呪いの少女と祝福された世界   作:佳山針之介

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2025/03/12 本文編集


第9話 闇に蠢く何者か

 11月になるといい加減寒くなり、学校を囲む山々は灰色に凍りついた。

 あの大きな湖も冷たい鋼のように張り詰めており、スリザリン寮から見える水生動物の数もめっきり減った。校庭には毎朝霜がおりていた。

 

「さっ、む〜い!」

 パンジーが移動教室時に手を擦りながら言った。

 城内は魔法で温めているのか基本的には暖かいのだが、地下牢の廊下だけは何故か寒い。スリザリンの誰かによれば、ダンブルドアの陰謀だそうだ。

 よって魔法薬学の授業に行く為には凍えるような寒さの廊下を歩かなければいけないのだ。

 一般生徒にとって正直言って勘弁してほしい事実だった。みんな、各々セーターやマフラーを着込んで居た。シルヴィアはいつも通りだったが。

 

「そう言えば、次の土曜日はクィディッチの試合が始まるよな」

 ミリセントが唐突に思い出したように言った。11月からはホグワーツのクィディッチ・シーズンが始まるのだ。

「そうよね。初戦はグリフィンドールとスリザリンの試合だわ! 応援に行かないと!」

 パンジーがそう呼応するように答えた。

 シルヴィアもそういえば、ハーマイオニーが一緒に勉強する時間にやたらとクィディッチの事を調べていたのを思い出した。

 シルヴィアがクィディッチについて一切知らないと言うとハーマイオニーは基本ルールやら、クィディッチには700も反則があり、それが全て1473年の世界選手権で起こったと言う話。

 それに加えてクィディッチの歴史について事細かく説明をしてくれた。よってシルヴィアは普通にクィディッチについて詳しくなった。

 ハーマイオニーの話はすべて〝クィディッチ今昔〟と言う本の受け売り情報だそうでよく読み込んでいる様子だった。

 しかし、何でいきなりクィディッチについて調べたのかを聞いたら、ハリーがどうこう言ってから思い出したように口を噤んだ。何かしらの秘密があるらしいが、シルヴィアは忘れた事にしておいた。

 

「今のところスリザリン寮が毎年優勝してるんだっけ?」

「そうよ! だから、今年もクィディッチ優勝杯はスリザリンのものよっ!」

 パンジーはそう息巻いて言った。

 その頃には、魔法薬学の授業を行う地下牢教室に辿り着いて居た。暫く雑談をしているとスネイプがやって来る。

 

「……ね、ねぇ、シルヴィア? スネイプ……足を引き摺っていない?」

 ダフネがすぐさま異常に気がつきシルヴィアに耳打ちする。

 他の生徒達も数少ない数名が気が付いており、こそこそと話し声が上がった。

「ハロウィーンの時からなんだよ? ハロウィーンの時は傷が見えたから分かるんだけど、あれはサイズの大きい動物に引っ掻かれた跡だと思う。取り敢えず、何か病気を貰わなきゃいいけど……」

「ふ〜ん。また、あの森番が何かやらかしたのかしら?」

 ダフネはそう言い納得して授業に打ち込む。

 シルヴィアもどうせそうだろうと考えた。ただ、スネイプがそんなドジを踏むのだろうか? 結局、自分が考えても無駄。と言う結論に至り、スネイプの話を聞き始める。

 

 

 シルヴィアは最近、色々な用事が立て込んだ所為で会えていなかったオリビアに会おうと梟小屋に向かった。

 今日も今日とてハーマイオニーと図書館で勉強をしようとしたら、ハーマイオニーから今日だけは少し忙しいと言われてしまったのだ。

 シルヴィアはそんな日もあるかと言い、そのまま梟小屋に向かったのだ。

 

