呪いの少女と祝福された世界   作:佳山針之介

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展開失敗したと思い、修正する為に消しました。急に投稿した話を削除してしまい、本当に本当に申し訳ないです。



第39話 月の綺麗な夜

アアアアアアアアアア!

 この世のモノとは思えない喚き声が聞こえた。それはシルヴィアの死体から発せられた声だった。この部屋に居る誰もがその事をすぐには理解出来なかった。

 その瞬間に、シルヴィアが目を見開いてムクリと起き上がった。シルヴィアの見開かれた目は白濁としていた。

 起き上がって、オリビアを掴み取り窓へ放り投げた。部屋の中に居る全ての人間がそれを呆然と見ていた。

 

折角、復讐劇ガ見ラれるト思ッたノに! 小僧! オ前の所為で陳腐ナ感動物語ニなってシマッた!

 他人を殺メ、未来ォ奪ッた奴が裁かレず生き延びルなど、ユルシはせヌゾ! 罪ニは罰ォ、怒リには復讐ォ!

 シルヴィアは白濁とした目をこれでもか。と開いて言った。

 とてもシルヴィアの声とは思えない否、この世の物とは思えない声だった。世界の全てを呪ってしまいそうなそんな憎悪と復讐心に塗れた声だった。

「シ、シルヴィア……? え、嘘……どう──し、て? 死、死の呪文を受けたのに……」ハーマイオニーが困惑した様子で言った。

此の娘ハ死なン! 此の娘の生涯トは、肺ガ偶々出シた音に過ぎン。よって死なン! 我とノ契約ガ全て完遂サれる迄ッ!

 そう叫ぶと〝シルヴィアのような誰か〟は3歩で部屋を横切り、シリウスの元へ向かった。そして、シリウスの肩に触れながら言葉を発する。

シリウス・ブラック! お前ハ憎ラしいダロウ? 此ノ小心者の男の所為デお前ハ、親友ォ失い、全ての罪を背負イ、牢屋ニ繋がレた。ハリー・ポッターの後見人ダと言うノニ、小僧ニ会う事さエ許さレナカった。

 シリウスは酷く動揺した表情になった。〝シルヴィアのような誰か〟は、次にルーピンの元へ向かった。同じくルーピンの肩に触れながら言葉を発する。

 

リーマス・ルーピン! お前モ憎ラしいダロウ? 此ノ小心者の男の所為デお前ハ、親友ォ失い、孤独ニなッタ。そシテ永遠に友人ォ疑い続ケる羽目にナった

 ルーピンもまた動揺した表情になる。次にスネイプの元へ向かう。しかし、スネイプは〝シルヴィアのような誰か〟の手が自身に伸びきる前に手を叩いた。

 

「お前は一体、誰だ?」

我ハ、お前ノよウナちっポけなニンゲンに名乗るホド落ちブレていない!

「──復讐心の塊。或いは運命、死の権化。森の意思。そうだろう?」

 部屋の中心に女性が立っていた。黒髪で灰色の瞳を持つ女性だった。シルヴィアと言うよりもシリウスの方に容姿が似てた。

「やぁ、お元気そうで何よりだよ、シリウス。」

 大人組と〝シルヴィアのような誰か〟はみんな困惑して動揺していた。それぞれに口を開け閉めしていた。

 

「そ、その……もしかして……オフィーリア・ブラック……さん?」

「おや、流石はハーマイオニー・グレンジャーちゃん。お見事だ! 頭でっかちなだけある!」

 女性、オフィーリア・ブラックはそう褒めているのか貶しているのか分からない事を言った。

「ただ、1つ間違えている。私は死ぬ半年前にヘンリー・ローズブレイドと結婚をした。だから、私はオフィーリア・ローズブレイドだ」

 そう言うと悪戯な笑みを浮かべた。

「……ところで、シリウス。それにリーマス・ルーピン、セブルス・スネイプ。ピーター・ペティグリュー。それに、森の意思さん? 大丈夫かい? そんな死人が蘇ったような目で見て」

