人類は闘争の中でこそ進化する。
我々が歩んできた数多の歴史がそれを証明している。
人類の歴史とは戦いの歴史そのもの。我々は人類という種の繁栄のため、長きに渡り愚かな闘争を繰り広げてきた。
そして――時の流れと共に、戦いは新たなステージへと歩を進める。
マスターデュエル・ディメンション・システム。
世界を股に掛ける大企業――《
国境、人種、思想、言語。
世界、惑星、次元、時代。
あらゆる概念を跳躍し、決闘者たちを集める電脳
人類は肉体という檻を超越し、新たな世界で歴史を紡ぐ。
火を点けろ。己の誇りと魂に。
武器は、諸君らのカードだ。
◆
ブルーライトが輝く電脳決闘場にて、二人の決闘者が相対していた。
一人は人間。青いジャケットを羽織った、ごく普通の青年……のように見える。
しかし、実際は違う。彼の左頬に刻まれたマーカーがその証だ。
マーカーとは異端者の証。過去に犯罪を行った者にのみ刻まれ、肉体が滅んでも消えることはない。
「遊星」
――その青年に、声を掛ける者が一人。
闘技場の外で、白いコートを羽織った金髪の青年が、満足げに笑っていた。
「……ジャック」
「ついにこちらの世界にも来たか。お前のデビュー戦、しかと見届けさせてもらう」
「言ってくれる。こちらの世界のことは聞いているぞ。キングのお前でも一筋縄ではいかないらしいな」
「ああ、その通りだ。元の世界では絶対王者でも、ここでは一人の
だが、だからこそ面白い。遊星、今一度見せてもらうぞ。お前の中に眠る戦いの魂を!」
◆
ブルーライトが輝く電脳決闘場にて、二人の決闘者が相対している
一人は異形。悪魔のような四肢と翼。両性具有の怪物。
人間ではないことは火を見るより明らかだが……この世界では誰もが平等。皆、等しく
故に、彼 / 彼女を見て騒ぎ立てる者はいない。むしろどのような決闘をするのか、興味深々に眺める者さえいる。
「おっ、相手は遊星かー。初戦からツイてるなー、ユベル」
彼もまたその一人。赤い服を着た一人の青年が、決闘場に割り込まんばかりに身を乗り出して異形に話しかけていた。
「なあ、覚えてるかユベル。前に一緒にデュエルしたよな?」
「ああ、覚えてるよ。確か……パラドックス、だったっけ?」
「そうそう! そいつを倒すために、遊戯さんと組んで三体一で決闘したよな!」
「随分昔の話だけどね。それにその時の印象だと、大したことなさそうだったけど」
「それはエースカードを奪われてたからだろ? 今はきっと違うぜ!」
電脳決闘場にて両者が向かい合い、時刻を待つ。
熱気で浮足立っていた戦場に、一瞬の静寂が訪れる。嵐の前の静けさ。チクタクと時を刻む秒針。
やがて――刃のような一声と共に、戦いの火蓋が切られた。
「「
◆
「ボクの先行だ。ボクはフィールド魔法《六世壊=パライゾス》を発動。その効果により、デッキから《クシャトリラ》モンスターを手札に加える」
「いきなり来るか……! ならば!
俺は手札から《増殖するG》の効果を発動! このターン、アンタがモンスターを特殊召喚するたび、俺はカードを一枚ドローする!」
「チッ……面倒なカードを。だけど、ボクのターンはまだ終わっていないよ。
まずはリバースカードを一枚セット。
さらにボクは、《暗黒の招来神》を召喚。そして、モンスター効果を発動。デッキから永続魔法《七精の解門》を手札に加えて、発動する。その効果により、デッキから二体目の《暗黒の招来神》を手札に加えるよ」
「攻撃力0のモンスターを二体……?」
「狙いはこれさ……行くよ?
ボクは手札の《暗黒の招来神》とボク自身――《ユベル》のカードをデッキに戻し、融合する!
現れろ、《ファントム・オブ・ユベル》!」
「《融合》のカードを使わずに融合モンスターを召喚するだと……」
「これはボクの影であり愛の現し身。必要なのはボク自身と、器となる生贄のみ。わざわざ《融合》のカードを使う必要はないのさ」
「くっ……だが、融合モンスターであることに変わりはない! モンスターが特殊召喚されたことで、俺はカードを一枚ドロー!」
「ああ、するといいさ。一枚だけだけどね。ボクはこれでターンを終了するよ」
先行プレイヤーのターンが終了した。
フィールドには攻撃表示の《暗黒の招来神》と、守備表示の《ファントム・オブ・ユベル》。
永続魔法《七精の解門》と、フィールド魔法《六世壊=パライゾス》。
そして、伏せカードが一枚。
「《増殖するG》のお陰で、思うようにモンスターを召喚できなかったけど……ボクのデッキはここからが本番さ。さあ、存分に楽しもうじゃないか」
「なるほど。アンタのデッキは長期戦を得意としているのか」
「ご名答。デュエルも愛と同じさ。長ければ長いほど、より深く楽しめる」
「その考えを否定するつもりはないが……そちらのペースに付き合うつもりもない。
行くぞ、俺のターン!
