呪いの少女と祝福された世界   作:佳山針之介

6 / 58
2025/03/12 本文編集


第6話 魔法の授業

「──ヴィア! ──ルヴィア! シルヴィア!

 シルヴィアは何者かに体を揺すられていルのに気が付き飛び起きた。しかし……

 

いっ、痛ッ! いっ、勢いよく起きないでよ!」

 シルヴィアと正面衝突したのは金髪碧瞳の少女だった。

 どうにかシルヴィアは思考を回転させるが、少女の名前も何もかも朧げになっていた。

 それに加えて自分が今居るこの場所も何処か曖昧であり、精々思い出せるのはどっかの学校である。と言う事ぐらいだった。

 つまり、『私はシルヴィア、ここは何処?』状態である。

「ごっ、ごめんなさい……」

 取り敢えず、シルヴィアは謝った。目の前の少女は怒ってはいなさそうだったが、随分と痛そうにしていた。シルヴィアは思い出したように自分のトランクから薬瓶を取り出す。

 

「そっ、その……ぶつかっちゃった場所……に、薬……塗るか、ら……」

「えっ!? だ、大丈夫だって、そこまでじゃ無いって!」

 少女はそう言うが少女のおでこには、前髪で隠れていても分かるぐらいに青タンが出来始めていた。

「ちょっ、とだけ……ぬ、塗れば……治る、筈だから。い、痛く無いから……」

 少女はそれなら……と言い、前髪を上げてシルヴィアに青タンを見せる。

 シルヴィアは薬瓶から薬を指に垂らして、青タンに塗りつける。すると忽ち、青タンは元の肌の色に戻る。

 

「なんか、痛みが薄れて来た! 凄いわねその薬。ご両親が魔法薬学に精通していたりするのかしら?」

「あっ、いや……その、じっ、自分で……つく、作ったの……」

「えぇ!? それってきっと凄いわよ! ご両親が魔法薬学者だっり癒者(ヒーラー)だったりするの?」

 シルヴィアは一瞬答えに詰まるが、何と無く本能が安易に両親の生死に関する話はしない方がいいと言っていた。

 その為、シルヴィアはスネイプが言っていた事実を話す事にする。

「そ、そうだったみたい……。あ、あの……此処って何処……なん、ですか? あ、貴女の名前は……」

 シルヴィアがそう問うと目の前の少女は、時間が止まったかのように固まった。

 

「そ、そ……の。わた、私……あまり、記憶力が……よく、無くて。……昨日、日記書けなかったから……その、わ、忘れちゃったん……です。──は、薄情なのは……わ、分かっています。本当に、ほんとに……記憶力が……悪くて。ごめんなさい。」

 そう言うと目の前の少女は、もう一度驚いたように目を見開いてから、また時間が止まった。間も無く少女は動き出す。

 

「……成程、分かったわ。別にいいわよ。昨日あった事を私の知っている限り教えてあげるわ」

 そう言い、少女はまず自分はダフネ・グリーングラスと言う事と同寮の同室である。と自己紹介をした。

 その後、この場所はホグワーツと言う学校であり、昨日はホグワーツ特急に乗りこの学校まで移動して来て組み分けを受けた事。

 そしてその組分けでシルヴィアはスリザリンに選ばれた事。昨日の歓迎会でシルヴィアは疲労で倒れてしまった事を説明した。

 

「な、なんと無く……思い出した……気がします。あ、ありがとうございます。グリーングラスさん……」

「私の事はダフネでいいわ。それで、この部屋にはあと2人居て、1人はパンジー・パーキンソン。もう1人はミリセント・ブルストロードって言うだけど2人は朝食を食べに行ったわ……。あの2人はいいわよね。育ち盛りの元気っ子って感じで……。私は朝食べれないタイプだから、貴女を起こすついでにこの部屋に残ったわけなんだけど……。シルヴィアはお腹空いてない? 今から急ぎで大広間に行けば、パンの1つぐらいは残ってると思うんだけど……」

「だ、大丈夫……。」

「そっか、なら良かったわ。1時限目は変身術よ。さっさと準備しちゃって先に教室に向かいましょ」

 そういって、ダフネは今日の分の教科書類をまとめ始める。シルヴィアもそれに倣って準備を始める。

 

「全部持って行くべき物は持ったわね? じゃあ、行きましょう!」

 そうして、ダフネとシルヴィアは他生徒よりも一足先に変身術の教室を目指して歩き始めた。

 

