俺の町は今日も今日とて平和です!   作:ボトルキャプテン

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42 第2ダンジョン捜査

 夜が明け、時計は早朝6時を回った。それぞれ体を休めていた保安官達にクラシス連邦保安官の招集がかかった。集められた保安官達はミーティングルームに集まった。

 

「硬い床で寝ると腰が痛いな」

 

 オースティン保安官が腰を擦りながら呟く。

 

「あたしらが何度も起こしても起きないあんたが悪いんだろ」

「おっと、そいつは済まなかったな」

 

 そこへ、寝不足気味のクラシス連邦保安官が入って来た。クラシス連邦保安官は黒板に地図を広げる。地図にはスカイフィッシュにあるダンジョンの場所に赤い印がされていた。

 

「連戦で申し訳がこのままダンジョンの捜査に行ってもらう。目的は魔薬草の押収とその場にいる人質救出。もし、魔薬草の加工している冒険者や教団の信者がいた場合は逮捕の方針で頼む。だが万が一抵抗する場合は射殺を許可する。全部で6箇所のダンジョンに向かってもらう為にメンバーを編成させて貰った」

 

クラシス連邦保安官の編成によりメンバーがこうなった。

 

第1ダンジョンには、ロッキー保安官、パーシー保安官。

 

第2ダンジョンには、ジャックポット保安官、ジャンヌ、キッド保安官。

 

第3ダンジョンには、ジェシカ保安官、リディ保安官、ブラッド保安官。

 

第4ダンジョンには、グッディ保安官、ヴィクター保安官、クリス保安官。

 

第5ダンジョンには、ジャンゴ保安官、オースティン保安官、ベッキー保安官。

 

 ───────という編成になった。刑務官達は保安官ではない為、刑務所で死体安置所を作ってもらい教団の信者達の遺体の身元確認などをして貰う事になった。弾薬もブラッド保安官達の補給で賄われた。そして、馬に跨りそれぞれのダンジョンに向かって行った。ヴァンパイアのブラッド保安官も日光を浴びない様に厚手のローブで体を覆い隠しながら馬を走らせる。

 

「第2ダンジョンはスカイフィッシュの中でも難易度が高い。気を引き締めて欲しい」

「なんだ?行ったことでもあるのか?」

 

 第2ダンジョンに向かっていたジャンヌとジャックポット保安官が馬を並走させながら話を始める。

 

「ああ、稀に妙なモンスターが現れるんだ」

「妙なモンスター?どんなのですか?僕は冒険者ギルドで働いてたので大抵のモンスターは分かりますよ?」

 

 ジャンヌを挟むようにキッドが並走しながら尋ねると、ジャンヌは顔を強ばらせた。

 

「見た目は鳥の様で鳥じゃない。私が見たのは……人間族の頭部、蜥蜴人族の様な硬質な鱗、鳥人族の様な羽毛、獣人族の様な大きい尻尾を持つ圧倒的な巨躯の姿のモンスターだ」

「えっ……いや、まさかな……こんな山奥にいる訳ない」

 

 キッドは思い当たる節があるのか、ブツブツと呟く。ジャックポット保安官はジャンヌに尋ねる。

 

「バジリスクやコカトリスの新種のモンスターか?」

「私も当時はそう思った。だが、知性がもの凄く高いのが不気味過ぎる。初めて出会った信者を襲わなかった。よくよく考えたらそのモンスターは何者かによって手懐けられており、持ち場を脱走した人だけを襲わせていたのではないかと……」

 

 ジャンヌがそういうと、ジャックポット保安官が開き直る様に言う。

 

「まぁ、考えたって仕方ない。ダンジョンに行ってみれば分かる事さ」

「た、確かにそうですね……」

「ほ、保安官という奴らはそんな軽い気持ちでダンジョンに行くのか?」

 

 ジャンヌが顔を引き攣らせながら尋ねるとジャックポット保安官は何食わぬ顔で、

 

