそうだわ!」

 

 シルヴィアもダフネも目を見開いて驚いた。

「今から先生達が城内を隈なく探すから、生徒達は今晩、大広間で寝ろ。だそうだ」

「何それ、最悪……」

 ダフネが本当に不満そうにそう零した。

 

 

 そうして、スリザリン寮生はみんな揃って大広間へ向かった。大広間には他の寮生もみんな当惑した表情で集っていた。

 みんなが集まった事を確認するとマクゴナガルとフリットウィックが大広間の戸と言う戸を全て締め切っていた。

 ダンブルドアは経緯をみんなに説明した。その後、杖をハラリと振って長いテーブルを退かして、ふかふかとした紫の寝袋が現れて床一杯に敷き詰められた。

 

「ぐっすりお休み」

 大広間から出ていきながら、ダンブルドアが声をかけた。

 シルヴィアはすぐさまハーマイオニーを捕まえて訳を聞いた。ダフネもアストリアも着いて来ていた。

 

「グリフィンドールの寮の入口って〝太った婦人(レディ)〟って言う肖像画が居るの。彼女、結構な変人なんだけど。まぁ、それはよくて、彼女の肖像画がナイフでズッタズタに切り刻まれていたのよ! 婦人(レディ)によればそれはシリウス・ブラックがやった事だそうよ。」

 シルヴィアもダフネも震え切っていた。アストリアは恐怖で気絶しかけていた。

 

「け、けど……ブラックはどうやってホグワーツに入ったのかしら?」

 寝袋を引っ張りながら、ハーマイオニーは疑問を呈した。

「〝姿現し術〟を心得ていたんだと思うな。ほら、どこからともなく突如現れるアレだよ」少し離れた場所に居たレイブンクロー生が言った。

「変装して来たんだ、きっと」ハッフルパフの5年生が言った。

「飛んで来たのかも知れないぞ」グリフィンドールの同学年の男子が言った。

 

「けど、全部不可能な筈だわ。この城にはあらゆる呪文がかけられているし、吸魂鬼を出し抜こうだなんて普通の魔法使いが出来る訳ないわ……」

 ダフネが考え深そうに言った。

「あぁ、良かった! 〝ホグワーツの歴史〟を読んだ事のある生徒が私以外もう1人居て!」

 ハーマイオニーは安心した。と表情で言った。

「う〜ん、実はホグワーツの何処かに入ると違う場所に転移出来るキャビネットとかがあった。とかはどうかな? 魔法道具を使ってやって来た。的な。」シルヴィアは適当な説を打ち立てる。

「あり得るわね。」

 たまたま近くに居たメアリー・クロッカーが言う。

「ホグワーツには、使われていない魔法道具が沢山置いてある部屋がある。って私のパパが言っていたわ。……そこが何処なのかは知らないけど、もしかしたらブラックはその部屋の場所を知っていて、利用したのかも知れないわ」

 

「灯りを消すぞ! 全員寝袋に入って、お喋りはやめ!」

 グリフィンドールの監督生、パーシー・ウィーズリーが全体にそう怒鳴った。

 クロッカーは「言われなくても分かるわよ」と言いながら、彼女の同室であるセルマ・ドリューウェットやセシリー・マーティンディルが居る方へ滑り込んで行った。

 

 その日は結局、シルヴィアは深夜3時まで眠れなかった。





ホグズミード:
 イギリスで唯一の完全にマグルが居ない村。ホグワーツの近くにある。

養父母の字:
 オフィーリアは汚い。ヘンリーは神経質な字を書く。

叫びの屋敷:
 ホグズミードにある心スポ。叫び声が昔聞こえていたので叫びの屋敷と呼ばれていた。今は聞こえない。シルヴィアは誰の叫び声か察した様子。

梟語使い(アウルタング)(仮称):
 シルヴィアの考え出した仮称。梟と話せる人を指す。シリウス・ブラックがもしかしたら、そうかもしれない。

パーシー・ウィーズリー:
 ウィーズリー家の三男。生真面目な優等生でグリフィンドールの監督生を努めている。

アストリア:
 ダフネの妹。いい子。ダフネよりも血の呪いの影響が強い。

太った婦人(レディ)
 グリフィンドール寮の入口と門番を努めている肖像画。

メアリー・クロッカー:
 オリキャラスリザリン生。父親は闇の魔法道具を作っている。


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