ジャンゴ保安官はそのままナイトホーク地区に入り、とある酒場にやって来た。馬を繋ぎ、スイングドアを開けて中に入ると、屈強なヒグマ系獣人族の男が立ちはだかった。この店の用心棒なのか、ジャンゴ保安官を見下ろしていた。
「保安官が何の御用で?」
ジャンゴ保安官はテンガロンハットを取って顔を見上げながらヒグマ系の獣人族の男に声をかける。
「やぁ、スティーブン。久しぶりだな」
「し、失礼しました。ジャンゴ保安官」
スティーブンはジャンゴ保安官と分かった瞬間に顔色を変えた。ジャンゴ保安官は馴染みのあるのか気安く声を掛けた。
「少し痩せたんじゃないか?」
「お、おかげ様で10kg痩せました」
「そうか、偉いじゃないか。店長はいるか?」
「奥のテーブルで帳簿を記入しています」
「ちょっと急用でな、店長と話せるか?」
「はい、どうぞ」
「スティーブンは少し休んでてくれ」
「恐れ入ります」
スティーブンは少し怯えながらジャンゴ保安官を通してその場を離れた。ジャンゴ保安官はそのまま進み奥の席に着いていたハイイロリス系の獣人族の中年男性がいた。ジャンゴ保安官が近付くと、ハイイロリス系の獣人族の中年男性は気付いて老眼鏡を外した。
「ジャンゴ保安官。随分久しぶりじゃないか」
「エイブラハム、元気だったか?」
エイブラハムは元マフィアのボスで魔王が勇者に倒された年に足を洗って今はマフィア時代のコネを使ってジャンゴ保安官のタレコミ屋として働いてる。2人は軽い握手を交わし、ジャンゴ保安官を座らせた。
「ここに来たと言う事は、何か急ぎの用があるんだろ?」
エイブラハムはお見通しだったのか、ジャンゴ保安官に尋ねるとジャンゴ保安官は頷いて、
「そうだ。単刀直入に聞くが、最近ギャングやマフィアで何かを企んでいると言う情報はないか?」
「何かを企んでいるか……そうだな……。バンデットファミリーが君達の武器を集めようとしているくらいかな?あとタイタンズとリトル盗賊団が小競り合いをして痛み分けで大人しくなった事。他のマフィアやギャングは平行線のままだね」
「バンデットファミリーか……」
ジャンゴ保安官はキッドが揉めた時の事を思い出した。エイブラハムは再び老眼鏡をかけて帳簿に何かを書き始めた。
「まさかとは思うが……また狩りを始めようとしてるのか?」
「話をするだけだ。やつらのアジトはどこだ?」
「話しだって?君らしくないじゃないか」
エイブラハムが嫌味を言うと、ジャンゴ保安官は焦っている様子で催促する。
「いいから、答えろ。後輩が捕まってるんだ、あの時バンデットファミリーを捕まえて置けばアイツは無事だったんだ。時間が無い、早く答えろ」
ジャンゴ保安官はホルスターに手をかけると、
「あの【マフィア狩り】が随分優しくなったじゃないか。バンデットファミリーのアジトはザウエル地区8番通りにある建築材料倉庫に偽装した場所だ」
「ありがとう、エイブラハム」
ジャンゴ保安官はエイブラハムに礼を言って立ち上がろうとしたその時。
「ジャンゴ保安官」
エイブラハムに呼び止められた。ジャンゴ保安官が振り返ると、
「存分に狩りを楽しむといい」
「……ああ」
ジャンゴ保安官は返事をして酒場を後にした。馬に跨り走らせてから数分後、先程の情報通りバンデットファミリーの隠れ家に到着した。バンデットファミリーは構成員50人弱で構成されている人数の少ないマフィアだが、★5以上の冒険者達で強者揃いのマフィアだ。ジャンゴ保安官は馬から降りて突然シャツを脱ぎ出した。黒光りする甲殻をさらけ出し、サドルバッグから白銀に輝く肌着を取り出した。この肌着はミスリルを加工して防刃として保安官にはなくてはならない代物である。そのミスリル製の肌着を着て再びシャツを着る。鞍から個人で買ったアダマンタイト製のレバーアクションライフルを取り出し、弾薬を装填を始める。ピースメーカーにも装填を終えると、ジャンゴ保安官はレバーアクションライフルを背中に背負い、ゆっくりと歩き始めた。入り口にタバコを吸っていた人間族の男の背後に着いた瞬間、
「おい」
「なっ……いつの間に……」
ピースメーカーを頭に突き付けながら声を掛けた。
「俺の後輩がいるだろ?どこにいる?」
「あの保安官か……今他のやつが痛め付けて気を失ってるとこだ」
「そうか」
ジャンゴ保安官は片腕で人間族の男の首を締め上げた。ギリギリと音を立てながらジャンゴ保安官は呟いた。
「後輩を傷つけた報いを受けろ……」
「が、がは……」
エルフ族の男を絞め落として気絶させ、地面に寝かせる。入り口を制圧したと同時に魔線機を取り出した。
「こちらジャンゴ保安官。行方不明のキッド・ウォーカー保安官を発見した。住所はザウエル地区8番通りの建築材料倉庫だ」
《了解!直ぐにオリビア連邦保安官へ連絡し、応援を向かわせます!》
「待ってられない。どうやらキッド保安官は拘束されて拷問を受けているらしい。俺一人で先に行く」
ジャンゴ保安官が言うと、オリビア連邦保安官から通信が入る。
《話は聞いたわ、貴方は応援が到着するまで待てって言っても聞かないでしょうね。だから突入してキッド保安官を救出しなさい!保安官への暴行の罪と監禁で警告無しの射殺許可をするわ、責任は私が取るから思い切り暴れなさいっ!保安官を狙うとどうなるか奴らに教えてやりなさいっ!》
「……了解」
ジャンゴ保安官は目付きを変えてゆっくりドアを開けると、人間族の男3人が資材の上に座っていた。倉庫内は資材の迷路の様になっていたが、ジャンゴ保安官はレバーアクションライフルを構えて躊躇なく引き金を引いた。3つの弾丸はそれぞれ頭に命中しドサドサと倒れて行った。すると、銃声を聞きつけたバンデットファミリーの構成員である冒険者達が襲いかかって来た。
「保安官だ!殺せ!」
「死ねオラァッ!」
軽装の魔法戦士やフルプレートで守りを固めている屈強な重剣戦士が襲いかかってくる。だが、ジャンゴ保安官は冷静に魔法戦士の片足を狙って動きを封じ、動けなくなった途端頭を撃つ。重剣戦士は頭から足までフルプレートで守られている為狙った場所は耳元だった。弾丸は耳元で弾かれた為大きな金属音が鳴り響くと重剣戦士は耳を抑えてよろめき出す。間髪入れずにジャンゴ保安官は掴みかかり、兜の隙間を狙ってピースメーカーを突っ込んで2発撃ち込んで倒した。
おい、向こうだ!
