呪いの少女と祝福された世界   作:佳山針之介

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第47話 炎のゴブレッドの影

「──けど……あのミレイユって子が言っていた予言……こう、なんと無く察せるところがあったわよね」

 ダフネがそう話を切り出した。2人は寮へ帰る道中、ずっとあの予言の事が引っかかっており、会話にも引っかかっていた。

「う、うん……〝光の舞台〟ってのは……やっぱり三大魔法学校対抗試合の事だよね?」

「そうよね。それで、〝大いなる知恵の園〟はホグワーツ。〝滅ぼされた王〟は……れ、例のあの人かしら?」

 ここで2人は背筋がゾワっとした。

「つまりは……〝例のあの人〟が今年復活するって言う予言? だとしたら、〝人物の上に顔が重なっている〟ってのはなんなんだろう……それに、〝命が散った後〟って明言されているから……か……必ず、今年誰かが死んじゃうのかな……?」

「けど、最後の最後がよく分からないわ。〝若い娘〟とか〝若い男〟は一体誰なのかしら?」

 2人はうーんと唸りながら考え始めたが、答えは導けなかった。

「……やっぱりマダム・ストラダムスが言っていた通り、予言に囚われすぎる事はよくない事なのよ」

「だよねぇ……うん。」

 ダフネがそう言ってシルヴィアもどうにか予言を忘れる事を務めた。

「けど……ミレイユって子が最後に言ったの……聞き取れたかしら?」

 ダフネはシルヴィアにそう聞いた。シルヴィアはここで最後に聞いた言葉が空耳では無かった事を知り、軽い無力感に苛まれる。

「……うん。『La première tragédie se déroulera ce soir.』英訳すると、『最初の悲劇は今晩起こるだろう』」

 そう言った時、丁度目の前にゴブレットが置いてあった。

 2人は記憶の彼方で、ダンブルドアが玄関ホールにゴブレットを置くと言っていた事を思い出した。ゴブレットの周りの床には年齢線と思われる光る線が引かれていた。

「これって本当に入れないのかな?」

 シルヴィアはそう言いながら、年齢線を飛び越えてみる。特に何も起きず、ゴブレットに近付く事に成功してしまった。

「あれま……」シルヴィアはどこか気不味い感じがした。大魔法使いであり、大賢者であるダンブルドア直々の魔法を見事に破ってしまったのだ。

「ダンブルドア校長先生、寝ぼけながら魔法をかけた──「何をしている!」

 いきなり大きな声が聞こえて驚いた。

 シルヴィアは焦ってダフネの方へ飛び出した。勿論、シルヴィアはバランスを崩した。勿論、ダフネもそんなシルヴィアを受け止められるほど強靭な体を持っていない。

 2人は、抱き合いながら共倒れした。

「いっ、たたた……」「ご、ごめん……ダフネ……」

「何をしているんだ?」

 2人が見上げるとムーディが立っていた。いつもの通り、怖い顔だ。今は夜という事もあっていつもより恐ろしく見えた。

「ちょ、ちょっと……人を送っていて……ボーバトンの子が道に迷っていたみたいで……」

 ダフネが倒れたまま状況説明をした。ムーディは無表情ながら若干困惑しているように見えた。

「……そうか、起きたらどうだ?」

「は、はい……そうですね」

 シルヴィアはそう言って立ち上がり、ダフネの腕を引いて起こした。

「と、ところでムーディ先生はどうしてここへ?」

「わしの役目とは闇の魔法使いがホグワーツに紛れ込んでいないか探る事だ! 人の出入りが多い今の時期こそ警戒せし時なのだ! 特に8月のクィディッチ・ワールドカップでは、闇の印が上空に放たれた! 闇の魔法使いはすぐそこにいるのだ!」

 そういつもの通りの大声で言った。シルヴィアとダフネはムーディに恐れつつ、若干呆れていた。

「分かったならば、さっさと寮へ迎え! 夜は闇の魔法使いの領域だ。子供はさっさと帰るんだ!」

「は、はいぃ〜」

 2人は逃げ出すように寮へと向かった。

 5分後、2人は寮の前に居た。シルヴィアが寮の合言葉メモ帳を取り出す前にダフネが合言葉を発した。そうして、2人は寮内に入る。

 談話室はすっかり人気が無く、暖炉が1人でパチパチと燃えていた。

「はぁ……さっきはムーディのお陰でちょっと忘れる事が出来たけど、予言についてまた考えちゃうよ……」

「だめね、考え過ぎはよくないのよ。さっさと寝てしまいましょう」

「うん、そうだね」

 寝室に戻った際、ミリセントとパンジーにどこに行っていたのか。としつこく問われた。2人は予言の事以外は素直に話した。

「あ、スネイプがシルヴィアのローブ大広間から持って来ていたよ。」

 そう言ってミリセントがシルヴィアにローブを渡してくれた。これで、当初の目的はやっと果たされた事になる。

 

