銀の弾丸は弾に魔力が込められていてアンデッドモンスターに唯一対抗出来る弾丸だ。キッドも箱から弾薬を取り出してピースメーカーとレバーアクションライフルに装填した。そして、グレン連邦保安官が事務所に戻ると日が落ちて街の街灯に火が灯され始めると、勇者ライトニングは街の広場に向かい、転がっていた樽に上がって野次馬の冒険者達を集めて声を掛けた。
「みんな、聞いてくれ!噂になってる殺人犯がもうすぐやって来る!冒険者の皆も協力して欲しいっ!」
冒険者達はざわめきながら勇者ライトニングに尋ねた。
「勇者ライトニング。そいつは一体何者だったたんだ?」
「犯人はヴァンパイアだ。かつて魔王軍の大幹部の1人のヴァンパイア伯爵は僕の仲間が倒した。恐らく伯爵の妻達の仕業だろう」
野次馬の冒険者達は「ヴァンパイアの花嫁だって!?」「嘘だろ!?」と言い合いながら騒ぎ出す。その時、夜空から高笑いするかの様な声が響き渡った。冒険者達が静まり返ると、キッド、勇者ライトニング、ロッキー保安官がレバーアクションライフルと剣を構える。キッドが夜空にレバーアクションライフルを向けると、野次馬の冒険者を襲おうと急降下してきたヴァンパイア達がコウモリの様な姿に変えた女性3人だった。背中の大きな翼に醜悪な顔に鋭い爪が確認出来た。キッドが発砲すると、ヴァンパイア達は弾丸や冒険者達の矢や魔法を躱してそれぞれ散らばりながら飛び回り始めた。
「ヴァンパイアが出たぞ!武器を取れ!女子供は建物の中へ!」
勇者ライトニングが大声で叫ぶ。そんな目立つ行動が仇となり、1体のヴァンパイアが方向転換して襲いかかって来た。勇者ライトニングは聖剣アロンダイトで迎え撃つ形で剣を横薙ぎに振るうと、ヴァンパイアの頬に傷が付いた。壁に張り付いたヴァンパイアは勇者ライトニングを睨み付けて、
「久しぶりね、勇者ライトニング。何年振りかしら?」
「6年と8ヶ月ってところだな。ソフィ……。こんな荒野の街にまで何しに来た?」
嫌味な言葉で返すと、ヴァンパイアは爪を更に伸ばし、勢い良く飛び出しながら叫ぶ。
「それは……あんたを殺すためさっ!」
ヴァンパイアと勇者ライトニングが爪と剣で鍔迫り合いを始める。キッドは勇者ライトニングの援護をする為に駆け出すと、屋根の上を飛んでいる2体のヴァンパイアが目に入った。1体のヴァンパイアが振り返りながら、
「アンジェラ、あの人間を始末してくれる?私はソフィの元へ行くわ」
「任せといて!ガリエラ!」
勇者ライトニングに更にガリエラが向かって行く。キッドはレバーアクションライフルを連射して勇者ライトニングに向かって行ったガリエラの気を逸らした。
「坊やに構ってる暇は無いんだけど?」
ガリエラがキッドを睨み付けると、銃声が鳴り響いたと同時にガリエラの頬に傷が出来た。ガリエラは指で流れ出る黒い血を確認しながら横を見た。
「なら俺ならどうかな?お嬢さん?」
ガリエラの視線の先には、ロッキー保安官がレバーアクションライフルで狙いを定めていた。癪に触ったのか、ガリエラはそのままロッキー保安官がいた建物の屋根を突き破って中に入る。ロッキー保安官は天井を警戒しながら部屋を出た。キッドはアンジェラが空中滑空しながら迫って来たが、咄嗟に飛び込んで避けた。ガリエラは壁を突き抜けて暗闇に消えた為姿が見えない上に別の冒険者が犠牲となってしまった。
「ヴァンパイアはどこだ!?どこいった!?」
冒険者達が武器を構えながらガリエラを探す。すると、ガリエラが口から鮮血を垂らしながら側壁の穴の奥から姿を現した。
「私ならここよ?さぁ、次は誰が相手なのかしら?」
「僕が相手だ……」
キッドはレバーアクションライフルを投げ捨て早撃ちの構えに入る。ガリエラも腰を落としながら身構えた。先に動いたのはガリエラで、キッドの顔にあと数センチという距離まで迫って来たが、キッドはその一瞬でピースメーカーを抜いて一気に6発撃ち込んだ。ガリエラの胸には6つの風穴が空いていた。
「そ、そんな……この私が……この私がっ!?」
