ただ、7話ぐらいまでストックがあるのでどうにかなるとは思って居ます。
いずれ不定期投稿になるかもです。
2025/03/12 本文編集
ホグワーツの前日。
シルヴィアは久しぶりに寝た。否、正確に言えば寝落ちした。あのハーナイホニーとかいう女の子が、自分に対して謎のライバル心を燃やしていた。その為、シルヴィアもシルヴィアなりに焦ったのだ。
取り敢えずは、教科書を一巡読んでおこうと開いた。魔法薬学、薬草学はシルヴィアは難なく理解する事が出来た。
なんなら、スネイプは何を思ったのか1年生指定の〝魔法薬調合方法〟の他に〝上級魔法薬〟という明らかに指定の教科書とレベルが違う本を紛れ込ませていた。
シルヴィアが全然知らない薬も沢山あって、シルヴィアは随分と楽しみながら読んだ。また薬草学の〝薬草ときのこ1000種〟も実に興味深かった。
しかし、呪文学の〝基本呪文集(1学年用)〟を開いた時、自分がこれを全部覚えるのは果たしていつの事だろうか。と気が遠くなった。
変身術の〝変身術入門〟は細かく書かれた理論をあまり理解出来なかった。
そして、魔法史の教科書を開いて少し年表を見た途端、寝落ちしてしまった。
「うぅ……痛い……」
椅子に突っ伏して寝ていた為、シルヴィアの目覚めは最悪。随分と変な時間に起きてしまった。
蝋燭の蝋も尽きており、部屋は窓に差し込む月光以外に光が無く暗かった。オリビアは羽を伸ばして健やかに寝ていた。
シルヴィアはそんなオリビアを撫でる。
『ヤァ……我ノ神聖デ偉大ナル意志ォ継イダ愛シイ我ガ娘ヨ』
「だっ、誰?」
何処からか声が聞こえてくる。しかし、その声が誰のモノかはシルヴィアに判別出来なかった。ただ後ろを振り向いてはいけない。と直感で感じた。
『私ハ貴女ノ母親ヨ』
「おっ、お母様……!?」
『愛シイ我ガ娘ヨ、何モ怖レル必要ハ無イ。我ニ身ォ委ネレバ良イ。ソレダケデ良イノダ……』
シルヴィアの背後から何か暖かいモノが近付いて来た。けれどもシルヴィアは強い違和感を感じる。その暖かいモノは、名状し難いそんな雰囲気を感じた。
「──違う。」
『何ガ?』
「あなたは……私のお母様じゃない。あなたは、誰?」
『シルヴィア。貴女ハ、唯純粋無垢ニ我ォ信ジ身ォ委ネレバ良イノダ。』
シルヴィアは怖がりながらも顔を上げる。
「お母様はそんな不気味な声じゃ無かった。春の日差しのように暖かくて柔らかくて……そして優しかった。あなたの声は、冬の風のように冷たくて鋭くて……そして何よりも怖い。」
『オ前ハ、アノ時ノ契約ォ忘レタノカ? マァ、良イ。コレモマタ、一興デアロウ。《祝福されし少女》ヨ。愛シノ我ガ娘ヨ。直ニ理解スル時ガ来ルダロウ。我ノ神聖デ偉大ナル計画ォ。ソシテ其ノ身ォ委ネルダロウ……。我ハ其ノ日ォ待チ望ンデイル──〈ドウカシアワセニナッテ〉』
そう言うと、名状し難き何者かが去っていくのをシルヴィア感じた。
「──い、今の誰、だったの?」
シルヴィアは少しの間考えに耽るが直ぐに考える事を放棄し、自分が座っていた椅子に戻って机に突っ伏して眠りを再開させた。
◆
「あぁ! もう馬鹿馬鹿! なんで、メザマシとかかけないで寝ちゃうの!?」
シルヴィアは頭を突っつく痛みで起きる。