 そうして、4人はそれぞれにおやすみを伝えたが、やはりシルヴィアとダフネは中々眠りに着く事が出来なかった。

 

 

「君は本当に実行するつもりかい?」

 蝋燭が2本だけ灯っているだけの暗い部屋の中、暖炉前の安楽椅子に座った女が、立っている腰の曲がった老女に聞く。

「勿論そうじゃ。お養母様。あのような幼き子が酷い運命に囚われるのならば、わしのような先短き年長者がどうにかしてやるのが務めじゃろう」

「しかし、この運命は謂わば絶対的なものだ。私としてもどう足掻けばいいものなのか分からない。」

 女は降参。と言う身振りをした。

「けれども、お養母様はいつだって申した。予言を信じすぎてはいけない。予言は所詮、運命が書き上げた歴史に過ぎない。運命・予言に囚われすぎるな。死にゆく者であれば、抗え。っと……」

 そう言って老女は朗らかに笑った。

「わしにもしもの事があれば、お母様には……──「あまり悪い妄想に囚われるべきでも無いよ。君はまたこの部屋に帰ってくる。いいね?」

「……」

 老女は何も言わなかった。

「わしは……もう行こう。お養母様、貴女様に拾って頂いた事。そして育ててくださった事。感謝しても感謝しきれない。ありがとうございます」

 そう言って老女は部屋を出て行った。深い紫色のローブは闇に溶け込むのが早く、すぐに老女の姿は見えなくなった。

「戦場へ向かう兵士みたいな事を言って……自分の事をわしなんか言って、貫禄を付けようとして……本当にいつまで経っても愚かな娘だ。」

 女はそう部屋で1人呟いた。

「……」

 暫くすると、部屋に灯っていた蝋燭が1本ふっと消えた。

 

◇ 

 

 結局、シルヴィアとダフネは殆ど眠る事が出来ず、ミリセントとパンジーが朝食に行った頃に眠り始めた。スリザリン寮は日が当たる事が無い。なので、こんな事が出来たのだ。

 逆に言えば、シルヴィアとダフネが朝の目覚めがやたらと悪いのは日が当たらない所為かもしれない。

 そうして、ミリセントが起こしに来た夕方17時より1日の行動をスタートさせた。

「全く、こんなに怠惰なホグワーツ生は後にも先にも2人ぐらいだよ!」

「そんな事ないと思うけど……」

 ダフネはそう言うが、中々な土曜日の過ごし方をしたのは事実である。シルヴィアもダフネも若干の罪悪感に苛まれていた。

 

 大広間の中に入った時、大広間はいつも以上に窮屈でほぼ満員だった。

 昨晩、玄関ホールに置かれていたゴブレットは今や空席のままのダンブルドアの席の正面に置かれていた。

 そして、例年通りにハロウィーン・パーティーが催された。

 

「私の予想に過ぎないのだけど……今年も何かしら起きると思うわ」ダフネがやはりあまり食事を食べないシルヴィアに向かってそう言った。

「なんで?」

「今までの事を考えてみなさいよ。1年生の時はトロール侵入事件。2年生にはフィルチの飼っている猫がスリザリンの継承者によって石化された。そして、3年生には当時は脱獄犯シリウス・ブラックがホグワーツ城に侵入して来た。今年も何か事件が起こるに違いないわ」

 ダフネはドヤ顔で言った。そんな事件なんて起きてほしくないけど。とシルヴィアは心の中で言った。

「今度は……そうだな、代表選手に教授が選ばれるとか! あとは……魔法省のお偉いさん方が何者かに殺さるとか。そう言うのがテンプレってやつかな? ダフネ」

 ミリセントまでそのノリに乗って来た。

「どっちも嫌だよ。何も起きないように祈っておこうよ」

「まぁ、そうね。」「そうだな」

 

 そんな会話を重ねているうちにテーブルの上の金の皿が綺麗さっぱりと、空になった。大広間のガヤガヤが急に大きくなったが、ダンブルドアが立ち上がると、一瞬にして静まり返った。