「変身術の……教室は、何処なの?」

「1B教室って時間割には書いてあったわ。それでホグワーツの地図見たら、ホグワーツ城の1階、中庭の近くにあるみたい。……まぁ、そこまでの行き方がイマイチ分からないんだけどね……」

 ダフネはそういい肩を竦めた。シルヴィアは、本当に始業時間前にたどり着けるか心配になった。

「まぁ、大丈夫よ。いざとなったらゴーストとか肖像画に聞けばいいんだし!」

 明るく言うが、シルヴィアの不安は益々強くなるばかりだった。

 2人は城内を勘で歩き続けた。ホグワーツ城の内装はハッキリ言って()鹿()()()()()

 城内には階段が142個も存在した。シルヴィアはその中でも、真ん中あたりで1段消えてしまう階段に引っかかってしまい、あともう少しで大怪我になるところだった。

 扉も癖が強く、丁寧にお願いしないと開かない扉だったり、正確に一定の場所を擽らないと開かない扉。扉のように見えるけれども硬い壁が扉の振りをしている扉もあったりして、2人はそれら全てにご丁寧に引っかかった。

 シルヴィアもダフネも目がグルグルと回り自分が居る場所が何階なのかさえ分からなくなっていった。

 

 

「変身術の教室? あぁ、君達結構遠い所まで来ちゃったんだね。けど安心しな。ここからだと近道があるんだ。

 えっと、この廊下を1番突き当たりまで歩いてそこにある扉に『中庭に連れて行ってください』って丁寧に頼めば、変身術の教室前まで繋がる階段室に入れてもらえるよ。その階段室ちょっと暗いから足元注意ね」

 偶々、スリザリンの先輩と会う事が出来、2人はやっと変身術の教室への行き方を案内してもらった。

 

「シルヴィア! あと10分しか無いみたいだわ。急ぎましょ!」

 そう言いながら、ダフネはシルヴィアの手を引き廊下を走り始めた。

「おい待て!」

 丁度通り過ぎた場所から怒声が聞こえてくる。ダフネもシルヴィアも急停止して怒声の主人を探す。

 しかし、特に人は誰も居なかった。2人は、盛大な空耳だと解釈して先を進もうとした。

「待てと言っている!」

 また、怒声が廊下に響く。シルヴィアとダフネは顔を見合わせる。

「も、もし……かして、ゆっ、幽霊?」

「幽霊って言うか、ゴーストだったら見える筈でしょ? ……何処から声がしてるのかしら?」

 2人は自分が走って来た廊下を少し引き返す。

「此処だと言っている!」

 肖像画のうち1人がそう叫んでいた。

 黒髪で金色の瞳を持つ男だった。肖像画のタイトルには【殺戮卿】っと書かれており、確かにその男の服は赤黒い血に染まっていた。そして何よりも彼の左手に握られている剣は、真っ赤に染まっていた。右手の杖のみが何事も無いように見えた。

 

 シルヴィアはその肖像画を見るなり驚き、10cmは飛び上がった。ダフネも不愉快そうな表情をしている。

「なんでこんな悪趣味な肖像画が学校に置いてあるのよ……」

 ダフネはそう不満を零す。【殺戮卿】も何処か不満そうだった。

「我だって好きでこんな場所に飾られてるのでは無い! ……それより、そこの小娘。貴様は我が愚妻に似ている。」

「は、はい……?」

「え? そりゃあ、そうでしょ。それを言うだけに私達を呼び止めたんですか? 私達急いでるんですよ。失礼しますよ」

 ダフネはそう言うと【殺戮卿】の引き止める声も聞かずにシルヴィアの腕を引いて廊下を早歩きで歩く。

 シルヴィアは呆気に取られるが、何か言おうとした時には廊下突き当たりの扉に辿り着く。

 

「コホン、扉さん扉さん。私達を中庭まで連れて行ってくれませんか?」

 ダフネがそう言うと扉がガチャリと音を立てて勝手に開いた。扉の中は、確かに階段室で蝋燭が数本灯っているだけで薄暗かった。

 

