ハーマイオニーがS・P・E・Wという協会と立ち上げていた。シルヴィアは反吐協会なんぞや、と思ったがどうやら違うらしい。
ハーマイオニーが言うに『屋敷しもべ妖精の正当な報酬と労働条件を確保する事』と『屋敷しもべの杖の使用禁止に関する法律改正。しもべ妖精代表を1人〝魔法生物規制管理部〟に参加させる事』を目標にしているらしい。
シルヴィアは屋敷しもべ妖精を知らなかったので、ハーマイオニーになんぞやと聞いたら、魔法使いに奴隷として酷使されている生物だと言った。
しかし、隣に居たロン曰く屋敷しもべ妖精というのは、働くことが好きな生物なんだ。と主張した。
どちらの主張が正しいのかシルヴィアには分からなかった。しかし、勝手にハーマイオニーにS・P・E・Wの会員にさせられて、尚且つ副会長させられた。そして最後には、2シックル徴収されてしまったのであまりこの活動にいい印象を持てなかった。
◆
10月に入って暫くした頃、ムーディは何と授業中に〝服従の呪文〟を生徒1人1人にかけて、呪文の力を示し、果たして生徒がその力に抵抗出来るかどうかを試すと発表した。
誰もが狂っている。と叫びたかったが、叫べるような命知らずはスリザリン寮には居なかった。
ムーディは杖を一振りして机を片付け、教室の中央に広いスペースを作った。
「け、けど……ムーディ先生。い、違法じゃ……ないんですか? 確か、同類であるヒトにこれを使用することは……」
勇敢なのか蛮勇なのか判断付かないが、アントワーヌ・ド・ブランジェがそうムーディに聞いた。
「ダンブルドアが、これがどういうものかを、体験的にお前達に教えて欲しいというのだ」
グルグルといつもは動いているブルーの瞳が真っ直ぐ、ブランジェへ注がれた。
「もっと厳しいやり方で学びたいというのであれば、誰かがお前にこの呪文をかけ、完全に支配する。その時に学びたいのであれば、わしは一向に構わん。授業を免除する。出て行くが良い」
ムーディは節くれだった指で教室の出口を差した。ブランジェは赤くなり、「そういうわけでは……」らしき事をボソボソと言った。
この圧に耐え切って授業を出て行く事が出来る生徒は、よほど周囲を見ないタイプの人間だろう。去年散々騒ぎ回ったヨランダ・ラスボーン-セルデンですら、何も言葉を発しなかった。
そうして、ムーディは生徒を1人1人呼び出して、〝服従の呪文〟をかけ始めた。呪いの所為で生徒達は次々とおかしな事をし始めた。
ルシアン・ヨークは普通の人間では到底出来ないような高速タップダンスを始めた。イザベル・ブラッドフォードは聖書の一節を読み上げながら、片足ケンケン跳びで教室を3周した。ドラコは3回回ってワンと鳴いた。
誰1人として呪いに抵抗出来た者は居ない。ムーディが呪いを解いた時に初めて我に変えるのだ。
「ネクロタフィオ」ムーディは唸るように呼んだ。
シルヴィアは気重に教室の中央、ムーディが机を片付けて作ったスペースに進み出た。ムーディは杖を上げ、シルヴィに向かって呪文を唱える。
「〈インペリオ 服従せよ〉!」
何とも言えない気分だった。ただ、脳みそがあまり物を考えたく無い。と言っているような気分ではあった。
『教科書19ページを教室をスキップしながら読み上げろ』
そんな声が聞こえた。片手に持っていたブックバンドより防衛術の教科書を取り出そうとした。ただ、同時に疑問が浮かんだ。自分がどうしてそんな事をしなければならないのだろう?
前回は、ハリーを殺す。という命令だったが故に強い疑問を抱いた。しかし、今回は教科書を読み上げるだけだ。なんらおかしな事では無い。
──いや、おかしいだろう。教科書19ページに書いてあった事は確か、結膜炎の呪いのページだ。この授業に何ら関係の無い。それに、自分はスキップなんぞ出来ない。
『教科書19ページを教室をスキップしながら読み上げろ……』
自分はそんな事をするべきなのだろうか?
ブックバンドに手をかけていたが、すっかり手は元の位置に戻っていた。
私は……今は何の時間だっけ?