「だって悩んでたって仕方ないでしょ?何が起こるか分かんないし?」

「そ、そこは普通対象出来る様に万全な状態で向かうものじゃないのか」

「そりゃするよ。するけど、キリがないよね?」

「ま、まあそうだが……」

「あのね、初対面で申し訳ないけど君、頭が硬いんだよ!もっとこうフランクに考えればいいじゃん!」

「ジャックポット保安官、それは流石に……」

 

 キッドがフォローしようとするが、ジャックポット保安官は止まらなかった。

 

「いいや、言わせてもらうね。せっかく綺麗なんだからもっと愛嬌良くすればいいんだよ!別に可愛い騎士がいたっていいじゃない!ねぇ!」

「お前は一体なんの話をしてるんだ!なんでお前の事を言ってたのに私が文句を言われなければいけないんだ!?」

 

 馬に跨りながら喧嘩をする2人。キッドが宥めている間に第2ダンジョンに到着した。第2ダンジョンは古代遺跡タイプのダンジョンで地下はどこまで続いているか不明だという。ジャンヌの情報ではスカイフィッシュのダンジョンは全て地下で繋がっており、地下には古代都市があるという噂が広がったらしい。3人は馬から降りて物陰に隠れながらダンジョンの入り口を見てみると、小型のモンスターが2〜3匹彷徨いていた。

 

「見張りがいないな。撤収したんじゃないのか?」

「いや、あえてモンスターを放っておいたんだ。そうしとけば冒険者だって寄ってくるし、怪しまれないからな」

「なるほど、【ジャッカロープ】なら尚更怪しまれないですね」

 

ジャッカロープとは、一本角の生えたウサギの様な姿で赤目白毛が一般的なモンスター。

 

 キッドはレバーアクションライフルに弾を装填すると、ジャックポット保安官に尋ねる。

 

「あの、ジャンヌさんには武器を持たせなくて良いんですか?モンスターが出て来たら面倒ですよ?」

「そうだなぁ……けど、いつ裏切るか分からないからねぇ」

 

 ジャックポット保安官は煮え切らない表情で言う。ジャンヌも分かっているのか、手を突っぱねた。

 

「それはそうだろう。仕方ない事だ。こっちに隠し通路があるから着いてこい」

 

 ジャンヌの後ろをついて行くと、ジャッカロープに見つからずに第2ダンジョンの入口に辿り着いた。ランプを片手に持つジャンヌの案内でダンジョンを降って行くと

異臭が鼻につき始める。

 

「なんだこの汚物と青草を燃やした様な臭いは……」

「凄い臭いますね……」

「そこの岩から下を覗いてみろ」

 

 鼻を覆い隠しながらジャックポット保安官とキッドは光を放つ魔石で明るく照らされている下を覗いてみると、鉄鍋でグツグツと何かを煮つめている信者や牢屋に囚われた人達が見えた。

 

「アレを……アレを分けてください……」

「お願いします……目玉でも歯でもやるから……」

「うるさいっ!黙ってろ!」

 

 信者がガンと牢を蹴るが、うめき声は止まらない。ジャンヌは悔しさに耐えるように唇を噛む。

 

「あれが魔薬草の精製所だ。牢屋には知らずにここへやって来た冒険者や町の住民達。そして鍋で精製してるのが1番効果が強い魔薬草だ」

「姿を変えてるってそう言う事か……アレはどうやって使わせるんだ?」

「下に行けば全て揃っている。まずはあそこを制圧しなければ」

「分かった。キッド、俺はここで援護するから行ってくれ」

「分かりました。ジャンヌさん、行きましょう」

 

 ジャックポット保安官がゴーレムライフルに弾を装填している間にキッドとジャンヌは第2層まで降りて行く。魔石の光を頼りに階段を降りると先程覗いた岩場の上には鋭く尖った鍾乳洞があちこちに垂れ下がっているのが見えた。石像に身を隠しながらゆっくりと近付くと、鉄鍋を管理しているドワーフ族の信者達と思われる5人が近くに見えた。