「さ、急いで教室に向かいましょ」

 それからはスムーズに事は進んだ。2人は実に6階分階段を下る羽目になったが、それでも始業時間ギリギリで教室に辿り着く事が出来た。

 教室は蝋燭で明るく灯されていた。そして何よりも広く、高い窓に囲まれており、3つの机が4列に並んでいた。

 その他に、何らかの生物を入れておくであろう檻や本棚。それぞれ2つずつ金色の猫の像と黒板があった。

 教授用の机が前に置いてあり、そこにはあの厳格そうでシルヴィアとして出来れば怒られたく無いあのマクゴナガル先生が座っていた。

「ミス・グリーングラス、それにミス・ネクロタフィオ。貴女方2人は始業時間ギリギリでした。まぁ、間に合ったので良しとしましょう。さぁ、席に着いて。授業を始めますよ」

 ダフネとシルヴィアは取り敢えず、減点されなかった事を安心してから空いていた1番前の席に着く。

 そして、マクゴナガルによる変身術の授業が始まった。

 

「変身術は、ホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なものの1つです。いい加減な態度で私の授業を受ける生徒は出て行ってもらいますし、2度とクラスに入れません。初めから警告しておきます」

 マクゴナガルはそう厳しく言い放つ。

 その言葉で一気に教室は張り詰めた空気になった。マクゴナガルはその様子を見渡してから次に机を豚に変え、また元に戻して見せた。

 大半の生徒達は、感激して早く試したくてウズウズしていた。シルヴィアもダフネもその1人だった。

 

 しかし、ノートを取ってみるとよく分かった。自分達が家具を動物に変えるようになるまでには、随分と時間が掛かるようだと分かったのだ。

 散々書かされた難しい定理や論理。それを理解出来た生徒は恐らくこの教室の中に居ないであろう。

 次にマクゴナガルは1人1人にマッチ棒を配り、それを針に変える。という練習をさせた。皆、最初は意気込んでみたが中々に難しく、授業が終わるまでにマッチ棒が針に変わった生徒は居なかった。

 ただそれでもドラコ・マルフォイはマッチと針の中間ぐらいまで変身をさせたので、スリザリンは2点の加点を受ける事が出来た。

 因みに、シルヴィアはどう狂ったのかマッチ棒が30個ぐらいに増殖しており、首を捻らせていた。

 

「もぉ〜ダフネにシルヴィア〜、素直に朝ご飯食べに来ないからこうなっちゃうんだよ? 朝ご飯食べに来ていたら、監督生が授業教室まで案内してくれたのに〜」

 パンジーが2人にそう話しかけた。

「ま、次は闇の魔術に対する防衛術だしみんなで教室に移動するから安心だね」

 ミリセントが言う通り、今度の闇の魔術に対する防衛術の授業へは監督生の先導の元、スリザリン生みんなで固まって移動した。

 先ほどの大波乱な移動が嘘のようにスムーズに移動する事が出来た。

 

 闇の魔術に対する防衛術は1年生であれば、例えスリザリン生であっても楽しみに待ち望んでる授業だ。

 しかしながら、闇の魔術に対する防衛術の担当教授であるクィレルは随分と肩透かしな教授だった。

 シルヴィアよりも一層酷い吃りを持っており、みんなから嗤われていた。シルヴィアは居た堪れない気持ちになった。

 それに加えて教室にはニンニクの強烈な匂いが漂っていた。

 誰かが語った噂によれば、クィレルはルーマニアの森で吸血鬼に出会ったそうだ。それがトラウマとなり、寄せ付けないようにする為の対策をしているそうだ。そして、いつかまた襲われるかもしれない。と心配してビクビクしているらしい。

 シルヴィアは吸血鬼をよく知らなかったが、取り敢えず恐ろしい怪物だと学んだ。

 

 また、クィレル本人の話によれば頭に巻いているターバンは厄介なゾンビを倒した時にアフリカの王子様がお礼にくれたものだと言う事だ。

 生徒の多くがその作り話めいた話を怪しみ、シルヴィア以外の大抵の生徒は嘘だと思っていた。

 それに、ドラコ・マルフォイがどうやってゾンビを倒したか聞けば、クィレルは赤くなって話を逸らして、急にお天気の話を始めた。

 他クラスでもそんな調子だったようで、本当にシルヴィア以外誰もその話を信じなくなった。

 ターバンがいつも変な匂いがするのは、ターバンにもニンニクを仕込んでいるからだ。と誰かが言い出し、それ以来の語り草になった。

 

 

