俺の町は今日も今日とて平和です!   作:ボトルキャプテン

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40 七つの大罪・暴食の罪 前編

ジャックポット保安官はピースメーカーを素早く抜いて3発発砲する。だが、3発の弾丸はギュスターヴは光り輝く魔法の盾で護られた。ジャックポットは苦しまぎれに苦笑いを零した。

 

「それが魔法壁『ナイトシールド』ってやつか、噂に違わぬ厄介な魔法だな。心底感心するよ」

 

ナイトシールド。自身や他者に唱えると魔法の盾を創り出して護る防御魔法である。魔導師や神官などの魔法使いが一般的に使う。

 

 皮肉を言いながらジャックポット保安官はバックステップを踏んで距離を取り、ピースメーカーに弾を込めて発砲する。だが、ギュスターヴはまたナイトシールドで護られた。

 

「無駄です。私はメデューサ様の祝福で護られてるんですから」

「お前を守ってんのは、魔法だろうが!!」

 

 石柱に隠れながら発砲するが、ナイトシールドで防がれる。舌打ちをしながらジャックポット保安官は考える。

 

「めんどうな魔法だな……どうする、魔力切れをするまで撃ち続けるか?でも底の知れない魔力を持ってる奴相手に?どうする?どうする!?」

 

 悩んでいると、ブーツに小石が当たって転がり、壁に当たって跳ね返って来た。それを見てジャックポット保安官は閃いた。ピースメーカーに込められた鉄製の弾薬を全て抜いてポーチから白銀色に輝く弾頭の弾薬を込めてギュスターヴとギュスターヴの足元を狙った。

 

「あなたは学習能力が無いようだ。私にはそんな鉛弾が当たる訳」

 

 そう言った瞬間。足元の弾丸が跳ね返り、ギュスターヴの肩に当たった。

 

「なにっ!?」

「『ラッキーショット』。狙撃の次に俺の得意な撃ち方だ」

「なるほど、【跳弾】で正面しか護れないナイトシールドの弱点を見抜きましたか」

 

跳弾とは、発射された弾丸が物体に当たった際、跳ね返る弾丸の事。だが、ライフリング・施条により弾丸自体に与えられた回転による影響、着弾時の弾の変形や破片化が一定ではないこと、そうでなくても跳弾地点の硬さや風の流れなど、不確定要素が多すぎるため、現実にはほぼ不可能とされるのが一般的。けど、扱ったのは幸運に恵まれているジャックポット保安官であり、弾丸の弾頭もミスリル製を使った為、不可能を可能に出来た。

 

 ギュスターヴは直ぐに治療魔法を唱え、銃創を治した。

 

「こんな傷、直ぐに治せるんですよ。それでもまだ抗いますか?」

 

 余裕な笑を浮かべながら言い放つ。だが、ジャックポット保安官も負けじと、

 

「おいおい、回復していいのか?そんなに魔力使ったら、外で戦ってる信者達に魔力が行き渡らないんじゃないのか?」

 

 ジャックポット保安官の言葉にギュスターヴは、眉間に力を入れて寄せ、目を見開く、唇を固く閉じて詠唱を中断した。

 

「確かに貴方の言う通りです。外では私の為に戦ってくれている信者達が大勢残っている」

「そうだろう?だったら回復魔法は止めといた方がいいんじゃないか?」

 

 ジャックポット保安官がそう促すが、ギュスターヴは首を横に振った。

 

「彼等も死ぬ覚悟でここに来ているのです。メデューサ様は命を賭して戦う者には祝福を与えてくださるのだから」

 

 感情が表面に出ず、静かな決意を感じさせる様に言い放った。そして、杖を正面に突き出しながら呟いた。

 

「『神の鉄槌』!!」

 

 ギュスターヴがそう唱えた瞬間、杖の周りが光り始めて行き段々と光り輝く巨大なハンマーの形が出来始めた。それを目の当たりにしたジャックポット保安官は唖然とする。

 

「まさか、神官職でそんなもん作れるとはな……」

「さぁ、神の裁きを受けるがいいっ!」

 

 ギュスターヴは光のハンマーを振り上げながら突進して来てジャックポット保安官に叩きつけようとした。間一髪避けると、床にはハンマーの衝撃で穴が空いていた。

 

「あんなもん食らったら蜥蜴の干物になっちまうな。なら、これはどうだ!!」

 

 ジャックポット保安官は4発撃ち込むと、弾丸は壁や石柱に当たって跳ね返り、ジグザグに飛びならがらギュスターヴの右手、左足、左腕、胸に弾丸が命中した。血を流し始めたのを確認したジャックポット保安官は再び弾を再装填するが、ガンベルトにはもう予備の弾薬は残ってなかった。ふと、入り口の方にジェシカ保安官に頼まれたピースメーカーの弾薬や散弾銃の弾薬が入った布袋が目に入った。