「痛い痛い! 起きるって。……というかメザマシって何?」
オリビアはシルヴィアが起きたのを確認すると何処からか懐中時計を取り出し、懐中時計の鎖を嘴に加える。
そしてシルヴィアがまじまじと懐中時計を見た事を確認すると嘴から懐中時計の鎖を外す。
「見た? イマのジコクは9時30分。30分でヨウイしなさい!」
「うっ、うん!」
シルヴィアは訳がわからないまま急かされ、20分で身支度を終える。
マダム・マルキンから『デザインが古い』と言われた服をトランクの中に放り込んで、マダム・マルキンにプレゼント価格で売られた服に着替える。
どこか落ち着かないが、あのダイアゴン横丁に居た人達と同じような格好になった事に安心を覚える。
そして、オリビアにいわれるがままに、残り8分で忘れ物がないかの確認をした。
「うん。大丈夫ね? さぁ、クロイ羽ペンを掴みなさい。そのトランクをしっかり持ってね? 私はシルヴィアのカタの上に居るから」
そう言うとオリビアはシルヴィアの肩の上に飛び乗る。そして、結構強い力で掴む。
「いっ、痛ぁ!? えっ、ちょ、痛いっ──」
そう言う頃にはシルヴィアの周囲の景色はグルグルとする。
シルヴィアはスネイプの〝付き添い姿現し〟の時と同じく気分の悪さを感じ、あの時貰った吐き気止めを何処に入れたかを必死に思い出す。
「うっ、うぅ……」
シルヴィアが目を開けると見慣れない場所だった。
見た事ない形の……恐らく椅子がいくつか置いてある場所だった。広さは自分の家より少し狭いくらいだった。オリビアは、いくつか置いてある椅子のうち1つに瞬時に飛び乗った。
「こっ、ここは……?」
「まぁ、フツーに考えてキングス・クロス駅ね」
シルヴィアはやっとこさ自分の服のポケットに薬が入っているのを見つけ出し、それを一気に飲み込む。すぐに吐き気は消え失せた。
しかし、自分の状況は全然理解できなかったのだ。一体、ここはその〝キングス・クロス駅〟の何処なんだ。というか〝キングス・クロス駅〟とはなんなんだ。
「いい? シルヴィアはキングス・クロス駅のコトをよく分かっていなさそうだから教えるケド、ホグワーツ特急っていうホグワーツまでイドウする汽車のシハツ駅なの。」
「うっ、う〜ん……?」
オリビアは凄い勢いで話した。シルヴィアにとって〝汽車〟という言葉すら聞き覚えが無かった。
「……もう、いいからココを出ましょう! ココはきっとマチアイ室よ。ココを出なきゃプラットホームにも行けない。……ダイジョーブよ。私がホグワーツ生っぽい人を探してあげるカラ。そのヒトに着いて行けばホグワーツ特急のプラットホームに着くわ。さぁ、行きましょう」
シルヴィアはオリビアの話した事をどうにか飲み込み、オリビアが指差す(この場合であれば羽指すだろう)扉の方へ向かう。
オリビアはここでシルヴィアのトランクの上に飛び乗った。
シルヴィアはよく分からないまま扉を押し開ける。扉の先の世界はあのダイアゴン横丁よりもずっと人が居て、シルヴィアと違う格好をしていた。円形の天井が特徴的で天井からは優しく光が刺している。
「わぁ〜……此処が魔法の世界?」
「シー! あまりオオキイ声でそんなコト言わないの! 貴女、カッコウだけで十分に浮くのにそれに加えてヘンなコト言えば、ホントにマグルのケーサツに突き出されちゃうかもだからね?」