 その後、昼食を挟んでからスリザリン生は薬草学の授業に向かう。スリザリンはレイブンクローと合同授業だった。

 スリザリン生の多くはグリフィンドールと同じじゃないだけマシだ。と口を揃えて言った。ただ、レイブンクロー生もあまり性格の良く無い奴らばかりだ。と愚痴を叩いた。

 不思議な植物やキノコの育て方、どんな用途に使われるかなどを学んだのだが、所謂土いじりの科目だった為、多くのスリザリン生が薬草学の教授であるスプラウトにバレない程度に手を抜いていた。

 対して、シルヴィアは薬草をまるで飼い猫を見るような目で見ており、他の生徒から若干気味悪がれた。

 

 1年生は基本的に4時限目までしか授業が無く気軽だった。

 

 次の日の1時限目は呪文学の授業があり、朝食を食べないシルヴィアとダフネはまた城内を迷って、授業ギリギリに教室に辿り着いた。

 呪文学のフリットウィックはとても背丈が小さく、シルヴィアが自分よりも小さい魔法使いは居たのだ。と若干の安心感を得ていた。

 ただ、スリザリン生徒はフリットウィックに対して少々の偏見の目を向けていた。ただ、フリットウィックが一度魔法を見せれば皆、自分もやってみたい。と言い出して、目を輝かせながら杖を振った。

 

 その次は空きコマを挟んで、昨日と同じレイブンクローと合同の薬草学の授業が執り行われた。

 昨日と同じようにシルヴィア以外のスリザリン生はバレない程度に手を抜いていた。

 シルヴィアがあまりに熱心に薬草と取り組んでいる為、その心意気をスプラウトに評価されスリザリンに3点加点をした。

 スプラウト曰く、これほどまで薬草学に熱心な生徒はあまり居ないと感激した様子で言った。

 

 その日の真夜中には、望遠鏡で夜空を観察し、星の名前や惑星の動きを勉強しなければならなかった。

 大抵の生徒は皆、眠たそうにしており、教授であるシニストラもそれを受け入れている様子だった。シルヴィアも前半は天動説を否定され驚いて目を見開いていたが、後半にもなるとすっかり眠い船を漕いでいた。

 

 水曜日の1時限目は、ハッフルパフ寮と合同の魔法史だった。魔法史の教授であるビンズはなんとゴーストだった。

 授業初めに壁からスルッと通り抜けてやって来てクラスを沸かした。

 ビンズはとある冬の日に教員室の暖炉の前で居眠りをしてしまい、その時に相当な歳だったそうだった。翌朝の授業に行く時に、生身の体を教員室に置いて行くというホラー展開なのかそうじゃ無いのか、よく分からない話をした。

 クラスの皆が起きていたのはその最初の時間だけで、その後は一本調子の講義に1時限目だった事もあってみんな、居眠りをしていた。

 スリザリン寮の多くはハッフルパフ寮の事を劣等生だと嗤っていたが、スリザリンもハッフルパフも関係無しにみんな、居眠りをしていた。

 

 水曜日のその後の授業は昨日、一昨日もあった授業が続いた。

 木曜日も同じような授業が続き、1週間の最後である金曜日はなんとスリザリン寮とグリフィンドール寮合同の魔法薬学の授業があった。

 シルヴィアはいつも通りダフネと一緒に魔法薬学の授業が行われる地下牢教室に向かった。

 スリザリン寮から地下牢教室が近かった事もあって、流石の2人も迷わずに地下牢教室に辿り着く事が出来た。

 2人は自分達が1番乗りかと思って教室に入った。

 教室は他の教室よりもずっと寒く、壁にはずらりとガラス瓶の中でアルコール漬けの動物がたくさん並んでいた。

 そして、その教室には既に栗毛の少女ハーマイオニーが席に着いていて予習をしていた。

 

「あ、ハーマイオニー」

 シルヴィアはこの1週間で、知り合い程度なら吃らず話せる。と言う能力を手に入れていた。

「シルヴィ──あ……」

 ハーマイオニーは立ち上がり後ろを振り返り、笑顔でシルヴィアに挨拶しようとした。しかし何かを見つけたようで、気分を落としたような表情になった。

「お、おはよう……?」「ほら、席に着くよ」

 ハーマイオニーの挨拶に被せるようにダフネはシルヴィアの腕を引いてハーマイオニーから1番離れた席に座った。

 シルヴィアは困惑して、ダフネの顔を見た。

 

