俺の町は今日も今日とて平和です!   作:ボトルキャプテン

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54 ピースメーカーが壊れた!

キッドとエマ保安官は装備保管室で装備を受け取り、馬房へ向かった。馬房に辿り着くとそこには、馬ではなく小型獣脚モンスターのライダーラプトルが大人しく待機していた。エマ保安官が灰色のライダーラプトルを連れて来た。

 

「キッド君はライダーラプトルに乗るのは初めて?」

「言われてみれば機会が無かったですね。難しいですか?」

 

 キッドが恐る恐るライダーラプトルに触れると、見た目とは裏腹にツルツルとした肌触りをしていたのに驚いた。

 

「わぁー、初めて触りましたけど……牢竜車のラプトルとは違いますね」

「護衛専用だからね。けどライダーラプトルは逆にスピード重視なの」

「なるほど勉強になるなぁ」

 

 キッドはメモ帳を開いて見て聞いた事を記して行く。エマ保安官はそれが気に入ったのか、ニコリと笑った。

 

「キッド君は勉強熱心だね。この際どう?ウチらの所に来ない?」

 

 そう言われた瞬間、キッドの手が止まった。

 

「……えっ?」

「ほら、コルト地区の保安官事務所は姉さんも含めて優秀な人多いでしょ?こっちに来れば多少なりともバッジアップするの早いと思うけど?」

「そ、それは……」

 

実際、キッドの周りには百発百中のジャックポット、千両役者のロッキー

、温厚篤実のオースティン、地獄の番犬ジェシカ、厳罰主義のジャンゴ、喧嘩番長のアンナというくせ者強者揃い。成果を上げるのには苦労するのは明白だ。

 

 ならば別の保安官事務所へ行って成果を上げれば白金バッジも夢じゃないと思い、キッドは思わず悩んでしまった。

 

「まぁ、直ぐにとは言わないから考えといて」

「……はい」

「それじゃ、ラプトルに乗って」

 

 キッドはラプトルに跨った途端にエマ保安官の魔線機から通信が入った。

 

《ワルサー漁港に海賊が入港して来たとの通報。エマ保安官、向かえますか?》

 

「早速初仕事ね、こちらエマ保安官。キッド保安官と共に向かうわ」

 

 魔線機をしまってキッドに顔を向ける。

 

「ワルサー地区の細かい場所とかダンジョンの場所は後で教えてあげるから、今は兎に角海賊が最優先!」

「了解しました。海賊というと、メガロ海賊団ですか?」

 

 キッドがライダーラプトルを走らせながらエマ保安官に尋ねると、エマ保安官は驚いた顔をする。

 

「へぇー!ちゃんと調べてあるんだ!偉いね!」

「先輩方にマフィアとギャングの事は叩き込まれましたから」

「それでも凄いよ!でも、今回も恐らくメガロの手下だろうけど、油断しない様にね」

「了解しました」

 

 数分後。漁港に辿り着くと、港にキャラック船が近付いて来ていた。帆にはメガロ海賊団のシンボルである鮫の骸骨が描かれていた。キッドとエマ保安官が到着すると、キャラック船が停泊するとエマ保安官はライダーラプトルの鞍からレバーアクションライフルを取り出し、装填を始める。キャラック船からはオニヒトデ系、オニダルマオコゼ系、ヒョウモンダコ系という禍々しい姿をした魚人族が甲板から現れた。それぞれ腰にサーベルを携帯している。

 

「止まりなさい。貴方達、海賊は港に停泊出来ないって知ってるわよね?今すぐ立ち去りなさい。さもなければ発砲するわよ?」

 

 エマ保安官が見上げながら凄むと、海賊達は船上からヘラヘラと笑い出した。

 

「可愛らしい保安官さんよ、俺達は悪さをする訳じゃない。ビジネスをする為に来たのさ」

「そのビジネスすら怪しいものね。立ち去らないというなら船を調べるわよ?良いの?」

 

 エマ保安官がレバーアクションライフルを肩で担ぎながら睨みを利かせると、ヒョウモンダコ系魚人族の男が腰に差していたサーベルを抜いた。

 

「たった2人で俺達魚人とやり合うってのか?」

「あんた達なんて私達だけで充分よ。もう一度言うわよ、ここから立ち去りなさい」

 

 エマ保安官が最終警告すると、魚人族達は甲板から飛び降りて来た。相手はキッドとエマ保安官が見上げる程の体格の持ち主だった。ヒョウモンダコ系魚人族の男がサーベルを振り上げながら、

 

「嫌だと言ったらどうする?」

「有無言わずに逮捕よ」

「だったら今すぐやって見ろ!この糞保安官がっ!」

 

 ヒョウモンダコ系魚人族の男がエマ保安官にサーベルを振り下ろした瞬間。

 

ドン!

