呪いの少女と祝福された世界   作:佳山針之介

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明日も投稿出来たら幸せだな。と思っています。(ナメクジ並みの更新速度で申し訳ないです)


第49話 クソデカ・ドラゴン

「シルヴィア? 貴女があの有名な〝殺戮卿〟の子孫ざんすね? 少しお話よろしくて? ええ、いいわよね」

「えぇっと……その、貴女はどこの──どなたでしょうか?」

 

 シルヴィアは今、極めて奇妙な状況下に立たされている。

 つい先ほどまで、ハーマイオニーと一緒にハリーを〝杖調べ〟へと見送ったばかりだった。スリザリン寮へと戻ろうとしていた道中、シルヴィアは突然、謎の赤紫のローブをまとった魔女に声をかけられ、空き教室へ引きずり込まれてしまったのだ。

 シルヴィアはこの目の前の魔女が何者であるか一切見当がつかない。(これはシルヴィアの世間知らずが原因だと考えられる)

 ただでさえ目立つローブを着ている目の前の魔女は、宝石で縁が飾られた眼鏡をかけている。ワニ革ハンドバッグをがっちり握った指の先は、真っ赤に染めた5センチものの爪だ。言葉遣いは上品……のつもりのようだが、全体的な印象としては、上品さとはほど遠い。むしろ下品の方に触れている気がする。

 

 シルヴィアの「貴女はどこのどなたでしょうか?」と言う問いに答える気は一切無いようで、ワニ革バッグを漁っていた。何やら探しているものがあるようで、目的の物はすぐに出てきた。

 黄緑色の長い羽根ペンと羊皮紙1巻きを取り出したのだ。その羽根ペンはシルヴィアが今までの魔法界暮らしの中で見て来た羽根ペンの中で群を抜いて派手だった。

 魔女は〝ミセス・ゴシゴシの魔法万能汚れ落し〟の木箱を机代わりにし、その上で羊皮紙を広げた。黄緑の羽根ペンの先を口に含むと、魔女は見るからに美味そうに少し吸い(阿片でも入っているのだろうか?)、それから羊皮紙の上にそれを垂直に立てた。

 羽根ペンは僅かに震えながらも、ペン先でバランスを取って立った。

「テスト、テスト……あたくしはリータ・スキーター、〝日刊予言者新聞〟の記者です」

 目の前の魔女、リータ・スキーターが羽根ペンに向かってそう言うと羽根ペンは羊皮紙を滑るように勝手に走り書きを始めた。

 

 魅惑のブロント、リータ・スキーター、43歳。その仮借なきペンは多くのでっち上げの名声をペシャンコにした。

 

 その文字が現れた途端、すぐにリータ・スキーターと言う魔女は羊皮紙の1番上を破り、丸めてハンドバッグに押し込んだ。次にシルヴィの方に屈みこんで話しかけてきた。

「コホン、あたくしの名前はリータ・スキーター。〝日刊予言者新聞〟の記者をしているの」

「はぁ……えぇっと、私に何用でしょうか?」

 シルヴィアがそう問うと、スキーターは不気味な笑みを浮かべた。今までシルヴィアが感じて来た良からぬ事を企んでいる大人の笑みだった。

 しかし、少し違うところがあるとすれば、彼女の笑みに殺意は感じられない。多分、自分は死にはしないのだろう。シルヴィアはそう心の中で呟き、平常心を保つように心がけた。

「シルヴィア? 貴女はその短い人生で多大なる功績を打ち立てたわ。最たる例が〝完全脱狼薬〟の研究ね。あれは実に興味深いわね。最近は進展してるのかしら?」

 そこまで問われた時、シルヴィアは少しギョエっとした。学校が始まって2か月弱が経っていたが、最近は来年がO.W.L.試験に向けた課題の山に追われ、薬の研究・開発は後手後手に回っていたのだ。

 ルーピンやあのシンシア・メガロフィイアと言う魔女から学校での勉学を優先するように助言を受けていたので、暫く放置していた。

 しかし、その事をこのリータ・スキーターと言う魔女に包み隠さず言ってしまえば、あの手の記者が盛んに行う≪|事実を切り取りをし、恣意的な曲解を増幅されるアレ《流言飛語》≫を流される可能性がある。それがどれだけの厄介な事態を招くのか、流石のシルヴィアにもよく分かっていた。

 

「まぁ、最近は学生生活と言う日常もあるので、最近は少しペースを落としていますが……研究自体は進んでいます」

「そうざんすか」

 スキーターはそう素っ気なく返したが、羽根ペンは意気揚々と羊皮紙の上を滑っていた。小柄なシルヴィアからは、ペンの書く内容は見えなかったが、どうも良い事が書いてある予感は一切しなかった。