「──じ、実際の……ところ、そうじゃないか……」

 シリウスが初めて絞り出すように言葉を発した。

「あはは、確かにそうだ。私は1986年12月25日に死んだ。つまり今の私はリバイバル・オフィーリアだね」

「ど、どうして……どうやって、復活したんで、すか?」ルーピンが次に口を開いた。

「この男女比だと、正解を言い当てられる人が居るとはとても思えないんだが……この世で1番偉大な力はなんだと思うかい?」

 その問いでみんなが静止した。何が答えなのか本当に分からなかった。

「強力な魔力でも、闇の力でも、物理的な力でも無い。勿論、復讐心も違う。……それは、愛だよ。特に母親の愛なんかはこの世界で最も偉大なものだろう。」

 そう言って笑った。大人組はみんな呆けていた。

「──あぁ、確かに……特にシリウスやセブルス・スネイプには理解出来ないだろうね。君達はどうも家庭環境に恵まれなかったようだからね。お可哀想に。……では、少し言い方を変えてみようか。〝母親が我が子に向ける愛〟だよ。

 ハリー・ポッターくん、君の命だって〝母親が我が子に向ける愛〟によって繋がれた。つまりはそういう事だよ。愛の力は偉大なんだ。」

 みんなポカンとしてしまっていた。

「おや、どうしたんだい? みんな、放心してしまって。」

「あ、貴女が……そんな事を言い出すとは、思わなかった。」

 シリウスがそうぼやくように言った。その言葉にオフィーリアは満面の笑みを見せた。

 

「だろう! 私だって人生で……あ、もう私の人生は終わっているのか。まぁ、いいや。私の口から愛がなんだとか言い始めるとは思えなかった。けれども、そう感じざるをえなかった。」

 そう言うとオフィーリアは完全に固まっている〝シルヴィアのような誰か〟の前に立ち、目を合わせた。

「私は、この子の成長を見たいと最後の最期に願った。それが私が、未だこの世界に少々たりとも存在出来ている理由だ。

 ヘンリーの奴も居るんだが、あの坊やは酷くシャイでね。前に出たがらないんだ。」

 〝シルヴィアのような誰か〟の瞳には涙が浮かんでいた。シルヴィアの瞳の色は元の灰色に戻り始めていた。

「この子がこの子であり続けた理由。それはこの子の実母であり、養母である《お母様》のおかげだった。私は彼女と同じ道を辿ったようだ。いい意味でも悪い意味でも……」

 そう言うとオフィーリアは〝シルヴィアのような誰か〟をそっと抱きしめた。

 

「さぁ、今は復讐心を収めなさい。純粋無垢で清らかな心を持ったままお生きなさい。私は、──いや、私達は貴女を愛している……貴女もまた世界を……愛しなさい」

 そう言うとオフィーリアは光の粒子になって消え去った。〝シルヴィアのような誰か〟否、シルヴィアは力が抜けたようにその場に崩れ落ち、床にぺたんと座った。

「手紙と同じか……」スネイプが1人呟いた。

 

「シ、シルヴィア? だ、大丈夫……?」

 ハーマイオニーが駆け寄った。シルヴィアはただ今までオフィーリアが居た場所をボーッと見ていた。

「──う、うん、大丈夫。なんか手が痛いけど……。それに、出来るものならば今すぐにでも寮へ戻ってベッドで丸一日眠っていたい……」

 そう言うと床が埃だらけで汚い事をお構いなしに、シルヴィアは床に寝そべろうとした。寸前でハーマイオニーが食い止めた。

「ちょっ、本当にここの床は汚いんだからやめなさい!」

「え〜……分かった……」

 シルヴィアは本当に眠そうだった。

 

「さて、一件落着だ。さっさとこいつをアズカバンへ連行しよう」

 シリウスがそう宣言した。ペティグリューは思い出したかのようにゼェゼェ息をし始めた。

「そうだね。」

 ルーピンがそう言うと杖を振って空中からヒョイっと重たい手錠を取り出した。そして、ペティグリューを立たせて両腕に手錠を嵌めた。そして、右腕にシリウスの左腕に繋げ左腕はルーピンの右腕に繋げた。

 そうして、一行は叫びの館から出て行った。

 とても奇妙な列だった。クルックシャンクスが先頭に立って部屋から出て、その後をルーピン、拘束中のペティグリュー、シリウスがまるでムカデ競走のように繋がっていた。

 ルーピンとシリウスはそれぞれペティグリューに杖を押し付けるように当てており、猿轡で声が殆ど出せていない状況だと言うのに煩かった。

 その後ろをロン、ハリー。そしてシルヴィアをハーマイオニーが支え、未だ困惑の色を残しているスネイプが続いた。

 ハリーとシリウスは何やら話し込んでいたが、その時にシルヴィアは自分の杖について思い出してペティグリューに返せと迫った。

 しかし、ルーピンがペティグリューから武装解除した為、ルーピンが持っていた。そのままルーピンから自分の杖を受け取った。

 やっと自分の杖が返却されたシルヴィアは、大いに喜んで久々に呪文を放ち楽しんでいた。

 ロンからは「初めて杖を手に入れた1年生みたいだ」と言われていたが、シルヴィアは上機嫌で魔法を放ち続けた。

 