「あの子、ハーマイオニー・グレンジャーよ? マグル生まれよ。スリザリン寮で穏便に暮らしたいならあまり関わらない事を勧めるわよ」

 ダフネはそう小声でシルヴィアに忠告した。

 シルヴィアはポカーンとしており、何故なのかを理解していない様子だった。その様子を見てダフネはため息を吐いた。

「……貴女でも1週間経てばなんと無く分かるでしょ? まず、スリザリンとグリフィンドールは仲が頗る悪いの。これはホグワーツ創始者の時代からの話だわ。」

 シルヴィアは驚いた。

 ホグワーツの創立は随分と前だと魔法史の授業で言っていたような記憶が蘇って来たからだ。

「──まさかだけど……貴女って、マグルとかも知らないの?」

「えーっと……うん。」

 またもやダフネはため息を吐いた。

「貴女って何処で育ったの? ……まぁ、いいわよ。教えてあげる。マグルって言うのは魔力を持たない人間の事を指すの。そうね、〝私達〟の言い方をするならば、魔法族よりもずっと劣っている存在よ。

 ……それが、真実であれ嘘であれ〝私達〟はマグルに対して差別意識を持っている。そして、時々なんでかは知らないけどマグルからも魔法が使える者が生まれる。そう言った人々をマグル生まれって言うの。

 〝私達〟はもっと酷い言い方をする時もあるけど……まぁ、貴女は知らなくていいわ」

「な、なんで……同じ見た目なのに……差別を、するの……?」

「……そうねぇ。今じゃ、プライドとかそんな話になっているけど……昔じゃ()()()()なんかがあってマグルが魔法族に対して深い憎悪の心を持っていた時代があったの。

 その時代にはマグルはしょっちゅう集団ヒステリーを起こして何かしらの不幸な事があれば魔法使い、魔女の所為だと囃し立てて本当の魔法使い、魔女、マグル問わず私刑を与えたそうよ。まぁ、どうせ魔法使い達にとっては魔女狩りを逃れる事自体余裕だったけど。

 まぁ、そんな時代も経たから……自己防衛と言う意味も強いかもね……──って、大丈夫?」

 ダフネは事細かく説明したが、シルヴィアは頭を抑えて苦しみ出した。

 

「──だ、だいじょ、大丈夫。うん」

 そう言うとシルヴィアは制服のローブのポケットから翡翠の液体が入った薬瓶を取り出し、一気に飲み込む。

「さ、最近……色々あって、く、薬を……飲み忘れて、たから……。その所為でちょっと体調が、わ、悪くなった。だけだよ。多分。……ごめん」

「そ、そうなの? また体調が悪くなったら言ってね。私が医務室に連れて行ってあげるから。

 大丈夫よ、魔法薬学のスネイプ先生はスリザリンの寮監。あの先生、スリザリンを()()()にしてくださるようだからね。授業中抜け出しても減点はされないはずよ。」

「う、うん。」

 シルヴィアはその後は、適当に魔法薬学関連の本を読みながら、始業を待った。

 グリフィンドール生とスリザリン生は、それぞれ教室を真っ二つに分けるように座った。

 

 授業が始まるなり、スネイプは出席簿を見ながら出席を取り始めた。そして、あのハリー・ポッターの名前まで来て少し止まる。

「あぁ、左様。ハリー・ポッター。我らが新しい──スターだね」

 スネイプはそう意味ありげ、皮肉っぽく言った。

 ドラコ・マルフォイは取り巻きのクラップとゴイルと一緒に冷やかしの笑いをした。スネイプが出席を終えると教室を見渡した。

 スネイプは、前にあった時よりも随分と冷たい人になっている。とシルヴィアは感じた。

 

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ」

 スネイプは語り出した。

 まるで呟くような声だったのに、クラスの皆はその言葉を聞き漏らさなかった。スネイプはマクゴナガルと同じくクラスを静かにさせる能力を持っていた。

「このクラスでは杖を振り回すような馬鹿げた事はやらん。そこで、これでも魔法と思う諸君が多いかもしれん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中を這い巡る液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力。……諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である──但し、我輩がこれまでに教えて来たウスノロ達より諸君がまだマシであればの話だが……」

 スネイプの大演説でクラスは一層シーンとなった。

 シルヴィアはその演説を聞いて魔法薬学という授業に期待を寄せ、先ほどよりも少しばかり前のめりになっていた。他にもハーマイオニーも同じような状態であった。

 