「ケーサツ?」
「今はいいから! 取り敢えず、9バンセンと10バンセンのプラットホームまで下がりましょう。余計なコトは考え無くてイイカラ。あの9と10って書かれているハッシャヒョーがある場所に向かいなさい。」
オリビアがそう小声で早口に。
シルヴィアは、その間にも自分と周囲の人々の格好が大きく違う事を理解する。まるで時代が違うかのように服装が異なるのだ。
自分はダイアゴン横丁の人々と同じ格好をしているつもりであり、平均的な服装のつもりだった。しかし、この〝駅〟とやらに来てみたらどうだろう。自分はまた浮いた格好なのだ。
すれ違う人は皆、シルヴィアを驚いた目で見てから同行者や虚無に向かって口々に自分の見解を述べた。
「ハロウィンかしら?」「けど、ハロウィンは1ヶ月以上先よ?」
「魔法使い?」「この科学の20世紀にんなもの居るわけ無いだろ!」
「あの子大丈夫かな?」
「と言うか梟をトランクに乗せるって何?」「大道芸人とか?」
シルヴィアは、なるべく他人の視線を気にしないように9番線と10番線のプラットホームに向かう階段を降りていく。
「う〜ん……何処に行けばいいのかな……」
周囲にはダイアゴン横丁で出会ったような服装の人は居なかった。
だからといって、いちいちシルヴィアを気にかけて話しかけるような暇人も居なかったようで、シルヴィアは誰かにとって背景になる。
「あっ! シルヴィアよね? 貴女」
シルヴィアは後ろから突然と声をかけられ驚く。
「あら、このコミュニケーション能力に難ありのシルヴィアにオトモダチが居たの?」
オリビアはそう囃し立てるように言った。
ただ、シルヴィアは困っていた。目の前の少女は確か、洋装店で自分に対して話しかけてきた栗毛少女だ。しかし、名前を忘れてしまっていたのだ。
「えぇっと……えっ……と」
「おぉ! ハーマイオニーのお友達かい?」
栗毛少女、ハーマイオニーの後ろから突如としてキッチリと身を固めた男性が登場する。そしてその後ろには、厳しくとも優しそうな女性が居た。シルヴィアはこれまた驚く。
「パパ! びっくりしちゃってるじゃない! まぁ、そうね。洋装店でたまたま一緒のタイミングで採寸していた子なの。……にしても、シルヴィアは梟を飼っていたのね。可愛いわね。名前は?」
「オッ、オリビア。って言う……らしい。の」
「綺麗な名前ね! ちょっと撫でてもいいかしら?」
「えっ? ……えぇっと──「イイわよ」……いっ、い、いいよ。って言ってる……」
その言葉を聞くとハーマイオニーは、嬉しそうにシルヴィアのトランクの上に乗っているオリビアを撫でる。オリビアは満更でも無い様子で撫でられていた。
「あら、もう10時15分じゃないの! さぁ、9と3/4番線に急ぎましょ!」
ハーマイオニーは時計台の時計を見てそう言うと両親にさようならの挨拶をした。
「そっ、その……ハ、ハーマイオニー……? きゅっ、9と3/4番線。って……ど、何処なの?」
「あら、知らないの? 〝フローリシュ・アンド・ブロッツ書店〟に無料で配ってた〝日刊予言者新聞:新入生歓迎特別冊子〟には行き方が事細かく書いてあったわよ?
