◆
「――はあ。全く……瑠璃、お前と言うやつは」
駄々をこねる妹に、兄――黒咲隼は、やや苛立ちながら溜息をこぼした。
ここは電脳闘技場。異世界の企業が開発したシステム――通称『マスターデュエル・ディメンション・システム』によって形成された世界。
あらゆる次元、あらゆる時代から決闘者達が集う
国境と人種を越えてデュエルを楽しめる世界。そう聞けば、多くの決闘者にとっては夢のような世界だろう。
だが、その全容は未だに計り知れない。
国境と人種を越えるということは、あらゆる善悪を許容する、ということだ。
世界を救った英雄も、世界を滅ぼした魔王も、ここでは等価値。
つまるところ――なんでもない日常の中に、巨悪が潜んでいる可能性がある。
考えすぎだ、と笑われるだろう。それが普通だ。
事実、彼の友人は殆どがそう言っている。
だが、黒咲隼は許容できない。かつて妹を守れなかった兄としては、未知なる脅威には――悪と思わしき存在には、二度と近づけたくないのだ。
「溜息をつきたいのはこっちよ、もう」
溜息をつく兄を見て、妹は更に大きな溜息をついた。
黒咲瑠璃は聡明な決闘者だ。兄がこの世界を危険視する理由は理解している。
つまり――かつて、それほどまでの心労をかけてしまった、ということだ。妹が攫われた時、兄がどんな想いで戦っていたかは想像に難くない。
それでも、と妹は反論する。
確かに、デュエルを邪な目的で行う輩はいる。
しかし同じように、純粋にデュエルを楽しもうとしている人たちも確実にいるのだ。
少なくとも一人は。それはたった今、二人の目の前で証明された。
「……武藤遊戯とデュエルできたのは幸運だった。正直に白状すると、一決闘者として嫉妬すら覚えたほどだ。この世界にはそういう決闘者がいることも、否定できない事実ではある。
だが――同時に、悪の権化のような決闘者もいる。これもまた、否定できない事実だ」
「もう。まだ言うの? 懲りないわね、兄さんも」
「証拠があるんだ。決して揺るぎようがない証拠がな。
ちょうどいい。瑠璃、ついてくるんだ」
「? どこに行くの?」
「
◆
「正直驚いたぜ。確かに楽しみだとは言ったけどさ。まさかあれから連戦連勝、あっという間に負けた分を取り返しちまうなんて。
ユベル……遊星に負けたのがそんなに悔しかったのか?」
青年が話しかけていたのは、傍らに控えている人物。
いや……人、と形容していいのかは正直疑わしい。
悪魔のような翼。額には三つ目の瞳。男の身体の右半身と、女の身体の左半身。
明らかに人外の見た目をした『そいつ』は……邪悪な見た目に反して、あまりにも『普通』に青年と話していた。
「まあね。負けたことは悔しかったけど……それよりも自分に対して怒りを覚えたね。
あのデュエルは確かにボクの負けだ。でも、完全な敗北じゃない。戦い方次第ではボクが勝つ可能性もあった。むしろそっちの方が高かったくらいさ。
にも関わらず、ボクは負けた。自分の不甲斐無さが本当に腹立たしいよ」
「そんなに気にすることでもないと思うけどな。誰にだってミスはあるんだし……それに、ランクマッチは勝率の競い合いだろ? 一度や二度の敗北で悩んでたら、とてもこの世界じゃやっていけないぜ?」
「十代には悪いけど、その考えには共感できないね。ボクは君ほどデュエルが好きってわけじゃないんだ。
何十、何百の決闘者達と戦い続ける精神。尽きることのない闘争本能。そんな大層なもの、ボクは持ち合わせちゃいないんだよ。
最小限の負担で勝ち上がる。それがこの世界でのボクのやり方さ」
「ふーん。まあ、そこは人それぞれだし、なんでもいいけどさ。
それより気になるのは、次の対戦相手だな」
青年は傍らの異形――ユベル、と呼んだ人物の次の対戦相手を確認するべく、決闘場の方に目を向けた。
立っていたのは、紫紺のコートを羽織った一人の青年。
青年は腕を組んで目を瞑り、対戦相手を静かに待ち続けている。
「気合入れろよーユベル。次のデュエルに勝てば晴れて昇格。一段階上の世界にランクアップできるんだからさ」
「言われるまでもないよ。ここで勝たなきゃ連勝した意味がないからね。ま、次の相手も今までの連中と変わらないだろ。手早く終わらせてくるよ」
◆
「……来たか」
対戦相手が入場したことを察知し、青年――黒咲隼は目を開けた。