魔法カード《おろかな埋葬》を発動! デッキからモンスターカードを一枚墓地に送る!
俺が選ぶのは、《聖殿の水遣い》!
更に、墓地へ送った《聖殿の水遣い》の効果発動! このモンスターを除外して、デッキから《アラメシアの儀》を手札に加える!
そして魔法カード《アラメシアの儀》を発動! 俺の場に《勇者トークン》を一体特殊召喚し、デッキから永続魔法を発動する!」
「フフ、やはりそう来るね! ならボクも、君と同じ戦術を使わせてもらうよ!
手札から《増殖するG》の効果を発動! このターン、君がモンスターを特殊召喚するたび、ボクはカードをドローできる!」
「そうはさせない!
手札から《灰流うらら》の効果発動! このカードを手札から捨てる事で、デッキからカードを手札に加える効果を無効にする!」
「かかったね!
ボクはここで、《ファントム・オブ・ユベル》の効果を発動! 影は愛を写し取り、愛は全てを塗り替える!
このカードはね、ボク自身を身代わりにすることで、モンスター効果を書き換えることができるのさ」
「効果を書き換えるだと……?」
「《ファントム・オブ・ユベル》をリリース! 君が発動した《灰流うらら》の効果を、デッキのボクを破壊する効果に変更する!
これにより、《増殖するG》は有効。君のフィールドには《勇者トークン》が特殊召喚され、ボクはカードをドローする。
だけど、まだ終わらないよ。ボクは破壊された時にこそ真価を発揮する。
今破壊されたのはボクの魂――《スピリット・オブ・ユベル》。このカードが破壊された時、ボク自身――《ユベル》を特殊召喚できる」
「……流石だな。《灰流うらら》の効果を無効にしながら、上級モンスターを召喚するとは。
だが――ここまでは読んでいた!」
「負け惜しみかい? 見苦しいねえ」
「それはどうかな!
俺は手札から装備魔法《騎竜ドラコバック》を発動し、《勇者トークン》に装備!
更に、ドラコバックの効果発動! アンタのフィールドのカード一枚選択し、手札に戻す。
俺が選ぶのは、最初に伏せたそのリバースカードだ!」
「小癪な……だったら手札に戻る前に、このカードは発動させるよ。
永続罠《エターナル・フェイバリット》。この効果により、ボクは墓地から《スピリット・オブ・ユベル》を特殊召喚!」
「っ――さっき破壊したモンスターか」
「その通り。このカードはボク自身の魂。戦闘では破壊されずダメージも受けない。
でもそれだけじゃないよ。このカードは特殊召喚された時、デッキからボクに関係するカードを一枚、手札に加えることができるのさ。
ボクはデッキから永続魔法《ナイトメア・ペイン》のカードを手札に加える。
これで準備は万全だ。次のボクのターン、目に物を見せてあげるよ」
「なるほど。そのカードが、アンタのデッキのキーカードということか。
だが、俺はこう言ったはずだ。アンタのペースに付き合うつもりはないと」
「正気かい? ボクはこのターン、《増殖するG》の効果を発動した。モンスターを特殊召喚すればするほど、ボクの手札は増え続け、手痛い反撃を受けることになるんだよ?」
「確かに……だがそれは、次のターンが来ればの話だ」
「言ってくれるね。このターンでボクのライフをゼロにできるとでも?」
「見ていれば分かるさ!
俺は手札を一枚捨て、《黒魔女ディアベルスター》を特殊召喚!」
「モンスターが特殊召喚されたことで、ボクはカードをドローするよ」
「だがここで、ディアベルスターの効果発動! デッキから《罪宝》と名の付くカードを一枚セットする!
そして、セットした魔法カードを発動! 《原罪宝-スネークアイ》!
自分フィールドの表側表示のカードを墓地に送り、デッキからモンスターを特殊召喚する!
俺は《騎竜ドラコバック》を墓地に送り、このモンスターを召喚! 現れろ、《ジェット・シンクロン》!
レベル7の《黒魔女ディアベルスター》に、レベル1の《ジェット・シンクロン》をチューニング!
集いし願いが翼に宿り、世界を翔ける星となる! 光差す道となれ!
