俺の町は今日も今日とて平和です!   作:ボトルキャプテン

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20 魔導列車強盗

魔線機から聞こえた無情な内容。オリビア連邦保安官は神妙な面持ちで魔線機を手にした。

 

「その情報源はどこからなの?」

 

 オリビア連邦保安官が尋ねると、

 

《魔導列車の緊急用魔導話で護衛のクエストを行っていた★4の剣士の20代男性冒険者からで、情報としては犯人の人数は暗闇で見えないなど悪条件が重なり把握していないとの事です》

 

 夜の暗闇を利用し、外灯がない山林での犯行という入念に計画されているとしか思えなかった。オリビア連邦保安官はフロンティア大陸の地図を持って木箱の上に広げた。

 

「ここがウェスタン、そこから5キロほど北上してこの辺りに隣国【レッドロック】から来る魔導列車が緊急停車しているわ。なんとか立て篭って護衛冒険者が抵抗してるわ」

「けどなんでこの時間の魔導列車を狙ったんですか?」

 

 キッドがオリビア連邦保安官に尋ねと、

 

「今回に限らず他国の貴族がウェスタン国で取り引きをする為の大金を積んで来る時は大半夜の魔導列車なのよ。人目を避ける為にね」

「なるほど、そこを狙われたと……」

「ええ。私達が道化師達に気を取られた間に魔導列車を襲った。囮の道化師が暴れてる間に金目のものを奪おうとしたけど、賢い冒険者が通報したって事よ」

「神がお助けなさったのでしょう。今から向かへと言うのでしょう?」

「そうね。私は乗客の名簿を調べて国際問題に発展しないようにしなければならないから現場に行くのが遅れるわ。代わりにクリス保安官が指揮を取って残りの保安官と向かって頂戴。護衛の冒険者は長く持たないわ、急いで救出しなさい!」

 

 オリビア連邦保安官の指示の元にクリス保安官とキッド、ブラッド保安官とノコギリクワガタ系蟲人族の保安官、その他の夜勤保安官達と共に現場に急行した。約10分後、現場に到着すると……。辺りは雑木林に囲まれ、線路には魔法か何かで大木が倒されていて線路を塞いでいた。全5車両の魔導列車の運転手が倒れていた。

 

「なんて酷い事を……神よこの者を導いて下さい……」

 

 クリス保安官が運転手の目を閉じて祈りを捧げる。キッドや他の保安官達はピースメーカーやレバーアクションライフルを装備して辺りを警戒していた。

 

「クリス保安官、行きましょう!」

「ブラッド保安官とジャンゴ保安官は後方の第4車両から頼みます」

「ああ、任せてくれ。キッド君も、気を付けて」

「はい、ブラッド保安官も気をつけて下さいね!」

 

 ブラッド保安官とノコギリクワガタ系蟲人族の保安官は雑木林に隠れながら最後尾に向かった。

 

「では、私とキッド保安官車両に乗り込みます。その他の保安官達は左右の警戒をお願いします」

 

 クリス保安官の指示で全員が連携を取りながら動き出す。クリス保安官とキッドも車両に乗り込んだ。1車両目には乗客も強盗団の姿は無かった。キッドとクリス保安官は縦1列に並び、死角に注意しながらゆっくりと進む。

 

「こちらクリス保安官、1車両に乗客と犯人はいません。次の車両に進みます」

 

《了解、気を付けて!》

 

 魔線機でやり取りし、外の保安官達にも乗客はいないと合図を送る。合図を確認した外の保安官達もゆっくりと進み始めた。2車両目の扉の窓を確認すると、貴族とショートソードで武装した冒険者2人を確認した。冒険者達は貴族達から金品を巻き上げている最中だった。

 

「さっさと金目のモン出せって言ってんだろうがっ!」

「わ、分かった!頼むから妻と娘には手を出さないでくれっ!」

 

 状況を確認したキッドがピースメーカーで狙おうとしたが、クリス保安官が止めに入る。

 