「そう言えば、ブラック。お前は何故、杖とまともなローブを持っている?」

「は? あぁ……杖もローブもあの梟が私に持って来てくれた。ただ、不思議な事が1つある。わたしの記憶が確かであれば、この杖はオフィーリアの物だ」

 そう言って普通の杖とは違い、2回程折れ曲がったような杖をスネイプに見せつけた。流石にスネイプは変人先輩(オフィーリア)の杖を知らなかったので、イマイチ分からなかった。

「確かに、彼女の杖は荼毘にしてはいない筈だが……何故、あの梟が……?」

「外だ!」

 洞穴の出口が遂に見えた。今回も暴れ柳は暴れていなかった。

 校庭はすっかり真っ暗だった。明かりといえば、遠くに見える城の窓から漏れる灯火だけだった。

 一同終始無言で歩き出した。ペティグリューは相変わらず、ゼイゼイと息をして時折ヒーヒー泣いていた。

 

「少しでも変な真似をしてみろ、ピーター」

 ルーピンが脅すように言い、ペティグリューの胸に杖をより強く押し付けながら言った。ルーピンの反対側に居るシリウスも深い憎悪の表情でそう言った。

 みんな無言でひたすら校庭を歩いた。窓の明かりが徐々に大きくなってきた。その時、急にスネイプが叫んだ。

「待て、ルーピン! お前は今日、脱狼薬を飲んでいない!」

 そう叫んだ時には空の雲が切れた。突然校庭にぼんやりとした影が落ちた。一行は月明かりを浴びた。とても、とても憎らしいほどには綺麗な満月だった。

 ルーピンはその月を見たまま硬直していた。

「逃げろッ!」

 シリウスとスネイプの声が重なった。

 ロンはハリーの手を引いて一目散に逃げようとした。しかし、ハリーは逃げる事を拒び、シリウスの方へ駆け寄った。

 それに、ハーマイオニーはシルヴィアを連れて逃げようとしたが、シルヴィアもまた逃げる事を拒否してルーピンの方へ駆け寄って行った。

「シルヴィア! 危ないわ!」ハーマイオニーがそう叫んだが、シルヴィアはシルヴィア史上最高速度で駆けていた。

 

「逃げるんだ! 早く! ここはわたしに任せて逃げるんだ!」

 シリウスがそう言って、少なくともハリーを押し戻した。しかし、シルヴィアはそんなシリウスの脇を抜けて行った。

 それをスネイプが追いかけて行った。スネイプの手には杖があった。ルーピンが狼化し、誰かを噛もうとしたら殺す気だろう。

 

「お願い、ルーピン先生! これを、これを飲んで!」

 自分のローブのポケットから革袋を取り出し、パラパラと〝完全脱狼薬 - 固形化試作No,4〟を手に出してルーピンに押し付けるように渡した。

 しかし、ルーピンは既に正気を失っており、もうすぐ狼に変身し始めようとしているところだった。

 そこに、スネイプも駆け寄って来てシルヴィアの手から〝完全脱狼薬 - 固形化試作No4〟を奪い取るとルーピンの口に押し込み、顎を上に上げて強引に飲ませた。その場に居た全ての人が呆然と見ていた。

「お願い……効いて……」

 シルヴィアはそうお祈りを始めた。

 

 暫くするとルーピンは咳き込み始め、ハッと気が付いたような素振りを見せた。

「わ……わたし……わたしは?」

「お、驚いた……。狼への変身を……止めてしまうだなんて……」

「シリウス! そいつがッ!」

 ハリーの叫び声が聞こえた。シリウス達がペティグリューを見るとペティグリューはルーピンが先ほど落とした杖を握っていた。

 

「こ、今度こそは……誰かを殺すッ!」

「〈エクスペリアームス 武器よ去れ〉!」

 シリウスは瞬時に武装解除をした。しかし、ペティグリューは既に行動に移していた。自分が不利な状況である事は、彼自身が1番理解していたようだ。

 ペティグリューは変身し始めていた。小汚く太っている指が一本取れている鼠だ。

 既に駆け寄って来ていたハリー達の中で、ロンが1番に声を上げた。

「スキャバーズ!? え、まさか……僕のペットは……小汚いおっさんだったのか!?」

 