「では、どうしてシルヴィアは社会的に除け者の狼人間を救う為に薬を作ろうと考えたの?」

「え、あぁ……〝何かしらの属性を持っている人を否定し、冷遇し、差別したところで生まれるモノは不幸の連鎖でしか無い。けれども、そのまま全てを受け入れる。と言う訳にはいかない。だからこそ、〝完全脱狼薬〟を完成させ、狼人間の一番の脅威である変身を抑える。そうして、どちらも受け入れる事が出来るような体制作り目指す〟為です。それが、私の考えであり、行動原理ですから……」

 これは以前、魔法薬学会の際に作ったテンプレート的な回答だった。こうした場面を想定して準備をしていた自分をシルヴィアは密かに褒め称えた。

「ふ~ん」

 スキーターは露骨に興味が無さそうに返答をした。記者ならば、もっと取材姿勢を大事にしてほしい。と心の中でシルヴィアは思ったが、生憎その言葉を直接投げかけるだけの勇気はシルヴィアは持ち合わせていなかった。その言葉は胸の中に溶けていった。

 

「シルヴィア、貴女にはご両親がいらっしゃらない。と聞いたわ。今までどうやって生きてきたのかしら?」

「え、えぇ?」

 シルヴィア自身は両親の事を養父母ともにこれっぽちも覚えていないので、どう感じる。とかはない。ただ、少し寂しいという気持ちぐらいは存在する。この魔女には配慮と言うものを実家に置いて来たのか。シルヴィアは心の中で皮肉を漏らした。

「な、何となく……生きていました? けど……」

 

 それから、スキーターの無神経な質問は続いた。「ネクロタフィオ一族の血を引いているが、周囲の人間に対してどう思っているか?」と言う問いは最悪の意味で1番印象に残った。

 

 一体、自分が何をしたのだろうか? そう自分に問いただしてみるが、特に返答は聞こえてこなかった。

 

 

 それから2週間。シルヴィアはハリーが受けるだろう未だ全容不明な課題対策をハーマイオニーとシリウスと共に行っていた。シリウス曰く、取り敢えず〝武装解除呪文〟が使えたら大抵の場合はどうにかなるらしい。(但し、相手が動物相手だと話は別だそうだ)

 そして、あの日のインタビューの記事が掲載されたのもちょうどその頃だった。

 スキーターの三大魔法学校対抗試合(トライウィーザード・トーナメント)ルポと言う題目で記事は載っていたが、殆どゴブレットに名前が選ばれたハリーの独占インタビュー記事となっていた。1面にはハリーの納得のいっていなさそうな顔。そして、2面、6面、7面に記事は続いていた(ハリー曰く酷い脚色、捏造があるらしい)。酷い事に同じく選ばれたボーバトンとダームストラングの代表選手は綴りを間違えられており、もっと酷い事にセドリック・ディゴリーの名前は一度も登場しなかった。

 そんなハリーのインタビュー記事の隣に小さく、だが衝撃的にシルヴィアの記事が書いてあった。

 

 ≪殺戮卿≫として約500年前の魔法界を揺るがしたアルバート・ネクロタフィオ。彼とその妻、メロペー・ネクロタフィオの間に生まれた殺された筈の少女は生きていた! 彼女の子孫にあたる少女の今の野望は『狼人間を飼いならし、最恐の軍を率いて500年前の祖先の威厳を再び復興させること』だと言う──

 

 初めて記事を見た時、シルヴィアは誰についての記事なのか分からなかった。〝なんて陰気で物騒な世界なのだろう〟と呆れかえったものだ。しかし、校内の半数程度の生徒達からの視線は厳しい。

 半日後にダフネから詰め寄られた際に、この記事があの日のインタビューの内容に基づいて書かれているらしいと気付いた時、シルヴィアの背筋は冷たくなっていた。

 

「これは、巧妙……と言うには稚拙だけども、研究潰しだと思う。マグルのアカデミックな世界でも良く起こるんだ。あまりにも不都合な研究をする研究者が居れば、ありとあらゆる方法を使って社会的に潰してしまうんだ。

 ──まぁ僕は正直、そういった話は全て陰謀論だと思っている節があったけど、まさか魔法界ではこう分かりやすく行われるとは……」

 今回の解説&感想はホグワーツなんぞ辞めてしまってマグルの大学に入学して、物理学を極めて宇宙に行きたい。と将来の展望をよく語っているヴァージル・マグワイアだった。

「えぇっと、一体全体どういう事?」

「ほら、魔法省は狼人間を就職出来なくする程の法律を立法しているだろう? 魔法省的にはきっと半人間が社会的地位を向上させるのをいいとは思っていないんだ。

 君の行動は素晴らしいとは思う。ただ、素晴らしすぎたんだ。普通の人は着いて行けない。それどころか、足を引っ張ろうとする。これはきっとマグル社会でも魔法社会でも変わらない。」

 そう悲し気にヴァージルは語った。

「まぁ、取り敢えずこのスキーターと言う記者には今後一切関わらない事がいいわ。この記者、普通にクズだから」

 ダフネはスキーターに何か恨みを持っているような口調で言った。一体、何があったのか一瞬気になったが、聞かぬが吉と思いそれ以上突っ込みをしなかった。

 