シンクロ召喚! 加速せよ、《アクセルシンクロ・スターダスト・ドラゴン》!」
「ここでシンクロ召喚……!? ますます正気を疑うよ。
君がモンスターを召喚するたび、ボクはカードをドローできる。当然それは、君がさっき使おうとした《灰流うらら》のようなカードを引く可能性も上がるということだよ?」
「ならば来るといい。俺のスターダストは、その全てを置き去りにする」
「くっ――」
「……来ないのならば続けさせてもらう!
《アクセルシンクロ・スターダスト・ドラゴン》の効果発動! 墓地からレベル2以下のチューナーモンスターを特殊召喚できる!
戻ってこい! 《ジェット・シンクロン》!
更に、《アクセルシンクロ・スターダスト・ドラゴン》の効果発動! このモンスターをリリースすることで、《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚した後、フィールドのモンスターでシンクロ召喚を行うことができる!
《アクセルシンクロ・スターダスト・ドラゴン》をリリース! 飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》!
そして! レベル4の《勇者トークン》に、レベル1の《ジェット・シンクロン》をチューニング!
集いし星の導きが、新たな同士を呼び覚ます! 光差す道となれ!
シンクロ召喚! 切り拓け、《ジャンク・スピーダー》!
《ジェット・シンクロン》がシンクロ素材になったことで、俺はデッキから新たなモンスターを手札に加える!
更に、《ジャンク・スピーダー》の効果発動! シンクロ召喚に成功した時、デッキからレベルが異なる《シンクロン》チューナーを可能な限り特殊召喚できる!
現れろ、レベル2、《アサルト・シンクロン》!
レベル3、《レボリューション・シンクロン》!
レベル4、《スターダスト・シンクロン》!
レベル5、《ホイール・シンクロン》!」
「チューナーモンスターの大量展開だって……!?」
「《スターダスト・シンクロン》の効果発動! デッキから《スターダスト・ドラゴン》の名前が記された魔法か罠カードを一枚、手札に加える!」
「っ――これ以上の好き勝手は許さないよ! ボクは手札から《エフェクト・ヴェーラー》の効果を発動! 《スターダスト・シンクロン》の効果を無効にする!」
「何!?」
「君がモンスターを特殊召喚し続けたお陰で、大量にドローできたからね。こうやって妨害もできるってもんさ」
「だが、まだ俺の手は残っている!
レベル5、《ジャンク・スピーダー》に、レベル4、《スターダスト・シンクロン》をチューニング!
シンクロ召喚! 現れろ、《
モンスター効果発動! シンクロ召喚に成功した時、俺はカードを一枚ドローできる!」
「させないと言ったはずだよ! そら、二枚目! 《エフェクト・ヴェーラー》の効果発動! アーケティスの効果も無効にする!
さあ、これでもまだ動けるかい?」
「俺は《ホイール・シンクロン》のモンスター効果を発動!」
「なっ――」
「その効果により、俺は手札からレベル4以下のモンスターを召喚できる! 《ジェット・シンクロン》の効果で手札に加えたモンスター――《ジャンク・コンバーター》を召喚!
更に《ホイール・シンクロン》は、シンクロ召喚の素材になる時、チューナー以外のモンスターとして使用できる!
レベル2の《ジャンク・コンバーター》と、レベル5の《ホイール・シンクロン》に、レベル2の《アサルト・シンクロン》をチューニング!
破壊神より放たれし聖なる槍よ。今こそ魔の都を貫け!
シンクロ召喚! 《氷結界の竜 トリシューラ》!」
「っ……このドラゴンは……!」
「トリシューラのモンスター効果! 相手の手札、フィールド、墓地から、カードを一枚ずつ除外する!
《スピリット・オブ・ユベル》、《ファントム・オブ・ユベル》、そして手札を一枚除外!」
「何っ……!?
くっ――おのれ、《エフェクト・ヴェーラー》は温存しておくべきだったか……!
でもまだだ! ボクのフィールドにはもう一体《ユベル》がいる。戦闘で破壊されない以上、このターンでボクを倒すのは不可能――」
「《ジャンク・コンバーター》の効果発動! シンクロ素材となった時、墓地からチューナーモンスターを復活できる!
戻ってこい、《アサルト・シンクロン》!」
「何……こいつ、まだ――」
「レベル8の《スターダスト・ドラゴン》に、レベル2の《アサルト・シンクロン》をチューニング!
シンクロ召喚! 現れろ! 《
更に! レベル9の《飢鰐竜アーケティス》に、レベル3の《レボリューション・シンクロン》をチューニング!
集いし痣が一つになる時、新たな力が未来を拓く! 光差す道となれ!