「ヤッホー。オリビア!」

「あら、シルヴィアじゃない。スッカリ私のコトなんか忘れちゃったのだと思ったわよ。」

 オリビアは若干臍を曲げている様子だった。

 シルヴィアはそんなオリビアを梟小屋から連れ出して生徒があまり来ない場所でかつ、適当に座れる場所に向かい、座った。オリビアもシルヴィアの隣に降り立つ。

「あなた、サムサを感じるキカンが無いのかしら?」

「どうだろう? みんなが寒がっててもあまり私はあまり寒く無いんだよね。」

 シルヴィアはそう言って笑ってから、今まであった事を順番に話し始めた。

 ハーマイオニーと毎日図書館で勉強するようになった事。

 自分の名字が持つあまりにも深すぎる物語(これについてはオリビアが「私もそのハナシしたじゃない!」と言っていたが、シルヴィアは一切覚えていない)。

 トロールを他3人の生徒と共に倒した話を一通りした。

 

「なんだか、ハランバンジョーな3ヶ月を過ごしたのね。普通の1年生ならトウテイそんなコイ3ヶ月をスゴサナイわ。」

「けど、案外この生活も悪く無いかなって思ったの。あの森の中で1人孤独に暮らしているよりはずっと……楽しいかも。それに、ちょっと記憶力がよくなってね。呪文学の呪文とか他にも本に載ってた呪文を少しずつだけど覚えられるようになったの」

 そう言ってシルヴィアは杖を振り、自分の近くに雪だるまを1つ作った。

「それはヨカッタわね。」

「次の休日には遂にあの森に行ってみようと思──「ヤメナサイ!」

 オリビアはすぐさまシルヴィアの言葉を否定した。シルヴィアは驚いた表情になる。

「ど、どうして……?」

「どうしてもナニモ! ……あぁ、そうだわ。そうだったわね。貴女はダンブルドアのハナシ聞いてないものね……」

 オリビアは酷く疲弊した表情になった。(とシルヴィアは思った)

「あのモリに入ってはイケナイってコトはホグワーツのコウソクで決められているわ。まぁ、ホグワーツのコウソク以上に形骸化してるルールもメズラシイんだけど……。あのモリのナマエは〝禁じられたモリ〟って言うのよ?

 あのモリには、あの動物アイゴを履き違えたオオオトコが育てたキケン動物が居るだけじゃなくて、ケンタウルスのシュウラクとか巨大肉食蜘蛛の巣があったり、あと狼男も住んでいるかもしれないわ。兎に角、とってもキケンなのよ!」

「そ、そっか……いい薬草が植ってそうなのに……残念」

 シルヴィアは心底哀しげな声で言った。

 オリビアは態度を崩さす「ドウシテモ行きたいなら、キョウジュを捕まえてくるコトね」と言った。

 シルヴィアは薬草学のスプラウトを思い出すが、1年生の自分を『禁じられた森』と言う名前が付けられた森には行かせてくれなさそう。と思い、肩を落とした。

 

「けどさ、私って森に慣れて──「シッ!」

 オリビアはそのモフモフの羽でシルヴィアの口を覆った。

 シルヴィアは一瞬理解が出来なかった。オリビアが向いている方へ視線を向けると、あまりにも遠いので誰かは正確には判断が付かないが、黒いローブを纏った何者かが森の中へ入って行った。

「あ、あれは……誰だと思う?」

 シルヴィアがオリビアに小声で聞く。オリビアは少し悩んだ末に口を開いた(この場合は嘴?)

「分からないけども……あのニンゲンには何かイヤな影が見える気がするわ……」

「嫌な……影?」

「そうね、()()()()()()()()()()って言う影が見えるわ。」

()()()()()()()()()()?」

 シルヴィアはオリビアの言葉をそのままオウム返しする。

 どう言う意味か分からなかったのだ。普通に考えれば、生きているなら死んでいない。死んでいるなら生きていない。

 〝()()()()()()()()()()〟……果たしてそんな矛盾を抱えた存在を、神は赦してくれるのか?