現れたのは悪魔。およそ人間とは思えない風貌の決闘者。これがアバター、仮の姿だったなら警戒はしなかった。
だが、違う。隼の目の前にいるのは、間違いなく生身の存在。
巨大な翼も、三つ目の瞳も、腕を媒体にしたデュエルディスクも、全て偽りなく本物だ。
「登録
「へえ、ボクってそんなふうに見られてるんだね。まあ、どうでもいいけど。最近こっちに入り浸っているのも、個人的な理由だしね」
「個人的……やはりな。貴様、一体何を企んでいる……!」
隼は語気を強めて悪魔を睨む。
ユベルという決闘者の情報は、隼もある程度把握している。
即ち――『融合モンスター』を操る『異形』の決闘者。
……一般人ならきっとこう答えるだろう。
「うーん、こっちの世界では珍しくないんじゃない?」
……と。
だが、青年にとっては違っていた。
『融合モンスター』――アウト。
『異形』――アウト。
かつて融合次元の決闘者に妹を誘拐された兄にとって、この二つのワードは地雷そのものだった。
「企みねえ……強いて言うなら、『愛』かな?」
「――何?」
停止する。
余りにも想定外な言葉に、隼の思考は完全に停止した。
愛。それが何かはこの青年も分かっている。
ただ――この、人とは思えぬ異形の悪魔が、人間らしい理由を口にしたことに、驚きを隠せなかったのだ。
「傷つくねえ、そんなに驚くことないだろ? 想い人にいいところを見せたい、単にそれだけさ。
ちょっと前に酷く無様なところを見せちゃったからね。ボク自身の名誉挽回のために、ランクとやらを上げたいのさ。
だからほら――デュエルしようよ。君さえ倒せば、この世界はボクにとって用済み。大人しく彼の後ろに引っ込むことにするよ」
「――好きにしろ」
その瞬間、隼は思考を完全に放棄した。
愛ゆえに戦う、と悪魔は言った。
隼にとっては信じられないことだったが、それを否定できる材料は持ち合わせていない。
もしその言葉が本当だった場合。決闘者として、人として否定してはいけないことだからだ。
「だが……残念だったな」
デュエルディスクが展開される。
悪魔の語る愛とやらは知らない。故に思考は放棄した。
ただ――自分の勝利を一切疑っていないその態度は、隼の闘志に火を点けた。
「貴様が上に行くことはない。積み重ねた連勝記録、ここで止めさせてもらう」
「フン。面白い、やってみなよ。君にそれができるのならね」
「行くぞ――!」
「「
◆
ターン1
「先行はボクだ。
手札からフィールド魔法発動、《ナイトメア・スローン》。
その効果により、ボクはデッキから攻撃力と守備力が0の悪魔族モンスターを手札に加える。
そしてボクは、《サクリファイス・
更にモンスター効果、発動。このモンスターをリリースして、デッキからボク自身の魂――《スピリット・オブ・ユベル》を召喚」
「なっ……その姿は、確かに貴様自身。馬鹿な、貴様は一体――」
「カードの精霊。
――なんて言っても、君は納得しないだろ? 理解する必要もない。そんな質問はこの世界では無意味さ。
《スピリット・オブ・ユベル》の効果発動。特殊召喚に成功した時、デッキからボクに関するカードをセットできる。
デッキから永続魔法《ナイトメア・ペイン》をセットし、そのまま発動。その効果により、《スピリット・オブ・ユベル》を破壊! デッキから新たなカードを手札に加える」
「上級モンスターを自ら破壊した、だと……」
「この瞬間、《スピリット・オブ・ユベル》と、フィールド魔法《ナイトメア・スローン》の効果発動。デッキからボク自身の肉体を合計二つ、フィールドに召喚する。
いでよ、《ユベル》。そして――《ユベル-
「っ――! 貴様自身が二体だと……!?」
「大したことじゃないよ。こいつらはあくまで現し身。魂のない人形さ。ただし、それでも使いようはある。
現れろ、破壊と滅亡のサーキット! 召喚条件は悪魔族モンスター二体! ボクは《ユベル》、《ユベル-
リンク召喚! いでよ、リンク2! 《破械神王ヤマ》!
ヤマの効果発動。デッキから《破械》モンスターを一枚手札に加える。
更に今、墓地に置かれたボク自身。この二枚をデッキに戻し、融合する!
此れなるは我が影、我が現し身。狂愛を糧に現れよ! 《ファントム・オブ・ユベル》!」
「! ……融合……!」
「そして、手札から《ヘルグレイヴ・スクワーマー》の効果発動! 自分の場に悪魔族モンスターが存在する時、このモンスターは特殊召喚できる!
