ある日、俺たちは死んだ。
なんで死んだのかもよくわかっていない。ただ大きな音と激しい衝撃があったことは覚えている。
俺たちは仲のいいゲーム友達だった。お互いやるゲームは違っても、通話を繋げながらやるほどには仲が良かった。今日も、いつもみたいに各々違うゲームをしながらだべっていたんだ。
けど気が付いたら、
駅のホームに立っていた。
「どこだここ?」
俺、灰陽忍は思わず口に出していた。あまりにもいきなりの出来事に混乱していたのだ。
「どうなってんだ?俺は、死んだ、はず」
あたりを見渡す。見渡す限りの白い世界。雪だとかじゃなくて本当にただ白い景色が広がっていた。
ふと後ろを見る。そこには二人の人がいた。
「月本!犬上!」
俺は慌て二人に駆け寄った。二人はホームの椅子に座って眠っていた。
「おい!起きろ!大丈夫か!」
月本の肩をつかみゆすった。するとはゆっくりと起てきた。
「なんだ...?って、忍!なんで僕の目の前にいるんだ?ていうか、ここどこだ?」
「わからん」
「わからんって。どうすんだよ」
「どうするも何も、死んじまったんだからどうしようもないだろ」
「死んだ、か。やっぱりあれは死んだんだな」
「ああ。そんな確信がある」
「そうか。とりあえず、こいつ起こさねえ?」
そう言って月本は隣の犬上を指差した。とても気持ちよさそうに眠っている。
「これだけ騒いでも起きないって、どんだけぐっすりなんだよ」
「こいつは一回寝るとなかなか起きないからな。おい!起きろ竜騎!」
そう言って月本は犬上の肩を激しく揺らした。もはや首が取れそうな勢いだ。
「んあ?あれ、おはよう2人とも。…ここどこ?」
「やっと起きたか。ここがどこかは俺たちにもわからん」
「そうかい」
「とりあえず、あたりを探索してみるか」
「そうだな」「了解」
2人は立ち上がって周りを探索しようとした。すると、遠くの方から音が聞こえてきた。
「なあ、なんか聞こえてこないか」
「ああ、僕にも聞こえているよ」
「この音は、電車の音だねぇ」
「まあ駅だしな。電車ぐらい来るだろ」
「んじゃ、どこに行くか確認しようぜ」
そういってしばらく待つと、白い二両編成の列車がやってきた。そして灰陽たちの前で止まり、扉が開いた。
「開いたが、これどこに向かうんだ?」
「車両には、特に書いてないな」
「とりあえず、乗ってみるかい?」
「僕はまだあんまり乗りたくないかな」
「俺は乗ってもいいと思うぜ」
「とりあえず、あたりを探索してからでもよくない?」
「けれど電車が行ってしまうかもしれないねぇ」
「なっ、乗ろうぜ」
「は~、仕方ないな。乗ろうか」
彼らは電車に乗り込みあたりを見る。乗り込むとすぐに扉が閉まり列車が走り出した。そして、すぐそばに血を流した少女がいることに気が付いた。彼女を見つけた灰陽たちはすぐに駆け寄った。
「あんた!その血!大丈夫か!」
「どこかに医療キットとかないか!電車ならあるだろう!」
「列車の壁についていることが多いが、なさそうだね」
「やばいってこれ!」
灰陽たちが焦っていると、少女は少し笑っていた。
「ふふ、大丈夫ですよ。痛みはありません。この血も、問題ありませんよ」
「そうなのか?」
「これは大丈夫そうには見えないけど…」
「まあ、彼女が大丈夫というなら大丈夫だろう」
「犬上、お前は焦らなすぎなんだよ」
「いいじゃないか。このくらいでいいんだよ」
「お前なぁ」
大丈夫と聞き、おちついた3人は、彼女に話しかけた。
「なあ、この電車がどこに向かってるかわかるか?」
「この電車はキヴォトスへ向かう電車ですよ」
「へ~キヴォトス。キヴォトス?!」
「キヴォトスって、あのキヴォトス!」
「はい、皆さんがイメージしているもので構いません」
3人は驚愕した。その名前は生前やっていたゲーム「ブルーアーカイブ」の舞台であったためであった。
「えっ、それじゃ俺たちはブルアカの世界に転生するのか?」
「転生というよりは転移ですね。皆さんには、キヴォトスで先生として働いていただきたいのです」
「なるほどね。だから僕ら以外には誰もいなかったんだ」
「けど、3人も先生がいて大丈夫なのかね?」
「1人、先生を決めていただいて残りの方々は補佐や代理人といった役割になりますね」