 ダンブルドアの両脇に座っているカルカロフとマダム・マクシームもみんなと同じように緊張と期待感に満ちた顔だった。

 ルード・バグマンは生徒の誰にという事もなく、笑いかけてウィンクをしている。マダム・ノストラダムスも生徒達に対して朗らかな笑みを浮かべている。

 しかし、バーテミウス・クラウチは全くの無関心で殆どうんざりとした表情だった。

「さて、ゴブレットはほぼ決定したようじゃ。わしの見込みでは後1分ほどじゃの。さて、代表選手の名前が呼ばれたら、その者達は大広間の1番前に来るが良い。そして、教職員テーブルを沿って進み、隣の部屋に入るよう。そこで最初の指示が与えらられるであろう」

 ダンブルドアは杖を取り、大きく一振りした。途端、くり抜きかぼちゃを残して、後の蝋燭が全て消えて、大広間が殆ど真っ暗になった。

 ゴブレットの炎は今や大広間の中で煌々と輝いていた。キラキラした青白い光は目に刺さって痛かった。

「一体、誰になるのかね?」ミリセントが小声でダフネに聞いた。

「まぁ、少なくともフリントはあり得ないでしょ。あんな能無しに論理・推理力なんてありゃしないわ」

 ダフネは今まで一番の毒舌を発揮して来た。フリントに何か恨みがあるのかと疑ったが、シルヴィア目線でみてもフリントに論理・推理力があるようには思えなかった。

 

 その途端、ゴブレットの炎が突然また赤くなった。火花が飛び散り始めた。次の瞬間、炎がメラメラ宙を舐めるように燃え上がり、炎の先から焦げた羊皮紙が1枚ハラリと落ちて来た。全員が固唾を飲んでいた。シルヴィアとダフネですら緊張した面持ちで、見つめていた。

 ダンブルドアがその羊皮紙を捕らえ、再び青白くなった炎の明かりで読もうと、腕の高さに差し上げた。

「ダームストラングの代表選手は、ビクトール・クラム!」

 ダンブルドアはそう声を張り上げた。大広間中が拍手の嵐、歓声の渦だ。ビクトール・クラムと言う生徒はスリザリンのテーブルに居たそうで、立ち上がって前屈みにダンブルドアの方へ歩いて行った。まもなく、右に曲がり教職員テーブルに沿って歩いてその後ろの扉から、クラムは隣の部屋へ入って行った。

「ブラボー、ビクトール! 分かっていたぞ、君がこうなるのは!」大広間中の拍手の音に負けない声でカルカロフがそう叫んだ。

 次第に拍手とお喋りが収まった。今や全員の関心は、数秒後に再び赤く燃え上がったゴブレットに集まっていた。炎に巻き上げられるように、2枚目の羊皮紙が中から飛び出した。

「ボーバトン代表選手は、フラー・デラクール!」

 シルバーブランドの豊かな髪を持つ美女が立ち上がった。男子は大抵、釘つけになるぐらいには美人だった。

「あれは……ヴィーラの血でも継いでいるのかしら?」

 ダフネはそう分析を始めた。

 一方ボーバトンの生徒が集まっているレイブンクローのテーブルを見ると、ボーバトンの生徒の一部が泣いたり喚いたりで大騒ぎだった。

 フラー・デラクールも隣の部屋に入って行くと、また沈黙が訪れた。今度は興奮で張り詰めた沈黙がビシビシと窓を割ろうとしているようだった。次は遂にホグワーツの代表選手だ。

 3度目の赤い炎が見えた。炎が高く上がり、羊皮紙がハラリとダンブルドアの手元に落ちて来た。ダンブルドアはゴブレットの青白い光に照らして、羊皮紙に書かれた文字を読んだ。

「ホグワーツ代表選手は、セドリック・ディゴリー!」

 その途端、ハッフルパフのテーブルから大歓声が舞い上がった。ハッフルパフ生は総立ちになり、叫び、足を踏み鳴らした。ディゴリーがニッコリと笑いながら、その中を通り抜け隣の部屋へ向かった。

 ディゴリーへの拍手があまりにも長々と続いたので、ダンブルドアが再び話し出すまで暫くの間を置かなければならなかった。

 ダフネは「まぁ、大体予想通りね」と言った。ただ、あまり面白くないものを見るような表情をしていた。

 

「結構、結構!」

 大歓声がやっと収まり、ダンブルドアが嬉しそうに呼びかけた。

「さて、これで3人の代表選手が決まった。選ばれなかったボーバトン生もダームストラング生も含め、みんな揃ってあらん限りの力を振り絞り、代表選手達を応援してくれると信じておる。選手に応援を送る事でみんなが本当の意味で貢献でき──」

