俺の町は今日も今日とて平和です!   作:ボトルキャプテン

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08 ベテランのドワーフ保安官

 ヴァンパイアの事件から翌日。早々更衣室で制服に着替えていると、グレン連邦保安官に声を掛けられた。

 

「おはよう」

「おはようございます」

「ロッキーから聞いた。ヴァンパイアの花嫁の1人を討伐したんだってな。良くやったな」

「あ、いえ……たまたまですから」

 

 謙虚な気持ちで答えるキッドにグレン連邦保安官はドンと肩を叩く。

 

「謙遜なんかしなくていい。冒険者で例えるなら今の実力は★3程度あるという事だ。この調子でこれからも凶悪犯を捕まえて欲しい」

「はい、期待に応えられるように頑張ります」

「頼んだぞ。この調子なら、【バッジアップ】も遠くないな」

 

 バッジアップとは、冒険者で言う昇級試験である。保安官の場合は銅バッジから銀バッジに上がり、★3以上の冒険者の実力が認められる証である。保安官は銀バッジでは学科試験がない代わりに★3〜★5の凶悪犯を数名逮捕すると銀バッジに昇格出来る。金バッジからは学科試験と★5〜★8の凶悪犯の逮捕で昇格出来る。最高ランクの白金バッジは、高難易度の学科試験と★8〜★10の凶悪犯を逮捕しなければならない。ちなみに、白金バッジは冒険者で言う所の勇者クラス実力があると言っても過言では無い。

 

 着替えを終えたキッドはミーティングルームに向かうと、勇者ライトニングの周りに保安官がわいわい騒ぎながら集まっていた。

 

「おはようございます。どうかしたんですか?」

 

 キッドがジェシカ保安官に尋ねると神妙な顔をしながら囁く。

 

「勇者が別の国に旅立つんだってよ」

 

 キッドがえっ!?っと言わんばかりな顔をすると、ジェシカ保安官はしーっと指を立てながらキッドの口を抑えた。

 

「ヴァンパイアの一件で魔王軍の残党が暴れてるってのが分かったから残党狩りをしに行くんだってよ」

「残党狩りって……まさか1人でですか!?」

 

 キッドが目をまん丸くさせながら尋ねると、ジェシカ保安官はキッドの頭をバシッと叩く。

 

「んな訳ねぇだろ。フロンティア大陸の南部ある王国【モノリス】で合流するんだってよ。ご苦労なこった」

「勇者一行がまた集うなんてすごいですね」

 

 ジェシカ保安官と話に夢中になっていると、キッドの存在に気付いた勇者ライトニングは保安官達を退かして声を掛けて来た。

 

「やぁ、キッド君。昨日はありがとうね。助かったよ」

「いえいえ、こちらこそ短い間ありがとうございました」

 

 キッドがお礼を言うと、

 

「さっき聞いたんだけど、君は元々冒険者ギルド職員でロンドール大陸から移って来て保安官になったんだって?もしかして、生まれはビックベルかな?」

 

 キッドは思わず、なぜそれを?という顔をする。

 

「いや、僕の仲間にビックベル出身のドワーフがいたんだけどさ、引退してギルドマスターを務めてたんだよ。もしかして、ロジャー・ハンセンの部下だったりするかな?」

 

 キッドはかつての上司の名前が出て驚いた。

 

「ギルドマスターを知ってるんですか!?」

「勿論さ、天馬騎士(ペガサスナイト)のロジャー。彼には何度も助けられたもんさ」

「ならギルドマスターは勇者ライトニングの!?」

「そう、僕のパーティーの1人さ。先程連絡したら直接モノリスに向かうって言ってたよ」

「ってことは、ギルドマスターが現場復帰するという事ですか!?」

「そうだね。彼には申し訳ないけど魔王軍の残党が気がかりだからね。少しの間だけ協力して貰う事にしたんだ」

「なるほど……ギルドマスターに会ったらよろしく伝えて下さい」

「分かった。お近づきに僕の連絡先を渡して置くよ。暫くはモノリスに拠点を置くつもりだから」

 

 勇者ライトニングは紙に連絡先を記してキッドに渡した。渡されたキッドは満面の笑みを浮かべる。

 

「ありがとうございます!」

「キッド君とは仲良くなれそうだ。何か困った事があったら遠慮なく相談してね」

「はいっ!」

 

 キッドと勇者ライトニングが握手をすると、グレン連邦保安官がミーティングルームに入って来た。

 

「おはよう。どうやら説明は必要なさそうだな」

 

 保安官達が席に着くと、グレン連邦保安官が話し始める。

 

「知っての通り、勇者ライトニングは魔王軍の残党の討伐の為、大陸南部の国モノリスに旅立つ。それぞれみんな名残惜しいのは分かるが、皆で見送ろう」

 