『教科書を読み上げろ! スキップしろ! 今すぐにだ!』
「えぇっと……何でですか?」
口から言葉が発せられていた。そこで一気に視界が晴れる。
「よーし、それだ! それでいい! 流石だ!」
ムーディの唸り声がした。他の生徒達は感心したような声を上げていた。
「お前達、見たか……ネクロタフィオが戦った! 戦って、そして、打ちまかした! 経験が一度あるとは言え流石だ! 後の者はよく見ておけ──ネクロタフィオの目をよく見ろ。その目に鍵がある。(シルヴィアは目を床に向けた)いいぞ、ネクロタフィオ! まっことにいいぞ! 奴らはお前を支配するのには梃子摺るだろう!」
そう言うなり、ムーディは「ネクロタフィオの力量を発揮させる」と言い張り、もう一度練習させた。2度目には遂に完全に呪文を破る事に成功した。
「……やっぱり、狂っているわよ。」
ダフネが授業終わり教室から出てからそう言った。
ダフネはムーディによってミュージカルを演じるように呪文をかけられており、『やっぱり、狂っているわよ。』の言葉も歌っているようだった。
因みに、シルヴィアはミュージカルについての知識は殆ど無い。
「被害妄想が苛烈過ぎるね。アレは。行くところまで行ってしまった人だ」
ミリセントがそう言う。ミリセントはスキップしながらシルヴィアの隣を歩いていた。
「まるで、今にでも闇の魔法使いがホグワーツ城に潜り込んで襲われる。みたいな妄想に狩られてそうだよね。」
シルヴィアはボソッと言った。ダフネもミリセントもその意見には同意していた。
「まぁ、1年なんだし1年間だけはあの狂人じいさんに付き合ってやろう」ミリセントはスキップをしたままそう言った。
ここで丁度、3人は中庭に辿り着いた。中庭のベンチには珍しい事に占い学教授のシビル・トレローニーが座っていた。彼女の隣にはシルヴィアが以前見た、エトワール・ド・ノストラダムスが座っていた。
トレローニーは深刻な表情だったが、エトワール・ド・ノストラダムスの方は朗らかな笑みを浮かべていた。
「トレローニーが北塔の最上階から出てくるだなんて珍しい事もあるんだな。明日は、スネイプがグリフィンドールに加点するかな?」ミリセントがスキップをしながら、そう冗談を言った。
「何を話してるんだろ?」
「さぁ、人生相談でもしてるんじゃない? 自分は上手く予言が出来ないのでがどうすればいいですか? って」
ダフネは歌うようにそう言った。確かに、エトワール・ド・ノストラダムスは予見者だと自称していた。ならば、トレローニーの相談相手としては正しいのかも知れない。
そんな事を思いながら、次の授業である変身術の教室へ向かった。
変身術は最近、やたらと宿題が多い。マクゴナガルが言うにはO.W.L試験対策らしいが、それにしても多すぎた。他にも、魔法史のゴースト教授のビンズは、〝18世紀の小鬼の反乱〟についてのレポートを毎週提出させた。
呪文学のフリットウィックは〝呼び寄せ呪文〟の授業に備えて、3冊も余計に参考書を読むように命じた。マグル学のバーベッジはマグルの〝数学〟の参考書を解いてくるように命じた。ムーディもまた、〝服従の呪文〟に対抗するために何か読め。というあまりにも適当な宿題の出し方をした。
シルヴィアはすぐにキャパオーバーになり、ハーマイオニーに手伝ってもらってやっと終わらせる事が出来た。
◆
10月23日の夕方。玄関ホールを通りかかるとこれ以上先に進めなくなった。大理石の階段の下に立てられた掲示板の周りに大勢の生徒が群れを成して右往左往していた。
「一体、何の騒ぎなのかしら?」
「うーん……人が多すぎて何が何なのか……」
シルヴィアがそう言ったぐらいに「私が見に行ってくるよ」と行ってミリセントが人混みの中に飛び込んでいった。体格のいい彼女は生徒達の群れを掻き分けるように、押し倒すように進みすっかり最前列まで行っていた。
そして、暫くするとまた帰って来た。
「ボーバトンとダームストラングの代表団が10月30日の18時に来るそうだよ。それで、その日の最後の授業は30分短縮だって!」
「つまりは、魔法薬学の授業が短縮って訳ね」
ダフネは時間割をすっかり暗記していたようで、即座にそう返した。
「魔法薬学を30分短縮したら何も出来なくなるんじゃ無い?」シルヴィアはそう言ったが、2人は特段気にしている様子は無かった。
それから1週間。誰もが三校対抗試合の話で城内は持ちきりだった。誰がホグワーツ代表として出るのか。試合はどんな内容か、ボーバトンとダームストラングの生徒達は自分達とどう違うのかなどが話題になっていた。
シルヴィアは噂話を1つも受信しないタイプの人間だった為に、よく知らなかったが、最終的に聞いた話によればハッフルパフのセドリック・ディゴリー、スリザリンのマーカス・フリントは出るそうだ。
