俺の町は今日も今日とて平和です!   作:ボトルキャプテン

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45 グリム・リーパー

ジャンゴ保安官達が第5ダンジョンでゴブリン・イェーガーと激しい戦闘を繰り広げている頃、第3ダンジョンに向かったジェシカ保安官、リディ保安官、ブラッド保安官がダンジョンに到着し、階段を降りていた。ジェシカ保安官は鼻が利くのか、鼻を抑えながら呟く。

 

「ちょっとツンとする匂いがするな」

「もう嗅ぎつけたの?貴女の嗅覚凄いわね」

「まぁな、ブラッド旦那。あんたはどうだ?」

 

 ジェシカ保安官の後ろを歩いていたブラッド保安官にジェシカ保安官が尋ねる。

 

「ポーションや白灯油とは違う匂いがほんの微かに」

「だろ?姿を変えるって言ってたけどコレがそうなんじゃねぇか?」

「有り得るわね、一体どんな形をしてるのかしら?」

 

 そんな話しをしながら階段を降りて行くと、ダンジョンの第3層まで降りて行くと凄まじい冷気に包まれていた。ジェシカ保安官達の息が白くなり始める。

 

「なんでこんなに冷えてるんだ?」

「あっ、あっ、貴女達平気なの?凄い寒さよ!?」

 

 リディ保安官は平然としているブラッド保安官とジェシカ保安官を睨みながら身体を震わせる。

 

「あー?あたしは寒い所に慣れてるからな。ブラッド旦那はヴァンパイアだし平気なんだよ」

「すこし冷えるなら、私のコートを貸しましょうか?」

 

 ブラッド保安官が震えているリディ保安官の肩に黒いコートをかける。

 

「す、すいません助かります。一体ここでどんな作業をしてるのよ」

「そこから覗けば良いだろ」

 

 ジェシカ保安官が遺跡の外壁に小さい亀裂に指を指すと、リディ保安官はその亀裂から顔を覗かせると、古代遺跡の祭壇の所に樽に入った液体を氷魔法で冷却作業をしている魔法使いの信者が2人見えた。魔法使いの信者はガラスのように固まった液体を取り出すと、もう1人の信者がハンマーでコツコツと叩きガラスの破片のようにした。

 

「あの液体はなんなんだ?凍らせた液体をガラスの様に細かく砕いているけど」

「恐らくあれが魔薬草だったものなんだろ。液体だから多分、植物生体液とかじゃねぇか?」

「樹液……もし、そうだとしたら物凄い数が必要なはず」

「とにかく、下に進もう」

 

 ゆっくりと降りて行くと祭壇に続く階段に辿り着いた。3人は壁に身を潜めながら辺りを見渡すと、古びた人骨があちこちに散乱していた。リディ保安官がそれに気付かず古びたあばら骨をバキッと踏み付けてしまった。響いた音が遺跡中に木霊する。ジェシカ保安官は「なにやってんだ!」と言わんばかりにリディ保安官を睨み付ける。ブラッド保安官は宥めるようにジェスチャーをする。リディ保安官もゆっくりと足を戻すと、祭壇の所にいた信者達が騒ぎ出した。

 

「なんだ今の音?」

「さぁな、ちょっと見てくる」

「ああ、頼んだ」

 

 信者は顔と口元を布で覆いながら階段を降りて来た。咄嗟にジェシカ保安官は咄嗟に隠れた。ホルスターからピースメーカーを抜いて撃鉄を起こす。だが、ブラッド保安官が小声で止めに入る。

 

「ここで銃声を響かせたら不味い」

「んじゃ……どうすんだ」

「こうするのさ」

 

 ブラッド保安官はジェシカ保安官を退かして自ら先頭に立った。そして、真正面に降りて来た信者の首を抱きかかえて締め始めた。驚いた信者はもがきながら抵抗するが、ブラッド保安官はギリギリと絞め続ける。すると、信者は失神したのか抵抗しなくなった。ブラッド保安官は力を緩めると、信者は倒れ込みそのままリディ保安官により手錠をかけられた。

 

「音もなく近付くなんて、流石はヴァンパイア」

「お褒めに預かり光栄ですな」

「残りは上にいるやつだけ見てぇだな。この階層は2人だけなのか?」

「そうみたいだ。今度は私がやろう」

 

 リディ保安官がそう言うと、足音を立てずにそろりそろりと階段を上がって行く。ブラッド保安官とジェシカ保安官が見守る中、祭壇まで登り終えると、リディ保安官は近くにあった角材を手に取った。魔法の詠唱に夢中の信者にゆっくりと近付こうとしたその時、信者がリディ保安官に振り向いた。

 