 ロンの声は絶叫に近かった。

 確かにその反応が正しいだろう。自分が幼い頃から可愛がって来たペットの鼠が小汚いおじさんの動物もどき(アニメーガス)だなんて誰も考えたく無い。

 しかし、それに誰もそれに構っている余裕など無かった。

 シリウスが、自分の杖を拾い上げたルーピンが、スネイプがシルヴィアが、そして最後にハリー、ハーマイオニーが次々に変身したペティグリューに対して杖を振るった。しかし、誰の呪文も当たらなかった。

 

逃げるな……逃げるな卑怯者ッ! 僕は、僕はシリウスと暮らすんだ!」

 ハリーもまた絶叫を上げていた。ハリーのその目には怒りと涙があった。しかし、無情にもペティグリューは森の方へ駆け抜けて行って遂に姿が見えなくなった。

 誰もがその様子を見て落胆した。ハリーは地面の上に崩れ落ちて膝を着いた。

 しかし、落胆していられるのはほんの束の間の事だった。

 

 嫌な寒気を感じた。

 皆一様に周囲に目を遣る。すると真っ黒な塊となっている吸魂鬼(ディメンター)が滑るように一行に近づいて来ていた。少なくとも100は居る。それ以上居る事は確定的だろう。

 氷のような冷たい感覚が体の芯を貫いて、目の前が霧のように霞んでいた。最初に見えた吸魂鬼の他にも四方八方の闇の中から、次々と吸魂鬼が現れる。

 

「し、死にたく無い……死にたく無い。私は違う。違う違う違う! 私は魔女なんかじゃない。私は、忌まわしき悪魔と契約した魔女なんかじゃない! 違う、私は違う。違う違うから……殺さないで……」

 シルヴィアはそう支離滅裂な事を言い始めた。

「君は魔女だろう!? 気をしっかり持てよ、シルヴィア!」

 ロンがそう声を掛けた。

 しかし、シルヴィアはこれ以上気を持つ事は不可能だったようで、大きく身震いをした後に気絶した。

「やめろぉぉぉぉ……やめてくれぇぇぇぇぇ……頼む……」

 シリウスがそう呻き声を上げて、シリウスもまた身震いをして地面に伏して動かなくなった。

 

 そんな中、確かにルーピンとスネイプは守護霊の呪文を吸魂鬼に放っていて、ハリーがそれに参戦した頃には吸魂鬼を全て追い払う事に成功していた。

 

「──と、取り敢えず……2人を担架に乗せて城へ連れて行こう……」

 ルーピンがそう言って杖を空中に振った。すると担架が2つ出来た。ハリーとロンが協力してシリウスを担架に乗せた。

 ハーマイオニーもまたシルヴィアを軽々と持ち上げて担架の上に乗せた。

「わ、私、叫びの館でシルヴィアを運んだ時から思っていたんだけど……この子、軽すぎない? なんか、本当に中身が詰まっているか心配になる程度には軽いわよ?」

「女の子ってそう言うもんじゃ無いのかい?」

「ロン、あのねぇ……女の子もちゃんと人間なんです。女の子はこんなに軽くないんです。シルヴィアは軽すぎるから、シルヴィア基準に女の子の体重を見ていたら酷い目に遭うわよ」

 ロンの言葉にハーマイオニーが呆れた。それをルーピンが苦笑いしながら見ていた。スネイプは相変わらずの無表情だ。

 その様子をハリーは複雑な表情で見ていた。

 確かに、シリウスは吸魂鬼の接吻を受けずに済んだ。しかし、シリウスの無罪を証明するものは何も無い。

 

「2人の杖は拾ったし……城へ行こう。」

 ルーピンのその言葉に担架は呼応するように浮かび上がった。

 ホグワーツ城へ向かう道中、みんなすっかり疲れ切って黙り込んでいた。ただただ足音と後ろの森の木々がざわざわと風に揺られる音のみしか聞こえてこなかった。

 

「ホホーッ!」

 梟の鳴き声が聞こえて来た。

 聞こえて来た方を一行が見ると先ほど、〝シルヴィアのような誰か〟によって叫びの館から投げ出されていたシルヴィアの梟、オリビアだ。オリビアの鉤爪には蠢く何かが握られていた。