 シルヴィアに対する冷たい目は次の日にはすぐにハリーヘすり替わり、結果的にシルヴィアは助かった。

 結局、その後のシルヴィアは自棄になって脱狼薬の研究に精を出す事になるが、特にこれと言って成果は得られなかったのは別の話である。

 

 

 第1の課題が行われる週の前の土曜日、ホグズミード行きが許可された。

 その日は、ダフネがとびっきりの体調不良で(どうやら、最近夜更かしが続いているらしい)シルヴィアは1人で行動していた。その中でハリーはハーマイオニーに連れられて気晴らしでホグズミード村に来ているに来ているに違いないだろう。そうシルヴィアは想像して、ホグズミード村に訪れていた。

 相変わらずの盛況ぶりだった。数週間前まではシルヴィアの事を白い目で見ていた人々もシルヴィアなんてちっぽけな少女は見えない。と言いたげな様子だった。それすら言っていなかったのかも知れない。

 ただ、気楽でいい事だった。

 

「あ、ハーマイオニー、何やってるの?」

 三本の箒にふらりと立ち寄った際に、ハーマイオニーは1人でノートに何かを書いていた。

 そのノートには名簿のような事が書かれていて、ハリー、ロン、シルヴィアの名前も書き記されていた。ただ、なんのノートであるかは想像が至らず、ハーマイオニーの数少ない友達リストなのか。と勝手に想像した。

「あぁ、本当に丁度いい。ありがとう。」

 ハーマイオニーは心から感謝の言葉を述べて、シルヴィアが座る為に椅子を引いた。シルヴィアはあまりよく分かっていなかったが、とりあえず座り、近くの店員にバタービールを注文した。

「どうして、三本の箒(ここ)に1人で居るの? どんな孤独な(ぼっち)ホグワーツ生でも1人で三本の箒に入らないと思うんだけど……」

「中々言ってくれるわね、シルヴィア。」

 少しイラっとした口調でハーマイオニーは言った。そして、すぐにハーマイオニーの目の前を指さした。誰も居ないというのに、椅子が引かれていた。

「え? 何も無いけど……」

「貴女、察しが悪いわね。ハリーよハリー」

 ぼそぼそとハリーの名前を出した。そこで、シルヴィアの脳内にハリーと透明マントが結び着いた。そうだ、ハリーは誰かから罵詈雑言を吐かれるのに疲弊し、自分の姿を隠す事が増えた。的な事をハーマイオニーがチラリと聞いた。

 

「そんな事するなら、シリウスさんのところに行ってれば良かったんじゃ……」

「ロンと仲直りしてくれる事を期待したの。案の定無理だったわ」

 シルヴィアの耳元でハーマイオニーが言った。

「なんだか、ハーマイオニーも大変だね」

 ここで注文したバタービールがシルヴィアの元に着いた。

 

「そう言えば、第1の課題について何か分かった? そろそろ、こう行動をした方がいいじゃないかなって……」

 シルヴィアが思い出したように問うと、透明マントに包まれているハリーの方向から重いため息が聞こえた。

「そうよ、シルヴィアの言う通りよ。もっと積極的な行動を取るべきだわ。いくら、シリウスさんに色々な呪文を教えてもらっているとは言え、何かが足りない気がしてならないわ。ねぇ、どうやったら学校の厨房に入れるかしら?」

「分からない。フレッドとジョージに聞けよ」

 ハリーは不機嫌そうに言った。ハーマイオニーは考えに耽って黙り込んでしまった。シルヴィアはこの空間が非常に気不味かった。

「あーっと、多分ミリセントが厨房に出入りしてると思うから……後で聞いておこうか?」

「ありがと」

 ハリーはまたもや、不機嫌そう言った。ハリーが不機嫌な理由は良く分かる。誰だって他人から誹謗中傷を受ければ、捻くれるだろう。しかし、その不機嫌を一応は自分の身の心配をしている人に向けるのは如何なものか。シルヴィアはそう心を澱ませていた。

「見て、ハグリッドよ!」

 ハーマイオニーが指を指しながらそう言った。ハグリッドの巨大なもじゃもじゃ頭の後頭部が人混みの上にぬっと現れた。よく見るとハグリッドはその大きすぎる体を屈めて、ムーディと話しているのが分かった。

 ハグリッドは大きすぎるジョッキを前に置いていたが、ムーディは自分の携帯用酒瓶から飲んでいた。三本の箒の粋な女主人マダム・ロスメルタが気に気に入らないようだった。ハグリッド達の周囲のテーブルから、空いたグラスを片付けながら、ムーディを胡散臭そうに見ていた。

 マダム・ロスメルタが気に入らないのはしょうがないだろう。ムーディによれば、闇の魔法使いは誰も見ていない時に安々とコップに毒を塗るので、いつも食べ物、飲み物を自分で用意するようにしている、とムーディが授業中話していた。