 

 1発の銃声が鳴り響く。ヒョウモンダコ系魚人族の男のサーベルの剣先が折れていた。キッドのピースメーカーの銃口から煙が出ていた。言わずと知れた事だが、キッドの見事な早撃ちでサーベルをへし折ったのだ。

 

「動かないで下さい。次は本気で狙いますよ?」

「この野郎っ!」

 

 オニヒトデ系魚人族の男が体を丸めて突進して来た。キッドは咄嗟にピースメーカーを盾にした。数メートル吹き飛ばされたが、致命傷にはならなかった。エマ保安官は声を上げる。

 

「キッド君大丈夫!?」

「げほっげほっ、大丈夫です」

「へっ運のいい野郎だ!俺の棘の毒を食らってねぇとはな!」

 

 キッドは木箱の残骸の山から立ち上がりながらピースメーカーを構えた。

 

「このっ!」

 

ガシッ!

 

異変が起きた。キッドのピースメーカーから異音が響く。キッドは何度も撃鉄を起こして撃とうとするが、ガシュガシュと異音を立てるだけで発砲する事が出来なかった。

 

「キッド君どうしたの!?」

「くそっ、銃が……!!」

「さっきの衝撃で壊れたのね、レバーアクションライフルを使って!」

「分かりました!」

 

 キッドがライダーラプトルの元へ向かおうとしたその時。

 

「おーっと、行かせねぇよ?」

 

 オニダルマオコゼ系魚人族の男が立ちはだかる。キッドはピースメーカーをホルスターにしまって木片を拾って武器にする。ヒョウモンダコ系魚人族の男と膠着状態だったエマ保安官はヒョウモンダコ系魚人族の男の太ももに2発発砲した。

 

「いでぇぇっ!!」

 

 一瞬の隙を突き、レバーアクションライフルをキッドに投げ渡した。オニダルマオコゼ系魚人族の男が邪魔しようとしたが、キッドが先に取り、オニダルマオコゼ系魚人族の男の眉間に銃口を突き付ける。

 

「動くな、両手を頭に乗せて跪け」

「ちっ……」

「この野郎っ!調子に乗るんじゃねぇっ!」

 

 オニヒトデ系魚人族の男が再び体を丸めて突進して来た。だが、キッドは同じ轍は踏まないように、躊躇なく5発発砲する。オニヒトデ系魚人族の男はその場に倒れた。オニダルマオコゼ系魚人の男は勝ち目がなくなったのを悟ったのか、急に大人しくなって両手を頭に乗せて跪く。

 

「貴方を公務執行妨害で逮捕する。残念ね、貴方のせいで船長に出頭命令が出るわね」

 

ウェスタンでは【海賊団対策法】という法律もあり、「暴力的要求行為」など計27の行為が禁止されている。手下が犯罪行為を行うと、トップは責任を及ぼすため、使用者責任による民事の損害賠償請求や、船長の共犯認定による摘発が可能になる。

 

「こちらエマ保安官。海賊を1人を射殺、2人を逮捕したので牢竜車を要請します」

 

《了解、直ちに向かわせます》

 

 数分後。海賊達が応援に来た保安官達に連行されたのを確認したエマ保安官は、ピースメーカーを見つめるキッドに声を掛ける。

 

「やっぱり故障した?」

「はい、参ったなぁ……」

「ちょっと見せてみて」

 

 酷く落ち込むキッド。エマ保安官は軽くピースメーカーを分解して見ると、細かい破片がポロッと落ちて来た。

 

「内部の部品が折れてるわね……これは修理に出さないと」

「そうですねぇ、近くに武器屋さんありますかね?」

 

 キッドがエマ保安官に尋ねると、無情な答えが帰って来た。

 

「キッド君、保安官の銃は武器屋でも帰るけど修理は無理なのよ」

「……えっ!?」

「知らなかった?保安官の銃火器は武器屋で弾薬や銃を買えるけど、修理となると、また別の店に頼まなきゃいけないのよ」

 

 エマ保安官の言葉にキッドは忘れてたかのような顔をする。

 

「ど、どうしましょう!?」

「答えは簡単よ、自分のガンスミスを見つける!」

 

 エマ保安官の言葉にキッドは瞳孔を開いて口を開け眉をしかめた。

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