現れろ、再生と神話のサーキット! ボクは《破械神王ヤマ》、《ファントム・オブ・ユベル》、《ヘルグレイヴ・スクワーマー》の三体をリンクマーカーにセット! サーキット・コンバイン!
リンク召喚! 現れろ、リンク4! 《召命の神弓-アポロウーサ》!
アポロウーサの元々の攻撃力は、素材となったモンスター一体につき800ポイントアップする。よって攻撃力は、2400!
そしてアポロウーサは、攻撃力を800下げる度に、モンスター効果を無効にできる。つまり合計三回、君のモンスターの効果を封じるのさ」
「……モンスターの大量召喚は、このモンスターのための布石だったということか」
「ご名答。とはいえ――まだ、終わりじゃないけどね。
ここでボクは、墓地に眠る《ヘルグレイヴ・スクワーマー》の効果発動。その効果により、《スピリット・オブ・ユベル》を復活させる!
更に、手札から《破械神シャバラ》の効果発動! ボクの魂を破壊して、このモンスターを特殊召喚!
《スピリット・オブ・ユベル》が破壊されたことにより、再び効果を発動。さっきデッキに戻したボクの肉体――《ユベル》を、もう一度特殊召喚!」
「何ッ……!」
「驚いたかい? そう、ボクは不滅なんだ。この世に愛がある限り、形を変えて何度でも現れる。そして愛は、次へと繋がる糧となるのさ!
再び現れろ、破壊と滅亡のサーキット! 《破械神シャバラ》、《ユベル》をリンクマーカーにセット! サーキット・コンバイン!
リンク召喚! いでよ、リンク2! 《破械神ラギア》!」
「二体目のリンクモンスター……!」
「まだまだ、ダメ押しだよ! ボクは墓地の《ユベル》、《サクリファイス・
現れろ、第二の影! 《ファントム・オブ・ユベル》!」
「ぐッーー……!」
「最後にボクは、カードを三枚セット。これでターンを終了。
さあ、君のターンだ。精々足掻いてみせてよ。できるものならね」
ターン2
――ターン開始前にフィールドを確認。
フィールドにはモンスターが三体。
《召命の神弓-アポロウーサ》。攻撃力2400。
攻撃力を犠牲にモンスター効果を三度封じる神話の弓使い。
《破械神ラギア》
特殊召喚された相手モンスターを巻き込み、相手ターンにリンク召喚を行う災害の獣。
《ファントム・オブ・ユベル》
モンスター効果を上書きする狂愛の影。
そして――フィールド魔法《ナイトメア・スローン》。
手札が一枚。伏せカードが三枚。
「チッ――やってくれる」
「どうした? ボクの連勝記録を止めるんだろう? それとも怖気づいたのかい?」
「黙っていろ……俺のターン!
手札から魔法カード《闇の誘惑》を発動! デッキからカードを二枚ドローした後、手札から闇属性モンスターを除外する!
――ドロー! 手札から《
更に、二枚目の《闇の誘惑》を発動! 更にカードを引き、モンスターを除外する!
――俺は《
「手札交換の魔法カードを二枚続けて発動か……それで、目当てのカードは引けたのかな?」
「――フッ」
「?」
「すぐに分かる。行くぞ……今からその薄ら笑いを消してやる。
手札から《増殖するG》を捨て、効果発動! これによりこのターン、貴様がモンスターを特殊召喚する度、カードをドローできる!」
「何かと思えば運任せか。まあいい、とりあえず発動はしておくよ。
永続罠発動、《エターナル・フェイバリット》。とはいえ、効果はまだ使わないけどね」
「……俺は手札から、《魔界劇団カーテン・ライザー》を
こいつは自分の場にモンスターが存在しない時、
「罠発動、《
「何っ……!?
……俺のモンスターを破壊するためとはいえ、リンクモンスターを自ら破壊するだと」
「フフ……《破械神ラギア》の効果発動。破壊された時、墓地から悪魔族モンスターを手札に加える。これによりボクは、墓地の《スピリット・オブ・ユベル》を手札に戻す。
更にボクのカードが破壊されたことで、墓地の《破械神王ヤマ》の効果発動。このカードを除外して、悪魔族モンスターを復活させる。
よって――再び現れよ、《破械神ラギア》!」
「ッ……忌々しい獣め。
だが、貴様の場にモンスターが特殊召喚されたことで、《増殖するG》の効果が適用される。俺は、カードを一枚ドロー!
! 俺が引いたカードは、罠カード《夢幻泡影》! 自分の場にカードがない時、このカードは手札から発動できる! 相手モンスターを一体選択し、その効果を無効にする!
