俺の町は今日も今日とて平和です!   作:ボトルキャプテン

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28 銀行強盗とカエデ

───翌日。合同訓練に参加した保安官全員がグレン連邦保安官のオフィスに呼ばれ、グレン連邦保安官の前に立たされていた。

 

「昨日の合同訓練はご苦労だった。確かに俺は王国騎士団に恥をかかせたいとは言った。確かに言った。だが、だがな?何もあそこまでやれとは言ってないだろ!?2人を治療魔法を使うほどの重症を追わせた挙げ句に最後は全員一斉射撃で部隊を一掃するとはどういう事だ!?」

 

 グレン連邦保安官は鬼の形相で怒鳴り散らす。だが、保安官達はキッドを除いて自分達は悪くないと言わんばかりの顔色だった。

 

「全力でかかってこいと言ったのは向こうです。どうやら王国騎士団はモンスター相手にはめっぽう強い様ですが、対人対策はからっきしだったと言うだけでは?」

 

 夜勤明けのジャンゴ保安官がグレン連邦保安官に言い返す。それを言われたグレン連邦保安官は呆れ始めたが、ニヤリと笑い出す。

 

「全く……だが、奴等の顔は傑作だったな。お前達も良くやった、減俸処分にはなってしまったが、いい気分だ。夜勤連中はご苦労だった、帰っていいぞ。日勤連中はもうすぐミーティングが始まるからな」

 

 同じ頃。コルト地区にある大銀行【オーリス】にドムとカエデがやって来ていた。オーリス銀行は冒険者達がクエストなどの報酬などを貯金する場所で有名な銀行の1つである。そんな銀行にドムは杖をつきながらカエデに声を掛ける。

 

「さて、カエデ。今日は冒険者で良く使う貯金通帳を作るよ。貯金通帳がなければ仕事で貰ったお金も貯められないし、管理も出来ないからね?」

 

 ドムがそう説明するとカエデはこくんと首を頷かせる。ドムは番号が書かれている木札を取って長椅子に近付き座り始めた。カエデも黙ってドムの隣に座る。

 

「これは受付番号の札だよ。書かれた番号が呼ばれたらワシらの番という事じゃよ。分かったかい?」

 

 ドムが5番と書かれている木札を見せて言うとカエデは黙ってまた頷いた。黙って待っていると、そこへ武闘家の様な服装と柳葉刀を腰に差したリオック系蟲人族の男が入って来た。入って来た途端、柳葉刀を抜いて叫び出した。

 

「金だ!金を出せ!5000万ゴールド出さねぇと皆殺しにするぞ!」

 

 混雑している店内が一気に静まり返った。カエデは殺気を感じて剣を握ると、ドムが小さく声を出す。

 

「カエデ、動いちゃいけないよ。こんなに人が多いんだ、こんな所で刀を抜いたら無関係な人を巻き込んでしまう」

 

 そう言われたカエデは大人しく剣から手を離した。すると、シマリス系獣人族の男性銀行員が隙を見て魔導話で通報しようとしていた。だが、それを見逃さなかった強盗犯は腰からナイフを取り出して、

 

「おらぁっ!何してんだてめぇっ!!」

 

 ナイフを銀行員に目掛けて投げた。ナイフは銀行員の額に刺さりシマリス系獣人族の男性銀行員は倒れた。

 

「きゃぁぁぁっ!!」

 

 人間族の女性銀行員の悲鳴が店内に響き渡る。

 

「うるせぇっ、騒ぐんじゃねぇっ!」

 

 この時、咄嗟に外に逃げ出したハト系鳥人族の中年男性商人が偶然巡回していた夜勤の人間族のクリフト保安官とカークス保安官の2人に助けを求めた。

 

「誰かっ!!た、助けてくれぇっ!」

「どうしました!?」

「そ、そこの銀行に強盗がっ!!」

「なんだって!?魔線機で応援を要請するんだ!」

「ああっ、こちらクリフト保安官。オーリス銀行で強盗が発生。至急応援を寄越してくれ!」

 