「スキャバーズ……じゃなくて、ペティグリュー!?」

 ロンの言う通り、それは鼠状態のペティグリューだった。

 ペティグリューの体は傷跡が残っており、オリビアに捕まる前に抵抗した事が伺えた。

 今も尚、逃げようと足掻いているが、オリビアの鉤爪によってしっかり捕まっており、とても逃げられる状態では無かった。

 

「確か、シルヴィアの梟でオリビアって言うんだっけ? 彼女、頭いいよね。シリウスは彼女とハーマイオニーの猫のクルックシャンクスに随分と助けられた。って言っていたさ」

 ルーピンがそう言いながらオリビアからペティグリューを受け取り、噛まないように落ちていた小石を食わせて、逃げないようにがっしりと掴んだ。

 

 

 それからの経緯は非常に複雑怪奇でありながらも、実にシンプルなものになった。

 シルヴィアとシリウスは即医務室送りになった。

 マダム・ポンフリーは最初、シルヴィアのみが目に入っていたようで「またこの子ですか……」と言ったが、次にシリウスが目に入って誰も聞いた事の無いような悲鳴を上げた。

 ただ、幸か不幸かそのマダム・ポンフリーの叫び声でホグワーツ教授達の大抵が医務室に駆け込んで来た。

 みんな、シリウスを視界に収めるたび、いちいち叫んで煩かった。ただ、ルーピンとハリーが主だって経緯の説明をした。

 スネイプは殆ど知らんぷりを続けており、シルヴィアの作った〝完全脱狼薬 - 固形化試作No4〟をわざとらしく眺めていた。

 その後、ダンブルドアもやって来てペティグリューの変身が解かれた。そして、ホグワーツの全教授監視の下ペティグリューは真実薬(ベリタセラム)を飲まされ、罪の全てを自白した。

 

 その後、ペティグリューは変身できないようにしっかりと拘束され、8階のフリットウィックの事務所にフリットウィックの監視付きで閉じ込められた。ダンブルドアは魔法省に梟便を送った。

 まだ太陽が上がりきらない薄明の空の時、魔法省大臣コーネリウス・ファッジは彼の部下であるドローレス・アンブリッジ、それに数名のアズカバンの役人を引き連れてやって来た。

 

「アルバス……どうやら、そのー……? シリウス・ブラックは冤罪だったと手紙に書かれていたが……本当か?」

 ファッジは疑い深く聞いた。

「あぁ、そのようじゃ。このホグワーツの教授全員と生徒4人が証人じゃ。12年前のマグル13人殺しの本当の犯人はピーター・ペティグリューという男じゃった。」

「ピーター・ペティグリュー!? それこそ、あの時シリウス・ブラックに殺された筈じゃ? わたしは見ましたぞ! あの時、マグルが13人も殺され血だらけだった道に唯一残っていた彼の指1本を!」

「いや、あの者はどうやらアニメーガスだったようじゃ。アニメーガスの能力を用いて狡猾に逃げていたようじゃ。」

 ダンブルドアがそう言うとすかさず、ファッジの横に控えていたアンブリッジが口を挟んだ。

「ダンブルドア校長。お言葉ですが、魔法省に登録されているアニメーガスに7人しかおりませんわ。」

「あぁ、そうじゃ。ピーター・ペティグリューは無登録のアニメーガスじゃったようじゃ。アニメーガスとは実に便利な術であるからの。」

 そこまでダンブルドアが言うとアンブリッジは「……そう、ですか」とどこか悔しげに引き下がった。

「その、ピーター・ペティグリューは?」

「フィリウスの監視下、彼の事務所に閉じ込めてある。案内しよう」

 

 ダンブルドアは魔法省一行を連れてフリットウィックの事務所へ向かった。

「フィリウス、失礼するぞ」

「えぇ、アルバス。しっかりと繋いでありますぞ」

 確かに事務所の真ん中、ピーター・ペティグリューは椅子に手も足も胴も縛り付けられ、まともに言葉を発せないように猿轡まで噛まされていた。

「コーネリウス? これで、シリウス・ブラックの冤罪を認めるじゃろう?」

 ダンブルドアがファッジに聞くとファッジもまたペティグリューと同じように震えていた。

「ア、アルバス? こ、この男が逆にブラックによって何かを吹き込まれたんじゃあるまいな?」

「そんな事ないですぞ。彼は確かに12年前、マグルを13人殺した。その罪をシリウス・ブラックに擦りつけた。魔法省は捕らえるべき人間を間違ったようじゃ。

 それに……この者を捕らえた者達によるとこの男はホグワーツの生徒に死の呪文をかけたそうじゃ。……まぁ、幸運な事にどうやら、不発だったようじゃがの?」

 ファッジはその言葉を聞いて先ほどよりも小刻みに震えていた。

 アンブリッジやその他役人達も屈辱を受けたような表情になっていた。

 