 ここで、シルヴィアの記憶が一気に覚醒した。

 マダム・ノストラダムスの忠告だ。『先程の男にはもう近付かん方がよろしいだろう。あの男は二重の影が見える。所謂、不吉な影。と言うやつじゃ』そう言われた時。先程の男にあたる人物がムーディだった。それに、ムーディの携帯用酒瓶からは〝薬品の匂い〟がした。──シルヴィアの背筋が一気に凍る。

 去年の汽車で寝ているルーピンを見た時に言った冗談〝ルーピン、ポリジュース薬で化けているシリウス・ブラック説〟が頭に過った。もしかしたら、教授をしているムーディは偽物でポリジュース薬で闇の魔法使い辺りが化けているのかも知れない。

 そこまで想像してから、脳内のクリフォード・プリンスが『シルヴィア・ネクロタフィオ迷探偵は今年度も健在のようだね』と言ってきた。確かに、考え過ぎだと思う。

 去年度『1時間ごとにポリジュース薬を飲むような人は行動からして怪しいから、すぐにダンブルドア校長が見抜くに違いない』とハーマイオニーが言っていたのを思い出した。そうだ、ポリジュース薬は酷く不味いらしい。そんなものを毎時間飲んでいるのであれば、怪しい。それに、ダンブルドアは偉大な魔法使いだ。きっと気が付く筈だ。

 

「元気か、ハーマイオニー。それにシルヴィア」

 ハグリッドが大声を出した。先ほどまではだいぶ離れた場所に居たというのに、ハグリッドとムーディが目の前に居てシルヴィアは驚いた。そして、もう一度思考の海に潜る。

 ムーディが怪しい事には変わりないが、まだ疑いだ。ムーディ成り代わり説には確固たる証拠がない。警戒するだけに留めておこう。

「シルヴィア? お前さん、大丈夫か?」

「あ、えぇっと、こんにちは」

 シルヴィアは随分と長い間、物思いに耽っていた事を自覚した。その後、すぐにぎこちない挨拶を返した。

「いいマントだな、ポッター」

 その言葉にシルヴィアもハーマイオニーも透明マントに包まれているハリーも驚いた。ムーディはその様子を見て、ニヤリとした。

「先生の目──あの、見える?」ハリーが呟くように言った。

「ああ、わしの目は〝透明マント〟を見透かす。」

 ムーディは静かに言った。次にハグリッドがハーマイオニーのノートを覗き込むように身を屈めて、ハリーにしか聞こえない声で何かを囁いた。暫くして、身を起こした。

「ハーマイオニー、シルヴィア。お前さんに会えてよかった」

 そう大きな声で言って、ウィンクをして立ち去った。

「ハグリッドたら、どうして真夜中に僕に会いたいんだろう?」

 ハリーは驚いて言った。

「「会いたいって?」」シルヴィアとハーマイオニーの声は重なった。

「一体、何を考えてるのかしら? 一応、シリウスさんと行った方がいいと思うわ」

 そうアドバイスをした。シルヴィアもその意見には完全同意をした。話によれば、ハグリッドはドラゴンの卵を隠し持っていたリ、大蜘蛛を飼っていたリ、実は非常に厄介なタイプの人間なのだ。

 

 その後、ハニーデュークス菓子店でダフネへのお見舞い菓子をいくつか買う為に、ハリーとハーマイオニーとお別れをした。そして、お菓子を買ってからホグワーツ城へと帰った。

 

 シルヴィアが寮へ戻るとまだ早い時間だからなのか、談話室の人口密度は低かった。まだ、ダフネが寝ているだろう部屋へシルヴィアは全速前進した。

「ダフネ、体調はどう?」

「あぁ、シルヴィア。早かったわね」

 ダフネは机と向き合っていて、シルヴィアが声をかけるとすぐに読んでいた本を閉じ、引き出しに突っ込んだ。まるで隠すような速さだった。

「ダフネが心配で……その様子なら大丈夫そうだね。ハニーデュークスでお菓子を買って来たんだけど、食べる?」

「あら、気が利くわね。じゃあ、少し貰おうかしら」

 そうして、シルヴィアとダフネはハニーデュークスのお菓子を食べ始めた。この間も、シルヴィアはムーディに対する疑心を打ち明けようか悩んでいたが、結局最後の最後まで言わなかった。

 

 

  