《了解。直ちに要請します!》

 

 クリフト保安官は応援を要請してピースメーカーを抜き、カークス保安官はレバーアクションライフルを片手に銀行へ向かった。クリフト保安官達が中に入りると目の前で強盗犯が暴れていた。

 

「保安官だっ!武器を捨てろ!」

 

 2人が構えた瞬間、強盗犯は目にも止まらぬ速さで2人に襲いかかる。クリフト保安官は3発発砲するが全て避けられてしまった。強盗犯はそのまま柳葉刀で袈裟斬りした。クリフト保安官はあっという間に斬られてしまい、その場に倒れ込んだ。即死だった。カークス保安官も発砲しようとしたが、剣で弾いて銃口をズラされてしまい弾丸はあさっての方向に放たれた。装填する隙に強盗犯はカークス保安官の首を切り落とした。鮮血が飛び散る中、強盗犯は叫び出した。

 

「窓の雨戸と入り口の扉を閉めろ!」

「はっはいっ!」

 

 強盗犯は銀行員達を脅して窓の雨戸と入り口の扉を閉め始めた。だが、銀行員は機転を利かせて扉の鍵をかけなかった。この時、客と銀行の従業員を合わせて44名が人質となった。強盗犯はそのまま机や椅子を移動させてバリケードを築いた。一段落したのか、強盗犯は支店長の椅子に座りながら柳葉刀をクルクルと回しながら、

 

「おい、さっきの銀行員はどこだ?手を挙げろ」

 

 強盗犯が言うと、シマリス系獣人族の中年男性が手を挙げた。

 

「はっ、はい……」

「おう。てめぇがさっさと金ださねぇからこうなったんだろうが!」

 

 強盗犯が柳葉刀を振り上げ、そのまま振り下ろした。銀行員の体は真っ二つに切り裂かれてしまった。強盗犯は柳葉刀を振り回しながら指示を出し始める。

 

「病人、年寄り、子供に用はねぇ。さっさと店から出てけ」

 

 足手まといと思ったのか、人質を解放し始める。ここでドムとカエデは別れる事になってしまった。ドムはここで抵抗したら被害が大きくなってしまうので事を荒立てずに言う通りに従った。カエデは顔を怖ばせるがぐっと堪える。それに気付き、隣に座っていたイワリス系の獣人族の男性がカエデに小さく声を掛ける。

 

「あなたは冒険者の方ですか?」

 

 ヒソヒソと尋ねるとカエデはこくんと頷かせると、

 

「なんとかなりませんか?良ければ用心棒として貴女を雇いたい」

「…………」

 

 カエデは強盗犯や店内を見渡してなんとか反撃出来ないか様子を伺うが、強盗犯との間合いや人質との距離を見て見たが首を横に振った。店長は希望はないと理解出来たのか、顔を下に向ける。

 

5分後。

 

 応援に駆けつけたキッドとジャックポット保安官。そしてグレン連邦保安官が大勢の保安官が銀行の周りを包囲した。グレン連邦保安官は捜査本部をオーリス銀行の反対側にあるレストランを借りて設置した。グレン連邦保安官は魔導話を使って銀行にかけ始める。

 

ジリリリ!!ジリリリ!!