というか、シルヴィアは魔法使いの家の子っぽそうだから知ってるものかと思ったけど……」
ハーマイオニーは悪気は無いが、純粋に疑問に思っている様子で聞いてくる。
「わっ、私……その書店。行ってないの……。あ、えっと……にゅ、入学準備あ、案内で着いて来て来れた……教授が、行って来て……くれた、から……」
シルヴィアがそう言うとハーマイオニーは納得した様子になる。
「じゃあ、後で貸してあげるわよ。あれ結構役に立つ情報が沢山書いてあったから! さぁ、今は9と3/4番線に行きましょう。」
そしてハーマイオニーに連れて行かれるまま、9番線と10番線にある煉瓦の柱のうち1つの前に立つ。
「あの柱に一思いに突っ込むらしいわ。」
「えぇ!?」
目の前の柱は硬そうでぶつかればしっかりと痛そうだった。
「い、痛そう……だけど──「さぁ! 行きましょう!」
ハーマイオニーに手を引かれるままシルヴィアは進み出す。ハーマイオニーの荷物のカート、ハーマイオニー、シルヴィア&オリビアの順に柱に突っ込んだ。
「うっ、うわぁぁぁぁ!」
もうダメだと思った。しかし、シルヴィアの想像する痛みは一向に訪れる事は無かった。
「わぁ……凄いわ……これがホグワーツ特急」
それどころかハーマイオニーの感嘆の声が聞こえてくる。
「シルヴィア、いつまでメをトジテルつもり? サッサト開けちゃいなさい」
トランクの上に乗るオリビアですらそんな事を言い始めた。シルヴィアは目を恐る恐る開く。目の前にあったのは煙を吐く真紅の鉄の塊だった。
「なっ……何これ、何これ?」
シルヴィアはずっと「何これ」を言うだけの存在に成り下がった。
「さぁ、シルヴィア。乗り込んじゃいましょう。早くしないと席が埋まっちゃうわ!」
またハーマイオニーに手を引かれシルヴィアは煙を吐く真紅の鉄の塊。こと汽車へと近付いて行く。そして、ハーマイオニーに続き恐る恐る汽車へ乗り込む。
中はいくつかのコンパートメントが並んでいたが、シルヴィアはコンパートメントの存在すら知らないので、鉄の塊の中に部屋がある。という認識だった。
「ここは……うん。空いてるみたいね。」
ハーマイオニーがコンパートメントを開ける。そこはまだ誰も居なかった。
「ふ〜……これでやっと落ち着けるわ……」
ハーマイオニーがコンパートメント内の椅子に座る。シルヴィアもそのハーマイオニーの目の前に座った。オリビアはシルヴィアの隣に着地した。
窓側の為、プラットホームで大勢の魔法使いの家族達が別れを惜しんでいるのがよく見えた。
「そう言えば、シルヴィアのご両親は一緒に来なかったの?」
ハーマイオニーにそう問われシルヴィアは元々固まっていたが、より一層固まる。
「……りょ、両親は、その……しっ、死んじゃったの……」
シルヴィアがそう言うとハーマイオニーは大層申し訳ない。と思っている表情になる。
ここで会話を失敗した。シルヴィアはそう思い知った。ハーマイオニーには両親が居る。そんな子にとって両親が死んでいて居ない自分は、異質な存在なんだろう。
「ご、ごめ……ごめんなさい。お、重い……話、しちゃって……」
「いや、シルヴィア……貴女が謝る事じゃ、ないわ。私が……その、配慮が無かったわ。
……そっ、そうだわ! さっき言ってた〝日刊予言者新聞:新入生歓迎特別冊子〟を貸してあげる。よく読み込んでおくといいと思うわよ」
そういってシルヴィアに冊子を渡した。シルヴィアは受け取るなり、中を開いて読み始める。
そこには〝マグル生まれでも分かる!魔法界の常識〟なるページがあり、随分と事細かくかつ分かりやすく魔法界について記されていた。
その章が8ページほど続くと次はホグワーツについての事が記されていた。
「ホグワーツには……寮が4つある……」
シルヴィアは自然と声が出る。
“寮とはホグワーツでの家のようなものである。寮生と一緒に勉学に励み、寮生と一緒に寝食を共にする──”