マフィア達の声を聞いたジャンゴ保安官の触覚がピクピク動き始める。ジャンゴ保安官は資材に上がって身を潜めると……剣士、盗賊、魔導士、槍使いがジャンゴ保安官の真下を通過しようとした瞬間にレバーアクションライフルを連射して冒険者達を一掃した。そして……1人、また1人と倒して行く。その頃、倉庫の奥で重症を負ったキッドと共に待ち構えていたバンデットファミリーの親玉コステロは耳を潜ませていた。
「この戦い方、躊躇の皆無……【マフィア狩り】が来たか……」
コステロはテーブルに置いてあったサーベルを手にして鞘から抜くと、後ろには……シャツをボロボロにして頭から血を流したジャンゴ保安官が立っていた。コステロは振り向きながら、
「私の構成員達を全て倒して来たか。★5以上の冒険者達を全て……」
「あの程度で★5以上なのか?大した事なかったな」
あれだけの冒険者達を相手にして来ても嫌味も返せる程涼しい顔をしているジャンゴ保安官はキッドの様子を伺い、レバーアクションライフルを肩で担ぎながら言い放つ。
「俺の後輩を返せ」
「この期に及んで後輩の心配ですか?随分余裕ですね。私は★8の剣士で魔王軍とも戦っていた冒険者だったのですよ?」
「だからどうした?」
「易々と殺られる程落ちぶれちゃいない─────」
ズドン!
話してる途中にも関わらず、ジャンゴ保安官はレバーアクションライフルの引き金を引いた。右太ももを撃たれたコステロは断末魔を上げた。
「ぎゃぁぁぁっ!!」
装填し、左太ももを撃った。
「うぎゃぁぁぁぁっ!ちくしょう!!」
喚くコステロの声が聞こえないのか、肩、腕、脇腹、膝を撃ち続けた。苦痛に身悶えするコステロを右足で抑えながら銃口を突き付けた。コステロも負けじと騒ぎ出す。
「この私を怒らせてるとタダじゃ済まないか────」
ズドン!
最後まで話を聞かずにコステロの額に風穴を開けてトドメを刺した。全てを片付けたジャンゴ保安官は気を失っているキッドの拘束を解き、肩で担ぎながら倉庫を出ると他の保安官達が丁度到着した。クリス保安官、ブラッド保安官、オリビア連邦保安官が駆け寄って来た。
「キッド君!酷い……直ぐに手当を、治療魔導士を急いで!」
ブラッド保安官はキッドを受け取り、抱えながらその場を離れた。オリビア連邦保安官はジャンゴ保安官に尋ねる。
「バンデットファミリーは?」
「片付けた」
「1人残らず全員射殺したの?」
「ああ、これでバンデットファミリーは消滅だ」
「そうね……。クリスは倉庫の中を頼むわ、違法な物は全部押収して来て頂戴」
「承知しました」
クリス保安官はオリビア連邦保安官の指示で他の保安官達と共に倉庫の中へ入っていった。オリビア連邦保安官はキッド保安官を救出出来たのにも関わらず顔を顰める。
「確かに責任は取ると言ったけど、皆殺しにすると思わなかったわ……上にどう報告すればいいのよ」
「済まない……」
「まぁ、なんとかなるわ。キッド君は恐らく回復魔法を使っても2〜3ヶ月はかかるわね、夜勤研修が終わってしまうわ」
「そうなのか。まぁ、良い経験になっただろ」
淡々と話すジャンゴ保安官を見て、オリビア連邦保安官がクスりと笑う。
「ジャンゴ、貴方この短い期間で随分話す様になったわね。感心するわ」
オリビア連邦保安官がからかうと、ジャンゴ保安官は首を傾げる。
「どうだろうな」
「これもキッド君のおかげかもね。ここが片付くまで休んでなさい」
「わかった」
ジャンゴ保安官は破れたシャツを脱ぎながらその場を離れた。今回の一件でウェスタン国のマフィアの1つ、バンデットファミリーがたった一人の保安官により消滅した。