 

「くそ……残り3発、取りに行くしかねぇか」

 

 石柱から様子を伺うジャックポット保安官。そして、一気に駆け出しながら発砲する。だが、ギュスターヴは弾丸を3発全て光り輝くハンマーで弾いたが跳弾で跳ね返り、運良く松明に当たって火花が散ってギュスターヴの左目に入った。

 

「今だっ!!」

 

 転がりながら布袋を掴んだ瞬間、

 

「おのれ……神の戦槍(せんそう)!!」

 

 光り輝くハンマーを床に叩きると、床に光り輝く槍が幾重にも飛び出して来た。ジャックポット保安官は咄嗟に避けたが、1本の槍が右太ももを貫いた。

 

「ぎっ……しくじった!!」

「さぁ、鬼ごっこもそろそろ止めましょう。特別に貴方にメデューサ様に捧げる生贄にしてあげましょう」

「それは死んでもごめんだな!」

 

 ジャックポット保安官は傷口を首に巻いてたバンダナで止血を施し、石柱に隠れながら弾薬を装填する。

 

「やれやれ……参ったな、七つの大罪になるとここまで苦戦するとは」

「どうしました?許しを乞う気になったのですか?」

 

 ギュスターヴはズルズルと尻尾を引き摺る音を立てながらジャックポット保安官の元へゆっくりと近付いて来る。ジャックポット保安官は弾薬の入った布袋を見つめてまた何かを閃いた。覚悟を決めたジャックポット保安官は立ち上がって、その時を待っていた。

 

「戦槍と鉄槌は魔力の消費が激しいので使いたくなかったのですがね、貴方は脅威になりかねるので使わせて頂きました。貴方の血肉で魔力を回復させて頂きます」

 

 ギュスターヴは石柱を覗くとジャックポット保安官が長い尻尾を使って攻撃しようとした。バチンと鈍い音を響かせるがギュスターヴはものともせずに顔面で受け止めた。

 

「なにっ!?」

「これはご丁寧に」

 

 ギュスターヴはジャックポット保安官の尻尾を掴み、大きな口を開けてジャックポット保安官の尻尾の先端を食いちぎった。ジャックポット保安官は耐え難い激痛で顔を歪め、ギュスターヴは再び食いちぎろうと口を開く。だが、ジャックポット保安官はそれを待っていた。左手で布袋を口の中へ放り込み、ピースメーカーの撃鉄を起こして口の中へ一気に乱射した。6発の弾丸は布袋に当たると、突然布袋が爆竹の様な音を立てて暴発した。

 

「はぁはぁはぁ……」

 

 ギュスターヴの掴まれていた手から力が抜けてジャックポットは解放された。直ぐに顔を見上げると、ギュスターヴの長い口が半分以上爆発で吹き飛んでおり、ゆっくり仰向けに倒れ込んだ。ジャックポット保安官は息を切らしながら装填してギュスターヴに近付いて足を蹴るが、反応がなかった。

 

「あんた、強すぎだよ……」

 

 ジャックポット保安官はその場に座り込みながら、魔線機を取り出した。

 

「こちらジャックポット。教祖のギュスターヴを討伐した」

 

 そう言った瞬間、魔線機に応答が来た。

 

《ギュスターヴを討伐した!?来ねぇと思ったら何があったんだよ!?》

 

 ジェシカ保安官からだって。ジャックポット保安官は息を整えて答える。

 

「奴は囚人を全て食い殺していた。しかも、七つの大罪の1人だった。だから殺人の容疑で討伐すると判断したんだ。流石にヤバかったからジェシカちゃんに渡す筈の弾薬全部暴発させちゃったよ……ごめん」

 

《七つの大罪を暴発させた!?どうやって!?》

 

「簡単さ、弾薬の箱ごと撃ったんだよ」

 

保安官達が扱う弾薬は、強い衝撃が爆発の引き金となる可能性があり取り扱いには十分注意を払なければならない。今回の場合、ジャックポット保安官は弾薬に弾丸をぶつけて暴発を誘発させて大爆発を起こしたという事になる。

 

《マジかよ、強運過ぎるだろ!》

 

「そっちはどう?片付きそうかな?」

 

 ジャックポット保安官が尋ねると、ジェシカ保安官は呆れ気味に言う。

 

《お前がサボったお陰でベッキーから弾分けて貰いながらなんとか倒し終わったとこだよ。急に起き上がらなくなったからおかしいと思ったんだ。もうすぐ夜明けだ。あたしらもそっちに行くよ》

 

 そう言って魔線機の通信を切った。ジャックポット保安官は緊張の糸が切れたのか、ドサッと倒れ込んだ。

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