シルヴィアにとっては迷惑な話だった。この冊子を読む限りだと、自分1人の時間はお手洗い時ぐらいしか無いようだった。
「そう! シルヴィアは何処に入りたいとか希望はある? 私は前会った時に言った通り、ダンブルドア校長の出身寮でもあるグリフィンドールに入りたいと思っているの」
そういえば、そんな事を話して居たような。とシルヴィアはあの洋装店での出来事を思い出す。
シルヴィアはスネイプに寮の事について聞きそびれて、オリビアにも聞きそびれていた為に結局、グリフィンドールとやらも分からず仕舞いだった。
シルヴィアは寮の特徴の項を読み始める。
グリフィンドールは勇敢で大胆、騎士道精神を持つ者が集う寮と書かれていた。シルヴィアは一瞬で自分はこの寮には入らないだろう。と思った。
次に書かれていたのはハッフルパフだった。勤勉で公平、忠実な者が集う寮と書かれていた。自分はそこまでの人間では無いと感じた。
その次はレイブンクローだ。英知と独創に溢れ、他者の知性を受容する者が集う寮。これまたシルヴィアは自分とはあっていないと思った。
最後に書かれていたのはスリザリンだ。大望を持ち狡猾で、同胞を愛する者が集う寮──
「わっ、私。何処にも、い、入れて……貰えない……かも」
シルヴィアはそう呟く。
「だっ、大丈夫だって! どんな組分けの儀式がどんなのかは分からないけど、ほら!」
そう言ってハーマイオニーはページの一番下を指さした。
「“ホグワーツ設立以来組分けを受けれなかった生徒は居ない” だから、みんな何処かの寮には入れてるのよ! だから安心して!」
ハーマイオニーがそう言うが、シルヴィアは逆に気分を落としていた。その〝ホグワーツ設立以来初めて〟になってしまわないか。と不安に感じていたのだ。
「ほっ、ほら! ご両親は何処の寮だったのかしら? ご両親は魔法使いでしょ?」
ハーマイオニーがどうにか気分を落とし切っているシルヴィアをフォローするようにもう一度両親の事を切り出す。
「わ、私は……入学許可証を貰うまで、ホグワーツの事……知らなかった。」
シルヴィアがそう呟くように言って、ハーマイオニーはまた焦る。そしてここでまたシルヴィアは会話を失敗した。と感じた。
「け、けど……その、唯一言えるのは……、このスリザリンっていう寮の紋章。何処かで、見た事……ある」
「スリザリン!? そっ、そこは辞めておいた方がいいわよ。〝例のあの人〟を輩出してその取り巻きの
ハーマイオニーは必死に引き止めるように言った。
「そ、その……れっ、〝例のあの人〟って……誰? ……というか、純血主義って?」
「〝例のあの人〟も知らないの!?」「貴女、それすらシラナイの!?」
ハーマイオニーは大きな声をあげるし、黙って聞いて居たオリビアも驚きの声を上げた。
「〝例のあの人〟っていうのは大体10年ぐらい前のイギリス魔法界を揺るがした闇の魔法使いよ。
純血主義っていう……なんて言ったら良いのかしら? マグルやマグル生まれに対する差別意識が強い主義の事を言うんだけど、そんな主義を掲げて自分と反対意見を言う魔法使いを殺して回ったそうなの。時には無辜のマグルだって殺したそうよ。
……すっごい悪い魔法使いよ。けど、10年前にハリー・ポッターっていう赤ん坊によって倒されたそうなの。だから安心して? それに、今年はハリー・ポッターの入学年よ。つまり同学年って事ね。」
ハーマイオニーはまたシルヴィアに怒涛の勢いで情報を与えた。シルヴィアは一旦頭の中で整理する。
「──そっ、その〝例のあの人〟は……あ、赤ん坊に倒されたの? なんか、その……しょぼく無い?」
「いや、きっとその赤ん坊が凄かったのよ。きっとこの汽車内にハリー・ポッターが居る筈だわ。私、着替えたら探しに行ってみようかしら?」