「ちょ、え、あ、ほ本当に!?」

 ホグワーツの校庭、湖の畔にてシルヴィアの叫び声が良く響いた。

 なんでも、第1の課題は民家を壊し、人を踏みつぶし、火を噴くあの凶悪なドラゴンと戦う事らしい。

「た、大会の運営者は……正気なのかな? あぁ、ハ、ハリー……今からでも辞退する方法を──さ、探さない?」

 シルヴィアは声を震わせながら言った。

「シルヴィア、恐れる事莫れだ! ハリーはあのジェームズとリリーの一人息子だ。他の代表選手の誰よりも勇敢で誰よりも聡明だ!」

 シリウスは親バカを発動させて、そう高らかに宣言した。

「け、けど……ドラゴンって長く生きているから古代の魔法その皮に浸透していて、どんな呪文も通さないって……聞いたよ? そ、そんなドラゴンと戦うだなんて……い、いくら何でも自殺行為だよ! 勇敢と蛮勇は似て非なるものだよ?」

「結膜炎の呪いをかけてしまえば一瞬だ! それに、ハリーは今朝マッド・アイ-ムーディから助言を受けたらしい。『自分の強みを生かす試合をしろ』『自分に必要なものを手に入れる』つまりだ。呼び寄せ呪文(アクシオ)かなんかで箒を城から呼び寄せてしまえばいい。

 試合中、恐らくドラゴンは鎖に繋がれているだろう。ドラゴンの爪が届かない高所から結膜炎の呪いを放つんだ。そうすれば、ドラゴンを倒すだなんて1分で終わる。」

 シリウスは完璧な計画を発表するように言った。確かに、その計画は完璧に近いだろう。しかし、試合会場がどこになるか分からない以上、呼び寄せ呪文が通じるか不透明だ。シルヴィアは酷く心配になってきた。

 ただ、その後にシリウス監督の元で呼び寄せ呪文特訓会が開催されたので恐らく大丈夫だろう。と安心した。

 何故だか、シルヴィアとハーマイオニーも特訓会に巻き込まれて、そのうちハーマイオニーは夕方になる頃にはゼーゼーと息を上げる羽目になっていた。シルヴィアは涼しい顔をしていたが、隣で息を上げている友人を見て不憫そうな表情になっていた。

 

「最高だ、ハリー! 流石はジェームズの息子。呼び寄せ呪文を身に着けるスピードはピカ1だ!」

 シリウスはそう言ってハリーを褒め称え続けた。ハリーは100m離れた場所に置いたハーマイオニーのノートすら呼び寄せた。初日にしては素晴らしい上達速度だろう。シルヴィアも当然のように褒めた。ハーマイオニーも勿論、素直に褒めた。しかし、如何せんハーマイオニーは疲れすぎており、友人の呪文上達を褒め続けるような体力は無かった。

 

 その後、1週間はシリウス監督の元、呼び寄せ呪文の特訓会が開かれた。最終的にハリーは自室に置いてある呪文学の教科書を呼び寄せる事に成功していた。

 そのうち、ハーマイオニーだって体力をあまり削らない効率的な呪文の放ち方を会得する事に成功していた。シルヴィアは遂に禁じられた森に植生している薬草を籠単位で呼び寄せる事に成功させた。その様子を見て、あのシリウスでさえ若干引いていたが、シルヴィアはそんなシリウスの目など気にしていなかった。

 その後、間もなくにケンタウルスから苦情が寄せられるまでシルヴィアは薬草の呼び寄せを続けていた。

 

 

 そうして、遂に第1の課題が行われる日がやってきた。ホグワーツ生、ダームストラング生、ボーバトン生。皆が皆興奮と熱狂に包まれており、それに相対するように4人の代表選手は緊張の面持ちで1日を過ごしていた。

 

「おかしいよ! 時間が今までも無く可笑しな動きをしたんだ! そうだね、ボタッボタッと大きな塊になって時が飛び去るようなんだ。1時間目に魔法史で机の前に腰かけてる! どうしてだい!?」

 ハリーは昼食の席でハーマイオニーとシルヴィアに主張していた。

 そんなハリーの主張を他所にハーマイオニーは、ハリーにテスト前日のように、呪文を呪詛のように(実際同じようなものなのかも知れない)叩き込んでいた。

「一体、午前はどこに行ったんだ? あと、ハーマイオニー。ちょっとうるさい」

 遂に、ハリーは限界に達し、ハーマイオニーが持っていた分厚い呪文集を横取りするように取り上げた。その後のハリーとハーマイオニーの諍いは特筆すべき点では無いので、省くがシルヴィアは今年1番不毛な争いだった。と後に吐露した。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ、心配だわ。ハリー……大丈夫かしら?」

 ハーマイオニーに深い溜め息を吐きながら言った。そんなハーマイオニーの隣に居るシルヴィアもまた、代表選手でも無いのに緊張で全身が小刻みに震えていた。

「2人とも安心するんだ! ほら、見ただろう。ハリーはここよりも遠い湖畔から寮にある本を〝呼び寄せ〟たんだ。だったら、この競技場から箒置き場に置いてある箒を呼び寄せる事は簡単な筈だ。それに、ハリーはクィディッチのグリフィンドール・チームのシーカーだ。ドラゴンに振り落とされる事なんてありゃしない!」