「ポッター!」

 スネイプが唐突にハリー・ポッターを呼んだ。ポッターは何かを書いていたようで、驚いた顔でスネイプの方を見る。

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何なるか?」

 そうポッターに質問をぶつけて来た。

 しかし、ポッターは分からない様子で隣の先ほどの出席の時間で、ウィーズリーと呼ばれていた赤毛の少年と顔を見合わせる。

 ウィーズリーの方も分かっていない様子で、少し悩んだ末「わかりません」と答えた。

 少し離れた席では、ハーマイオニーが空中に高々と手を挙げていた。スネイプはその様子を全て見てせせら笑った。

「チッ、チッ、チ──有名なだけではどうにもならなんらしい」

 ハーマイオニーの挙手は見事なまでに無視された。

「ポッター、ではもう1つ聞こう。ベゾアール石を見つけて来いと言われたら、何処を探すかね?」

 先ほどと同じく、ポッターは分からない様子で隣の席のウィーズリーと顔を見合わせすぐに「わかりません」と答えた。

 

「クラスに来る前に教科書を開いてみようと思わなかったわけだな、ポッター、え?」

 スネイプはそう意地悪そうに言った。

 ここでシルヴィアはなんと無くオリビアが言っていた『セイカクも見た目も最悪な奴』の意味を理解したような気がした。

 このスネイプ。随分と大人気ない大人なのである。何の因縁があるか誰も知ったこっちゃ無いが、あまりにもポッターに対してしつこいのだ。

 ハーマイオニーは手がプルプル震えているが今も尚、スネイプに無視され続けている。

 

「ポッター、モンクスフードとウルフスベーンとの違いはなんだね?」

 この質問でとうとうハーマイオニーは椅子から立ち上がり、地下牢の天井に届かんばかりに手を伸ばした。

 シルヴィアは心の中で、ハーマイオニーの勇気を讃えた。

「分かりません。ハーマイオニーが分かっていると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょうか?」

 ポッターはそう言い、グリフィンドール生を中心に生徒が数人笑い声を上げた。スネイプは不愉快そうだった。

「座りなさい」

 スネイプはハーマイオニーに対してピシャリと言い放った。

 

「では、ネクロタフィオ。今の問いに答えられるか?」

 スネイプはハーマイオニーを無視した癖に今度はシルヴィアに振って来たのだ。

 シルヴィアは困惑の表情を浮かべる。スネイプがポッターに問いかけた問いを覚えていないのだ。

 

「──まず、アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか? と言う問いだが……?」

「えっ、えぇ……えっと、その強い眠り薬になると、おも、います……」

 シルヴィアはつっかえながらも答える。グリフィンドールの方から、その吃りに対しての嘲笑の声が聞こえてくる。

「あぁ、そうだとも。正確には『生ける屍の水薬』になる。では、次のベゾアール石は何処を探せばよい? ついでにその効能は?」

「……ど、どっ、動物の胃の中……。と、特にや、山羊の胃のな、中にあるのは、……た、大抵の毒の解毒が……で、出来ます。」

「正解だ。」

 シルヴィアが正解を次々に答えるのでクラス中は、シルヴィアを尊敬するような逆に軽蔑するような視線で入り混じる。

「では、最後にモンクスフードとウルフスベーンとの違いはなんだね? そして、それぞれ何かね?」

「え、ええと。どちらも同じでトリカブトで、す。誤食す、すれば……はっ、吐いた……り。呼吸が、で、出来なくなったり……あと、け、痙攣なんかもします。さ、最悪死にます。ど、毒はま、回りやすく……危ないで。す。

 ……けれども、薬のざ、材料でもっ、使えます。た、例えば……じ、人狼症状を……お、抑えるとか……」

「──ほう? 全て正解だ。スリザリンに3点だ。諸君、何故今のを全部ノートに書きとらんのだ?」

 一斉に羽ペンと羊皮紙を取り出す音が聞こえた。

 ただ、あまりにもシルヴィアが吃りがキツすぎていて、それに加えて声が小さかった為に聞き取れた人は僅かであり、その聞き取った人伝に書いていく。という形になった。

 また、それに被せるようにスネイプはまた口を開く。

「ポッター、君の無礼な態度で、グリフィンドールは1点減点」

 シルヴィアは加点されたとは言えちっとも嬉しくなかった。

 きっとハーマイオニーであればハッキリと答えを言う事が出来た筈だ。それに、シルヴィアはあまり授業中に発言をしたくない。と思いながら今まで行動していた。急に槍玉に挙げられたような気分になった。