 グレン連邦保安官が拍手をすると、その場にいた保安官全員も拍手を送った。勇者ライトニングは照れくさそうにしながら頭を下げると、ミーティングルームを出て旅立って行った。

 

「さぁ、湿っぽい話は終わりだ。気持ちを切り替えて今日も1日頑張ろう。早速だがキッド、今日から別の保安官と行動してくれ。【オースティン・トンプソン】。お前に任せる」

 

 キッドが後ろを振り向くと、小さい背丈。茶色の長い髭と小さいメガネ。ずんぐりむっくりとした体格のドワーフが座っていた。

 

「はいよ。任せてくんな」

「その他の配置は───────」

 

 グレン連邦保安官の指示が終わり、キッドはオースティン保安官の元へやって来て挨拶をした。

 

「今日からよろしくお願いします」

「おうよ。ジェシカみたいな若者やロッキー見たいなアホと組まされて大変だっただろ。今日から俺が鍛えてやるからな」

「装備品は僕が取りに行くので先に行って下さい」

「おう、気が利くじゃねぇか」

 

 オースティン保安官がキッドの腰をバシバシと叩く。何気に力強かったのか、キッドは少し顔を歪めた。その後、いつも通りに装備保管室から装備を取りに行き、愛馬のビリーを連れて来るとオースティン保安官は馬を連れて待っていた。

 

「装備です、どうぞ」

「おう、わざわざすまねぇな。明日からは俺も装備保管室に行くよ」

 

 オースティン保安官は装備品を受け取ると言い出した。キッドは突然の言葉に戸惑った。

 

「えっ、ですがジェシカ保安官やロッキー保安官はそう言いませんでしたよ?」

「そんなの若者達が勝手に決めた暗黙の了解ってやつよ。本来は2人で取りに行くもんだぜ?」

 

 今までとは違うやり方に少し戸惑ったが、キッドはそう言うやり方もあるんだなと納得した。キッド達は馬に跨り街へ駆け出した。活気にあふれている街を眺めながら進んでいると、オースティン保安官から声を掛けられた。

 

「どうだ?保安官の仕事は大変だろう?」

「えぇまぁ。けど、大分慣れました」

「ほう、大したもんだな。俺は元々は冒険者だったんだがな?まだ食わせなきゃ行けない小さい子供が8人もいるから思い切って保安官になったんだよ。流石に冒険者稼業じゃ食って行けねぇからな」

「8人!?大家族ですね!!」

「保安官は確かに残業もあるし、夜勤もあるけど毎月安定した給料もらえるから不安定な冒険者より全然楽だぜ」

 

 辛辣な事を言うオースティン保安官。すると、魔線機から通信が入った。

 

《コルト地区5番通りの川で腐敗臭がするという通報。オースティン保安官、現場に迎えますか?》

 

「あいよ、現場に向かう。腐敗臭か……モンスターの死体でも流れ着いたか?」

 

 ウェスタンに流れている川の源流はウェスタンからおよそに120kmほど離れた雪山から流れて来ている。現場に到着すると、子供を連れたヤギ系獣人の農民が立っていた。キッド達は馬から降りて声をかける。

 

「こんにちは。通報は貴方ですか?」

「えぇ、そうです。オラはそこの家に住んでるんだけども、いつも川で作物を洗うんだけんども、なんか腐った臭いがしたんです。もしかしたらモンスターの死体かもと思って通報したんです」

「そうですか、分かりました。ちょっと見て来ますね」

 

 キッドが事情を聞いている間、オースティン保安官は農民の子供と戯れていた。

 

「オースティン保安官。行きますよー?」

「おう、坊主は危ねぇから川に近づくなよ?」

「はーい」

 

 キッドとオースティン保安官が川に行くと腐敗臭が強くなって来た。キッドは思わず吐き気を催すと、オースティン保安官は呆れた様子で溜め息を吐いた。

 

「ここで吐くなよ?吐くなら向こうに戻って吐け」

「いえ、大丈夫です」

「臭いの元を探すか、キッドはそっちを探せ。俺はこっちを探す」

「はい」

 

 二手に分かれて臭いの元を探す為に、生い茂る草を掻き分け始めた。キッドはたまらず首に巻いていたバンダナを口元に巻いて和らげようとしたが、焼け石に水だった。一方、オースティン保安官は顔色一つ変えずに探していると、大きな麻袋を見つけた。その麻袋からは血が滲んでおり、ネズミがかじったのか穴が空いていた。オースティン保安官は感が働いたのか、臭いの原因がこの麻袋と判断した。

 

「こいつだな……」

 

 オースティン保安官は手袋を嵌めて麻袋を開けると、鳥人族らしきの腕や足、翼が入っていた。オースティン保安官は魔線機を取り出した。

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