「分かりやすく言うと、一角獣(ユニコーン)のチを飲んだニンゲンのように見えるわ。」

「ユニコーンの血を飲んだ人? ユニコーンの血を飲んだ人って……確か、呪われるんじゃ」

「あら? シッテルノ?」

 シルヴィアは、自分自身でもなんで知っているのか分からなかった。ただ、知っていた。

 

「けど、呪われるって知っておきながらユニコーンの血を飲むなんて……どんな人なの?」

「そこまではサスガに分からないわ……。よっぽど深いキズを負ったニンゲンとか、よっぽど重いビョウキを持っているニンゲン……かしらね。

 けど、タイテイの場合はユニコーンを飲んで負う呪いが怪我やら病気よりも遥かに上回るものよ? リスクとリターンがあまりにも釣り合っていないわ。」

 シルヴィアは深い傷を負った人でスネイプを。重い病気を持った人でダフネを思い浮かべた。しかし、スネイプはハロウィーンの時に見た具合だと何もなければ半年以内に傷が治りそうな怪我だったし、ダフネはわざわざ呪いを解く為に呪いを受けるとは到底思えなかった。

「何か心当たりがあったの?」

「いや、すぐに違うと思ったよ。」

 シルヴィアはまたユニコーンの血を飲む人を考える。

 ただ、あまりにも情報が無いので考察するまでも無く思いつかない。で終わってしまった。

 

「まぁ、そう言う知ってしまってはイケナイものを考えるのはオヤメにしましょ。……そう言えば、そろそろクィディッチの時期ね。シルヴィアはもうホウキに乗ったのかしら?」

「乗ってないよ。授業で問題が起こっちゃってそれ以来飛行術の授業は中止。正直言って本当にありがたい話だよ。」

「空をトブって言うのは楽しいわよ。貴女もイッカイ飛んでみればトリコになっちゃうと思うんだけど?」

 オリビアは確かに梟だ。空を飛ぶ動物だ。そりゃあ、空は楽しいだろう。

 しかし、シルヴィアは生憎人間だ。地に2本足をつけて歩く人間だ。地上を歩くだけで転けている自分が、空を飛んだらどうなってしまうか想像するだけで恐ろしいと思った。

「……あ、けどシルヴィアは地を歩くだけでケガをするから、ヤッパリやめておいた方が良さそうね」

 オリビアもその事実に気が付いてくれたようでシルヴィアは安心する。

「よく分かってるね。……ん?」

 シルヴィアの目には森から出て来るクィレルが見えた。すぐさまオリビアを抱き抱えて建物の影に隠れる。

 そして声を押し殺しながら1人と1羽は話し始める。

「あれは……確か、ヤミの魔術に対するボーエイジュツの教授よね?」

「……私ね、スネイプ先生に言われたの。クィレル先生に注意しろって」

 シルヴィアはそうオリビアに打ち明けた。オリビアは少し考え込む。

 

「シルヴィアはあの吃りのキツイだけの教授と元死喰い人(デスイーター)の教授。どっちを信用するの?」

「え……?」

 そう言えば、シルヴィアとオリビアが初めて出会った時、オリビアはスネイプの事を〝セイカクも見た目も最悪な奴〟そして〝死喰い人〟と呼んでいたのを思い出す。

 死喰い人については、シルヴィアでもこの3ヶ月でやっと一般常識の中に入った。〝例のあの人〟の取り巻きで闇の魔法使い達の事を指す言葉だ。

「う〜ん……難しいかも。どっちも信頼出来ない……かな。オリビア? 今、クィレル先生に()()()()()()()()()()影は見える?」

「──えぇ、見えるわ。……と言うより、ナニモノかが取り憑いているって言うフインキを感じられるわ。」

 シルヴィアはその言葉を聞いて少し考え始める。

「……取り敢えず、クィレル先生が城内に戻るまでここで大人しくしとくのが正解なんじゃ無いかな?」

「それはソウネ。」

 そうして、1人と1羽は息をも押し殺しながら建物の影に隠れクィレルが行くのを見届ける。クィレルは1人と1羽に一切気が付かない様子で、足早に進んで行った。

 