「コーネリウス。罪を認めると言う事は実に大切な事じゃ。それが出来る政治家こそ良い政治家なのではないかの?」

「し、しかし……これは大きな事件だ! 12年間も無実の者を……ア、アズカバンに閉じ込めていたと言う事が世間に知れ渡れば……わ、わたしは……退陣を迫られるかも知れないんだ!」

 ファッジのその態度にダンブルドアもフリットウィックも呆れ切っていた。

「それは、きちんとした説明をしないからそうなるのじゃろう? お主はきちんと事の経緯を説明し、再発防止策を練ると約束する。そして、それを実行すれば、世間はお主を一時的には責め立てるかも知れんが、必ずやお主を見直してくれる。」

「か、金を積もう! シリウス・ブラックに補償金をたんまりと出そう。人が生涯使いきれないほどの金を!

 そ、それにアルバス、君にも……その、学校運営上都合のいい案を出そう。例えば、理事会を……解散させるとか……だから、だから……どうか、この事は世間には黙っていてくれないか?」

 ダンブルドアは深い深いため息を吐いた。

「それでは、シリウス・ブラックの汚名は晴らされぬままではないかの?」

 ファッジは長い時間悩んだ。ギリギリ日が昇る前に彼は決断した。

 

「────分かった。分かった、分かった! わたしが罪を認めればいのだろう!? あぁ、もう分かった!」

 全てを投げやるようにファッジは言った。

「日刊予言者新聞に言えば良い。シリウス・ブラックは無罪だった。真犯人はピーター・ペティグリューである。ペティグリューのマーリン勲章は剥奪し、アズカバンへ投獄。魔法省大臣ファッジは再発防止策を練る為にこれより1ヶ月間、大臣室を出ない!」

 ファッジはそう宣言すると魔法省の役人は、予言者新聞に今の事を伝える為に部屋から飛び出した。

 そして、ファッジはアズカバンの役人にペティグリューを連行するように命じ、アズカバンの役人は引き摺るようにペティグリューを連行して行った。

 そうして、ファッジはアンブリッジと共に逃げ出すように出て行こうとした。

 

「お主は罪を認めた。罪を認めると言う事は非常に勇気のいる行為じゃ。その心意気、きっと皆は理解し、いつの日か賞賛するじゃろう。」

 ファッジはその言葉を聞くなり、早足で部屋から出て行った。アンブリッジはダンブルドアを半ば睨みながら出て行った。

 

「取り敢えず、上手い事行ってよかったですな。アルバス。わたしは今から城中に貼ってあるシリウス・ブラックの手配書を外して来ます」

 そう言ってフリットウィックは出て行った。

「ふむ、良い夜明けじゃ」

 1人呟くと、ダンブルドアもまた部屋から出て行った。

 

 その日は朝刊より前に号外予言者新聞が発行された。

 そこには、シリウス・ブラックの無罪、ピーター・ペティグリューの罪。……そして、ピーター・ペティグリューの逃亡が書かれた。

 シリウス・ブラックの汚名は晴れ、彼には沢山の補償金が振り込まれるらしい。しかし、ペティグリューは小賢しい事に、アズカバン監獄に引き渡される直前の隙を狙ってアニメーガスになって逃げ出したそうだ。

 アズカバン監獄は北にある。よって日が登るのが遅い。日の出前のアズカバン監獄で鼠1匹を捕まえる事は不可能だったそうだ。

 夜の闇はペティグリューの味方に着いたようだ。彼はツキがあったのだ。

 

 後に目を覚ましたシリウスがその真実に憤慨したのは別の話だ。

 

 

 

 次目覚めた時、シルヴィアは退院を許可された。

 その足で、マクゴナガルの変身術の試験。フリットウィックの呪文学の試験。それにルーピンの防衛術の試験を受けた。

 何故だか知らないが、シルヴィアがルーピンの部屋を訪れた時、ルーピンは荷造りをしていた。

 