また、試合内容はドラゴンに単身で挑むだったり、ムーディの放つ闇の魔術に対抗する。ダンブルドアと一騎打ちする。というあまりにも現実味の無い内容だった。
そして、誰かが広めた噂によればボーバトンの生徒達は皆高慢で上から目線。スリザリンっぽい性格をしており(その意見にスリザリン生徒は反論していた)、ダームストラングの生徒達は言葉が通じるか分からない野獣のようだ。と誰かが言った。
随分と酷い言いようだ。シルヴィアは思った。
この1週間、城内はことさら念入りに大掃除がなされている事が、誰であっても気が付いた。
煤けた肖像画の何枚かが汚れをしっかりと落とされていた。肖像画の主人達はこれが気に入らず、額縁の中で背中を丸めて座り込み、ブツブツと文句を言っては、赤むけになった顔を触ってギクリとしていた。
甲冑達も突然ピカピカになり、動く時もギシギシ軋まなくなった。
管理人のアーガス・フィルチは、生徒が靴の汚れを落とし忘れると凶暴極まりない態度で脅したので、1年生の女子2人がヒステリー状態になってしまったようだ。
10月30日の授業終わり、各寮の寮監が生徒達を整列させていた。
「クラッブ、ゴイル。シャツをしまいなさい」スネイプが静かに言い放った。
「ミス・マーティンデイル。ミス・マーティンソン。頭に馬鹿げた飾りをつけるな。」2人は髪の毛につけていた蛇の飾りを取りポケットにしまった。
「着いて来なさい。」スネイプがそう命じて、スリザリン生の列は進み始める。
並んだまま正面の石段を下し、城の前に整列した。学年が幼い順に並んだので、シルヴィア達は4列目だ。
晴れた寒い夕方だった。
宵闇が迫り、禁じられた森の上に青白く透き通るような月がもう輝き始めていた。隣のダフネは少し震えていた。少し近くにいるパンジーはドラコに引っ付いて暖を取っている。ダフネはあの2人の恋仲は1ヶ月も持たない。とか言っていたが、意外と持ち堪えているようだ。
「間も無く18時だ。」
ミリセントが時計を眺めながら言った。正門へ続く馬車道を見てもまだ、何かが来る気配は無い。
「どうやってくるのかな? やっぱり汽車?」
シルヴィアはそう聞くがダフネは「多分違うと思う」と回答した。
「シルヴィアさんはどうやってくるか気になるの?」丁度近くにいたマージョリー・フェアフィールドが聞いて来た。
「やっぱり……うん。気になるよ」
「私は知ってるよ。けど、教えてあげない」
どうやら、フェアフィールドはあまり性格が良い訳ではないらしい。
「まぁ、そうシャカシャカしないで。君たちがうんと驚く方法で彼らはやって来る。楽しみっていうものは取っておいた方がいい味出すよ」
フェアフィールドはそう言うなり、まだ何の気配の無い馬車道を眺める。
シルヴィアはその間も、ダフネとミリセントで箒でやって来るのか
誰もが興奮して、宵闇に包まれた校庭を眺めていたが、なんお気配が無い。全てがいつも通りであり、静かにひっそりと動かなかった。隣のダフネはもうすっかり冷えてしまったようで、シルヴィアは自分の羽織っていたローブをダフネに貸した。
その頃、遂にダンブルドアが教職員達の並んだ最後列から声を上げた。
「ほっほー! わしの目に狂いがなければ、ボーバトンの代表団が近付いてくるぞ!」
「どこ、どこ?」
生徒達があちらこちらの方向を見ながら声を上げる。しかし、スリザリン生徒の一部はあまりにも見当たらないので「ダンブルドアの目に狂いがあったんだろ。歳だし」とか言っていた。
「あそこだ!」
6年生の1人が森の上空を指差して叫んだ。皆一同に空を眺める。
そこにはまるで一軒家が1つが丸々浮かんでいるようだ。空飛ぶ家。というのは小説では見た設定だが、やはり魔法使い。現実で空飛ぶ家を実現させるだなんて。そうシルヴィアが感心している中でも空飛ぶ大きな物はホグワーツ城に急接近して来ていた。
やがて、その姿が城の窓明かりが当たったおかげではっきり見えるようになった。それは巨大なパステル・ブルーの馬車だった。大きな館ほどの馬車が12頭の天翔ける馬に引かれて、こちらにやって来る。馬車がグングンと高度を下げて、猛烈なスピードで着陸体勢に入ったので、前3列の生徒達が後ろに下がった。
間も無くして、ドーンという衝撃音と共にディナー用の大皿よりも大きい天翔ける馬の蹄が地を蹴った。
その衝撃でダフネは見事に転んで後ろに居た5年生の生徒に受け止められていた。シルヴィアもフェアフィールドの足を踏んづけてしまい、謝り倒していた。彼女は「ま、まぁ……こうなる事は想定出来ていたし?」と言っていた。取り敢えず許してもらえた。
馬が着陸した直後、馬車も着陸した。巨大な車輪がバウンドし、金色の馬は太い首をグイッともたげ、火のように赤く燃える大きな目をぐりぐりさせた。