「ご、ご主人様! 私は必ずや成功させますから!」

 最後の最後にそんな声が聞こえて来た。クィレルにしてはいつもより、ずっとハッキリとした語り口調だった。そこでシルヴィアは何かの記憶と結びつくような感覚が訪れて共に頭痛が襲って来た。

 

「どうしたの!? シルヴィア! しっかりして!」

 オリビアの声がまるで戸を一枚挟んだような声に聞こえてくる。

 

 ──この時代を生きる誰よりも……

 

 ──お前はマグルを恨んでは……

 

 ──お前達に偽りの罪を着せ……

 

 

「だ、大丈夫だよ。オリビア。ちょっと頭痛がしただけ……」

 シルヴィアはそう言ってローブに手を突っ込み、薬瓶を取り出して薬を飲んでみる。

 入学前に作っておいた薬のストックはすっかり残り僅かになっていた。

 

「けど、どうしてクィレル先生がユニコーンの血を飲むのかな?」

「う〜ん、ムズカシイ問題だわ。……そういえば、あのキョージュ……クィレルって言うのは一昨年まではマグル学のキョウジュをしていたわ。

 それで、どっかリョコーに行くって去年キューショクして、今年帰って来たらあのヨウスよ? ムカシはもう少し朗らかだったのに……」

「その、旅行中に何かあったのかな?」

 そう言い、2人は考え出すがこれと言った答えは浮かび上がってこなかった。

「う〜ん、何となくだけど、シルヴィア。これはフミコマない方がいい話だと思うわ」

「……そうだね。推理小説のネタとしては面白かったんだけどな」

 その頃にはもう空は紫に染まっていて、いい加減シルヴィアでも寒いと感じるぐらいに気温が落ちていた。

 シルヴィアはオリビアを梟小屋に送ってから城へ帰った。

 

 

「今日は遂にクィディッチの試合よ!」

 パンジーは朝からテンション高く、嬉しそうに同室の3人に話しかけた。

 ミリセントも嬉しそうに盛り上がっているが、シルヴィアとダフネは朝なのでテンションが低かった。

「早く朝食に行こう! クィディッチ観戦の為には、しっかりと飯を食わないと!」

 ミリセントがそう声を上げたが、シルヴィアとダフネは起きていると眠っているの狭間であった。

 結局、試合開始時間になればクィディッチスタジアムに向かうとダフネが言って二度寝をし始めた。シルヴィアもデンデンムシ並みの速さで準備を始める。

 パンジーとミリセントはそんな2人に呆れつつ、朝食を食べに大広間に足早に向かった。

 

 11時にはシルヴィアもダフネも他の生徒達と同じく、クィディッチ競技場に詰めかけていた。パンジーとミリセントは双眼鏡を持参しており、クィディッチの試合を今か今かと楽しみに待っていた。

 一方シルヴィアは、あまりにも高すぎる観客席に震えていた。ダフネはここまで登ってくるのに非常に疲弊した様子だった。一応、双眼鏡を持って来たらしいが疲れてしまって覗く気には今のところなれないらしい。

 競技場のあっち側にはグリフィンドール生が陣取っており、ボロボロなシーツで大きな旗を作り〝ポッターを大統領に〟と書いてグリフィンドールのシンボルであるライオンが下に描かれていた。それに加えて色んな色で光っていた。

「汚らしいシーツだ事」

 パンジーの隣に居たマルフォイはそう吐き捨てるように言った。

 シルヴィアは〝大統領〟と言う聞き慣れない言葉の意味を考察しているところだった。

「イギリスのマグル界の1番偉い人って確か、大統領じゃなくて首相だった気がするんだけど……」

 ダフネがそう言ったので、意味の分からない単語がまた増えてシルヴィアは混乱した。ただ、凄い人の名前なんだろうと思った。

 