「一体どうして、荷物をまとめていらっしゃったんですか? 終業式はまだもう少し先ですよ?」

 試験が終わり、ルーピンと共に城に戻る際、シルヴィアはそう聞いた。

「実は、今朝一番に辞めたんだ。あぁ、いや、シルヴィア。君の試験の成績はしっかりつけておくから安心してくれ」ルーピンは少し疲れ果てたような笑みを浮かべた。

「え! そ、そんな……どうしてですか?」

「まぁ……その、察しの良い生徒が居たんだ。それで、その事についてセブルスに問い詰めたそうだ。そして……その、……そう、()()()()()()、セブルスは今日の朝食の席で、狼人間だと漏らしてしまった。」

「えぇ!? たったそれだけでお辞めになるだなんて!」

「はは、ハリーも同じような事を言っていたさ。けど、たったそれだけですまないんだ。明日の今頃には、親達からの梟便が届き始めるだろう。シルヴィア、誰も自分の子供が狼人間に教えを受けることなんて望まないんだよ。」

 ルーピンはそう言って自嘲的な笑みを浮かべた。シルヴィアは物凄く落胆した。ルーピンは今までの防衛術の教授の中で1番の教授だったのだ。

 

「ルーピン先生。私、絶対に完全人狼薬を完成させてみせます。先生のような優秀な人が、狼人間である事を理由に職を追われるだなんておかしいです!」

「ありがとう。いつか完成させる日を待ち望んでいるよ。」

「それでは……その〜、今年度みたいに協力していただけますか? 今回のあの薬……正直言ってどうして効いたのかが分からないんです。ただ、ツキがあったとしか、理由付けが出来ません。また、協力してくだされば、もしかしたらそれについて分かるかも知れません。それで……感想や人狼化の状況についても梟便などで送って下さると嬉しいんですが……」

「あぁ、協力しよう。君は本当に魔法薬の才能に溢れる人だ。シルヴィアならばきっと薬を完成させてくれると信じている。」

 ルーピンのその言葉にシルヴィアは少々顔を赤くした。

「あ、ありがとうございます。必ずや、絶対に完成させます!」

 シルヴィアはそう意気込みを語ると足早に寮へ向かって行った。

 

 

「はぁ!? ルーピンが狼人間だったって知っていた!?」

 ダフネが大きな声を出した。と言うか、パンジーもミリセントも、近くに居たスリザリン生徒も驚いていた。

「あー、うん、まぁ……そうだけど……」

「それは、一体いつからなの?」ミリセントが問い詰め始めた。

「えーっと……去年? もう一昨年? とにかく、2年生の時に私はロンドンで迷ってキングス・クロス駅に辿り着けなかったじゃん? その時に、たまたまルーピン先生が助けてくれたの。その後、あー、まぁ、なんとなく成り行きで先生が狼人間だって知ったの」

 その言葉に誰もが驚いた。

「何故、何故っ! そんな重要な事を教えてくださらなかったのですか!? それを知っていれば、もっと早くにルーピンを退職に追い込む事は容易だったのに!」

 ヨランダが酷く動揺した様子で言った。

 彼女は、スネイプが代替を務めた防衛術の授業で出された課題でルーピンが人狼である事を知ってしまったようだ。そして、その事を朝食の席でスネイプに問い詰めた。

 するとスネイプはルーピンが人狼であると()()()()()()言ってしまった。

 ヨランダはルーピンと人狼に対する罵詈雑言を一頻り吐いてから、すぐにヨランダ一派の親に速達梟便を送ったそうだ。

 そのような事が起きてしまえば、ルーピンは教授職を続ける事は親からの抗議などでほぼ不可能。よってルーピンは辞職した。これがルーピン辞職の詳しい経緯だそうだ。

 

「何かしらの属性を持っている人を否定し、冷遇し、差別したところで生まれるモノは不幸の連鎖でしか無いと思うの。(ここで何人かの生徒が口を挟もうとした)──けれども、そのまま全てを受け入れる。と言う訳にはいかない。

 私は、今年度中ずっとルーピン先生の為に狼人間の為に完全脱狼薬を作っていたの。実に面白かったよ。この夏休みには、スネイプ先生に書き方を教わって論文を出すつもりなの」

 シルヴィアの話を聞いていた生徒達はみんな口をあんぐりと開けていた。

「さ、流石は……ポーションマスター様って言ったところね。それ、本当に完成させたらマーリン勲章も夢じゃないわよ……」

 ダフネがただ1人口を開いた。シルヴィアはその言葉にただただ苦笑した。

「どうして、そんな自分の実に殆どならないような事をするのでしょうか? 狼人間が人間らしい生活を手に入れたところで、貴女には関係のない話でしょう?」

 ヨランダは若干嘲笑するように言った。

「私は、他者を救えるような魔法薬学者になりたいの」

 シルヴィアのその灰色の瞳には確かに炎が揺れて、強かな信念を持った瞳をしていた。

 今年1年間ヨランダ一派として行動した生徒達は、シルヴィアに呆れ返ってパンジー以外は離れて行った。

 