「遅いな、一体何をして……」

「────っ!?」

 

 リディ保安官と信者は目を合わせてしまった。思わぬ展開にリディ保安官は角材を振りぬこうとしたが、躱されてしまった。

 

「何者だ!?」

「誰が教えるか!」

 

 ジェシカ保安官がしびれを切らして信者に飛びかかり、ピースメーカーを信者の額に突き付ける。

 

「魔薬草の場所をさっさと言え。じゃなきゃ鉛玉ぶち込むぞ!」

「わっ分かった!話す!向こうに凍らせる前の魔薬草の植物生体液がある」

「案内しろ」

 

 リディ保安官は信者の肩を抑えながら案内を始めた。着いた先は祭壇の近くにある石棺に辿り着いた。

 

「あの石棺の中に魔薬草が入ってる。ここでは茎や根から植物生体液を絞り出して凍らせて結晶化させるんだ。結晶化したものは熱では溶けないが水を一滴垂らすとまた液体に戻るんだ」

「なるほど、ならこれは【結晶型魔薬草】と呼んだ方が良さそうだな。石棺の中を確認して見よう」

「そうだな。リディ、手伝ってくれ」

「分かりました」

 

 3人は石棺に向かって行き、石の蓋を開けようと押し始める。リディ保安官が離れた隙に信者が体をくねらせて腰から角笛の様な物を抜き取り地面に落とした。そして、倒れ込みながら角笛を咥えた。

 

「侵入者に天罰を……プォォー!プォォー!」

 

 魔薬草の茎と結晶型魔薬草を証拠品として回収したブラッド保安官達が振り返った時には角笛の音色がダンジョン内に響き渡っていた。

 

「てめぇ!何をした!?」

「角笛を隠し持ってたなんて、助けを呼んだな!?」

 

 ジェシカ保安官とリディ保安官がピースメーカーを信者に向けると、

 

「万が一の為に用意していたのだ、ここから生きては出さん!メデューサ様の裁きを受けるがいいっ!」

 

 ブラッド保安官達は辺り周辺に銃口を向けると、カチャカチャと何かが動き始める音が聞こえ始めた。ブラッド保安官が音の方向に目を向けると、エルフ族の骸骨が突然立ち上がり始めた。

 

「しまった、奴らか……」

「あっ、あれはスケルトン!?」

 

スケルトンとは、様々な種族の白骨化したアンデッドモンスターである。一体だけなら問題ないが稀に群れで彷徨っている事もある。

 

 ジェシカ保安官が瞬時にスケルトンに銃口を向けた瞬間、とてつもない息が白くなる程の冷気が漂い始めた。獣人族や魚人族のスケルトンがショートソードやハンドアックスを片手にぞろぞろと現れた。

 

「囲まれましたよ!?どうするんです!?」

「全員潰しちまえばいいだけだろ?」

「いや、スケルトンもゾンビや私の様なヴァンパイアと同じアンデッド。ただの鉄の弾丸では倒せない」

「じゃあどうすんだよ!?」

 

 ジェシカ保安官が焦りを見せながら尋ねると、ブラッド保安官がスケルトンの大群の更に後ろに黒く傷んだローブを被り、大鎌を持ったスケルトンに指を差した。

 

「あの【グリム・リーパー】を倒せばいい」

 

グリム・リーパー。大鎌を持ち、黒を基調にした傷んだローブを身にまとった人間族の白骨したモンスター。スケルトンを束ねるモンスターで大鎌で斬られた者は魂を吸い取られると言われている。

 

「アイツか、めんどくせぇ奴が出てきたな」

 

 ピースメーカーを構えながらジェシカ保安官が吐き捨てる。すると、リディ保安官が身体をブルブル震わせながら座り込んでしまった。リディ保安官の顔や手には霜が付いていた。

 

「おい、どうした!?」

「凄い寒気が……凍りそうです……」

「不味い、グリム・リーパーの冷気にやられた様だ。ジェシカ、ここは私が引き受けるから証拠品と拘束した2人を連れて先に戻ってくれ」

 

 ブラッド保安官の言葉にジェシカ保安官は顔を引き攣らせる。

 

「構わねぇけど、いくら旦那でも1人は厳しくねぇか……?」

「なぁに、君達は連戦続きで疲労も溜まっているだろう?私はまだ働いてないから大丈夫さ」

 

 ブラッド保安官がそう言うと、ジェシカ保安官はリディ保安官に肩を貸しながら鼻で笑う。

 

「なら、お言葉に甘えて行かせて貰うぜ。あと、恐らく近くに実験に使われている人質とかがいるかも知れねえから救出も忘れずに頼むぜ」

「ああ、任せてくれ」

「足手まといですいません……」

「なぁに、お安い御用さ」

 