 シリウスはそう誇らし気な表情で言った。シルヴィアもハーマイオニーもハリーが凄い事は知っている。それでも、それでも心配になる気持ちを抑える事は残念ながら2人には出来なかった。

「それに、何よりもハリーはジェームズとリリーの唯一の息子だ。必ず、偉業を成し遂げるに違いない!」

 そう言うとシリウスは星の方のシリウスに負けないぐらいの笑みを輝かせた。シルヴィアとハーマイオニーは、そんな親バカを発動させているシリウスに内心呆れながらもどこかリラックスする事が出来ていた。

「そうだね、ハリーならきっと……きっと、偉業を成し遂げる」

 半ば自分を納得させるようにシルヴィアはそう言った。

「そうだ。きっと、この三大魔法学校対抗試合の最年少優勝者になるに違いないっ!」

 シリウスがそう言ったタイミングでフレッドとジョージが誰が1位になるかの賭けをしよう。と持ち掛けて来た。シリウスは当たり前のようにハリーに全ベッドし、10ガリオンを双子に渡していた。シルヴィアは賭けをしようとしたタイミングでハーマイオニーに『子供が賭博だなんて絶対ダメよ!』と言われ、賭けが出来なかった。

 そんなちょっとしたいざこざが収束した頃合いにバグマンが「〈ソノ―ラス 響け〉!」と杖を自分の喉に向けて言った。バグマンの声はよくグラウンドに響いた。

「さて、全選手の準備が出来ました。第1の課題での選手への課題はドラゴンを出し抜き、ドラゴンが守っている宝、この金の卵を奪う事です! 非常に危険な課題となるでしょう」

 ここでハーマイオニーが「自覚はあったのね」と皮肉気に言った。その言葉にシルヴィアは苦笑いを浮かべていた。

「しかし! 皆さま、心配なさらないでください! 我々は厳正に、ドラゴンを選別しなるべく大きな災害を起こさないドラゴンを選んで連れて参りました。

 また、優秀なドラゴン使いも多く在中しており、もしもの事があればすぐさま〝消火呪文〟をかける事になっています。魔法省はこの1年間、安心と安全をモットーにあらゆる状況を想定して課題設定をしました。どうかご安心を!」

 バグマンは誇らしげに言った。観客の多くは早く、試合を見せろ。と言いたげな様子だった。

 

「さて、皆々様も課題を早く見たいでしょう! 順番は予めくじ引きによって決定なされています! 1番目はホグワーツ代表、ミスター・セドリック・ディゴリー!」

 そう言うと、バグマンはホイッスルを鳴らす。すると、グラウンドのテントから黄色い競技服を身にまとったセドリック・ディゴリーが出て来た。セドリック・ディゴリーは観客に圧巻されながらも、自分の名前が呼ばれると手を振り、余裕を見せていた。ただ、やはり手は震えて顔は青ざめていた。

「彼と戦うは、スウェーデン・ショート-スナウト種!」

 ドラゴン使いと思われる屈強な魔法使いに連れられたのは、青みがかったグレーのドラゴンだった。見るからに狂暴だ。シルヴィアとハーマイオニーはゴクリと唾を飲み込んだ。

 もう1度、バグマンのホイッスルがグラウンドに響き渡る。観客は地鳴りがするほどの歓声を上げた。

 ディゴリーはその歓声の中、杖をグラウンドにある岩に向けた。すると、岩はたちまち犬に可愛らしいラブラドールに変身させてみせた。ラブラドールはディゴリーの代わりを務めるように、ドラゴンの目の前を右往左往と動き始めた。

 きっと、ラブラドールを囮にしてドラゴンが守っている金の卵を得よう。と言う考えなのだろう。シリウスは隣で「その考えは無かった!」と叫んでいた。

 ディゴリーのラブラドール囮作戦は途中までは上手くいった。しかし、最後の最後でドラゴンの気が変わり、ディゴリーを捕まえようとし始めたのだ。ディゴリーは金の卵を取った後、一目散に逃げようとした。しかし、途中で火傷を負う結果となってしまった。

 試合が終わると6人の審査員は杖から点数を出し掲げた。ディゴリーは怪我をしたことによって、若干点数を落とす結果となった。

 

 次に呼ばれたのはフラー・デラクールだった。彼女が戦ったのは、ウェールズ・グリーン種。少し小型のドラゴンだった。それでも、大きい事に変わりなく、威嚇する世に炎を噴き出していた。

 デラクールは誰にも何を使ったのか正確に把握は出来なかったが、何か魔法(シリウス曰く、強力な魅惑呪文)を使ってドラゴンを恍惚状態に陥らせ、ドラゴンはすっかり眠ってしまった。金の卵を手に入れるところまでよかったのだが、ドラゴンがいびきをかいた為に鼻から炎を噴き出して、デラクールのスカートを燃やしてしまった。

 何故か、その様子を見たハーマイオニーが勝ち誇った笑みを浮かべていたが、怖かったのでシルヴィアもシリウスも突っ込まなかった。

 

