俺の町は今日も今日とて平和です!   作:ボトルキャプテン

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39 不死身の教団

  目を開けた信者は自分の体を触り始める。自分は確かに撃たれたと認識しているからだ。信者は撃たれた所を見ると、銃創が綺麗に塞がっていた。

 

「メデューサ様がお護りして下さった……また戦える!」

 

 信者は感謝の意を込めて握っていたショートソードを力強く掲げる。すると、近くに倒れていた信者達も次々目を開けて体を起こし始めた。その異変に真っ先に気付いたのはリディ保安官だった。何かの視線を感じ取ったリディ保安官は、レバーアクションライフルを片手に辺りを見渡した。そして、倒した筈の信者を見て血の気が引いた。

 

「嘘っ、なんで!?なんで立ってるのよ!?」

「なんだぁ?どーしたってんだよ」

 

 壁に寄り添いながら休んでいたジェシカ保安官が体を起こすと、

 

「見て、アイツを見てよ!」

「アイツ?なんだよ?」

 

 紙煙草を吸いながらリディ保安官の視線の先を目を凝らして見る。すると、ジェシカ保安官も顔を青ざめさせ、火をつけたばかりの紙煙草をポロッと落としてしまう。

 

「─────っな!?」

「なんで!?不死身なの!?」

 

 あまりの恐怖にリディ保安官はレバーアクションライフルで再び狙いを定める。だが恐怖心が勝り、銃身が震えてしまう。

 

「神官職が混ざってたんだろ!?咄嗟に回復したに決まってる!」

 

 恐怖を振り払うかの様に自分に言い聞かせるジェシカ保安官がレバーアクションライフルで再び狙い撃ち、倒した。だが、他の場所から信者達が次々に立ち上がり始める。

 

「くそったれぇぇっ!!」

 

 闇雲に撃ち続けるジェシカ保安官。激しい銃声で休んでいた保安官達が飛び起きる。

 

「なんだ!?何を騒いでる!?」

 

 オースティン保安官が魔線機でジェシカ保安官に尋ねると、

 

《信者達が蘇ったんだ!そっちを見てみろ!》

 

 オースティン保安官が確認すると、傷を癒した信者達が立ち上がり、武器を掲げていた。

 

「─────っ!?」

「オースティン!」

 

 唖然とするオースティン保安官にジャックポット保安官が叫ぶ。我に返ったオースティン保安官は魔線機でクラシス連邦保安官に尋ねる。

 

「クラシス連邦保安官!信者達に神官職がいるのか!?倒した信者達が蘇ったぞ!?」

 

 その時、再び信者達が弓矢とボルト系魔法で攻撃して来た。保安官達は咄嗟に応戦する。

 

《そんな馬鹿な!?信者達が蘇る訳がない!!他に潜んでいた信者達がまた攻めてきたのか!?》

 

 クラシス連邦保安官の言葉にカチンと来たのか、オースティン保安官は壁に身を隠しながら、

 

「だったら確認しに来いっ!倒したやつが全員蘇ったんだ!振り出しに戻ったんだよ馬鹿野郎っ!!」

 

 怒りの感情を魔線機にぶつけるかのように投げ捨てた。クラシス連邦保安官は砦の窓から望遠鏡で確認すると、まるで化け物を見るように言い放つ。

 

《蘇ってる……だったら何度でも撃ち倒してやれ!!》

 

 クラシス連邦保安官も魔線機から激を飛ばす。負けじとジェシカ保安官も魔線機で言い返す。

 

「もうとっくに撃ってるよ!弾薬庫の残弾を数えとけよ!!」

 

 ジェシカ保安官が荒ぶっていると、ジャックポット保安官がゴーレムライフルで魔法を唱えている信者に狙いを定めた。

 

「アンデッドはご遠慮下さいねぇ」

 

 弾丸が頭を貫くと、魔法が発動し大爆発を起こした。信者達を何人かを巻き込む事ができたが、信者達は止まらない。

 

「倒しても倒してもキリがないっ!」

「キッド保安官、こんな時どうすれば……!?」

 

 ヴィクター保安官が不安そうな顔をしながらキッドに尋ねる。だが、キッドも初めての経験の為、どう説明すればいいか分からなかった。頭をフル回転させて絞り出した答えが、

 

「必ずトリックがある筈です。それを見つけるまで倒しましょう!」

 