「うっ、うん。──わ、私は、此処に居るね……」
シルヴィアは先に誘われるのを察知してこのコンパートメントに居座る事を宣言する。ハーマイオニーは残念そうな表情になるが、「それもそうね。大勢で行ったらハリー・ポッターに迷惑になっちゃう」と言って諦めを見せた。
12時半頃。ハーマイオニーがローブに着替えてそろそろハリー・ポッター探しに出向こうとしていた時だった。えくぼのおばさんがニコニコ笑顔で戸を開けた。
「車内販売よ。何か要りませんか?」
ハーマイオニーは目を輝かせながら立ち上がった。
「そう! 魔法界のお菓子食べてみたかったの!」
そう言ってハーマイオニーはシルヴィアにも何か食べようと誘った。2人は台車の上に乗っている中で選りすぐりのお菓子を2個ずつ(〝百味ビーンズ〟は1個だけ)買いコンパートメント内に戻った。
「〝蛙チョコレート〟は本当の蛙みたいに動き出すみたいよ?」
そう言っている中も、蛙チョコレートの蛙は蠢いていた。
ハーマイオニーはそれを器用に掴むとサクッと食べてしまった。シルヴィアも食べようとするが、なんと包みを開けるなり飛び出してしまい、少し空いていた窓から逃げ出してしまった。
「えぇ……逃げ出すんだ……」
「そんな事あるのね……あ! 私のカードはアルバス・ダンブルドアだったわ!」
そう言って包みに入っていたカードをシルヴィアに見せつけた。
半月形の眼鏡をかけ、ブルーの瞳。高い鼻は鉤鼻で少なくも2回は折れている。流れるような銀色の髪、顎髭、口髭を立派に蓄えており、笑顔を浮かべていた。
「その人が……ダンブルドア……校長。」
シルヴィアとしてはあの手紙に書かれていた脅しのような量の肩書きが気になって硬ってしまった。
「あ、これって裏に紹介が書いてあるのね!」
そう言ってハーマイオニーは自分で読んでからシルヴィアに見せてくれた。
アルバス・ダンブルドア
現在ホグワーツ校長。近代の魔法使いの中で最も偉大な魔法使いと言われている。特に1945年、闇の魔法使い、グリンデルバルトを破った事、ドラゴンの血液の12種類の利用法の発見、パートナーであるニコラス・フラメルとの錬金術の共同研究などで有名。趣味は室内楽とボウリング。
やはり、ダンブルドア。という人物は凄い人らしい。というのをシルヴィアは改めて実感した。
「シルヴィアのは誰?」
「えぇっと……クリフォード・プリンス……」
黒髪黒目の男だった。ただ、表情は硬いのかもしくは不機嫌なのか幸薄そうな雰囲気だった。カードの裏の紹介文も読んでみる。
クリフォード・プリンス
1480生誕1530年没。第13回魔法学校魔法薬大会に1年生ながら出場し優秀賞を獲得。その後、幼児期の魔力暴走を防ぐ魔法薬の研究に尽力した。1529年に『生ける屍の水薬』を開発する。1530年に『生ける屍の水薬』を大量に飲み自殺した。生涯妻子が居なかった。
「なんだかよく分からないけど……悲劇的な人だったみたい」
「そうねぇ……」
そう言いながらハーマイオニーは〝百味ビーンズ〟を手を伸ばした。
「百味って本当になんでもありらしいわ。このピンク色のとかどうかしら? 桃味とかだったら嬉しいわ。」
そう言ってハーマイオニーはピンク色のビーンズを取り出して口に放り込む。少しして顔を顰めた。
「何かしら……この、甘すぎるわ……砂糖漬けにした果物……みたい。」
「へ、へぇ……」
シルヴィアは逆に気になって百味ビーンズの箱の中に手を突っ込み1つ取り出す。蛍光緑のビーンズが出てきた。
「いかにも……って感じ……」
蛍光緑のビーンズを口に放り込む。少ししてからシルヴィアはそのビーンズを舐める。
「あれ、美味しい……。青リンゴ……かな?」
「きっとそれって当たりよ! もう一個食べてみようっと……」
そう言ってまた箱に手を突っ込み1つ取り出す。ハーマイオニーが次引き当てたのは茶色のビーンズだった。