「なぜ止めるんですか!?」

「焦ってはいけません。もしこの至近距離で発砲したら弾丸は冒険者の体を貫通し、貴族に当たってしまいます」

「ではどうするんですか!?」

「私に、考えがあります」

 

 クリス保安官が小声でキッドに妙案を指示した。妙案を聞いたキッドは目をまん丸くさせて驚きを隠せなかった。

 

「そんな……上手く行くでしょうか……?」

「大丈夫、上手く行くさ」

 

 キッドは胸に付けてた銅のバッジを外して扉の窓に顔を出した瞬間、もう1人の強盗犯の冒険者と目が合ってしまった。キッドは慌てて隠れるが、

 

「誰だっ!?誰かいんのか!?」

 

 あえなく見つかってしまった。冒険者は扉を蹴破ってキッドにショートソードを突き付ける。

 

「やめてくれ!殺さないでくれっ!」

 

 キッドは車両と車両の連結部分の真上で腰を抜かしてしまった為、立たずに両手を上げて命乞いをする。

 

「なんだコイツ?貴族の用心棒か?」

「おい、誰かいたのか?」

「ああ、もう1人隠れて─────」

 

 後ろに気を取られた冒険者が答えかけた瞬間、攫われる様に真上に引っ張られ列車の外へ投げ出された。冒険者は地面に叩き付けられた瞬間に待機していた保安官達に口を抑えられながら逮捕された。

 

「なんて言った?おい、ちゃんと答えろ!」

 

 貴族から離れた冒険者は扉に近付くと、

 

「このっ!」

 

 隠れていたキッドがピースメーカーのグリップで後頭部を殴打した。うつ伏せの状態で取り押さえて声を出さないように猿轡を施す。それから手錠を掛けて外に転がした。

 

「上手く行きましたね大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫です。けど僕を囮にするなんて無謀ですよ!」

「私はキッド君なら大丈夫と判断したので提案したのです。もっとご自分に自信を持っていいと思いますよ?」

 

 クリス保安官に励まされたキッドは微妙な反応をした。キッドは再びホルスターとバッジを装備し車両を進むと、人質に取られていた数名の貴族が客席で怯えていた。

 

「怪我はありませんか?僕はウェスタン国の保安官です。外に他の保安官達が待機してますのでゆっくり降りて下さい」

「保安官……良かった、助かった……」

「他に乗客は?犯人はまだこの奥に?」

 

 キッドが尋ねると、貴族は奥の車両に指を指す。

 

「ええ、【ボブ・キャンディ】どう言う名の貴族とその家族が第3車両に居ます。その方は鉱山を所有しており、最後の第4車両には鉱夫達の給料や食料を積んでいます。強盗達はそこを狙った様で……護衛の冒険者が抵抗した様ですが……先程、魔法使いに殺された様です……」

 

 情報を手に入れたキッドとクリス保安官は顔を見合わせ頷く。

 

「ありがとうございます。さっ、早く逃げて下さい」

「はいっ!」

 

 人質だった貴族達が車両から降りると、外の保安官達に保護された。それを確認したクリス保安官は魔線機を手に取る。

 

「こちらクリス保安官、人質8名を保護しました」

 

《了解。もうすぐオリビア連邦保安官が到着します!》

 

「了解しました」

 

 魔線機を腰にしまって再び2人で先に進むと、第3車両には主犯と思われるエルフ族の冒険者の男が細かな意匠を凝らした服を着た人間族の男性を殴っていた。近くには大金が入っていると思われる鍵のついた大きな箱とロープで縛られている人間族の中年女性と若い女性が2人座っていた。その更に奥からはブラッド保安官達に気付いたのか、魔法使いの2人が魔法で攻撃していた。

 

「早く箱を開けろ!死にたくねぇんだろ!?ボブ・キャンディさんよぉっ!」

「ぐっ……あの金は汗水流して働いている鉱夫達の給料だ……貴様らの様なゴロツキ共に渡してたまるか……殺すなら殺すがいいっ!」

 