「なるほどねぇ。それじゃ誰がを先生やる?」
3人はそれぞれ顔を見合わせて、少し考える。すると、灰陽が手を挙げた。
「俺がやってもいいか」
「僕は別に構わないが、なんでだ?」
「シンプルにこの中でブルアカのメインストーリーをまともにやってたのが俺だって思い出しただけだ」
「あ~、そういえばそうだねぇ」
「なら忍、任せた」
「おう!」
灰陽は軽く胸をたたきながら自信満々に言った。
「話はまとまりましたか?」
「ああ、俺が先生をする」
「わかりました。先生よろしくお願いしますね」
「任せろ」
「ねえ、ちょっと気になったんだけどさ」
犬上がふいに少女に向かって話し出す。
「先生になった灰陽君はシッテムの箱とかで銃はだいじょうぶだけどさ、私たちは何もない普通の人間なんだけど、特に何かあの世界を生きていくための道具とかないのかい?」
「確かにそうだ。僕たちはどうなるんです?」
「安心してください。もちろん何もなしであなた方を送るわけではありません。先生の分も含めて対策はあります」
「そうなのか」
「なら安心だねぇ」
「その対策ってのは何なんだ?」
「あなた方に特別な力を与えます。それを使って頑張ってください」
「へ~、いいじゃん」
「どんな能力か教えてくれるか」
「あなた方が最後にやったゲーム会社の能力です」
「なるほど、ゲームのキャラクターの能力が使えるのか」
「お前ら最後に何のゲームやった?」
「僕は、リンバスだったな」
「私は、モンハンだったねぇ」
「俺は、ブラボだった」
「…戦闘特化すぎないか」
「まあ仕方ないよね」
「勘違いしているようですが、
「「「?」」」
「つまり、最後に遊んだゲーム会社の作品すべてのキャラクターの能力が使えるのです」
「「「……は?」」」
わけがわからない、そんな様子で3人は、あまりにでたらめな情報に理解が追い付かなかった。
「つっ、つまり、俺だったらブラボだけじゃなくてエルデンやダクソの魔術とか祈祷とか使えるってことか!?」
「そうなりますね」
「これは…」
「なかなかチートだねぇ」
それぞれがやっていたゲームの会社から出ているゲームを思い出す。あまりにもめちゃくちゃすぎてより混乱する。
「まあ、皆さんは一度死んだためこのような能力を使うことが許されているのだと思います」
「死んだ、ねぇ」
3人は思い出す。自分が最後に見た光景を。熱く、苦しい、そんな状況を。
「まっ、そういうことならありがたくもらっとこうかね」
「受け入れるのが早くないか犬上」
「こういうのはもうどうしようもないからねえ」
そう言うと、犬上は彼女と反対の椅子に座った。
「ここから先はもう、なるようになるんじゃない?」
「う〜む、そう受け止めるしかないか」
灰陽も犬上の隣に座った。
「2人とも、もう少し焦ってもいいんじゃない?」
「だってもう、物語は始まったからねえ」
「えっ?」
「この電車に乗った時にはすでにキヴォトスに行くのは決まってたんだからな。死なば諸共だ」
「は〜、まったく。やるしかないか」
「そうそう、やるしかないんだよぉ」
「竜騎はもうちょっと焦れ」
そうして、月本は灰陽の隣に座った。すると彼女が語り出した。
「……私のミスでした」
少女は沈痛な面持ちで俯く。その表情は悔しさを堪えるように、唇をきゅっと縛っている。
「私の選択、そしてその選択によって招かれたこのすべての状況…」
聞いたことがある、プロローグの彼女の嘆き。
「この結果にたどり着いて初めて、貴方の選択が正しかったことを知るなんて…」
1人の少女の願い。
「図々しいお願いですが、お願いします」
“…おう、任せろ”
それを聞くと、少女は軽く微笑み続けた。
「大事なのは経験ではなく、選択」
「あなたにしかできない選択の数々」
「私が信じられる大人である、あなたになら、この捻れて歪んだ終着点とは、また別に結果を……」
「そこへつながる選択肢は、きっと見つかるはずです」
「だから先生、どうか…」
その先の言葉を聞く前に、意識が遠のいていく。ああ、もう着くのかと3人は認識する。最後に聞いたのは、純粋な願いだった。
「どうか、キヴォトスをお願いします先生」
それを聞き、3人の意識は完全になくなった