「シルヴィア。キテいたのね」

 オリビアがシルヴィアに程近い手すりに着陸する。

 みんな、クィディッチの試合が始まるのを今か今かと待ち構えている為、梟が1匹来ようと誰も気にしなかった。

「こう、凄い……人の多さだね……」

「そうね。毎年ホグワーツはクィディッチシーズンになるといつもイジョーに盛り上がりを見せるからね。

 それに、あのハリー・ポッターって子。1年生でクィディッチ・チームに入るなんてキット凄いサイノーの持ち主の筈よ。楽しみだわ。」

 

 オリビアはそうハリー・ポッターに対して期待を寄せていた。

 間も無くすると、マダム・フーチが審判役として競技場に出て来る。マダム・フーチが競技場の中心に来るぐらいでスリザリン・チーム、グリフィンドール・チームが競技場に出て来る。

「待って、あのポッターが持ってるのって……ニンバス2000じゃ無いか!?」

 ミリセントが双眼鏡を覗きながら身を乗り出して言う。ミリセントが言うにどうやら、今出ている箒の中で1番早いらしい。

 パンジーはすかさず、ポッターは親無しなのに何故、そんな箒が買えるのだ。と憤怒した。しかし、その疑問はすぐに解消された。

「マクゴナガルが買い与えたんだ。ポッターをクィディッチのグリフィンドール・チームに無理矢理校則を捻じ曲げて入れたのと一緒に」

 マルフォイがそう物凄く不服そうに言った。

 その言葉をシルヴィアは信じられなかった。あの平等・公平の権現のような人がそんな誰か1人の生徒を贔屓にするような事をするのか。と驚いたのだ。

 ただ、日頃のスネイプに比べたら10倍、いや100倍はマシな行動だ。と考えた。

 

「さあ、皆さん、正々堂々戦いましょう」

 マダム・フーチはそう言った。

 ただ、明らかにスリザリン・チームのキャプテン、マーカス・フリントに向かって言っているらしい。

「よーい、箒に乗って」

 両チームの選手とも箒に跨り、飛び出す準備をする。

 間も無く、マダム・フーチの笛の音が競技場に響いた。15本の箒が高らかに空に舞い上がる。試合開始だ。

 

「さて、クアッフルはたちまちグリフィンドールのアンジェリーナ・ジョンソンが取りました──なんて素晴らしいチェイサーでしょう。その上、かなり魅力的で──「ジョーダン!

「失礼しました、先生」

 グリフィンドールの生徒が隣に居るマクゴナガルの厳しい監視の元、私情を混ぜながら実況放送をしている。

「ジョンソン選手、突っ走っております。アリシア・スピネットに綺麗なパス。オリバー・ウッドはよい選手をみつけたものです。去年はまだ補欠でした──」

 シルヴィアはこの時点ですっかり目がくらくらしていた。

 選手間を飛び交うクアッフル。そして、選手達を狙うように凶暴に自在に飛び回る2つブラッジャー。ボールを3つ追うだけでシルヴィアは目が回っていた。その上に選手達自体も上下左右自在に動き回る。

 話には聞いていたが、目の前にその光景が広がるとシルヴィアは追いつけず、観客席に座り込んだ。

 少なくともスニッチ現れるまでのんびりと過ごしていようと思ったのだ。その間にも両チームとも10点ずつ点数を獲得した。

 

「シルヴィア! あのポッターのホウキが大変なコトになっているわ! って言うかなんでスワッテるの!?」

 オリビアにそう言われるなり、シルヴィアはまた立ち上がり大変な事になっているらしいポッターを見上げた。観客席の一部生徒も随分と高い場所に居るポッターを指差している。

 よく見るとポッターの箒はぐるぐると回り出しているのだ。

 ポッターは辛うじてしがみついている。しかし、次の瞬間、皆が息をのんだ。箒は荒々しく揺れ、まるでポッターを振り下ろそうとするかの如く動き出しているのだ。ポッターは今や片手だけ箒の柄を掴みぶら下がっている。

 