 その次に呼ばれたのはビクトール・クラムだった。彼は中国火の玉種。赤いドラゴンだった。そのドラゴンは他のドラゴンよりも大きな炎を噴き出し、観客席の1部が燃えかけた(幸いなことにドラゴン使いが〝消火呪文〟をかけ大事には至らなかった)。

 クラムはクィディッチ選手であるが、飛ぼうという発想は一切無かったようで結膜炎の呪いをかけた。しかし、その所為でドラゴンが苦しんでのたうち回り、卵を一部潰してしまった。審査員の多くは減点をしたが、唯一ダームストラング校の校長であるカルカロフのみは満点を与えた。

 

「そして、いよいよ登場。最年少の代表選手! ミスター・ハリー・ポッター!」

 バグマンはそう囃し立てた。すっかり場が温まっていた観客席は、昨日までハリーの事を疎んでいる事すら忘れ、興奮の叫び声を上げた。既に、喉が枯れている観客も少なくない。

 ハリーが戦うのはハンガリー・ホーンテール。黒いドラゴンで誰が見ても凶悪だと分かる姿形をしていた。それに何よりも尾は棘だらけでアレに当たれば一塊も無いだろう。

 シルヴィアは一気に気が遠くなり、グラウンドを見る事が出来なくなり、顔を下した。

 

「〈アクシオ・ファイアボルト ファイアボルトよ来い〉!」

 ハリーが叫んだ。その声は観客の熱狂をも凌駕するような声で、拡声魔法を使っていないと言うのに、グラウンドによく響いた。シルヴィアにとって、そのはっきりとした声は自分の気を戻すのに最適だった。

 シルヴィアが顔を上げた時、実はシルヴィアが1度も見た事の無いファイアボルトが森の端からハリーの方へビュンビュンと風を切りながら飛んできた。観客の誰もがどよめき、審査員もマダム・ノストラダムス以外、驚いていた。あのダンブルドアですら、少々の驚きをその皺深い顔に宿していた。

 ハリーは片足をサッと上げて箒に跨り、地面を蹴った。あっという間にハリーはドラゴンから噴出される火が届かない高度まで飛び上がっていた。

 

「いいぞ、ハリー。後は結膜炎の呪いをかけてから急降下だ!」

 シリウスがそうハリーに叫ぶ。ハリーにその言葉が聞こえていたかは定かでは無いが、頷いた様に見えた。そして、すぐにハリーは上空から杖を振り下ろしてドラゴンへ結膜炎の呪いをかけた。

 ドラゴンはクラムの時と同じように苦しみ藻掻いた。ドラゴンに卵を踏みつぶされる前にハリーは急降下し、金の卵を取った。最後の最後でハンガリー・ホーンテールの尾が肩を掠めたが、地上に戻ったハリーは笑みを浮かべながら金の卵を空に掲げていた。

 グラウンドは誰もが、あのシルヴィアですら歓声を上げた。ハリーは華麗にやり遂げたのだ。

 

「流石だ、やはりハリーは凄い!」

 シリウスがそう言いながらグラウンドへ降りていく階段へ向かう。シルヴィアもハーマイオニーも興奮を抑えながら、ハリーが居るグラウンドへ向かった。

 同じ事を考えていた人は多かったらしい。あのマクゴナガルもムーディもハグリッドも急ぎ足でハリーの元へ駆け寄っているのが見えた。

 

「ハリーは救急テントに行くみたいだわ!」

 ハーマイオニーがそう叫んだ。

 シルヴィアとハーマイオニーが救急テントに辿り着いた頃には、ハリーの処置は終わっていた。

「ハリー、貴方、素晴らしいわ!」

「凄かった! 凄い、華麗に卵を取っちゃった!」

 ハーマイオニーもシルヴィアも救急テントに辿り着くなり、上ずった声で息を上げながらそう言った。ハリーは嬉しそうな誇らしげな表情になった。

「ハリー」

 深刻な口調の声が聞こえた。シルヴィアとハーマイオニーが振り返るとそこには、真っ青な顔のロンが立っていた。

「君の名前をゴブレットに入れた奴が誰だったにしろ──僕──僕、奴らが君を殺そうとしてるんだと思う」

「やっと気が付いたって言う訳かい? 随分と長い事かかったな」

 折角の仲直りのタイミングだというのに! シルヴィアとハーマイオニーはお互いに目を見合わせてから、2人の間に立って2人の目を交互に見合わせた。ロンは曖昧に口を開きかけた。謝ろうとしているのだろう。

「いいんだ。気にすんな」

 ハリーは唐突に言葉を発した。

「いや、僕……もっと早く──「気にするなって」

 ハリーがそう言うとロンがおずおずとハリーに笑いかけた。ハリーも笑い返した。その様子を見た、ハーマイオニーが泣きじゃくり始めた。その後、2人を抱き締めて今度はワンワンと泣き声を上げて走り去ってしまった。