「う、これって……ソーセージよ! ソーセージをビーンズにするとか正気!?」
ハーマイオニーは非常に不服そうだった。
シルヴィアももう1個食べてみようとビーンズを取り出す。次は赤色だった。口の中に入れると甘味が強く酸味が少ない何かが口を覆った。
「う〜ん……これは、チェリー……?」
「な、なんで、シルヴィアは当たりばっかり出るのよ!」
ハーマイオニーは変にムキになってしまったようで、自分が当たりが出るまで引き始めてしまった。
結局、ハーマイオニーが当てたのは土味、黒胡椒味、何か分からないけれど人間の体から出てそうな味、腐った卵味、石鹸味、最後の最後にゲロ味が来た。
その為、ハーマイオニーは百味ビーンズが一生のトラウマになってしまったようだった。
ハーマイオニーはもう食べないと言い、百味ビーンズの残りを全てシルヴィアに押し付け、自分はかぼちゃパイで口直しをした。
因みに、その後のシルヴィアの出目は頗る良く、いちご味やらバナナ味、スイカ味など普通のビーンズの味だけが出てきた。
その後、シルヴィアもかぼちゃパイや大鍋ケーキに舌鼓を打った。
そして、ハーマイオニーは一通り食べ終わると早々にローブに着替え「じゃあ、行ってくるわ!」と言ってコンパートメントを出て行った。シルヴィアは笑顔でハーマイオニーを見送った。
「なっ……なんだか、今のって友達。って感じだったよね? い、一緒にお菓子を食べるのって。」
シルヴィアの世界は、8割程度は本の中で読んだ知識だけで成り立っていた。
その本の中では友達というものは一緒に何かをしているものなのだ。そう考えると一緒にお菓子を食べたハーマイオニーは友達と言える。
「……ケド、良かったわ。あの女の子が来てくれて……。一時はシルヴィアがホントにマグルのケーサツに突き出されてお終いかと思ったもの」
オリビアはそうシルヴィアの肩で言う。シルヴィアはキングス・クロス駅に辿り着いてからの全てを理解出来ていなかった。
「ねぇ? オリビア。私って……やっぱり変?」
「ヘンも何も、梟と話せる時点でイシツよ。普通のニンゲンは梟と話せないもの」
「魔法使いも?」
「モチロンよ。私に話しかけてくる魔法使いは今までタクサン居たけれど、誰も私のコトバを分かっていなかったわ。」
シルヴィアはまた気分を落とす。所詮、自分は異質な変な魔法使いなんだと知ってしまったからだ。
「ケド、私は楽しいわよ。貴女とトモダチになれて。」
「……私からも、ありがとう。」
車窓を眺めると田園風景を越えて、なだらかな丘陵地帯が広がっていた。あの喧騒溢れる街はもう既に通り過ぎた景色なのだ。
シルヴィアは疲れで眠り始めた。汽車が刻む規則的な音はシルヴィアを夢の世界に誘うのは容易だった。
ホグワーツ特急:
キングス・クロス駅始発の汽車。この特急が出来るまでは全校生徒の3分の1が学校に着くことが出来なかったらしい。
日刊予言者:新聞新入生歓迎特別冊子:
全然捏造設定。入学の手引き書的なもの。
アルバス・ダンブルドア:
蛙チョコレートのカードにくっついてきた。半月形の眼鏡をかけ、ブルーの瞳。高い鼻は鉤鼻で流れるような銀色の髪、顎髭、口髭を立派に蓄えており、笑顔を浮かべている。
趣味が室内楽とボウリング。
クリフォード・プリンス:
完全独自/捏造設定の人。
蛙チョコレートのカードにくっついてきた。黒髪黒目の男で幸薄そうな雰囲気。1529年に『生ける屍の水薬』を開発した(独自設定)。開発翌年に『生ける屍の水薬』で自殺をしており、妻子も居なかった。悲劇的な人だとシルヴィアに言われた。
(そもそも論として15世紀やら16世紀にプリンス家がある事自体謎いが、今作ではある(捏造設定))
次回やっとホグワーツに着きます。
誤字脱字等ありましたら報告お願いします。
また面白かったら評価、感想などを寄せていただけると励みになります。