 

 店内に魔導話のベルが鳴る。強盗犯はシマリス系獣人族の女性銀行員に声を掛ける。

 

「おい、お前が出ろ」

「はっはい……」

 

 シマリス系獣人族の女性銀行員は恐る恐る受話器を取った。

 

「はい……もしもし?……はい……分かりました。代わります」

 

 受話器を強盗犯に渡すと、

 

「なんだ?」

 

《もしもし、私はグレン連邦保安官だ。銀行は完全に包囲した。出来れば平和的に解決したい。だがら我々に協力してはくれないか?我々の質問に答えてくれれば、要求を1つ叶えよう。早速だが、人質は何人いる?》

 

 グレン連邦保安官が紳士的に交渉を試みると、

 

「おう、話が分かる連邦保安官で助かるぜ。人質は今……6人程解放したから24人だな」

 

《協力に感謝する。24人だな?よし、要求を叶えよう》

 

 強盗犯に信頼を得るために極力要求を呑む事にした。強盗犯は少し考えながら答えた。

 

「ステーキ」

 

《なに?今なんと言った?》

 

「ステーキ500g、ミディアムでな。それと上等なウィスキーだ!」

 

 この期に及んで強盗犯は食べ物を要求して来たのだ。グレン連邦保安官はコイツは頭がイカれてるのかと言わんばかりに首を傾げる。だが、人命がかかっている為、要求に応じる事にした。

 

《分かった用意しよう。せっかくのご馳走なら1人でゆっくり楽しみたいだろ?ここは残りの人質を解放してくれないか?》

 

 甘い誘惑で交渉を試みると、

 

「いやダメだ。俺は寂しがり屋なんだ、食事は大勢の方が楽しいだろ?」

 

 そんな事を言ってきた。だが、グレン連邦保安官は更に続ける。

 

《そうか、なら仕方ないな。直ぐに用意するから10分だけ待ってくれ》

 

「おう、楽しみにしてるぜ連邦保安官さん。その間こっちはこっちで色々やっておく事があるからよ」

 

 強盗犯はそう言い放ちながら受話器を下ろして通話を終わらせた。グレン連邦保安官は丸いテーブルに置かれた魔導話の受話器を叩きつけながら、

 

「全くコイツは……正気とは思えないな。だが10分は稼げる、銀行の見取り図はあるか?」

 

 隣にいたドワーフ族の保安官に尋ねると、

 

­­「銀行の見取り図ならここにありますよ」

 

 グレン連邦保安官の向かい側から見取り図が滑り込んで来た。グレン連邦保安官が顔を見上げるとそこには、王国騎士団のアーサー将軍が立っていた。

 

「アーサー将軍、出動要請が出たのですか?」

「ええ、ウェスタン国で最大の銀行が襲われたんですからね。当然です」

「協力に感謝する。3階建て、3階は会議室。2階は応援室。人質は24名全員1階の店内にいる。強盗犯は何人いるかはまだ不明」

「なるほど……1階の窓と入り口は塞がれている為、突入や狙撃は困難。ということは2階の応援室から侵入するのも可能ですね」

「ああ、犯人の人数さえ分かれば……」

「1人だよ」

 

 グレン連邦保安官とアーサー将軍の会話にもう1人混じって来た。2人が同時にレストランの入り口を見つめると、ドムが杖をつきながら立っていた。

 

「「マスター!?」」

 

 2人が同時に言うと、ドムはこれこれと言いながら2人を静かにさせる。

 

「わしはもうとっくに引退してるんだからマスターは止めておくれ。グレン、アーサー。2人とも元気そうだね。イタズラ小僧のワイアットも今じゃ国王様だしね」

 

 3人の会話に離れて見ていたジェシカ保安官がオースティン保安官に尋ねる。

 

「おいおい、ドムじーさんって一体何もんなんだよ。あたしが新人の頃からいるけど、まさか騎士団の将軍とグレン連邦保安官と国王とも知り合い見てぇだけど?」

「なんだ知らなかったのか?あの2人と国王は元々冒険者でドムさんはウェスタン国初のギルドマスターなんだよ。魔王を倒した後、それぞれの道に歩み始めたって訳さ」

 

 オースティン保安官の話しを聞いたジェシカ保安官は唖然としていた。

 

「まさかドムじーさんが初代ギルドマスターだったなんてな……通りでヤマト大陸の言葉を話せる訳だ……」

「さて、初代ギルドマスターはどんな知恵を授けてくれるのかねぇ」

 