 ダンブルドアが突然言葉を切った。何が気をちらせたのか、誰の目にも明らかだった。そして、その誰もが目を見開いていた。

 ゴブレットが再び赤く燃え上がった。そして、次の瞬間、羊皮紙がはらりと飛びダンブルドアはその羊皮紙を反射的に捕らえた。

 ダンブルドアはゴブレットの青白い炎に掲げて、そこに書かれた文字をジッと見つめた。両手で持った羊皮紙をダンブルドアは暫く眺めていた。長い沈黙の中、大広間中の目がダンブルドアに集まっていた。

 やがて、ダンブルドアが咳払いをして、羊皮紙に書かれた名前を読み上げた。

 

「ハリー・ポッター」

 

 大広間の目が一気にハリー・ポッターその人に注がれる。

 ダフネの予想通りに事件は起こった。そのダフネでさえ驚いて目を見開きながらハリーを見つめていた。ミリセントも同じような反応だった。

 誰も拍手しない。誰もが冷たい目線をハリーに向けていた。

 やがて教職員テーブルでは、マクゴナガルが立ち上がり、ルード・バグマンとカルカロフの後ろをさっと通り、切羽詰まったように何事かをダンブルドアに囁いた。ダンブルドアは微かに眉を寄せ、マクゴナガルの方に体を傾け、耳を寄せていた。

 バグマンは当惑したような、少々興奮しているような表情をしていた。一方、カルカロフやクラウチ、マダム・マクシームは怒ったような表情をハリーに向けていた。

 あの、老魔女マダム・ノストラダムスは真剣な表情でハリーを見つめていた。彼女の瞳は何かを知っている。と言う色をしていた。

 

「ハリー・ポッター! ハリー! ここへ来なさい!」

 ダンブルドアが名前を呼んだ。ハリーはハーマイオニーに背中を押されて、困惑した表情のままダンブルドアの方へ向かい、ダンブルドアに促されるままに隣の部屋へ入って行った。

 

「……少々、異常事態が発生した。教職員で話し合いをする為に皆の者は、寮へ帰るといい。大丈夫じゃ。三大魔法学校対抗試合は問題無く開始される」

 そう言って、ダンブルドアは隣の部屋へ急いで入って行った。

 皆一様に困惑の色を見せていたが、特にハッフルパフのテーブルから怒りの色が滲み出して来た。

 その後、マクゴナガルが寮へ戻るよう宣言し生徒達は寮へ帰って行った。

 

「──やっぱり……ポッターが自分で入れたとは考えられないと思うの。そこまで出しゃばりと感じた事は無いし」

 ダフネがそう言った。

「まぁ、ポッター自身はトラブルに巻き込まれている側だからな。生まれながらに。」

 ミリセントも同調するようにそう言った。

 しかし、他の生徒達は思っていないようだった。ドラコなんかは、ポッターはいかに卑劣な人間であるかをダームストラング生に熱弁していた。

 しかし、ダームストラング生は早口英語(皮肉マシマシ)に耐えきれていないようで、ドラコが何を言っているのか理解出来ていない様子だった。

「じゃあ……誰かが、ハリーの名前を入れたって事?」

「そうねぇ……明日辺りにポッターに聞いてみてよ。何か心当たりはないかって」

「うん。もちろん。最初からそのつもりだけど……」

 シルヴィアはここで、ミレイユが言っていた言葉を思い出した。『La première tragédie se déroulera ce soir.──最初の悲劇は今晩起こるだろう』

 今晩と言っていた時の時間は確認していなかったので、もしかしたらあの時点で10月31日なっていたのかもしれない。つまり、ミレイユの予言は忠実に果たされたのだ。

 一気に背筋が凍った。

 その事は、ダフネも理解したようでシルヴィアとダフネは目を見合わせ口をパカパカと開け閉めをした。

「どうしたの、2人とも」

 ミリセントがそう聞いて来た。2人は予言についてミリセントにも話すか悩んだが、結局話し始めた。

 

「──なるほど、つまりこの対抗試合期間中に絶対に人が死ぬ。っと……一体誰になるんだ? と言うか、対抗試合……中止させた方がいいじゃない?」

「そうだけど……今の魔法界にまともに占いやら予言を信じている人なんて少ないわよ。ダンブルドアもあまり占いを信じてない。って聞いた事あるわ……」

 ダフネは頭を抱えながら言った。

「まぁ……取り敢えず、明日にはハリーに色々と聞いてみるよ……」

 

 

 深夜の校長室。そこには狼狽し切った様子のマクゴナガルが居た。その近くにはスネイプ、ムーディ、それに椅子に座ったエトワール・ド・ノストラダムスが居る。そして、全員が正面のダンブルドアを見ていた。