馬車から淡い水色のローブを着た少年が飛び降りて来て、前屈みになって馬車の底をゴソゴソと何かを探すようにいじっていた。そして、すぐに金色の踏み台を引っ張り出して来た。踏み台を正しい場所に置いた少年は飛び退く。
すると馬車の中から、ピカピカのハイヒールの片方が現れた。図書館に置いてある1人用の勉強机並のサイズだ。続いて殆ど同時に現れた女性は、シルヴィアが見た中で1番大きな人間だった。ハグリッドをも超えるほどの大きさだ。
これには、誰もが馬車、馬の大きさにも納得が言った。
玄関ホールから溢れる光の中に、その女性が足を踏み入れた時、顔が見えた。
小麦色の滑らかな肌にキリッとした顔つき。大きな黒い潤んだ瞳。鼻はつんと尖っている。髪は引っ詰められ低い位置に束ねられていた。頭からつま先まで、黒繻子を纏い、何個もの見事なオパールが襟元と太い指で光を放っていた。因みに、シルヴィアは以上の出来事を全てを見えていない。
ダンブルドアが彼女に向かって拍手をした。それに釣られて生徒達も一斉に拍手をした。シルヴィアは同学年に比べて大層背が小さいので、何が起こっているのかは把握仕切れていなかった。なので、一生懸命に背伸びをした。しかし、結局よく見えず最終的にはミリセントに抱き上げてもらう羽目になった。
「シ、シルヴィア……やっぱり軽すぎない? 朝食ちゃんと食べた方がいいと思うよ?」
「うーん、考えておくよ……」
その頃には、女性は朗らかな笑みを浮かべながらダンブルドアに近付いて、煌めく片手を差し出した。
ダンブルドアも随分と背の高い方だったが、彼女の手に接吻するのに殆ど体を曲げる必要は無かった。
「これはこれは、マダム・マクシーム。ようこそホグワーツへ」
ダンブルドアがそう言ってマダム・マクシームに歓迎の意を示した。
「ダンブリー・ドール。おかわりーありませーんか?」
マダム・マクシームは低い声でそう聞いた。
「おかげさまで上々じゃ」ダンブルドアはそう答えた。
「わたーしのせいとです」
そう言ってマダム・マクシームは巨大な手の片方を無造作に後ろに回して、ひらひら振った。
マダム・マクシームの背後には17、18歳頃に見える生徒達が並んでいた。しかし、皆着ているローブが薄すぎて震えていた。マントを羽織っている生徒は誰1人として居なかった。
「カルカロフはまだきーませんか?」
「もうすぐ来るじゃろう。外でお待ちになってお出迎えなさるかな? それとも城に入られて、ちと暖をとられますかな?」
ダンブルドアがそう尋ねた。マダム・マクシームはすぐさま、暖を取りたいと主張し、城の中へ生徒を従えて入って行った。
「ダームストラングの馬車はどのくらい大きいんだろう?」
シルヴィアはミリセントに降ろしてもらいながらそう言った。すぐさま、フェアフィールドが反応した。
「何も馬車に囚われなくていいと思うよ。もっと発想を自由に!」
フェアフィールドはそう言ったが、何処か酔っ払っているように見えた。
「じゃあ、次は空飛ぶ城で来るんだ!」ミリセントがそう言った。
「ミリセント。発想を自由に、よ。次は地下に潜る馬車で来ると思うわ」ダフネがそう言った。
シルヴィアには、ダームストラング校の生徒がどんな方法でやって来るのか皆目見当がつかなかった。
「何か聞こえてこないかい?」
誰かがそう言った。みんな少しざわめきながらもその何かを聞こうと必死になった。闇の中からこちらに向かって来る大きな、どう形容も仕様が無い不気味な音が聞こえて来た。
この音が何に1番近いのか例を出そうにもシルヴィアには、出せなかった。
「湖だ! 湖を見ろよ!」
グリフィンドールの生徒がそう指を指して叫んだ。
シルヴィアはまたしても身長の問題から何も分からなかった。
湖の黒く滑らかな水面が突然乱れる。中心の深いところで何かがざわめいている。ぼこぼこと大きな泡が表面に湧き出して、波が岸の泥を洗う。暫くすると、湖の中心から長い黒い竿のようなものがゆっくりとせり上がって来た。
そしてゆっくりと堂々と月明かりを受けて船は水面に浮上した。その船は難破船のような幽霊船のような様相で、一部生徒は恐ろしさで体を震わせていた。
数分後浅瀬に錨を投げ入れる音が聞こえ、岸へ向かう橋(タラップ)を下ろす音がした。
そうして、乗員が下船して来た。この頃にはシルヴィアはミリセントに抱き上げられて、状況を理解する事が出来るようになっていた。乗員は男子女子関係なく皆、ゴイルやクラッブような体型をしていた。
しかし、段々と城に近付いて来た時に分かった。大きな体に見えたのは、実はモコモコとした分厚い毛皮のマントを着ている所為だったのだ。城まで全員を率いて来た男だけは、違うものを来ている。
「ダンブルドア! やぁやぁ、暫く。元気かね」
先程のマダム・マクシームのように発音が変な事は無かった。彼はイギリス出身の魔法使いなのだろうか?
