「先生」
意識を失って少しした後、3人は謎の浮遊感を感じていた。
「先生、起きてくださいせんせい」
まるで自分の体にいないような感覚であった。
「先生!先生!」
どこかで聞いたことがあるような声を遠くに聞きながらゆっくりとねむっていた。
「先生!起きてください!」
「ん?」
椅子に座りながら眠っていた灰陽は、叫び声に叫び声のような声に目を覚ます。そこには、黒髪でエルフ耳の眼鏡をかけた少女、七神リンがいた。
「ああ、眠ってたか」
「はい、遠いところからのお越しだと伺っています。お疲れだったのでしょう。お連れの方もまだ起きておられませんし…」
そう言われ、灰陽は周りを見る。そこには未だ眠っている月本と犬上の姿があった。犬上に関しては、軽くいびきも掻いている。
「は~、おい月本、犬上起きろ!」
灰陽は犬上の肩を揺らしながら二人に声をかけた。
「ああ、また悪いな忍」
「んが!ああ、おはよう」
「全く、もう少し早く起きてくれないか?」
「…善処しよう」
「まあ、頑張ってみるよぉ」
緩い会話をする3人に、リンは咳払いで気を引く。
「会話中にすいません、そろそろ移動したいのですが」
「悪いなすぐ向かう」
会話を中断し、リンのいるところに向かう。
「それでは、今の状況をもう一度説明させていただきます」
「私は七神リン、ここ連邦生徒会の幹部です」
「俺は灰陽忍。よろしくな」
「月本望です。よろしくお願いします」
「私は犬上竜騎だよぉ。よろしくねぇ」
「はい、よろしくお願いします」
それぞれの自己紹介を済ませながら4人はエレベーターに向かっていた。
「今現在、キヴォトスでは様々な問題が起こっております。先生方にはそれらを解決するために行動していただきたいのです」
エレベーターに乗り、下へと降りていく。ガラス張りのエレベーターの向こうには地平線の向こうまで都市が広がっていた。
「ようこそキヴォトスへ、先生」
「先生のいらっしゃったところとは、様々なことが違うため最初は慣れないことも多いと思います」
「ですが、先生方ならそれほど問題はないと思います」
「何せ、あの連邦生徒会長がお呼びになった方なのですから」
エレベーターが一階に到着し、4人は降りて進んでいく。
「ところで、どなたが先生なのでしょうか?連峰生徒会長からは詳しく伝えられておりませんので」
「先生は俺だ」
「灰陽さんが先生なのですね。分かりました。それでは、ほかのかt「ちょっと待って!代行!見つけた!」
ざわざわとしたロビーからはっきりとした大きな声が聞こえてきた。灰陽たちにとってすれば、いろいろなところで何度も聞いた声だ。
「待ってたわよ!連邦生徒会長を出してちょうだい!」
早瀬ユウカ、ミレニアムサイエンススクールのセミナーの会計だ。
「うん?そばにいる大人の方々は?」
「主席行政官、お待ちしておりましたよ」
「連邦生徒会に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況に納得のいく回答を要求されています」
そのあとに続くように、黒髪ロングの翼の生えた羽川ハスミとエルフ耳で眼鏡をかけた火宮チナツが話してきた。
「ああ…面倒な人たちに捕まってしまいましたね」
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀員会、その他時間を持て余している皆さん」
心底めんどくさそうに、そして流れるように毒を吐いた。
「こんな暇そ…大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よくわかっています」
「今、学園都市に起きている混乱の責任を問うために…でしょう?」
「そこまで分かっているならなんとかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょう!」
「数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!この前なんか、うちの風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「矯正局で停学中の生徒たちが、一部脱獄したという情報もあります」
「助版のような不良たちが、登校中のうちの生徒を襲う頻度も、最近急激に上がっています」
「戦車やヘリコプターなど、出所のわからない抜きの不法流出も2,000%以上増加しています」
それぞれが様々な問題を列挙する中、月本はとある生徒を見つけていた。白いロングの髪に白い翼が付いたトリニティ自警団の生徒、守月スズミだ。彼は、前世でブルアカをやっていた時に好きだったのが、スズミなのである。公式のアンケートで衣装が欲しい生徒のところに3枠すべて守月スズミと書くほど好きであった。そんな彼が生のスズミを見た衝撃は、言葉では表せないほどだった。
「忍」
「ん?」
「僕はもう、死んでもいいかもしれない」