 これしか答えが出なかった。だが、ヴィクター保安官も納得したようで、果敢にレバーアクションライフルで撃ち始める。すると、オースティン保安官の方では、信者達が乗って来た幌馬車の荷台からアクアマリン鉱石の付いた杖が見えた。オースティン保安官はジャックポット保安官に指示を出す。

 

「ジャックポット、幌馬車だ!荷台に魔導師が隠れている!上級魔法を撃つ前に幌馬車を狙え!」

「了解!」

 

 ジャックポット保安官が狙いを定めて引き金を引いた。弾丸は杖に当たりへし折った瞬間、大爆発を起こした。恐らくニトログレネードを放つもりだったのだろう。だが、その爆発でかなりの数の敵を減らす事が出来た。その頃、刑務所の内部では、クラシス連邦保安官がレッドロックだけでは無く他の国から冒険者を派遣出来ないか冒険者ギルドに魔導話で片っ端から連絡を取っていた。

 

「もしもし、こちらスカイフィッシュ国の連邦保安官ジョン・クラシスです。そちらのギルドに緊急クエストを依頼したい…………緊急なんだ!バウンティクエストを……『国外依頼の許可』はあるか?いや、すまないがそれは……頼む助けてくれっ!たのっ……クソッ!」

 

国外依頼とは、国外で冒険者クエスト、バウンティクエストの依頼をする事で国外から冒険者を呼ぶ事が出来る。だが、これには両者の国からの許可が降りないと成立しない諸刃の剣の依頼である。

 

 魔導話の受話器を叩きつけるクラシス連邦保安官。地図に断られた国にバツ印を付けていく。そして次に、目をつけたのは……ウェスタン国だった。クラシス連邦保安官は藁にもすがる思いで連絡を試みた。

 

「はい、こちらウェスタン国保安官事務所です」

「もしもし、こちらスカイフィッシュ国保安官事務所から連絡している。私は連邦保安官のジョン・クラシスだ。グレン連邦保安官かオリビア連邦保安官に緊急の連絡があるのだが……」

 

 クラシス連邦保安官がそう言うと、

 

「分かりました、お待ちください!」

 

 数分後。

 

「代わりました、オリビア・ウィリアム連邦保安官ですが?」

「良かった、オリビア連邦保安官。私はジョン・クラシス連邦保安官です。今スカイフィッシュ刑務所から連絡しているのだが、カルト教団教祖ジム・ギュスターヴを逮捕したが信者達から襲撃を受けている。そちらの保安官達が懸命に抵抗しているが朝まで持つか分からない。合同調査で5人も来てくれているのに情けない話しだが救援を寄越してくれないか!?」

 

 クラシス連邦保安官がオリビア連邦保安官に懇願する。オリビア連邦保安官もたまたま通り掛かったジャンゴ保安官とブラッド保安官にこっちに来いという合図を送った。ジャンゴ保安官達がオリビア連邦保安官の部屋に入ると、

 

「スカイフィッシュでテロ事件の首謀者を逮捕したのだけど、襲撃にあって救援を求めてる」

 

 そう言った瞬間、ブラッド保安官の顔をが強ばった。キッド達が向かっているのは周知されているからだ。ジャンゴ保安官は腕組みしながら耳を傾ける。

 

「事情は分かったわ。冒険者ギルドに応援を依頼したいのね?けど、さっきスカイフィッシュ国の魔導列車の線路が封鎖されたって聞いたわ。それに応援を送るのは構わないわ。でも、ここからじゃ数時間かかるけど、それまで平気なの?」

「ああ、何とかして見せる。国外依頼の許可を持ってないのだが……」

 

 クラシス連邦保安官が最後の問題にかかる。すると、オリビア連邦保安官は分かっていたかのように優しい言葉をかけてきた。

 

「大丈夫。私がなんとかしてあげるわ。こっちの保安官達も関わってるし、安心しなさい。冒険者ギルドと保安官をなるべく早くそちらに向かわせるから耐えて頂戴」

「助かる。なんと礼を言えばいいのか……」

 

 クラシス連邦保安官はその場で何度も頭を下げる。

 

「ええ、それじゃ……」

 

 オリビア連邦保安官が受話器を置くと、

 

「聞いてた通りよ。私はこれから大臣の所に行って国外依頼の許可を取りに行って、冒険者ギルドに依頼をしてくるわ。それまでにこちらから行く保安官を選んでてくれる?」

 

 オリビア連邦保安官がジャンゴ保安官達に言うと、

 