「元気一杯じゃカルカロフ校長」
そうして2人は握手を交わした。そして、カルカロフは城を見上げながら「あぁ、懐かしのホグワーツ城」と言って微笑んだ。やはり、彼はイギリス出身なのだろう。
「ここにこれたのは嬉しい。実に嬉しい……。ビクトール、こっちへ。暖かいところへ来るがいい……ダンブルドア、構わないかね? ビクトールは風邪気味なので」
「勿論、構わんとも」
ダンブルドアの返事を待つより前にカルカロフはビクトールという生徒を自分のところへ差し招いた。そうして、ダームストラングの生徒達は城の中へと進んで行く。
◇
ホグワーツの生徒達も間も無く、大広間に向かった。大広間にはボーバトンの生徒とダームストラングの生徒が入り口で塊を作っていた。何処に座ればいいのか分からないようだった。
ホグワーツ生が席に着き始めるとボーバトンの生徒達はレイブンクローのテーブルを選んで座っていた。皆何処か気取った表情をしていた。
ただ、1人だけ星空が写る天井を興味津々に眺めるとても長い金髪を持つ少女が居た。しかし、その少女以外、鼻にかけたような表情をしていた。
ダームストラングの生徒はドラコが呼び寄せた為にスリザリンのテーブルに着いた。彼らはボーバトンの生徒よりは純粋そうで、星の瞬く天井を見たり、何人かは金の皿やゴブレットを持ち上げて感心したように眺め回していた。
そうして、教職員テーブルに管理人のフィルチが椅子を追加している。フィルチは晴れ舞台に相応しく、去年のクリスマスに来ていた古ぼけた黴臭そうな燕尾服を着込んでいた。
ダンブルドアの右側には2脚。左側には3脚。合計5脚も椅子を置いた。2人は両校の校長だとして、他は一体誰なんだろう?
「両校の校長以外に誰が増えるのかな?」
「どうせ、こういうのは魔法省のお偉いさんって相場が決まっているのよ。まぁ、魔法省大臣は来ないと思うけど。」
ダフネはそう言った。そのくらいのタイミングで、大広間に教職員が入場して1列になって上座のテーブルに進み、着席した。
列の最後はカルカロフ、ダンブルドア、マダム・マクシーム。そしてマダム・マクシームと親しそうに話しているエトワール・ド・ノストラダムスだった。ボーバトン生はマダムが入場するとパッと起立した。
ホグワーツ生の何人かが笑ったが、気にも止めず平然としていた。マダム・マクシームがダンブルドアの左手に着席するまで座らなかった。
ダンブルドアは前に立ったままである。大広間が水を打ったように静かになった。
「こんばんは。紳士淑女、そしてゴーストのみなさん。そしてまた、今夜は特に客人のみなさん。ホグワーツへのおいでを心から歓迎いたしますぞ。本校での滞在が快適で楽しいものになる事をわしは希望し、また確信しておる。」
ダンブルドアは学生全員に向かってニッコリと微笑みかけた。
「それでは、今来ている者達の紹介を一旦いたしましょう。」
そう言って、自分の背後の教職員席へ手を向けてひらひら振った。
「ボーバトン魔法アカデミー校校長のマダム・オリンペ・マクシームじゃ」
ダンブルドアがそう紹介をするとマダム・マクシームは立ち上がり、一礼した。やはり、とんでもなく身長が高い人だ。
「そして、ダームストラング専門学校校長のイゴール・カルカロフ校長先生じゃ」
イゴール・カルカロフも立ち上がって一礼した。彼は先が縮れた山羊髭を持っていた。
「最後に、国際魔法使い連盟副会長のマダム・エトワール・ド・ノストラダムスじゃ」
エトワール・ド・ノストラダムスはゆっくりとした動きで立ち上がり、礼をした。そして、またゆっくりとした動きで座った。
「あのトレローニーと一緒にいた婆さんそんな凄い人だったのかよ……」
ミリセントは驚愕の表情だった。
「ダンブルドアが国際魔法使い連盟で会長していると考えたら中々の権力者よ……」ダフネはそう冷静に分析をした。
シルヴィアはここで血の気が引いた気がする。自分はそんな偉い人と正面衝突してしまっている。なんて無礼な事をしてしまったのだろう!
「三校対抗試合はこの宴が終わると正式に開始される。さぁ、それでは大いに飲み、食い、かつ寛いでくだされ!」
そう言ってダンブルドアが席に着いた。ダンブルドアが席に着くなり、カルカロフがすぐに身を乗り出してダンブルドアと話し始めた。
目の前の皿がいつものように満たされた。シルヴィアが今まで見た事ないような料理もいくつも並んでいた。
「屋敷しもべ妖精達は随分と大盤振る舞いをしているみたいだな」
ミリセントはそう言うなり、目の前に置いてあった何かしらの貝のような物を取って自分の皿の上に乗せた。
「これ何?」
「フランス料理よ。それは、エスカルゴ。カタツムリよ」ダフネはそう冷静に言った。
「ヴエェ!?」
ミリセントはすぐに貝を元の皿に戻した。
「フ、フランス人って気が狂ってんのか? カタツムリ食うとかどう言うセンスしてたら、食べるようになるんだよ!」
「けど、意外と美味しいわよ。1個食べてみなさいな。」
ダフネはエスカルゴを1つ取って食べ始めた。殻の中に入った身は緑色でお世辞にも美味しそうには見えなかった。ミリセントは、嫌がりながらスプーンを殻の中に入れて中を穿り出す。そして、1口食べ始めた。
「うーん……普通に貝類の食感だ。それに、ガーリックバターの味がそれなりにして……まぁ、不快感はないかな。」