俺が選ぶのは、《破械神ラギア》!」
「いい引きだ、でも甘い!
速攻魔法発動、《抹殺の指名者》! デッキからカードを一枚除外し、同名カードの効果を無効にする!
ボクはデッキから《夢幻泡影》を除外! これにより、君のカードの効果は無効となる!
さあ、次の手を打つといい。ボクの準備は万全だ。何が来ても応えてあげるよ」
「使ったな?」
「――何?」
「リバースカードだ。貴様がセットしていた三枚の伏せカード。それらを全て公開したな?」
「……そうだね。でも、それがどうしたんだい? まさか……そのおかげで勝機が見えた、とでも言うつもりかい?」
「ああ、その通りだ」
「!」
「見せてやる。これが俺の切り札だ!
魔法カード発動! 《三戦の才》! このカードは、自分のメインフェイズに相手がモンスター効果を使用したターンのみ発動でき、三つの効果から一つを選んで使用できる!
俺は二つ目の効果を選択! つまり――貴様のモンスター一体を、エンドフェイズまでの俺の
俺が選ぶのは、《召命の神弓-アポロウーサ》!」
「何――!?」
「コントロールが移ったことで、モンスター効果の使用権も俺へと移る!
俺は《
更に、手札から《絶神鳥シムルグ》の効果発動! 鳥獣族モンスターを召喚した時、このモンスターも同時に召喚できる!」
「チッ……モンスターを展開するつもりか。そうはさせないよ!
《破械神ラギア》の効果発動! ラギア自身と特殊召喚された相手モンスターを素材にして、リンク召喚を行う!
ボクは、君が奪っていったアポロウーサを選択!」
「ならば俺は、アポロウーサの効果発動! 攻撃力を800下げることで、《破械神ラギア》の効果を無効にする!」
「ッ――やはりそう来るね!
だったら、《ファントム・オブ・ユベル》の効果発動! このモンスターをリリースして、アポロウーサの効果を変更する!」
「そうはさせん! 手札から速攻魔法発動! 《墓穴の指名者》!」
「なっ――そのカードは……!」
「貴様の墓地から《ファントム・オブ・ユベル》を除外し、その効果を無効にする! これによりアポロウーサの効果は有効となり、《破械神ラギア》の効果は無効化される!
召喚したトリビュート・レイニアスの効果発動! デッキから《
更に、ミミクリー・レイニアスの効果発動! このカードを除外することで、デッキから新たな《
来い、《
俺は、レベル4の《絶神鳥シムルグ》と、《
冥府の猛禽よ! 闇の眼力で真実を暴き、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!
エクシーズ召喚! 飛来せよ、ランク4! 《
「エクシーズモンスター……けど、随分と小さな鳥だね」
「ここからだ! 俺はフォース・ストリクスの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、デッキから新たなモンスターを手札に加える!
デッキから《
現れろ、反逆と革命のサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は鳥獣族・闇属性モンスター二体!
俺は《
リンク召喚! 現れろ、リンク2! 《
ワイズ・ストリクスの効果発動! リンク召喚に成功した時、デッキから新たなモンスターを呼ぶことができる!
来い、《レイダーズ・ウィング》!
そして、レベル4のトリビュート・レイニアスと、《レイダーズ・ウィング》でオーバーレイ!
エクシーズ召喚! 現れろ、ランク4! 《レイダーズ・ナイト》!
《レイダーズ・ナイト》の効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、ランクが一つ高い《
《レイダーズ・ナイト》一体で、オーバーレイネットワークを再構築!
ランクアップ、エクシーズチェンジ! 現れろ、ランク5! 《
ここで、ワイズ・ストリクスの効果発動! デッキから《
更に、ブレイブ・ストリクスの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、デッキから更なる《
「《
「そうだ、これが俺のデッキの真骨頂!
革命の隼は時の流れと共に成長し、鋼の意思であらゆる敵を打ち破る!
リバースカード、オープン! 《
ブレイブ・ストリクス一体で、オーバーレイ・ネットワークを再構築!
ランクアップ・エクシーズチェンジ! 現れろ、ランク7! 《
アーセナル・ファルコンの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、デッキから新たなモンスターを召喚する!
俺が召喚するのは、三体目のストラングル・レイニアス!
更に、ストラングル・レイニアスの効果発動! 墓地からトリビュート・レイニアスを特殊召喚!」
「くっ……雑魚モンスターがわらわらと……!」
「コイツを見てもまだ同じことが言えるかな?
再び現れろ、反逆と革命のサーキット!