 

《こっちは準備出来たぞ。キッド、後はお前のタイミングに任せる》

 

 魔線機からジャックポット保安官の指示が入って来た。キッドはレバーアクションライフルを構えながら、

 

「保安官だ!武器を捨てろ!」

「侵入者だ!殺せ!」

 

 信者達がそれぞれ様々な武器を手に取り、襲いかかって来た。キッドは照準を合わせて手早く引き金を引き始める。バタバタと倒れると見事な早撃ちに驚いていた。

 

「凄いな、あっという間に4人を無力化するなんて」

「あと1人!」

「死ねぇ!侵入者!」

 

 石の階段から最後の1人が飛び上がりながら斧を振り下ろそうとしていた時。ジャックポット保安官の放った弾丸が肩に命中した。

 

「大当たり……それで最後か?」

 

 ジャックポット保安官が排莢しながら魔線機で言い放つ。

 

《はい、この階層は制圧しました。オールクリアです!》

 

「分かった。俺もそっちに行く」

 

 ジャックポット保安官は魔線機を仕舞い、ゴーレムライフルを肩で背負いながらキッド達の元へと向かった。合流すると倒した信者達の止血と拘束を終わらせたキッドとジャンヌの目の前には様々な物が机に置かれていた。キッドはビンに詰められた黒い物体を手に取る。

 

「これがあの魔薬草を加工した物ですか?」

「ああ、第2ダンジョンでは魔薬草の赤い実から採取される乳液を乾燥させたものだ。あとは丸く石の様に固めてこの道具で吸引する」

 

 ジャンヌは筒状の道具をキッドとジャックポット保安官に見せる。それで効果は?

 

「ああなる」

 

 ジャンヌの指の先には牢屋が指されており、牢屋の中には酷く痩せこけてまるでグールの様な見た目をしていた。キッドとジャックポット保安官が近付いて確認すると、歯がボロボロなエルフ族の男性や体毛が全て抜け落ちたカワウソ系獣人族の男。他にも様々な種族の人質がいるが全員がアンデッドの様な見た目をしていた。キッドも思わず目を逸らす。

 

「目を逸らすな、しっかり記憶しとけ」

「はっ、はい……でも、奥にいる人間族の男性はふくよかな体型をしてますよ?まだ助かるのでは?」

「ん?どいつだ?」

 

 キッドの言葉にジャンヌも牢屋を覗く。キッドが指した人物を見た途端に苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

「あれは……いや、あの方は……スカイフィッシュ国の国王だ」

「……えっ?」

「まさか……国王まで……」

「国王は拘束されて無理矢理吸引させられて今じゃこの通りだ。もう人としては生きていけない……私にもっと力があれば……!!」

 

 ジャンヌは拳をギュッと握ると、拳からは血が流れ始める。その時、階層の奥から不気味なズシンズシンと歩く音が響き渡った。

 

「なっ、なんだ!?」

「ちっ……運が悪かったな……ヤツが来た」

「不味いな、ジャンヌちゃんはどこかに隠れててくれ」

 

 キッドとジャックポット保安官がレバーアクションライフルを構えると暗闇からは、ジャンヌが言っていた特徴を持つ人間族の頭部、蜥蜴人族の様な硬質な鱗、鳥人族の様な羽毛、獣人族の様な大きい尻尾を持つ圧倒的な巨躯の姿をしたモンスターが現れた。姿を目の当たりにしたキッドは顔を青ざめさせた。

 

「こ、こいつもこんな所にいる訳ない!コイツは【スフィンクス】です!気を付けて!」

 

スフィンクスとは、人間族の顔、獣人族の尻尾、蜥蜴人族の鱗、鳥人族の翼と羽毛を持つ。グリフォン同様に別大陸のモンスターである。

 

「ギュアアアアアア!!」

 

 スフィンクスは耳を塞ぎたくなる程の甲高い咆哮を上げた。

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