ミリセントはあまり納得はしていない様子だが、美味しかったらしい。早くも食べ終わり、2個目のエスカルゴに手をつけていた。
一方シルヴィアは、マダム・ノストラダムスにぶつかってしまった事を今だに悔やんでおり、手が進んでいなかった。
「シルヴィア。何かしら食べなさいよ。」
「あ、う、うん」
そう言って目の前に置いてあった、大盛りのミートボールの皿から1つミートボールを取り出して口の中に放り込んだ。
遠くの方に居るフランスにルーツを持つアントワーヌ・ド・ブランジェは、フランス料理について隣に居る逐一、メアリー・クロッカーとセルマ・ドリューウェットに解説していたが、2人は呆れた表情だった。
歓迎会が始まって、1時間ほど経ってからテーブルの皿が大抵空っぽになった頃に、デザートが大量に出て来た。ミリセントはデザートが出て来るなり、「デザートは別腹だ!」と言って早速不思議な色をしたブランマジェを食べ始めた。
未だ、悔やんでいるシルヴィアにダフネは強制的にミルフィーユを食べさせた。
デザートを食べている途中に、知らない男性が2人ほど大広間に入って来た。2人はダンブルドアと握手をして、空いている席に着いた。
間も無く、デザートの皿もすっかり空っぽになった。
ダンブルドアが立ち上がり、大広間に緊張感が訪れる。誰もが、興奮している。
「時は来た」
ダンブルドアはそう言って、自分を見上げている顔に笑いかけた。
「三大魔法学校対抗試合は正に始まろうとしておる。『箱』を持ってこさせる前に二言三言説明しておこうかの──」
そう言って一息置いた。
「今年はどんな手順で進めるのかを明らかにしておく為じゃが……。その前に、またこちらのお2人を知らない者の為にご紹介しよう。国際魔法協力部部長、バーテミウス・クラウチ氏」
そうダンブルドアが紹介をした。すると、ダンブルドアの右側に座っていた男が立ち上がり一礼した。チョビ髭にピッチリと分けた髪が特徴的な男だった。クラウチはニコリとも手も振りもしなかった。彼が立ち上がった時も、儀式的な拍手がパラパラと起こっただけだった。
「そして、魔法ゲーム・スポーツ部部長、ルード・バグマン氏じゃ」
クラウチの時よりも大きな拍手があった。クラウチ氏よりはずっと人好きする容貌だった。また、陽気に手を降って拍手に応えた。シルヴィアは知る余地も無いが、バグマンはクィディッチのビーターとして有名だったそうだ。
「バグマン氏とクラウチ氏は、この数ヶ月間というもの、3校対抗試合の準備に骨身を惜しまず尽力されて来た。そして、お2方はカルカロフ校長、マダム・マクシーム。マダム・ノストラダムス。それにこのわしと共に。代表選手の健闘ぶりを評価する審査委員会に加わってくださる。」
〝代表選手〟という言葉が出た途端、大広間の多くの生徒達が一段と熱心に話を聞き始めた。ダンブルドアはそれに気が付いて、ニッコリした。
「それでは、フィルチさん。箱をここへ」
大広間の隅に誰にも気付かれず身を潜めていたフィルチが、今、宝石を散りばめられた大きな木箱を掲げながら、ダンブルドアの方へ進み出た。大広間の生徒の多くが立ち上がり、木箱をよく見ようとした。その所為でシルヴィアは何も見えなくなってしまった。
「一体何が入ってるんだろう?」
シルヴィアは独り言のように問う。
「代表選手を選出する為の……投票箱的な物じゃ無いかしら?」ダフネはそう言った。
「代表選手達が今年取り組むべき課題の内容は、既にクラウチ氏とバグマン氏が検討し終えている。」
そうダンブルドアが入った頃にフィルチは、木箱を恭しくダンブルドアの前のテーブルに置いた。
「更に、おふた方はそれぞれの課題に必要な手配もしてくださった。課題は3つあり、今学年1年間に渡って間を置いて行われ、代表選手はあらゆる角度から試される──魔力の卓越性。果敢な勇気、論理・推理力。そして言うまでも無く、危険に対処する能力などじゃ」
この最後の言葉で、大広間が完璧に沈黙した。
「皆も知っての通り、試合を競うのは3人の代表選手じゃ。参加3校から各1人ずつ。選手は課題の1つ1つをどのように巧みにこなすかで採点され、3つの課題の総合点が最も高い者が、優勝杯を獲得する。代表選手を選ぶのは、校正なる選者……〝炎のゴブレット〟じゃ」
ダンブルドアは杖を取り出して、木箱の蓋を3度軽く叩いた。蓋は軋みながらゆっくりと開いた。ダンブルドアは手を差し入れ、中から大きな荒削りの木のゴブレットを取り出した。
一見まるで見栄えのしない杯だったが、その縁からは溢れんばかりに青白い炎が踊っている。ダンブルドアはゴブレットをそっと机の上に置いて、大広間の全員によく見えるようにした。
「代表選手に名乗りを上げたい者は、羊皮紙に名前と所属校名をはっきりと書き、このゴブレットの中に入れなければならぬ」
そう言ってから、ダンブルドアは年齢線がどうこう、魔法契約がどうこう話していたが、シルヴィアは立候補する気が一切無かったので、ダフネと雑談をしていた。
「さて、もう寝る時間じゃ。みんなおやすみ」
そうして、生徒達は寮へ戻って行く。
その途中、グリフィンドールもスリザリンもハッフルパフもレイブンクローも関係無く、どうしたら年齢線を飛び越えられるかを議論していた。シルヴィアもダフネもその手の話には興味が無かったので、そそくさとスリザリン寮へと戻って行った。