「な、何が起こっているのかしら? あれじゃ、ポッターが本当に落ちて死んじゃうわ……」

 ポッターが大変な事になっている間もスリザリンのマーカス・フリントはクアッフルを奪い、5回点数を決めた。その中でダフネが隣のシルヴィアに対して言う。

「ど、どうなってるんだろ……」

「箒は……特にハリー・ポッターの持っている箒は高級品だわ。強力なヤミの魔術イガイではそう簡単にソウサ出来るものじゃ無い筈……お子様達がナニカ出来る代物じゃないわ。」

 そうなれば、強力な闇の魔術を使っている人間がこの競技場に居る事になる。シルヴィアは寒気がした。

「ダフネ! 双眼鏡を貸して!」

 シルヴィアはそう言うなりダフネから半ば、引ったくるように双眼鏡を取った。

 

「な、何よ!」

 シルヴィアは教職員席を双眼鏡で覗く。

 するとシルヴィアの予想通り、クィレルがポッターから目を離さずに絶え間なく何かをブツブツ呟いている。

「ねぇ、シルヴィア! 一体どうしちゃったの!? ポッターの方じゃなくて教職員席を見て!」

 ダフネはシルヴィアの体を揺さぶりながら聞いた。

「何かを……しているみたい……ほら、クィレル先生を見てご覧よ」

 そう言ってシルヴィアはダフネに双眼鏡を変えした。

 ダフネが双眼鏡を覗く。その頃には観客は総立ちで恐怖で顔が引き攣らせていた

 

「呪文でもかけているのかしら……? けど、どうしてクィレル先生が?」

 ダフネは双眼鏡を覗きながらそう言った。

 シルヴィアは昨日、森から出て来るクィレルを思い出す。そして、クィレルはオリビアによれば〝()()()()()()()()()()影〟が見えて、〝何者かが取り憑いているって言う雰囲気を感じられる〟そうだ。

「何か、怨霊にでも取り憑かれているのかな……。ミスター・ポッターを殺したくなるような怨霊。」

 シルヴィアがそう呟くとダフネはすかさず「それってもう確実に〝例のあの人〟の怨霊じゃん」と言った。

 ダフネがそう言った途端、今度は教職員席のスネイプのマントが燃え始めた。教職員席で鋭い悲鳴が上がった。その騒動の最中、クィレルは何者かに押されたようで倒れ込んでいた。

 

「ハーマイオニー……!?」

 普通に、自然に考えればあの正義感の強いハーマイオニーの事だ。この事態をどうにかする為に魔法を使ったのだろう。

 けれども何故、その行動の結果がスネイプのマントを燃やすに至ったのだろうか? 

 確かに、スネイプは全ての要点から怪しさ満点である。それに加えてグリフィンドールに特にポッターに憎悪を持っている事はほぼ確実である。しかし、今回はクィレルが犯人である事は確定だろう。

「ス、スネイプ先生が燃えているわ!」

 シルヴィアはその声の中も必死に考え続けた。

 そう言えば、オリビアはスネイプが元死喰い人であったと言った。では、2人は共犯なんだろうか? それでは、自分にクィレルに気をつけろ。と言った理由は──?

 

「スニッチを取ったぞ!」

 ポッターの叫び声が聞こえた。

「あれ、終わっちゃったの?」

 ダフネがそう言う頃にはフリントが「あいつは取ったんじゃない。飲み込んだんだ!」と叫び始めた。結局、彼は20分ぐらい喚いていたらしいが、結果は変わらなかった。

 

「グリフィンドール、170対60で勝ちました!」

 シルヴィアは改めて思う。このゲームのルールはもう少しマシにならないものか。

 1つボールを取るだけで今までの試合が殆ど無効になる勢いの150点の加点がされるのだ。流石にどうかと思う。

 

「けど……まぁ、変な事が起きたけど……クィディッチ……面白かったかな。疲れるし、もう見なくていい気がするけど。」

 その後のスリザリン生とグリフィンドール生は暫くの間小競り合いをしていたが、マクゴナガルの怒声で蜘蛛の子散らすように退散していた。






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