「ふぅ……ギリギリだった……」
ガリエラはそう言いながら灰となって行った。その頃、勇者ライトニングはソフィと火花を散らしながら剣と爪をぶつかり合わせていた。勇者ライトニングの華麗な剣さばきでソフィのバランスを崩すと、勇者ライトニングはソフィを縦一直線に両断した。
「かはっ……夫を殺した恨み……が……」
「地獄で再会出来るといいな。安らかに眠れ、ソフィ」
チンと剣を鞘に入れるとソフィの体は灰となって消えて行った。そして、最後の1体のアンジェラの相手をしていたロッキー保安官は建物中を探していると、すぐ目の前に人間族の女の様な姿に化けていたアンジェラがコウモリの様に梁からぶら下がっていた。
「こんばんは。貴方の顔に身を覚えがないけど、どなたかしら?」
と、アンジェラはロッキーに尋ねる。ロッキー保安官は平然とした態度でバラを渡しながら名乗った。
「これは失礼。私はロッキー保安官と言います」
貴族の様な挨拶をすると、アンジェラは梁から降りて近付く。ロッキー保安官は銃を構えながら尋ねた。
「貴女達の動機はなんだ?なぜ多くの冒険者を殺した?」
ロッキー保安官がそう尋ねると、アンジェラは妖艶な顔をしながら答えた。
「何故?まぁ、1つは私達の旦那様の敵討ち。もう1つは生きる為よ?我々ヴァンパイアは生き血を吸わないと生きて行けないの」
「だったらクエストで依頼でもしたら良かったんじゃないか?献血でも募ればこんな事にならなかった筈だ」
「なら何故貴方達冒険者や保安官は肉や魚を食べるの?貴方達だってモンスターの肉を食べて生きているのでしょ?それと何が違うって言うの?」
アンジェラがそう言うと痛い所を突かれたかの様な顔をする。だが、再び言い返す。
「もう戦争は終わったんだ。そんな理屈はもう通用しないんだよ」
「お黙りっ!」
「ぐはっ!」
胸ぐらを掴み華奢な腕なのにも関わらず、ロッキー保安官を片腕で持ち上げた。
「エルフはヴァンパイアより長生きって聞くわ。歳は……1000は越えてるわね?1000年物の血はどんな味がするのかしら?」
アンジェラは牙をむき出しにしてロッキー保安官の首筋に噛み付こうとした。だが、ロッキー保安官は片手でホルスターから銃を抜き、アンジェラの口の中に突っ込み発砲した。それによりアンジェラの後頭部は吹き飛び黒い血が飛び散った。解放されたロッキー保安官は咳き込みながら灰になるアンジェラに言葉をかけた。
「別の道を進んでいたなら、食事に誘えたんだけどな」
ロッキー保安官はバラをアンジェラの灰の上に投げ捨て、キッドと勇者ライトニングの元へ向かう為にドアを開けると、周辺は悲惨な状態だった。数件の家屋は破壊され、冒険者も数名死亡し、怪我人も出ていた。キッドと勇者ライトニングは応急処置をしていてロッキー保安官もそこへ合流し、ロッキー保安官に気付いたキッドは声を掛ける。
「良かった。怪我は?それと、3体目のヴァンパイアは?」
「いや、怪我はない。ヴァンパイアはなんとか倒した。そっちは?」
「僕が1体、勇者ライトニングが1体討伐しました。【治療師】の要請、グレン連邦保安官にも報告済です」
治療師とは、市民や冒険者が治療を受けられ、病院に搬送してくれる特別職である。
報告を聞いたロッキー保安官は安心したかのように頷いた。
「上出来だ。報告書を書いて事務所に戻ろう」
「はい、分かりました」
「勇者ライトニングもバウンティクエストの報酬もあるので御一緒に」
「了解した」
「それと……キッド」
ロッキー保安官が初めてその場を去ろうとしたキッドの名前を呼んだ。キッドはピクリと反応して振り返る。
「初めて名前を呼んでくれましたね。どうかしたんですか?」
「いや、お前は他の冒険者達の様な戦闘経験がないのにも関わらず上位モンスターを討伐した。まだまだ新人だけど、今日は良くやったな。グレン連邦保安官に高評価の報告をしておくよ」
「ホントですか!?ありがとうございます!」
キッド達はその後、駆け付けた牧師達に怪我人を引き継ぎ、事務所に戻って行った。