「あ、私って嫌だ!」
ダフネが突然そう叫んだので、シルヴィアは困惑してダフネを見つめた。
「ど、どうしたの?」
「シルヴィアのローブを大広間に忘れてきちゃった! 本当にごめんなさい。今から取りに行くから」
「別にいいよ。一緒に取りに行こう」
そうして、2人は再度寮から出て行った。まだ、消灯時間まで余裕がある。大広間に忘れ物を取りに戻るくらいの事は出来るだろう。
しかし、大抵の人達は寮へ帰って行っているので、2人は人混みを逆らいながら進まなければならない。ここにミリセントが居れば楽だったが、生憎ミリセントはメアリー・クロッカーと年齢線をどうしたら飛び越えられるかの議論に花咲かせていた。
寮に戻った時よりも2倍ぐらいの時間をかけて大広間に戻って来た。大広間は生徒は疎らだった。ただ、教職員の多くはまだ残っている。見渡せば、あのマダム・ノストラダムスも残っていてとても長い金髪を持つ小柄な少女と話していた。
「あれ? ローブが無い……」
2人が座っていた場所はすっかりと綺麗にされていて、ローブの跡形も無かった。誰かが片付けてしまったのだろうか?
シルヴィアとダフネは座っていた椅子の下やそこら周囲を探して回ってみたが、ローブのある気配は一切無かった。
「おや、貴女達どうしたのですか? 忘れ物でもされたのですか?」
マクゴナガルが近づいて来てそう聞いて来た。
「その……私が、寒がっていたからシルヴィアが私に自分のローブを貸してくれたのですが……大広間に置いて来てしまって……」ダフネはそう申し訳なさそうに言った。
「あぁ、スリザリンのテーブル下に落ちていたローブはミス・ネクロタフィオの物だったのですね。スネイプ先生が寮へ届けに行きましたよ」
どうやら、ローブとシルヴィア達は行き違いになっていたようだ。
「まぁ、そんな事もありますよ。ところで、お2人とも暇ですよね?」
「え、えぇ……──「ならばよろしい。ボーバトンの生徒を校庭まで案内してやってください。彼女、上級生に置いてかれてしまったようで帰り方が分からないようなのです。いいですね?」
マクゴナガルは2人が何か言う前に、そう押し付けていた。
別に2人は、人助けする事を特段嫌っているような性分はしていないので、構わなかったがマクゴナガルの圧は凄まじかった。
「は、はい……」
「ミス・ノストラダムス! 貴女を送ってくれる生徒が見つかりましたよ!」
マクゴナガルは教職員テーブルの方へ声をかけた。すると、マダム・ノストラダムスと会話をしていた金髪の少女が振り返って、こちらへ急いでやって来る。
来る途中に何度か転けて危なかっしい少女だった。少女はホグワーツ生で言えば1年生か2年生ぐらいに見えた。
ミス・ノストラダムスと呼ばれていたが、もしかして彼女こそがマダム・ノストラダムスの玄孫なのだろうか?
「ほんとーですか、Professeur!」
彼女の瞳は紺碧色で美しかった。
「このミス・ネクロタフィオとミス・グリーングラスが貴女を安全にボーバトンの馬車まで案内してくれます。ご安心なさい」
「Merci bien。ありがとーございます!」
ミス・ノストラダムスはそうマクゴナガルに言って一礼してから、シルヴィア達の方へ向いた。
「わたーしは、ミレイユ・ノストラダムスです。ミレイユとおよびくださーい。よろしーくおねがいしまーす」そう言って仰々しく一礼をした。
「えぇっと……私は、ダフネ・グリーングラス」「わ、私はシルヴィア・ネクロタフィオ……」
そう言うとミレイユは驚愕の表情をした。
「ど、どうしたのかしら?」ダフネが問うが返事は無い。この頃にはマクゴナガルも忙しなく教職員テーブルの方へ戻って行ってしまっていた。
「とっりあえず……い、行こうか?」
シルヴィアがそう言うと急に気を戻したようにパッと表情を変えた。
「そうでーすね。いきましょー!」そう上機嫌に言った。
シルヴィアとダフネは顔を見合わせて、どこか気不味い表情をした。
「おふたーりは、おとーもだちなのでしょーか?」
「まぁ……そうよ。入学してからずっと友達よ」
ダフネはそう返した。ミレイユはどこか安心したような表情をした。
「よかたーです。シルヴィーさんには、おともーだちが、いないよーにみえたので、あんしんでーす」
ミレイユは何を心配しているのだろうか。そう思った頃、ついに玄関ホールを抜けて冷たい風が3人の髪を揺らした。
「このくにーは、さむすぎまーす……」ミレイユは体を震わせながら言った。
フランスとイギリスの温度差など、シルヴィアは知り得ないが、もう少し厚着するべきであるだろうとは思った。
間も無く、ボーバトンのあの大きな馬車が見えるようになって来た。
しかし、そこでミレイユは突然立ち止まり、蹲った。シルヴィア達が心配になって駆け寄ると唐突に顔を上げて月を見た。そして、先ほどの声とは全く違う嗄れた恐ろしい声を出した。
「Des ombres déformées se cachent dans l'arène de la lumière, des visages se superposent à des figures. Une personne n'est pas discernable à partir d'un seul aspect.
