俺の町は今日も今日とて平和です!   作:ボトルキャプテン

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34 ホテル・グリフォン

事件から2日後。グレン連邦保安官は邪神メデューサ教団の1人、アメルを取り調べを行っていた。グレン連邦保安官は顔に血管を浮き上がらせながら机に拳を叩きつけた。

 

「いい加減に本拠地を吐いたらどうだ!?これ以上黙秘したって何も起こらん!!お前らの教祖に逮捕状を請求している所だ!!」

 

 激昂するグレン連邦保安官に対して、アメルは涼しい顔をする。

 

「私が話すと言う事は、それは教祖様とメデューサ様を裏切るという事になります。メデューサ様はいつもどこでも見ていらっしゃる。なので私は決して喋りません」

 

 頑なに喋らないアメルにぐうの音も出ないグレン連邦保安官。取り調べ室の魔導話が鳴り出した。グレン連邦保安官が受話器を取る。

 

「私だ……」

 

《お困りの様ね……グレン》

 

 相手はオリビア連邦保安官だった。グレン連邦保安官は悟られる様に隠語を使いながら話し始める。

 

「いや、問題ない。取り調べは順調だ」

 

《やっぱり苦戦してるのね……フフ、久しぶりに、アレをやるわよ》

 

 オリビア連邦保安官がクスクス笑いながら言う。すると、グレン連邦保安官も何が言いたいのか理解したのか、明らさまにニヤリと笑う。

 

「いや、こちらは問題ない。もう少し尋問して見る……そっちは頼んだ」

 

 チンと受話器を置いて机に戻ろうとしたその時。

 

「グレン連邦保安官。イグナートが吐いたわ!!」

 

 突然、オリビア連邦保安官が取り調べ室に入って来た。話を聞いていたアメルは驚きを隠せなかった。

 

「そ、そんな!?アイツが話す訳がない!!」

「いいえ、洗いざらい全部吐いたわ。司法取引を持ちかけたら貴方に唆されて今回の事件を起こしたってね……。設置した場所も、馬車を盗んだのも全部ね。さぁ刑務所を通り越して処刑台に行きましょ?貴方が主犯格なんだから極刑は免れないわよ?」

 

 そうオリビア連邦保安官が言って手錠を取り出しながら近付くと、アメルが騒ぎ出した。

 

「そんな!?デタラメだ!!俺はそんな話ししてないっ!!」

「あら?そうなの?なら証拠を照らし合わせるから貴方も司法取引する?そうすれば極刑だけはなんとか免れるかもよ?」

「そりゃいい案だな。どうする?裏切り者におめおめと殉教者として殺されるか。その教祖様とやらの為に忠義を尽くしたまま優秀な信者として刑務所に入るか」

「グレンもたまにはいい事言うわね。さぁ、どうする?」

 

 2人の悪魔の囁きにアメルの気持ちが揺らぎ始めた。アメルは裏切られるならと考えたのか、重い口を開いた。

 

「分かった、全て話す……」

「そう?賢明な判断ね」

 

1時間後。

 

 全てを聞いたグレン連邦保安官は取り調べ室から出てオリビア連邦保安官がいるミーティングルームに入って来た。

 

「メデューサ教団の拠点が分かったぞ!」

「あんがいチョロかったわね。どこなの?」

 

 オリビア連邦保安官に尋ねられたグレン連邦保安官は黒板にフロンティア大陸の地図を広げ、指を指した。

 

「レッドロックを越えた最北端の国【スカイフィッシュ】だ」

 

スカイフィッシュ国。マジックストーンラッシュの時期に畜産、林業の交易の中心地として急速に発展し、峡谷沿いに住居を構えていき発展した国である。

 

「スカイフィッシュ?随分田舎から来たのね。スカイフィッシュの保安官達は何をしてるのかしら?」

「分からん、分かるのは理由はスカイフィッシュより発展しているからこのウェスタンを狙ったという所だろう。スカイフィッシュの保安官事務所と連携して捜査を進める事になるだろう」

「今すぐ逮捕っていう訳には行かなそうね……」

 