 ボブ・キャンディと呼ばれた男は先程聞いた名前だった。エルフ族の冒険者の男はキャンディを突き飛ばし、背中から2本のククリナイフを抜いた。

 

「こっちも時間がねぇんだよ!だったら先に娘を殺してやるまでよ!」

「お父様!助けてくださいっ!お父様っ!」

「いやぁっ!やめて!娘に手を出さないで!」

 

 母親と思われる女性が娘を庇うように倒れ込むが、エルフ族の冒険者の男は母親の髪を掴んで振り払った。

 

「邪魔すんじゃねぇよクソアマ!」

「死ねやぁぁっ!」

 

 その瞬間、キッドは扉を蹴破って一瞬で3発発砲した。エルフ族の冒険者の男は右肩、左太もも、左の側腹部に当たり倒れ込んだ。

 

「お怪我はありませんか!?」

「あ、貴方は……?」

「ウェスタン国の保安官です。怖かったですよね、今ロープを解きます」

 

 キッドは犯人に背中を向けて娘のロープを解いている最中、撃たれたエルフ族の冒険者の男がヨロヨロと立ち上がってククリナイフを握ってキッドに近付いていた。

 

「こ、この野郎……!」

「危ないっ!」

 

 キャンディ氏の娘が叫んだ途端、クリス保安官が飛びながら顔面に飛び蹴りを繰り出して攻撃を阻止した。

 

「まず容疑者の無力化が最優先ですよ?詰めが甘かった様ですね」

「すいません……」

「しかし、先程の『ドロップショット』は見事でしたよ」

 

ドロップショットとは、撃鉄を左親指と小指を使って弾く撃ち方。保安官の中で早撃ちより高難度の技術である。

 

 キッドとクリス保安官は人質を解放した後に、ブラッド保安官達に気を取られていた魔法使い2人の背後に立ち、頭に銃口を突き付けた。

 

「我々は保安官です」

「杖を捨てて、両手を頭に乗せてください」

「くっそ……」

 

 魔法使い達は杖を床に捨てて両手を頭に乗せた。キッドは手錠をかけると、

 

「全員確保しました!」

 

 そう告げると、物陰からブラッド保安官達が警戒しながら現れた。

 

「キッド君、無事かい……!?」

「えぇ、大丈夫です!」

 

 ブラッド保安官がキッドに尋ねるとブラッド保安官はキッドの手を取って、

 

「そうか、良かった……」

 

 ブラッド保安官は涙を流し始めた。突然の出来事にキッドは困惑する。

 

「え、そんな、ブラッド保安官!?」

「おい」

 

 そこへノコギリクワガタ系の蟲人族の保安官がブラッド保安官の頭を叩いた。叩かれたブラッド保安官は頭を擦りながら振り返る。

 

「いたた……じゃ、ジャンゴ保安官!?」

「……早く犯人共を外に出すぞ」

 

 ツンとした様子で魔法使いの1人を連れて行った。キッドはブラッド保安官にヒソヒソと尋ねる。

 

「あのジャンゴ保安官ってどんな人なんですか?」

「ジャンゴ君か……一言で言えば……無口?無愛想……かな?」

「なんかめちゃくちゃこわそうですね……」

「悪いか?」

 

 聞こえていたのか、ジャンゴ保安官は立ち止まって振り返る。キッドとブラッド保安官は首を横にブンブンと振った。犯人達を列車から下ろすと、丁度よくオリビア連邦保安官が装飾飾りのある馬車と牢竜車を引き連れて到着した。

 

「どうやら無事解決した様ね、良かったわ」

「ですが、死者と負傷者も出ています……」

「そうね……けど、犯人達にはこの罰はしっかり受けて貰うわ。事務所でじっくり聞かせて貰うわよ?」

 

 オリビア連邦保安官は犯人達に睨みを利かせる。その後、貴族達を馬車に乗せてキッド達はウェスタン国へと向かって行った。

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