 ジェシカ保安官とオースティン保安官が見つめると、ドムは2人に店内で起こった惨劇を話していた。

 

「犯人はリオック系蟲人族の男性。柳葉刀を装備。見た所あの男は武闘家と剣士を生業として実力は恐らく★6〜8くらいだね。銀行員2人、先に駆けつけた保安官2人が殺されてしまったよ」

「★6は厄介だな」

「無闇に突入したら余計不味い。どうすれば……」

 

 2人が頭を悩ませていると、ドムがため息を吐きながら言い放った。

 

「やれやれ、難しく考え過ぎだよ鼻たれ坊や達。ステーキと酒を要求して来たんだ、飛びっきりなやつを持っていけばいいのさ」

 

 ドムの言葉に2人は理解して互いの顔を見合わせニヤリと笑った。グレン連邦保安官は部下の保安官達に指示を出す。

 

「キッド、キッドはいるか?」

 

 グレン連邦保安官がキッドの名前を呼ぶと、雪がチラつく外で銀行の様子を伺っていたキッドはジャックポット保安官に肩を叩かれた。

 

「キッド君、グレン連邦保安官が呼んでるよ」

「え?はいっ!今行きます!」

 

 キッドが外套についた雪を払いながらレストランに入ると、グレン連邦保安官がキッドに重大な命令を出した。

 

「キッド、お前に重要な任務を与える」

「えっ……なんですか?」

 

 キッドが恐る恐る尋ねると、グレン連邦保安官は笑った。

 

「そんなにかしこまる必要はない。ただ強盗犯が食べ物と酒を要求して来たから食べ物と酒を運んで欲しいだけだ」

「脅かさないで下さい……。分かりました」

「ステーキとウィスキーの準備出来ました!!」

 

 レストランの厨房からステーキが出て来た。キッドは緊張しながらお盆に乗せて銀行に向かった。銀行の扉を叩くと、人質のシマリス系獣人族の男性銀行員が出て来た。

 

「はい……なんでしょう?」

「要求したステーキ500gとウィスキーです」

「あっ、はい……受け取ります」

「大丈夫ですか?人質の皆さんに怪我はありませんか?」

「早く行って下さいっ!」

 

 キッドは料理と酒を渡しながら状況を尋ねたが銀行員は怯えていたのか直ぐに扉が閉められた。ステーキとウィスキーは強盗犯に届けられると、待ちわびたかの様に飛び付いた。

 

「最後の晩餐だ……」

 

 強盗犯は何も食べてなかっのか、貪る様に食べ始めた。その頃、レストランでは次の作戦を打とうとしていた。

 

「よし、ジェシカ、オースティン、ロッキーで3か所の雨戸に穴を開けて中の様子が見える様にするんだ。魔法や魔導具を使うと聞こえてしまう可能性がある。手動の道具で開けるんだ」

 

 グレン連邦保安官が指示を出すと、待機していたジェシカ保安官、オースティン保安官、ロッキー保安官が穴あけ道具で雨戸に穴を開けて覗き穴を作った。ジェシカ保安官が穴を覗くと、悲惨な光景が広がっていた。

 

「おいおい……マジかよ……」

 

 ジェシカ保安官が見たものは、女性銀行員を裸にして銀行員の机に座らせて強盗犯の盾にしていたのだ。ジェシカ保安官は魔線機でグレン連邦保安官に声を掛ける。

 

「グレン連邦保安官、不味い状況です」

 

《どうした!?》

 

「女性銀行員が裸で立たされながら犯人の盾にされてる!」

 

《なんだって!?》

 

 より一層緊張が走り出す。強盗犯が狙撃されない様にこうじた策なのだと、すぐ分かった。レストランから王国騎士団達が慌ただしく外で突入の準備を始めた。ジェシカ保安官はもう一度中を覗くと、店長と思われるイワリス系獣人族の男性の隣には、カエデが大人しく座っていた。