 

 その後は2人1組になって『おできを治す薬』を調合した。

 シルヴィアは、あまりにも慣れた手つきで調合を行ってしまったが故に、ダフネを置物にしてしまった。

 他の生徒達が蛇の牙を砕くのに梃子摺っている内に完成したのだ。

 結局、ダフネはシルヴィアが結局何をやったのかあまり理解出来ず、シルヴィアに調合の手順をもう一度細かく教わり始めた。

 スネイプはクラス中を回っており、どうもお気に入りらしいマルフォイと既に薬を完成させたシルヴィア、ダフネペアを除き殆ど全員が注意を受けた。

 

「あ!」

 シルヴィアがホグワーツ内で出した声では1番大きな声を出す。

 そして、シルヴィア史上1番早く動く。ダフネもシルヴィアの声を聞き取られた少しの生徒がシルヴィアの行動に目を奪われた。

 シルヴィアは、いくら早く動いているとは遅い足でグリフィンドールのネビル・ロングボトムとシェーマス・フィネガンの鍋の元に行き、今から山嵐の針を大鍋に入れようとしていたロングボトムの腕を握った。

「だ、だめ! お、大鍋を火から……お、降ろす前にやっ山嵐の針を……入れたら……な、鍋が溶ける!」

 シルヴィアは絞り出すように声を出した。いつもの自信の無さげな表情と異なり、真剣そのものだった。

「あぁ、そうだとも。それを入れていたならば大鍋を溶かして、クラスの皆がおできだらけになっていただろうな。ネクロタフィオのその行動に1点加点。」

 ロングボトムは震えながら小さく頷く。シルヴィアは思い出したように腕から手を離す。

 

「君、ポッター、針を入れてはいけないと何故言わなかった? 彼が間違えれば、自分の方がよく見えると考えたな? グリフィンドールはもう1点減点」

 当事者のポッターは勿論の事、近くのグリフィンドール生、シルヴィアも驚きで目を見開く。あまりにも理不尽するのだ。

 ポッターは何かを言おうとしたが、隣のウィーズリーに何か言われてすぐに辞めた。

 ここであのシルヴィアも。クィレルの嘘を純粋無垢に信じているあのシルヴィアでも理解する。

 ──このスネイプとやらは、頗る性格が悪いのだと。

 

「ネクロタフィオ。自分の席の方へ戻るのだ」

「は、はい……」

 シルヴィアはそう言われてしまったので自分の席の方へ戻る。

 途中、ハーマイオニーの脇を通る。ハーマイオニーは人混みに紛れて、シルヴィアに羊皮紙の切れ端を渡して来た。

 シルヴィアは訳も分からないまま羊皮紙の切れ端を受け取り、ローブのポケットに入れる。そして、自分の席の方へ戻ってくる。ダフネは複雑な表情でシルヴィアを見ていた。

 

「流石はポーションマスターね」

 ダフネはそう若干不満そうでありながらも、シルヴィアの行動を褒める言い方をした。

 そして、先ほどの続きを頼みシルヴィアは『おできを治す薬』の作り方の説明を再開させた。

 授業終了時にはギリギリ、ダフネも調合方法を理解出来てはいた。どこかの誰かの所為で、実戦の機会を失われたが。





【殺戮卿】:
 ホグワーツに飾ってある肖像画。血みどろ男爵ぐらい血塗れ。シルヴィアを愚妻と似ている。と言う為だけに引き留めた。

クィレル:
 クィリナス・クィレル。闇の魔術に対する防衛術の教授。シルヴィアよりも酷い吃りを持っている。教室はニンニク臭い。ターバンを付けており、彼曰くアフリカの王子様がお礼にくれたものらしいが、その話はシルヴィア以外誰も信じていない。
 因みに、趣味は押し花らしい。

ハリー・ポッター:
 スネイプ「あぁ、左様。ハリー・ポッター。我らが新しい──スターだね」

ネビル・ロングボトム:
 シルヴィアが止めた為、おできだらけになる。と言う悲劇は封じられた。

スネイプ:
 遂にあのシルヴィアからも性格悪いんじゃね?と思われる。

捏造スリザリン時間割表です:
 https://privatter.me/page/67a07e32734ab


シルヴィア・イラストです
{IMG210744}

誤字脱字等ありましたら報告お願いします。
また面白かったら評価、感想などを寄せていただけると励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。