 オリビア連邦保安官は腕を組みながら頭を悩ませる。同じように悩んでいたグレン連邦保安官は苦渋の決断を出した。

 

「仕方ない。裁判所から教祖の逮捕状を請求している間にメデューサ教団の情報を集めよう」

「そうね。んじゃ、私はそろそろ帰るわ……」

「遅くまですまんな。お疲れ」

「んじゃ、また夜に……ふわぁ〜」

 

 オリビア連邦保安官はあくびをしながらミーティングルームを出て行った。

 

「という訳だ。タレコミ屋を使ってメデューサ教団のありとあらゆる情報を引き出すんだ」

 

 グレン連邦保安官が指示すると、保安官達はバタバタと動き出した。今日も今日とて1日が始まる。すると、グレン連邦保安官が声を掛ける。

 

「ジェシカ保安官とキッド保安官、ちょっといいか?」

 

 呼び止められたジェシカ保安官とキッドはグレン連邦保安官の元へ行く。

 

「なんですか?」

「何すか〜?まさか潜入捜査とか言わないっすよね?」

「お前らに潜入捜査を頼む訳ないだろ。【民事介入暴力】の事案だ」

 

民事介入暴力とは、ギャングやマフィアなどの反社会的勢力が、暴力や威嚇力を背景に一般市民の民事上のトラブルに不当に介入し、不法な利益を得ようとする行為を指す。

 

 それを聞いた途端、ジェシカ保安官は新しいおもちゃを見付けたかのようにニヤニヤと笑い出す。

 

「へぇ、あたしがやって良いんすか?」

「お前の方が打って付けだろう。いい機会だからキッドを連れて行って勉強させて来い」

「了解。で、現場はどこですか?」

「ベレッタ地区の【ホテル・グリフォン】だ」

 

 名前を聞いた途端、キッドは目をまん丸くさせる。

 

「えっ、あの有名な高級ホテルですか!?」

「そのホテルがあるギャングに目を付けられてしまった様だ。それで通報が来ている。様子を見て来て欲しい」

「分かりました。行ってきます」

 

 2人は向かおうとしたが、ジェシカ保安官は立ち止まってグレン連邦保安官に振り返る。

 

「ちなみに、その悪党どもは全滅させても別に良いっすよね?」

「ああ、構わん。だからお前を選んだんだ。頼んだぞ」

「りょ~か~い」

 

 ジェシカ保安官とキッドはホテル・グリフォンに向かった。馬を走らせて10分近く、ようやくホテル・グリフォンに到着した。ジェシカ保安官とキッドが中に入った途端、

 

「どうなってんじゃわりゃっ!!責任者出さんかいっ!」

「どう落とし前つけるつもりじゃ!?」

 

 ホテル中に響き渡る怒号。キッドは思わずホルスターに手をかける。

 

「なんの騒ぎですか?」

「チンピラが騒いでるんだろ、ほらあそこ」

 

 ジェシカ保安官が指を指す方向には、アリゲーター系蜥蜴人族、カミツキガメ系の蜥蜴人族、エリマキトカゲ系蜥蜴人族の男達がホテルの従業員に詰め寄っていた。

 

「……でも、民事不介入で何も出来ませんよね?どうするんですか?」

「それは相手が普通の冒険者とか一般人の話だ。あいつらは【コモド一家】の一味だな。背中に独特な刺青が入ってるだろ?」

 

 キッドが男達の背中に目を向けると、モンスターの刺青が入っていた。ジェシカ保安官はホルスターのボタンを外しながら男達に近付いて声を掛けた。

 

「ギャーギャーうるせぇんだよチンピラ共、弱い者虐めがそんなに楽しいか?」

「なんやとこ……っ!?」

「あっ……アニキ!!」

 

 エリマキトカゲ系蜥蜴人族の男がリーダーと思われるアリゲーター系蜥蜴人族の男に慌てて声を掛け始めた。アリゲーター系蜥蜴人族の男が振り返る。

 

「なんや、もう少しで金引っ張れ……あっ、あんたは!?」

「なんだ、誰かと思えば……この前恐喝で逮捕したシウバじゃねぇか。こんなとこで何してんだ?あぁん?」

 