 

「カエデ!?」

 

 ジェシカ保安官はカエデの様子を伺う。どうやらカエデも反撃したいが人質が多すぎて動こうにも動けない状況だとすぐに分かった。

 

「なんとかなるかも知れねぇな……」

 

 ジェシカ保安官はそのままレストランに戻ってグレン連邦保安官とアーサー将軍に声を掛ける。

 

「銀行の中に顔見知りの冒険者がいた。なんとかなるかもしれない!」

「本当かジェシカ!?」

「ああ、2階から侵入して犯人を人質から遠ざける事が出来ればな」

「なるほど……なら我々騎士団の出番ですね。合同訓練を活かして対人戦闘を強化して来ましたから」

 

 話しが纏まり始まると、グレン連邦保安官が何かを思い付いた。

 

「良し、ならこうしよう。ジェシカ、ジャックポット、ウィンストンと騎士団が2階から侵入し、気付かれずに店内に入って酒が入って気が緩んだ隙に狙撃するという作戦で行こう」

 

 グレン連邦保安官が作戦内容を説明すると、アーサー将軍は納得が行ったのか強く頷いた。

 

「それで行きましょう。騎士団からはランスロットとケイを同行させます」

「あたしはジャックポットとウィンストンを呼んで来る」

 

 事件発生から1時間後、保安官騎士団連合組は梯子で2階に侵入し、2階から下へゆっくりと進み始めた。強盗犯は強い度数のウィスキーを何杯も飲んだせいか、すっかり警戒を解いていた。店内に入ると、カエデがジェシカに気付いた。ジェシカは人差し指を立てて音を立てるなと指示を出す。カエデもいつでも刀を抜ける様に手をかけ始める。ランスロットが合図を出すと、ケイが魔法を唱えた。

 

「全員伏せろっ!」

「吹き荒れる魔法を我に撃たせたまえ『エアロブラスト』!」

 

 人質が床に倒れた瞬間に突風が強盗犯に向かって行ったが、強盗犯は魔法を剣で弾いた。

 

「何っ!?」

 

 ケイは驚きを隠せなかった。酒に酔ってると踏んでいたのだが、強盗犯は全く酔って居なかった。だがランスロットはこの一瞬の隙を見逃さずに一気に攻め立てた。

 

「はぁっ!」

 

 ランスロットの双剣と強盗犯の柳葉刀で鍔迫り合いになった。強盗犯の動きを封じたのをきっかけにウィンストンが先導して人質を避難させる。

 

「今のうちに逃げて!早くっ!」

「カエデ!」

 

 ジェシカ保安官の声を聞いてカエデもこの好機を逃すまいと身なりを整えて刀を抜いた。人質全員脱出したのを確認したジャックポットはレバーアクションライフルを構える。

 

「保安官だっ、武器を捨てろ!」

「無駄な殺生はしたくない。武器を捨てろ!」

 

 ジャックポット保安官とランスロットが怒鳴り散らすが、強盗犯は涼しい顔をしていた。

 

「人がいい気分で飯食ってたのに邪魔すんじゃねぇっ!」

 

 強盗犯は膝蹴りを繰り出してランスロットに一撃を入れる。プレートメイル越しなのにも関わらずダメージを受けたランスロットは顔を歪めて膝をついた。ジャックポットも数発発砲するが、全て柳葉刀で弾かれてしまった。

 

「ぐぅっ!」

「ランスロット!?」

「面白ぇ。食後の運動と行こうか」

 

 強盗犯はランスロットをそのまま蹴り飛ばすと、次はケイに狙いを定めた。ケイは詠唱を始めるが間に合わなかった。ケイが杖で防御しようとしたが、咄嗟にジェシカ保安官がレバーアクションライフルで攻撃を受けてケイを守った。

 