「ならレッドロック国にも声をかけてくれ。オリビア連邦保安官なら顔が利くだろ?」

「利くけど手続きが色々面倒なんだから時間がかかるわ。クラシス連邦保安官もレッドロックから断られてここに連絡して来たんだろうしね」

「国ってのは面倒くさいな、ブラッド、誰を連れて行く?」

 

 ジャンゴ保安官がブラッド保安官に尋ねると、

 

「君と、僕、それとクリス保安官かな?ここの夜勤保安官だって限りがあるんだし、後は冒険者ギルドに任せよう」

「そうだな。んじゃ、クリスに声をかけてくる」

 

 ウェスタン国の保安官事務所で様々な働きがあった頃。スカイフィッシュ刑務所ではジャックポット保安官がゴーレムライフルで狙い撃ちをしていると、遂に弾が切れてしまった。

 

「しまった、弾切れだ。弾薬を取りに行くけど皆、弾は足りてるかい?」

 

 魔線機で尋ねると、

 

《あたしのとこライフルとピースメーカーの弾が切れそうだ》

 

 ジェシカ保安官の声が入って来た。ジャックポット保安官はゴーレムライフルを城壁に立て掛けて頭を下げながら弾薬を取りに刑務所の中に戻った。ゴーレムライフルとピースメーカーの弾薬を取って来た道を戻る。戻る途中、何処からか悲鳴というより断末魔が聞こえて来た。ジャックポット保安官は思わず足を止める。

 

「囚人にしちゃすげぇ悲鳴だな。囚人同士で喧嘩でもしてるのかな……ギュスターヴは神官職だからもしかして……」

 

 ギュスターヴが暴行されていると思い、ジャックポット保安官は悲鳴の元へ向かった。そこはギュスターヴ達を留置している牢屋だった。松明の明かりを当てて見ると、辺り一面血の海だった。

 

「なっ……一体何が?」

 

 ジャックポット保安官は牢屋に備えられた松明に火を付けて辺り一面を明るくする。するとそこには、返り血を浴びて真っ赤に染ったギュスターヴがいた。

 

「メデューサ様、どうかこの囚人達に祝福を……」

「おい!貴様、何をした!?」

「ほ、ほ、保安官っ!助けて助けてくれぇっいやだ、いやだ!」

 

 唯一残った人間族の囚人が血だらけの腕を伸ばして助けを求める。だが、ギュスターヴは囚人の頭掴んで自分の大きな口の中へと運んだ。ボリボリと骨を砕く音が部屋に鳴り響く。ジャックポット保安官も冷や汗を流した。

 

「お前……一緒に入った囚人を食ったのか!?」

 

 ジャックポット保安官が尋ねると、ギュスターヴは振り返る。

 

「食う?いいえ、これは救いなのですよ。私は、罪人を苦しみから解放する為に私の血肉になるという救いを受けたのです」

 

 ギュスターヴの言葉を聞いたジャックポット保安官は顔を青ざめる。聞いた瞬間にコイツに言葉が通じないと判断したからだ。ジャックポット保安官はピースメーカーをホルスターから抜いて構える。

 

「ふざけるな、教誨師にでもなったつもりか?お前がやったのは処刑じゃない。間違いなく殺人だ!!」

 

 ジャックポット保安官が怒鳴り散らしがギュスターヴには響いていない様子。涼しい顔をしながら祈りの構えをする。

 

「メデューサ教では救いは血肉になるのです。私は信者達を護りたい、罪人を救いたい両方を行ったまでなのです」

 

 その言葉により、不死身の信者達のカラクリが分かった。ギュスターヴはここから支援魔法を唱え、信者達を蘇生させていたのだ。だが蘇生魔法は魔力を大量に消費する為に囚人を食って回復したという事だ。

 

「まったく分からないな。確かに宗教は自由だが、お前達の思想はあまりにも危険すぎる。俺のバッジにかけてお前を射殺する」

 

 ジャックポット保安官がそう言うと、ギュスターヴは返り血に染った法衣を脱ぐと、左肩に蝿と髑髏の刺青が入っていた。

 

「貴方が私を殺そうというなら、私はメデューサ様と信者達を守る為に懸命に抵抗する。私はジム・ギュスターヴ、【七つの大罪・暴食の罪】なのだから!」

 

 ギュスターヴは鍵のかかった牢を握った瞬間、飴細工の様にぐにゃりと曲げて通り道を作った。牢屋の柵を引き抜き杖代わりにして構え始めた。

 

「貴方にも血肉となる救いを与えましょう」

 

 筋肉を膨張させながらギュスターヴが襲いかかって来た。

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