「な、泣くほど?」シルヴィアがそう言ってからハーマイオニーを追いかけようとした

「ほんと、狂ってるよな。シルヴィア、もう少しでハリーの点数が出る筈だ。一緒に見届けてやろう」

 ロンがそう引き留めたので、シルヴィアはハーマイオニーを追いかけずにハリーの点数を待つ事にした。その間、ロンはハリーに他の選手達がどうやってドラゴンを出し抜いたのか説明していた。

 説明が終わった頃にはハンガリー・ホーンテールは連れ去られていたので、6人の審査員が良く見えるようになっていた。

 1人目の審査員であるマダム・マクシームの杖先からは8の字を描いた銀色のリボンのようなものが噴き出していた。

「マダム・マクシームが5点以上出すのは、あのボーバトンの代表選手の子以来だよね?」

「ああ、そうだ! 悪くないぜ!」

 次はクラウチの番だった。彼は〝9〟の数字を高く上げた。観衆は歓声を上げた。

「これは!」「いけるぞ!」

 シルヴィアはぴょんぴょんとその場でジャンプし、ロンはハリーの背中をバシンと叩いた。

 次はマダム・ノストラダムスだった。しかし、彼女があげた数字は〝3〟だった。今回の試合でマダム・ノストラダムスは比較的良い点数を与えている。だから、シルヴィアとロンからしたら心外もいいところだった。少し遠くで見ていたシリウスが走って審査員席へ向かっているのが見えた。

「なんでだ! 他の選手には8点以上は上げていたのに!」「ど、どうして……」

 しかし、次のダンブルドアは〝9〟の数字を上げた。観衆は一層大きく歓声を上げた。シルヴィアとロンも安心したような息が漏れた。

 その次のバグマンは〝10〟の数字を掲げていた。

「う、嘘? 10点だって? 僕、怪我もしたし……なんの冗談だろう?」

「そういうのは素直に受け入れていいんだよ」「そうだぞ、文句言うなよ」

 シルヴィアもロンも興奮して叫びながらそう言った。

 最後に杖を上げたのはカルカロフだった。

「4? なんの冗談?」

 あのシルヴィアですら、若干キレ気味の反応だった。

 審査員席を見ると、今の今までマダム・ノストラダムスに責め寄っていたシリウスは次はカルカロフに標的を合わせていた。それを、バグマンに宥められているのが遠くから見えた。

 

「ハリー、同点で1位だ! 君とクラムだ!」

 そう言ってやって来たのはウィーズリー兄弟の次男、チャーリー・ウィーズリーだった。

「あぁ、僕、急いで行かなくちゃ。行って、ママにフクロウを送るんだ。結果を知らせるって約束したからな。──しかし、信じられないよ! あ、そうだ。君に伝えてくれって言われたんだけど、もうちょっと残っていてくれってさ……バグマンが、代表選手のテントで話があるんだそうだ」

 そうして、ハリーは代表選手のテントへ戻って行った。

 

「けど、まさかあんなにも上手くいくだなんて……」

「全部、シリウスのお陰だよ。シリウスが結膜炎の呪いをかける事を進めたし。あ、あとムーディ先生のお陰でもあるみたい。ムーディ先生が箒を呼び寄せ呪文で呼び寄せる事を勧めたらしいの」

 シルヴィアとロンはハリーを待つ待ち時間に雑談を開始していた。

「ムーディがかい!? まぁ、そうか……あの人、ハリーの事を気に入ってそうな様子だし……」

 その後も呟くように「あのムーディが、あのムーディがか……」と言っていた。

「まぁ、外面が怖いだけで中身は気のいいおじいちゃんなのかも知れないよ。ちょっと神経質だけど」

「それだったら、神経質が過ぎるよ……」

「外と中は似て非となるもの。人は簡単に騙せる存在。人は外面でしか物事を判断しない」

 2人の後ろから現れたのは、マダム・ノストラダムスだった。2人とも叫び声を上げたが、すぐに敵対心丸出しの眼差しで彼女を見つめた。

「誰に恐れようが、嫌われようがわしにとっては関係の無い話。されど、君達に助言をしよう。あのアラスター・ムーディを信用するな。あれは闇に紛れる愚者だ。そして、地図に気を付けろ。あれは全ての真実を白日に晒す物。決して敵の手に渡してはならない」

 そう言うと、2人が何か言う前に立ち去って行ってしまった。

 

「誰があんな婆の話信じるかって。大体、予見者なんて嘘っぱちなんだよ。まず、マッド-アイ・ムーディは今ではああだけど、伝説の闇祓いなんだよ。そんな人が闇側に着く筈ないじゃないか!」

 ロンはそう悪態を吐いた。誰もそれを咎める人は居なかった。シルヴィアとしてもハリーに対する異様な点数下げは納得いっていなかったからだ。






リータ・スキーター:
 日刊予言者新聞の記者。ありもしない事実をでっち上げるのがお得意。
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