「ここでは魔法は無理だっ!下がってろ!」

「くそっ……このボクが保安官如きに助けられるなんて……」

「くだらねえプライドなんか知ったこっちゃねぇ!早く下がれ!」

「─────くっ!!」

 

 ケイは悔しいのを堪えながら強盗犯から距離を取った。ジェシカ保安官が至近距離で発砲するが悉く躱される。紙一重で攻撃を躱したジェシカ保安官も一旦距離を取った。

 

「このクソ野郎……やるじゃねぇか」

「へっ、保安官も大した事ねぇな」

 

 武術を混じえた剣術に保安官や騎士団も手を焼いていた。だがそこに、カエデが黙ってジェシカ保安官の前に立った。強盗犯は柳葉刀を肩で担ぎながら声を掛ける。

 

「今度は冒険者が相手か?上等だ、来いよ」

 

 カエデは目を瞑って耐えに耐えていた怒りを爆発させた。カエデは刀を白鞘に納めて居合切りの構えをする。強盗犯もただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、構え始める。

 

「さて、お手前拝見と行こうか」

 

 ジェシカ保安官がそう呟く。空気が張り詰めていくと、先に動いたのは強盗犯だった。強盗犯が柳葉刀を振りかぶって下ろそうとした瞬間。カエデが刀を抜いた。一瞬金属音が響いた後にはもう既にカエデは刀を鞘に戻していた。パチンと音を立てたと同時に柳葉刀が真っ二つに割られていた。

 

「お、俺の剣がっ!?」

「勝負あったな。両手を頭に乗せて膝をつけ」

 

 ジェシカ保安官に銃口を突き付けられた強盗犯は観念したのか、大人しくなりジェシカ保安官によって手錠を掛けられた。それを目の当たりにしていたランスロットとケイは余程悔しかったのか、壁に怒りをぶつけた。

 

「我々はまだまだ未熟過ぎる……力を付けねば……!」

「認めない、僕らだって騎士団なんだ。まだ負けてないっ!」

 

 そう言い残しながら銀行から出て行った。ジェシカ保安官が強盗犯を外に連行すると、野次馬達が騒ぎ出した。

 

「やっぱり番犬ジェシーはすげぇよ!」

「カッコイイっ!!」

 

 歓声を浴びていた。カエデも外に出ると、銀行の店長とドムが駆け付ける。

 

「カエデ、無事だったかい?」

「お怪我はありませんか!?」

 

 カエデは何事も無かったかのように首を横に振った。すると、店長がカエデの手を取る。

 

「先程も言いましたが、貴女の様な方が用心棒になってくれれば我々も心強いです。お願いします、ぜひウチで働いて下さいっ!」

 

 店長がそう言うと、

 

「願ってもないじゃないか、カエデ。仕事が見つかったじゃないか。店長さん、この子は言葉は話せないが構わないかね?」

「ええ、勿論構いません!あのようなゴロツキを追い払って貰えれば!」

 

 カエデも納得したのか、店長に向かって深く頭を下げた。牢竜車に強盗犯を乗せたジェシカ保安官はカエデの元に行く。

 

「カエデ。大丈夫か?」

 

 ジェシカ保安官が尋ねると、カエデもこくんと頷く。

 

「ジェシー。カエデはこれからオーリス銀行の用心棒として働く事になったんだよ」

「そうなのかウェスタン国で1番の銀行の用心棒だなんてすげぇな!安心したぜ」

 

 楽しそうに話しているのを見ていたアーサー将軍率いる王国騎士団は帰りざまに呟いた。

 

「我々はモンスターには滅法強いが、人間相手だとはまだまだ小物同然だ。今後の訓練内容を大きく変える。保安官に負けないよう励むぞ」

「はっ!」

 

 そう言い残し、王国騎士団は撤退して行った。3時間にも及ぶ大手銀行人質事件は保安官と王国騎士団の連携により、無事解決した。

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