シンクロ召喚! 顕現せよ、《赤き竜》!」
「これは……レベル12、最上級のシンクロモンスター……!」
「《赤き竜》の効果発動! デッキから、新たな魔法カードを手札に加える!」
「くっ――手札から《灰流うらら》を発動! その効果を無効にする!」
「!」
「ふふ……残念だったね。随分召喚されたけど、流石に万策尽きただろう?」
「……そうだな。あと一手だけだ」
「何……?」
「気づかないか? 俺の場のモンスターの攻撃力の合計は6200。アンタの場には、攻守0の《ユベル》と、攻撃力200のモンスターが一体のみ。
つまり……俺がここで攻撃力2000以上のモンスターを召喚できれば、モンスターの総攻撃でアンタのライフをゼロにできる」
「へえ、面白い。やってみなよ。できるものならね」
「ならば……行かせてもらう! これが最後の特殊召喚だ!
《赤き竜》のモンスター効果を発動! 《赤き竜》を
俺はレベル9のトリシューラを選択し――このモンスターを特殊召喚!
現れろ! 《氷結界の竜 トリシューラ》!」
「二体目の、氷結界の竜……!?」
「トリシューラの効果発動! アンタのフィールドの《ユベル》を除外する!」
「くっ……!」
「これでアンタのフィールドから、戦闘破壊できないモンスターは消えた。
バトルだ! 三体のドラゴンで総攻撃!」
「そうはいかないよ! 《増殖するG》の効果で、ボクはこのターン手札を大量に補充できた! 当然、このカードも引いている!
手札から二枚目の《スピリット・オブ・ユベル》の効果を発動! 相手モンスターの攻撃を受ける時、手札から特殊召喚できる!
《スピリット・オブ・ユベル》は戦闘では破壊されない! よって、君の攻撃はボクまで届かない!」
「それはどうかな!
俺はここで、《
「効果を――無効に……!?」
「そう。こいつの効果は無効にするだけだ。破壊はしない。よって、《スピリット・オブ・ユベル》は破壊されず、手札に温存される!」
「そんな……ボクのカードは破壊されないと効果を発動できない――!」
「バトルを続行する! 二体のトリシューラとディスパテルで攻撃!」
「くっ――うわあぁぁぁぁぁ――……!!」
LP:8000 → 0
◆
「流石だな、遊星。見事なデュエルだった」
ジャック・アトラス。
そう呼ばれていた青年が、勝者たる決闘者に労いの言葉をかけた。
「相手のカードに一歩も臆さないシンクロ召喚。大型モンスター達の怒涛の連続攻撃。実に胸のすく一戦だったぞ」
「運が良かっただけさ。今の相手はシンクロ召喚を知らないようだったからな。今回は勝てたが、次はどうなるか分からない」
「フッ、相変わらず真面目なヤツだ。
どんな理由があれど勝ちは勝ち。折角だ、派手に祝勝会と行こうではないか」
「そうだな。まずはログアウトして……久しぶりに皆で集まろうか」
◆
「チッ……正直舐めていたよ。まさかボクのカードに臆さず突っ込んでくるなんてね」
「だろ!? 面白かっただろ、遊星のデュエル!」
赤い服の青年が朗らかに笑いながら、歯噛みする敗北者に駆け寄った。
しかし、本人からすれば溜まったものではない。能天気な顔を確認するや否や、悔し気に顔を歪めて吐き捨てた。
「はっ、面白いもんか。言っとくけどね、十代。ボクの本当の実力はこんなものじゃないからね。次やる時はこうはいかないよ」
「おっ、言うじゃないか。次のデュエルが今から楽しみだぜ。
あーあ、でもいいなー。まさかあの遊星とデュエルできたなんてさ。俺も誰かスゲーヤツとデュエルしたいぜ」
◆
これは歴史の一ページ。
永久に続く戦いのロード、その一欠けら。
決闘者達は武器を手に取り戦う。
何のために?
愚問だ。命在る限り人類は戦う。
決闘者の魂は、常に闘争を求めて武器を手にする。
何百、何千という勝利と敗北。
屍の山を積み重ね……あるいは、屍の山を押し退けて、人類は高みを目指す。
火を点けろ。己の誇りと魂に。
武器は、諸君らのカードだ。
◆
(本当はディアベルスター出す前に罪宝狩りの悪魔でサーチしてたり、トリシューラ+レボリューションでバロネス出してから総攻撃してたのですが、テンポのためカット)
使用デッキ
自分:罪宝勇者シンクロン
ジャンクスピーダーを通した後、トリシューラ×2、サイフレームΩ、ディスパテルでサイフレームΩ再利用、のコンボで4ハンデス+n妨害を目指すデッキ
一枚初動がない+あらゆる誘発が刺さる+増殖するGを打たれたら大体負けるため、扱いが難しい。
決まったら決まったでジャンクスピーダー出した瞬間に即サレ安定のため、ライフを0にして勝つことは殆どない。
お相手のプレミありきとはいえ、後攻でこのデッキが勝つこと自体珍しいので採用した。
お相手:破械ユベル(多分)