「僕は君のその行動を尊いと思う。科学の発展だって同じだ。人を救う為、助ける為。人により良い生活を提供する為に発展する。だから、僕は君の行動を賞賛したい。シルヴィア・ネクロタフィオ。君はきっと素晴らしい魔法薬学者になれるさ」

 ヴァージル・マグワイアはそう言ってシルヴィアに握手を求めて来た。シルヴィアは困惑しながらも、ヴァージルと固い握手を交わした。

 

 

「はてさて……一体、シルヴィア・ネクロタフィオとは何者なのかの? 2度の死の呪文に耐え切り、自我を失ったような姿になって……。そして、その姿になった際、発した言葉は……まるで復讐を唆すような声……。ふむ……」

 ダンブルドアは難しそうな顔を校長室で1人していた。

「分からんの……もう少し情報があれば……」





修正箇所はルーピンの退職理由です。


シルヴィアのような誰か:
 復讐劇が見れなくておかんむり。シリウスとルーピンを唆して無理矢理でも復讐を完遂させようとした。スネイプは手を叩いていなかったら、普通に心のうちを全て暴露されていた。危ない。
 オフィーリアによると復讐心の塊。或いは運命、死の権化。森の意思。

オフィーリア:
 1986年12月25日に死んだ筈。リバイバル・オフィーリア。
 シルヴィアの成長を見たいと最後の最期に願った為に復活した。愛を語り出す。
 2回程折れ曲がったような杖を所持していた。

完全脱狼薬 - 固形化試作No,4:
 水薬では無くて、固形化させた脱狼薬。効いてくれた。が、シルヴィアとしてもなんで効いたのかは、不明な点が多い。

スキャバーズ:
 ロンの飼い鼠だった。しかし、その正体は小汚いおっさん(ペティグリュー)。ロンがとても可哀想。

オリビア:
 今年のホグワーツ功労賞。シルヴィアのような誰かに叫びの館から放り出されていたが、ペティグリューを捕まえて戻って来る。
 オリビアは今年中ずっとシリウスの手伝いをしていた。

真実薬(ベリタセラム)
 強力な自白剤。3滴盛られるだけで闇の帝王ですらここのうちを話す(スネイプ談)。のだが、炎のゴブレットにてクラウチJrに瓶丸ごと一本飲ませていたりする。今回も多分そう。

コーネリウス・ファッジ:
 魔法省大臣。12年前、シリウス・ブラックがマグルを13人殺した(実際はペティグリュー)現場を目の当たりにしている。
 完全な悪人では無いが、小心者で自己保身に走りやすく権力欲も強い。
 今回も自分が大臣の席から追われる事を危惧してシリウス・ブラックの冤罪をどうにか隠す方法を探ったりしている。一応、最後の最後で認めたが、1ヶ月間大臣室を出ないと宣言している。

ドローレス・アンブリッジ:
 ピンク色の服を着る幼女趣味なおばさん

ルーピンの退職理由:
 原作ではスネイプが、シリウス・ブラックを逃して自分がマーリン勲章を逃したから、その怒りとかなんとかで、ついうっかり言う。という展開です。
 しかし、今回は特にスネイプ強い怒りを覚える場面が無いので、元よりどこか不自然だと思っていました。ただ、まぁ、押し通してやろう。とそう思っていました。
 投稿者が修正前のが投稿されてから少し経って、歯磨きをしている間に天からのお告げが降りて来ました。「ヨランダが気付く展開の方がまで自然じゃね? 元からスネイプは誰かにルーピンが人狼だってバレて欲しかったっぽいし……」
 と言う事で修正する為に投稿されていた話を削除する。に至りました。急に消してしまって申し訳ないです。


アズカバンはあと1話続きます。まだその1話が出来ておらず、明日投稿出来るか不明ですが、頑張ってみたいとは思っています。
今回は投稿した話を削除し、修正。その後もう一度投稿し直すという、変な動きをしてしまし申し訳ないです。

削除された話の感想はどうやって処理したらいいのか、自分でも分からないので返信を控えさせていただきます。申し訳ないです。
 
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