 ブラッド保安官はそう言うと、リディ保安官とジェシカ保安官は結晶型魔薬草を持ってスケルトンを倒しながら上へ戻って行った。ブラッド保安官はピースメーカーで追いかけたスケルトンの頭を撃ち落とした。

 

「お嬢さん達はお色直しに行ったんだ、邪魔しないでくれ。君達はこの私がお相手致します」

 

 ブラッド保安官は地面に魔法陣を作り出すと、魔法陣の中から見慣れない銃と弾帯が現れた。

 

「まだまだ試作段階だが試すのに丁度いい。この【スライド式散弾銃】の試し撃ちをさせて頂くよ」

 

スライド式散弾銃とは、レバーアクション型散弾銃の後に秘密裏に開発が進められていた散弾銃。レバーアクション型とは違ってグリップを前後に往復させることによって使用済みの弾薬を排出し、新しい弾薬を薬室に装填するしくみとなっている。

 

 ブラッド保安官は弾帯をクロス状に肩にかけて弾薬を4つ手に取り、手早く装填し、カシャンとグリップをスライドさせた。

 

「さぁ、死の舞踏を始めよう」

 

 グリム・リーパーがスケルトンに「あいつを殺せ」と言う様に大鎌を向けると、スケルトン達が襲いかかる。ブラッド保安官は攻撃を躱しながら至近距離で頭蓋骨に向けて発砲する。頭蓋骨は銀の散弾で粉々に吹き飛ばされると、残りの体は浄化される様に灰になった。次々にスケルトンは斬りかかって来るが、ブラッド保安官はスライドさせて攻撃を躱し続ける。

 

「すごい数だな、まるで兵隊だ」

 

 スケルトンの足に撃って動きを封じて退路を作り、囲まれない様に動き回る。スライド式散弾銃は5発しか入らない為、逐一残弾を確認しなければならなかった。ブラッド保安官は弾帯から3つ弾を抜き取り、込める。そしてグリップをスライドさせて狙いを定めて撃った。1体、2体、3体と次々と散弾で吹き飛ばすと、遂にグリム・リーパーだけになった。

 

「さぁ、残りは君だけだ」

 

 ブラッド保安官がスライド式散弾銃を突きつけると、グリム・リーパーはふわふわと宙に浮き始める。ブラッド保安官が発砲すると、煙のようになり姿を消した。

 

「実体が無いのか……」

 

 辺りを見渡すと、グリム・リーパーは音もなくブラッド保安官の背後に現れて大鎌を振りかざした。殺気を感じ取ったブラッド保安官は咄嗟に躱す。反撃したが、散弾は外壁にめり込んだ後だった。

 

「攻撃後もダメか……ということは……」

 

 何かを思い付いたのか、ブラッド保安官は弾帯から4つ抜き取り装填して何故か銃を下ろした。そしてグリム・リーパーが背後に現れて大鎌を振り下ろした。大鎌がブラッド保安官の肩に突き刺さると、

 

「ようやく、捕まえたよ」

 

 ブラッド保安官は大鎌を左手で掴み、逃げられないようにして右手でスライド式散弾銃をグリム・リーパーの顔に突き付けて、

 

ドォン!

 

 グリム・リーパーは頭蓋骨を吹き飛ばさると、苦しむ様に灰になっていった。ブラッド保安官は大鎌を抜くと、血が着いてなかった。

 

「私もアンデッドだ。普通の武器は効かないんだよ」

 

 そう吐き捨てながらその場を去り、遺跡を探索すると廃人とかした人質達が数名と使い捨てられた注射器を見つけた。ブラッド保安官はボロきれを集めて体にかけてあげてダンジョンを後にした。出口にはジェシカ保安官とリディ保安官が今か今かと待っていると、人質を連れたブラッド保安官が現れた。

 

「ジェシカ保安官、戻ってきました!」

「旦那!無事だったのか!」

 

 ジェシカ保安官とリディ保安官が駆け寄ると、肩の傷を見つける。

 

「怪我してるじゃねぇか!」

「今手当てを」

「大丈夫、今はまず人質を最優先にしてくれ。この人達は結晶型魔薬草を体内に注入されているから治療が必要だ」

「わかった、リディは幌馬車を用意してくれ」

「分かりました」

 

 リディ保安官は走って信者達が使っていた幌馬車を出口に近付けると、ジェシカ保安官は人質と拘束した信者2人を押し込んだ。手当てを受けたブラッド保安官はローブをまとい、馬に跨った。

 

「さぁ、帰ろう」

 

 ブラッド保安官達は第3ダンジョンを後にした。

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