「こんな事が続いてしまえば……最初は闇の印。次はこれ!」

 マクゴナガルは焦りを感じている様子だった。それに、ダンブルドアの方もあまり余裕が無いようだった。

「どうすればいいと言うのじゃ……」

「やめるのです。ポッターを競技に出さないでください!」マクゴナガルはそう主張した。

「規則じゃ、バーティも言ったじゃろう?」

 その言葉にマクゴナガルは唖然とした態度を取った。

「バーティや規則がなんです! いつから魔法省に阿るようになったのですか!」

 マクゴナガルはダンブルドアに近づきながら、そう再び主張をする。ダンブルドアはその主張を少々迷惑そうな表情で見ていた。

「校長、確かに……偶然の成せる技とは思えません。しかしながらもし……事の真相を見抜こうと思うのなら、今は手を出さず成り行きを見ては……どうかと」

 スネイプがマクゴナガルにダンブルドアに近付きながらそう言った。

「な、手を出すなと? ポッターを囮に!?」

「同感じゃ」

 その言葉にマクゴナガルが良かった。と言いたげなため息をついた。

「セブルスにな」

「はぁ……?」マクゴナガルはダンブルドアに心底失望したような声を出した。

「で、では……エトワール。貴女はどうお思いでしょうか?」

 マクゴナガルが後ろの方で座っているエトワール・ド・ノストラダムスに問う。ノストラダムスは少しの沈黙の後に口を開ける。

 

「──わしだって、ミネルバ。君の意見を尊重したい。しかしながら……例え、ハリー・ポッターを代表選手にするという運命を避けたところで、別の運命がその空白を埋めるに決まっておる。

 それは……例えば、城へ侵入した死喰い人の手によって命を落とす運命を辿るかもしれぬ、あるいはヴォルデモートがなんらかの方法で蘇り、必然として彼を殺しに来るかもしれん。

 結局はどうしたって、この絶対的な運命には抗いようが無いのじゃ。彼が『ハリー・ポッター』という存在である限り、その運命から解き放たれることはないのだ。ならば、せめてこちらの観測が及ぶ範囲で、その成り行きを見届けるのが最適解ではないかの?」

「なんて……事を……」マクゴナガルは口をあんぐりと開けていた。

 

「アラスター、ハリーから目を離さんでおくれ。」

「任せておけ」

 ムーディが杖をコツッと言わせながら、前に出て来た。

「本人には内密にな。ただでさえ、不安な筈じゃ。試練を前にして──我々としても不安じゃ」

 その言葉に、マクゴナガルは呆れ返って校長室を1人出ようとした。

「ミネルバ、少し話をしよう」ノストラダムスはそう言ってマクゴナガルを引き止めた。

「な、なんですか?」

「ちょっとした雑談じゃ」

 そう言うとのんびりとした動きで立ち上がり、深緑色のローブをひらひらさせながら、マクゴナガルの前に立って校長室から出て行った。

 

「アルバス、あのノストラダムスとは一体何者なんだ?」

 ムーディがふと問いかけた。

「あの者は……わしにも掴みにくい存在じゃ。予見の才能に秀でているようじゃが……あまりそれを開け出したりもせぬ。されども、才能は本物じゃ。国際魔法使い連盟副会長に選出された理由だって、推薦じゃ。彼女は最初、断ったそうじゃが推薦者があまりにもしつこかったが故に、その役目を負ったそうじゃ……」

 ダンブルドアは大層不思議そうに語った。

「それは、アルバスだって同じじゃないか」

 ムーディにそう突っ込まれて、ダンブルドアは少し笑った。

「……ともかく、警戒は怠らないで欲しい。本当にヴォルデモートが復活のチャンスを虎視眈々と狙っている可能性がある。そして、それにハリーが巻き込まれる可能性がある。セブルス、アラスター。よく注意しておくれ」

「仰せのままに」「分かった」

 そうして、スネイプもムーディも校長室から出て行った。校長室から出て行く前に、2人は睨み合っていたがダンブルドアは気にしていない様子だった。






またまたストックがないので休載です。
4月からは新生活なので、本当に暇がない気がします。なんとか暇を捻出して続きを書きたいとは思っていますが、本当に忙しいので4月中の更新は絶望的です。5月のゴールデンウィーク辺りにまた復活できたらいいですね。
一応、Twitterの方で進捗報告やらその他戯言やらを言ってたりします。そちらもよろしくお願いします。
そして、これより休載に入るので、ここで発表しておきます。4月7日はシルヴィアちゃんの誕生日です。(一度しか描写されてないけど)心の片隅でシルヴィアちゃんの誕生日を祝ってあげてください。
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