 シウバと呼ばれたアリゲーター系蜥蜴人族の男はジェシカ保安官の顔を見た途端顔を青くさせた。

 

「な、なんや……番犬さんやないか……わしらは……別に……」

「別に?さっき金を引っ張れるって言ってたじゃねぇかよ。そこのあんた、金出せって脅されたんだろ?」

 

 ジェシカ保安官はホテルの従業員に尋ねると、半べそかきながら頷いた。

 

「つーことは、恐喝罪だな。お前を現行犯逮捕する」

 

 ジェシカ保安官がシウバに手錠をかけると、残り2人が近付いて来た。キッドはピースメーカーを抜いて威嚇をする。

 

「あなた達も豚箱に入りますか?」

「……っち……覚えてろよ」

「番犬さん、よくもわしの顔に泥塗ってくれたのぉ……覚えとけや」

 

 シウバはそう捨て台詞を吐いた。だが、ジェシカ保安官も負けじとピースメーカーを顎に突き付けた。

 

「上等だよ。ギャングが怖くて保安官が出来るか馬鹿野郎」

「くそっ、覚えてろっ!」

 

 シウバを見捨てて手下2人は一目散に逃げて行った。

 

「こちらジェシカ保安官、恐喝した男を逮捕した。牢竜車を要請」

 

《了解。直ちに向かわせます》

 

 ジェシカ保安官が魔線機で要請している間にキッドは従業員に声をかけた。

 

「大丈夫ですか?」

「すいません……大丈夫です」

「今回は現行犯で逮捕出来ましたが、また奴らは来るでしょう。用心棒を雇う事をオススメします」

 

 キッドが助言すると、

 

「用心棒を雇ったのですが、次の日から行方が分からなくなるのです。噂の沈黙の冒険者さんを雇いたいのですがお忙しいようで……」

「沈黙の冒険者……カエデさんの事ですか?」

「お知り合いなのですか!?」

 

 カエデの名前を出した途端、従業員はキッドにしがみついた。

 

「詳しくお聞かせください!オーナーを呼びます」

「あっ……はい。先輩がもうすぐ戻ってくるので」

 

 それからジェシカ保安官とキッドは応接室に通されると、燕服に身を包んだエルフ族の中年男性か現れた。オーナーはジェシカ保安官達を見た途端深々と頭を下げた。

 

「初めまして、私がホテル・グリフォンのオーナーのグリフィンと申します。先程はありがとうございました」

「事情は聞きました。コモド一家に揺すられてるんですね?」

 

 ジェシカ保安官がオーナーに尋ねると、

 

「ええ、そうです。あの手この手で言いがかりを付けられて脅され金をむしり取られるのです……。自分のホテルすら守れないお恥ずかしい限りです」

 

 オーナーがペコペコ頭を下げる中、キッドは慌てて声をかける。

 

「そんな事ありません。金輪際好き勝手にはさせませんから。ジェシカ保安官、どうしますか?」

「さっき聞いたけど、雇った用心棒が居なくなったって?」

 

 ジェシカ保安官が尋ねると、オーナーも頭を悩ませながら答えた。

 

「ええ、コモド一家の一味を撃退した翌日には来なくなるんです……」

「みんな報復されたのかもな。半端な冒険者じゃ殺られるって訳だ」

「なんでも巷で噂の沈黙の冒険者・カエデとお知り合いだとか?」

「まぁな、カエデは今オーリス銀行の用心棒をやってるよ。あそこも銀行強盗にあってるからな。そう簡単には来てくれねぇよ」

 

 ジェシカ保安官がそう言うと、オーナーは落ち込んでしまった。

 

「そんな……なんとかなりませんか?」

「まぁ……なくもないけどな。あたしにいい考えがある」

「考え……なんでしょうか?」

 

 オーナーが尋ねると、ジェシカ保安官はニヤリと笑う。

 

「簡単な話だ。悪の根元を断てばいいんだよ」

「え……えっ!?」

 

 キッドは思わず上擦った声を出した。

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