俺は《
リンク召喚! 現れろ、リンク3! 《
この瞬間、アーセナル・ファルコンの効果発動! 墓地に送られた時、アーセナル・ファルコンを素材として、
俺は《
究極至高の隼よ、数多なる朋友の遺志を継ぎ、勝利の天空へ飛び立て!
現れろ、ランク10! 《
この瞬間、ラスティ・バルディッシュの効果発動! リンク先に闇属性エクシーズモンスターが召喚された時、フィールドのカードを一枚破壊できる!
俺は貴様の永続罠《エターナル・フェイバリット》を破壊!
更に、アルティメット・ファルコンの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使うことで、貴様のモンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせ、このターンのカード効果の発動を封じる!」
「何――!?」
「もはや貴様に成す術はない!
バトルだ! ラスティ・バルディッシュで《破械神ラギア》を攻撃!」
ユベル
LP:8000 → 6700
「ぐっ――!」
「アポロウーサ、トリビュート・レイニアスでダイレクトアタック!」
ユベル
LP:6700 → 3300
「これで終わりだ!
行け! 《
「ぐっ――がああぁぁぁ――――!!」
ユベル
LP:3300 → 0
◆
青年は能天気に笑いながら、決闘場を後にした敗者の元に駆け寄った。
「ガッチャ! 面白いデュエルだったぜ、ユベル!」
「喧嘩売ってんのかい! 全く……ここまで積み上げてきた連勝記録が、今ので白紙に変わったよ」
「ドンマイドンマイ、次があるって。大体、一回も負けない決闘者なんかいねえよ。
一回負けて、二回勝つ。高ランクの決闘者達は、みんなそうやってランクを上げてるんだぜ?」
「はん、馬鹿言っちゃいけないよ。そんなことやってたら、最高ランクに到達するまで一体何回勝てばいいことか」
「さあなー、分っかんね。考えたこともねえや。そもそも俺、ランク自体意識したことねえし。ルーキーランクでもマスターランクを倒せちまうのが、デュエルの面白いところだろ?
大事なのは、面白いデュエルができるかどうか……そして、面白い決闘者と出会えるかどうかだぜ」
「面白い、ねえ……少なくとも、今の相手は駄目だね。これっぽっちも面白くなかったよ」
「俺は逆だな。エクシーズ召喚に《
◆
快活に笑う青年。悪態をつく悪魔。
正反対の二人が言葉を交わしながら、決闘場を後にする。
その様子を遠巻きに眺めながら、黒咲瑠璃は思う。
やはりこの世界は、兄が言うほど危険な場所ではない。
流石に、危険が全くないとは言い切れない。
でもそれ以上に……この世界には、笑顔が溢れている。
『デュエルで笑顔を』
かつては夢物語に過ぎないと思っていた理想。
この世界では、それが実現できるかもしれない……と。
「まあ、何はともあれ――おめでとう、兄さん。いいデュエルだったよ?」
「ああ……まあ、そうだな」
兄は、居心地が悪そうに曖昧な返事をした。
……この兄は、昔から思い込みが激しい一面がある。
融合モンスターを操る人外の決闘者。
たったそれだけの情報で、危険な人物だと思い込んでいたのだろう。
しかし実態は先の通り。変わり者ではあったが、害を与える存在ではなかった。
つまるところ、全ては兄の独り善がりな暴走だったわけだ。
「……ふふ」
……わけだが、この妹は一々そんなことは指摘しない。
なにせ妹なのだ。兄の暴走など、生まれた時から飽きるほど見ている。
「兄さん。また一緒に来ましょう。今度はユートも誘って」
「――ああ。そうだな。この世界なら、ユートもきっと楽しめる」
兄妹は家路につく。
まだ見ぬ明日に希望を持って。
◆
使用デッキ
自分:RR
先行制圧対話拒否デッキ。
RRをあれこれ展開した後、素材0のアーセナルファルコンと幻影騎士団ラウンチをセットし、相手ターンにDDD双暁王カリユガを召喚、相手のカード効果を封殺し、ターン終了時に大嵐するデッキ。
一応ライジングリベリオンファルコン召喚も狙えるが、展開を始めた時点で大体サレンダーされるため召喚できたことは殆どない。
お相手:破械ユベル
おそらくユベルデッキのテンプレ(ユベルエアプ)
環境にユベルが居座っていたのでよく当たった。
手札誘発0の状態から奇跡的に捲れた一戦。撮影時期は前の二戦よりもかなり前。(2024.8)
記念に残していたリプレイが話の展開に偶然噛み合ったので採用。
マスターデュエルで初めて当てたロイヤル加工URがアルティメットファルコンなので定期的にRRを使いたくなるが、大体いつも泣かされている。