「ん?!あっ!あ~なるほどな」
「感動で泣きそう。あ~セルマ…俺、涙が出そうだよ」
「誰がセルマだ」
「肉削がれちゃうねぇ」
3人がそんな風に緩く話していると、ユウカがついにしびれを切らして言った。
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?今すぐ合わせて」
「…連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」
「!!」
「やはりあの噂は…」
各々がそれぞれの反応を示し、その事実に驚愕する。ありえないと思っていたことが目の前で起こっているのだ。
「結論から言うとサンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です」
「認証を迂回する方法を模索していましたが…先ほどまで、そのような方法は見つかりませんでした」
「それでは今は方法が見つかったということですか?主席行政官」
「はい」
そう言うとリンは、灰陽たちの方を見て言った。
「この先生方たちが、フィクサーになってくれるはずです」
「「「「!?」」」」
リンの発言に皆驚きが隠せない様子であった。
「まあ、そういうこった。よろしく」
「ちょっと待って、そういえばこの先生はいったいどなた?どうしてここにいるの?」
「キヴォトスの外から来た方のようですが、先生だったのですね」
「はい、こちらの先生方は連邦生徒会長が直々に指名した方々です」
「失踪した連邦生徒会長が直々に指名?ますますこんがらがってきたわ…」
ユウカはこんらんしている。
「俺が先生の灰陽忍だ。よろしくな」
「僕は月本望。先生の代理人を務めるよ。先生がいないときは僕が対応することになると思う」
「私は犬上竜騎だよぉ。私は…なんなんだろうねぇ」
「護衛とかでいいんじゃないか?」
「なら護衛だよぉ。よろしくねぇ」
3人は緩やかに自己紹介をした。
「こ、こんにちは先生。私はミレニアムサイエンススクールの…」
「い、いや、挨拶なんて今はどうでもよくて!」
「そこのうるさい人は、放っておいていただいて構いません」
「誰がうるさいって!わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいてくださいね!」
「ああ、覚えとくよ」
ブルアカをやったことのある人ならユウカのことを忘れる方が大変である。軽く自己紹介をするとリンは説明を続けた。
「…先生はもともと、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の顧問としてこちらに来ることになりました」
「連邦捜査部シャーレ」
「単なる部活ではなく、一種の超法規的機関です。全ての学園の生徒たちを制限なく加入させることが可能で、各学園自治区で制約なしに戦闘行為を行うことが可能です」
聞けば聞くだけメチャクチャな権限を持っている。それほど重要な組織なのだ。
「これだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかはわかりませんが…」
「シャーレの部室はここから約30キロ離れた外郭地区にあります。そこにとあるものを置いてあります」
するとリンはどこかに連絡をするために電話をした。すると灰陽たちにはどこかで聞いたことのある、どこか抜けたゆるい声が聞こえた。連邦生徒会幹部の1人、由良木モモカである。
「モモカ、シャーレの部室に行くためのヘリが必要なんだけど」
「シャーレの部室?ああ、あの外郭地区のことね。そこ今大騒ぎだけど?」
「大騒ぎ?」
「矯正局を脱出した生徒が騒ぎを起こしてるの。そこは今戦場だよ」
「……」
「まあ、とっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大したことじゃ…あっ、先輩デリバリーのピザ期待だから、また連絡するね!」
そう言ってモモカは電話をぶつ切りした。リンの顔を覗くと、綺麗にキレた顔をしている。
「大丈夫リンちゃん?深呼吸するか?」
「…だ、大丈夫です。…少々問題が発生しましたが、大したことではありません」
シャーレへ行く手段が消えたことは大したことでは?と灰陽は思った。すると不意にリンはユウカたちの方を見た。
「…?」
「な、何?どうして私たちの方を見てるの?」
「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいて、大変心強いです」
「…え?」
「キヴォトスの正常化のため皆さんの協力が必要です。いきましょう」
そう言うとリンはスタスタと歩き出してしまった。
「ちょっと!どこいくのよ!」
ユウカたちはリンに連れられて一緒に行ってしまった。
「これついて行った方がいいよな」
「そうだねぇ。まあ、いこうか」
そうして灰陽たちもリンたちに続いて、連邦生徒会を出るのだった。