Après que le sang a été versé et les vies dispersées dans le grand Jardin de la Sagesse, le roi détruit réapparaîtra grandi dans les ténèbres avec l'aide de serviteurs et de vengeurs.
Une jeune fille sera trompée par un jeune homme et emmenée dans les ténèbres. Les ténèbres la ramènent dans le passé et brisent la prison de l'oubli. L'éveil de la folie rejette la lumière et embrasse les ombres. Alors, elle peindra la scène de la ruine. 」
「な、何!? フ、フランス語? わ、私……少ししか知らないよ! ダフネは分かる?」
「ちょ、ちょっと……難しい言葉多すぎて何を言っているのかさっぱりだわ……っていうか、長すぎて全然分からなかったわ……」
ダフネもシルヴィアも焦り始めた。フランス語で何か難しい事を言っている事しか2人には分からなかった。
「光の舞台には歪んだ影が潜み、人物の上に顔が重なっている。人物は一面からは判別できない──」
ミレイユが立ち上がるより前に、後ろから声がした。2人が後ろを振り返ると、あの腰の曲がった深い紫色のローブを身に纏ったマダム・ノストラダムスがこちらに向かって歩いて来ていた。
「大いなる知恵の園で血が流され、命が散った後、滅ぼされた王は召使と仇の力を助けを借りて、闇の中に再び偉大な姿で現れる。
若い娘が若い男に騙され、闇の中に連れ去られる。闇は彼女を過去へと連れ戻し、忘却の牢獄を打ち破る。狂気の目覚めは光を拒絶し、影を受け入れる。そして彼女は破滅の情景を描く。」
マダム・ノストラダムスはしっかりとした声で、予言じみた事を言った。ミレイユの言葉の英訳なのだろうか? シルヴィアとダフネは顔を見合わせて困惑を深める。
「すまないの……わしの玄孫がお嬢さん達を怖い目に遭わせてしまったようで……」
そう言うとマダム・ノストラダムスはニッコリと笑った。
「今のは……よ、予言ですか? ……やっぱり、あの有名なノストラダムスの名前を持つ子ですし……?」ダフネがそう恐る恐る聞いた。
「確かに、今のは予言で間違いない。けれども、予言を信じすぎてはいけないのだよ。予言は所詮、運命が書き上げた歴史に過ぎない。
確かに、運命の力は強大なもので間違いないが、運命に囚われる事が予言に囚われる事が果たして
マダム・ノストラダムスはそう真剣な表情でシルヴィア達に言った。ミレイユよりも淡いブルーの瞳は2人の目をしっかりと見据えた。
「……──と私の育ての親はよく言っていたんじゃ。」
そう言うなり、ニッコリと朗らかな笑みを浮かべた。
「ミレイユをここまで運んでくれてありがとう。わしがボーバトンの馬車まで送り届けよう。」
そう言うなり、ローブのポケットから杖を取り出してヒョイっと振るう。するとミレイユ・ノストラダムスの体は宙へ浮かんだ。
「……
微かに意識を戻したミレイユはそう言った。
「えぇ、
流石に、シルヴィアもダフネもその程度のフランス語の知識はあったので返事を言う事は出来た。
「──La première tragédie se déroulera ce soir.」
エトワール・ド・ノストラダムス:
国際魔法使い連盟副会長を務めているお偉いご婦人。
エスカルゴ:
カタツムリ。投稿者は食べた事ないので、食感や味は適当です。サイゼリヤにあるのでいつか食べてみたいですが、普通に怖いです。
ミレイユ・ノストラダムス:
ルナ・ノストラダムスの玄孫。ボーバトンに所属している少女。シルヴィア達よりも3学年年下。予見の才能がある。
ミレイユ・ノストラダムスの予見:
フォントの問題で物凄く見辛いので、一応貼っておきます。ちなみに、DeepL翻訳製です。
Des ombres déformées se cachent dans l'arène de la lumière, des visages se superposent à des figures. Une personne n'est pas discernable à partir d'un seul aspect.
Après que le sang a été versé et les vies dispersées dans le grand Jardin de la Sagesse, le roi détruit réapparaîtra grandi dans les ténèbres avec l'aide de serviteurs et de vengeurs.
Une jeune fille sera trompée par un jeune homme et emmenée dans les ténèbres. Les ténèbres la ramènent dans le passé et brisent la prison de l'oubli. L'éveil de la folie rejette la lumière et embrasse les ombres. Alors, elle peindra la scène de la ruine.
──La première tragédie se déroulera ce soir.